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長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-11.裏切り者の末路(第二稿)

 福州(ふくしゅう)の街も泉州(せんしゅう)と同じように高い城壁で囲まれていた。
 サハチたちは三姉妹と一緒に福州の街に来ていた。三姉妹は勿論、海賊の格好ではなく、ごく普通の女たちの格好だった。敵を倒すにはまず敵を知らなければならない。三姉妹の敵(かたき)であるチェンイージュンの店を偵察するために来たのだった。
 大きな門をくぐって中に入ると城壁で囲まれた街はもの凄く広かった。泉州のグスクとどちらが大きいのかわからないが、ここのグスクの城壁は泉州のように三重にはなっていなくて、一つだけだった。街の中には川が流れていて、石で造られた橋がいくつも架かっていた。川辺にはガジュマルの木がずっと並んでいて枝葉を広げている。今は少し肌寒い陽気だが、夏は日差しが強いのかもしれない。ガジュマルの木の下には一休みできるように縁台のような物が置いてあった。
 大通りに立ち並ぶ建物は泉州とあまり変わらなかった。大きな寺院がいくつもあり、遠くからも見える高い塔も建っていた。
 サハチが目をきょろきょろさせながら歩いていると隣りにいるメイユーがサハチを見て笑った。何かを言ったが意味はわからなかった。自然とファイチとメイファン、サハチとメイユー、ウニタキとメイリンという組み合わせができて、二人づつ並んで歩いていた。
 チェンイージュンの店は別の大通りに面して建っているという。チェンイージュンに顔を知られている三姉妹が行くのはまずいので、お茶を飲ませる店で待っていてもらう事にした。サハチたちは三姉妹と別れて、チェンイージュンの店に向かった。
メイリンから明の言葉をいくつか教わったぞ」とウニタキが嬉しそうな顔をしてサハチに言った。
「言葉もしゃべれないのにどうやって教わったんだ」とサハチは聞いた。
「身振り手振りで聞いたのさ。お前もメイユーから教われ。なかなか、いい雰囲気だったぞ」
「何を言っているんだ。俺は一言もしゃべっていない」
「しゃべらなくても、メイユーがお前を見る目を見ればわかる」
「ファイチ、俺の事をメイユーに何と説明したんだ」とサハチはファイチに聞いた。
琉球の友で、二人とも強いと言っただけです。でも、メイファンはサハチが中山王の世子(せいし)だと知っています。メイファンがその事を言ったのかもしれません」
「それで興味を持っただけだろう」
「それにしたって、メイユーはいい女だ。放っておく手はないぞ」
「亭主がいるだろう」
「それは大丈夫です」とファイチが言った。
「メイファンから聞きましたが、亭主とは別れて来たそうです。敵討ちを助けてくれないので愛想が尽きたと言っていました」
「うまくやれよ」とウニタキがサハチを肘で突いた。
「ただ、メイユーは強い女です。マチルギと同じように、怒らせたら殺されるかもしれません」
「そうか」とウニタキが納得したように手を打った。
「誰かに似ているような気がしていたんだ。あれはまさしくマチルギだ。気をつけろよ。軽い気持ちで手を出したらあとが恐ろしいぞ」
「勝手な事を言うな。手を出せと言ったくせに」
 ウニタキは好きにしろというようにサハチに手を振ると、「メイリンは亭主と別れていないのか」とファイチに聞いた。
メイリンの亭主は何年か前に戦死したそうです。亭主はいませんが、子供は二人います。息子は跡取りなので嫁ぎ先に置いて来て、娘だけを連れて帰って来ました」
 メイリンの娘はウニタキの長男と同い年の十一歳で、母親によく似た可愛い娘だった。
「敵討ちが終わったら、また戻るのか」
「多分、もう戻らないでしょう。姉妹三人で、父親の跡を継いで海賊になるようです」
「あの三姉妹の他に男の兄弟はいないのか」
「男の兄弟は四人いたようですが、皆、両親と一緒に捕まって殺されました。何かの集まりがあって、兄弟だけでなく、主立った者たち全員が揃っている所を狙われたようです」
「そうなると、当然、チェンイージュンもその場にいたはずだな」
「何かの理由をつけて、その場から逃げたのに違いありません」
 チェンイージュンの店は思っていたよりもかなり立派な店だった。二階建ての大きな屋敷で、難しい字が書かれた看板が掲げられてあった。メイファンの父親は海賊をやめて、まともな商人になろうとしていたのだろうか。
「わたしは琉球に持って帰るお土産を探しに来たと言って店の中に入ります。二人はさりげなく、店の周りを調べて下さい。明日の襲撃に失敗した場合、ここに潜入する事になるかもしれません」
 サハチとウニタキはうなづき、店に入って行くファイチを見送った。ファイチが店に入るとサハチとウニタキは二手に分かれて、土塀に囲まれた店の周囲を調べた。
 サハチがきょろきょろしながら歩いていると突然、後ろから声を掛けられた。勿論、何を言っているのかわからない。振り返ると刀を腰に差した男がサハチを睨んでいた。着ている着物は明風だが、刀はヤマトゥの刀で、髷(まげ)もヤマトゥ風だった。もしかしたら、メイファンが言っていたヤマトゥンチュかも知れない。サハチはヤマトゥ言葉で話してみた。
「ヤマトゥのサムレーではありませんか」と聞くと、相手は驚いた顔をして、「なに、お前、日本人か」とヤマトゥ言葉が返ってきた。
「わたしは琉球から来ました。連れとはぐれてしまって困っています」
琉球から来た?」と言って、サムレーはサハチの格好を見た。
「この格好は連れの者が道士なので、わたしも真似してみたのです」
 サムレーは軽く笑って、「泉州琉球の進貢船が来たと噂は聞いたが、それに乗って来たのか」と聞いた。
「そうです。泉州から来ました」
「そうか。俺も琉球には行った事がある」
「そうなのですか。もしかしたら、松浦党(まつらとう)の人ですか」
「ほう、松浦党を知っているのか」
松浦党の人たちはよく琉球に来ます。今、志佐壱岐守(しさいきのかみ)殿が琉球に来ております」
壱岐島(いきのしま)の志佐殿じゃな。懐かしいのう。わしは五島の松浦党なんじゃよ」
「五島でしたか。わたしも五島には行った事があります」
「なに、本当か」
「はい。もう二十年も前の事ですが、五島から壱岐島に行って対馬まで行きました。対馬の早田左衛門太郎殿を御存じですか」
「会った事はないが、噂は聞いている。今は朝鮮(チョソン)にいるらしいな」
「はい。早田殿には大変お世話になりました」
「そうじゃったか」
「五島から取り引きをするために福州に来たのですか」
「いや、そうじゃない。わしは今、ここに住んでおるんじゃよ。話せば長くなるが、わしはある人に命を救われてな。今はその人のために働いておるんじゃ」
「そうだったのですか。もう、五島には帰らないのですか」
「わしは三男じゃからな、帰った所で家督は継げん。あんな狭い島にいるより、ここにいた方が気が楽じゃ。それに妻も子もおる。奴らを置いて帰るわけにはいかん」
「そうですか」
「わしはそろそろ仕事に戻らなければならん。困った事があったら、この店に顔を出せ」とサムレーは言って、土塀の中の屋敷を示した。
「わしの名は松尾じゃ。ここではソンウェイと呼ばれておる」
「わたしはサハチと申します」
「それじゃあ、気をつけてな」
 ソンウェイと名乗ったヤマトゥンチュは去って行った。
 ソンウェイの姿が見えなくなると、どこからかウニタキが現れた。
「奴が例のヤマトゥンチュか」
 サハチはうなづいた。
「五島の松浦党らしい。ある人に命を助けられて、その人のために働いていると言っていた」
「ある人というのはチェンイージュンの事か」
「そうじゃないだろう。奴は多分、五島から倭寇(わこう)として明国にやって来たが、明国の軍船にやられて、海賊に助けられたのだろう」
「すると、リンジェンフォンとかいう海賊か」
「多分な。奴はリンジェンフォンの命令で、この店を守っているに違いない。ところで、この中に忍び込めそうか」
「わけはない」とウニタキは笑った。
 店の前に戻って、店の中を覗くとファイチは主人のチェンイージュンらしい男と話をしていた。店内には色鮮やかな絹織物がいくつも飾られてあった。庶民には手の届かない、かなり高価な商品だ。ソンウェイの姿は店の中には見当たらなかった。十七、八の可愛い娘がいた。お客のようではなさそうなので、チェンイージュンの娘かもしれない。父親の生命(いのち)が明日までだと思うと可哀想だが仕方のない事だった。
 しばらくして、ファイチが出て来た。
「何か収穫はあったのか」とサハチが聞くとファイチは首を傾げた。
 チェンイージュンの店を離れて、三姉妹が待つ店に向かった。
「チェンイージュンは立派な商人になっていました」とファイチは歩きながら言った。
「チェンイージュンは以前、あの店の使用人でした。それが今は主人に納まっています。あれだけの店を維持していくには後ろ盾が必要です」
「リンジェンフォンが後ろ盾になっているのだろう」とサハチは言ったが、ファイチは首を振った。
「勿論、リンジェンフォンも後ろ盾になっているでしょうが、海賊だけでは駄目です。あれだけの商売をするには、かなり力を持った商人が後ろにいるに違いありません。力を持った商人は必ず、密貿易をやっています。リンジェンフォンと組んでいる商人がいるに違いありません」
「そうなるとその商人も三姉妹の敵(かたき)となるわけだな」
 ファイチはうなづいた。
「何だか、面倒になってきたな」とウニタキが言った。「これじゃあ、簡単に敵討ちなどできないぞ」
「黒幕を突き止めるのは難しいです」
 三姉妹と合流すると、しばらくは敵討ちの事は忘れて、城内の見物を楽しんだ。城内には山もあり、大きな池もあった。ガジュマル(榕樹)の木があちこちにあって、福州の別名は『榕城(ロンチォン)』というらしい。
 見物を楽しみながらサハチはメイユーから明の言葉を教わった。そして、サハチはメイユーに琉球の言葉を教えた。メイユーはいつの日か、琉球に行ってみたいと言った。サハチは身振り手振りで、是非、来て下さいと言ったが、通じたかどうかはわからない。言葉はうまく通じないが楽しい一時だった。
 中洲の隠れ家に戻って、敵討ちの作戦を練った。黒幕を倒すのはあとにして、明日、チェンイージュンを倒さなければならない。
 チェンイージュンが倭寇と密貿易をするのは閩江(びんこう)の河口付近らしいが、取り引きした商品を隠れ家まで運ぶはずだった。その隠れ家は、今いる屋敷からメイファンたちが移った屋敷で、中洲の対岸にある。メイファンが琉球に駆け落ちするまで暮らしていた屋敷だった。その屋敷は官軍の襲撃に遭う事はなく、チェンイージュンが隠れ家として使っていた。その屋敷に隠してあった財産もチェンイージュンが奪い取ったに違いなかった。
 密貿易の取り引き現場までは行かず、チェンイージュンが戻って来て、ねぎらいの宴が始まって、敵が酔いしれた頃を狙うという。隠れ家の屋敷の見取り図もメイファンによって描かれ、皆の頭の中に入っていた。敵の兵力は三十人前後で、こちらは四十人で襲撃する。雑魚(ざこ)どもは逃がしても構わないが、チェンイージュンだけは必ず討ち取らなければならなかった。サハチとウニタキとファイチも襲撃に加わり、メイファンとメイユーも行くが、メイリンは留守を守る。サハチたちが連れて来た八人の山賊も加わり、活躍次第では仲間に加えるようだった。
 次の日、日が暮れるまでの時をサハチとウニタキは明の言葉を必死になって覚えていた。メイリンとメイユーだけでなく、メイファンも加わってくれた。メイファンの通訳のお陰で、色々な単語を覚える事ができた。ファイチは独りで何かをずっと考えていた。時々、首を傾げては、ブツブツ独り言を言っていた。
 日が暮れて、いよいよ決行の時が来た。皆が支度をしている時、「やはり、おかしいです」とファイチが言った。
「何がおかしいんだ」とサハチは聞いた。
「メイファンのお父さんを倒したのはチェンイージュンではありません。奴は黒幕に操られているだけです」
「それはわかっている」とウニタキが言った。「黒幕をやる前に、まず、チェンイージュンを倒すんだろう」
「ちょっと待って下さい」とファイチは手を振った。
「黒幕は少なくとも二人います。一人は海賊のリンジェンフォンで、もう一人はリンジェンフォンと手を組んでいる商人です。リンジェンフォンは以前からメイファンの父親とは仲が悪く、いなくなってほしいと願っていました。しかし、海賊の掟があって、同業者を役人に売る事はできません。そんな事をしたら海賊としての信用を失ってしまいます。一方、商人の方は、海賊だった者が城内に店を構えて、自分の縄張りを荒らすのを黙って見てはいられなかったのです。そこで二人は悪だくみを考えます。チェンイージュンを利用して、役人にメイファンの父親の正体をばらしたのです。チェンイージュンとしてもそんな事をしたら海賊としては生きていられません。二人にうまく騙されて、海賊の足を洗って、商人として生きる道を選んだのでしょう。チェンイージュンはもともと海賊ではなく、商人になりたかったのかもしれません。あの立派な店が自分のものになり、二人が後ろ盾になってくれれば、福州一の商人になれるかもしれないと夢を見たのでしょう」
「そうかもしれんな」とサハチはうなづいた。
 ファイチはサハチとウニタキの顔を見ながら、「今度は黒幕の方から見てみましょう」と言った。
「黒幕二人にとって、チェンイージュンは必要でしょうか」
「邪魔だったメイファンの親父は死んだんだ。もう用はすんだ。必要ないだろう」とウニタキは言った。
「そうするとどうなると思います?」
「消すだろうな」
「どんな手を使って消すと思いますか」
「城内にある店を襲撃するわけには行くまい」とサハチは言った。
「すると、まさか‥‥‥」とウニタキが言って、ファイチの顔を見つめた。
「そうです。今夜です。今夜がチェンイージュンを消すのに絶好の機会なんです」
「リンジェンフォンが隠れ家を襲撃するというのか」
「そうです。倭寇との密貿易を仕組んだのもリンジェンフォンに違いありません。チェンイージュンを消すために場外におびき出したのです。祝い酒もたっぷり用意したのかもしれません。そして、メイファンの父親の残党たちに殺されたという事にするのでしょう」
「その可能性は充分にあるな」とサハチはファイチを見つめながらうなづいた。
「もう少し様子を見た方がよさそうです。リンジェンフォンと鉢合わせしたら、こちらもかなりの損害がでます」
 ウニタキがファイチを見てニヤッと笑い、「お前は凄えよ」と言って肩をたたいた。
「自分の事ばかり考えていては戦に負けます。敵が何を考えているのかを突き止めなければなりません。わたしの取り越し苦労に終わるかもしれませんが、夜が明ける前まで様子を見た方がいいでしょう」
 ファイチは三姉妹に自分の考えを話して、納得してもらった。
 ラオファン(老黄)という老人が夜釣りをしながら、チェンイージュンの隠れ家の様子を探ってくると言って出掛けて行った。ウニタキがあんな爺さんに行かせて大丈夫なのかと聞くと、「あの人はあたしたちの武術のお師匠なの。心配ないわ」とメイファンが言った。
 夜明けまで起きていても仕方がないので、配下の者たちには仮眠をとってもらう事にして、サハチたちも横になった。
「今日は頭を使いすぎて疲れた」と言ってウニタキはすぐに眠ってしまったが、サハチはなかなか眠れなかった。
 もし、ファイチの言った通りになったら敵の襲撃どころではなく、海賊たちと戦わなくてはならなかったかもしれない。リンジェンフォンの配下が何人いるのか知らないが、数多くの犠牲者を出していただろう。戦をするのに敵を知るというのは基本の中の基本だが、今回、サハチはそんな事まで考えず、軽い気持ちで、必ず成功するだろうと思っていた。サハチとウニタキが三姉妹と一緒に、楽しく言葉を学んでいた時、ファイチはずっと敵の動きを考えていた。ファイチの凄さを改めて思い知らされ、サハチも見習わなければならないと自分を戒めていた。ファイチはメイファンと一緒にいるのか戻って来なかった。メイファンに火薬の事を頼んでいるのかもしれなかった。
 サハチがうとうととし始めた頃、ラオファンが戻って来た。やはり、リンジェンフォンの襲撃があったらしい。
 夜が明ける前、サハチ、ウニタキ、ファイチ、メイファン、メイユー、ラオファンの六人で、川船の漕ぎ手を連れてチェンイージュンの隠れ家に向かった。
 朝靄の流れる閩江を渡り、対岸に着くとメイファンとメイユーが先頭にたって隠れ家に向かった。辺りはしーんと静まり返っている。敵の見張りが残っているかもしれないと注意深く進んだが、人のいる気配はなかった。この辺りに家は一軒もなく、湿原のような荒れ地が広がっている。隠れ家は森の中にあった。石垣に囲まれた二階建ての屋敷だった。しーんとしていて、人の気配はまったくなかった。
「宴は終わったようだ」とウニタキが言って、石垣の周囲を調べに行った。
 サハチもウニタキと反対側に回って、敵が潜んでいないか調べた。石垣の周囲には誰もいなかった。開けっ放しの門から中に入り、屋敷の周囲も調べたが誰もいない。ファイチとメイファンが屋敷に入って行き、警戒しながら、そのあとに続いた。
 屋敷の中は地獄絵そのものだった。大広間のような広い部屋に円卓がいくつも並べられ、そこで楽しい宴をやっていたのだろうが、今は死体の山だった。血しぶきがあちこちに飛び散り、血の臭いが充満していた。街から呼んだのか妓女(ジーニュ)も加わっていたようで、無残な姿で死んでいた。
 皆、呆然と立ち尽くして死体を眺めていたが、メイユーが死体の中に足を踏み入れて、チェンイージュンを探し始めた。それを見て、メイファンも死体の中に入って行った。床は血まみれだった。
 ウニタキがサハチに合図を送った。サハチはうなづき、ウニタキと一緒に他の部屋を調べた。二階も調べたが敵の姿はなく、いくつもある部屋はどこも荒らされ、金目の物はすべて持ち去られたようだった。
 一階の広間に戻ると、「チェンイージュンも殺されていました」とファイチが言った。
「恨みを晴らすと言わんばかりに滅多刺しにされていました」
「メイファンたちの仕業にするつもりなんだな」とウニタキが言うとファイチはうなづいた。
「ヤマトゥンチュの姿はありません。やはり、リンジェンフォンに命じられて、チェンイージュンを見張っていたようです」
「早く、引き上げた方がいい」とサハチは言った。
 ファイチが皆を呼び集めて、隠れ家から撤収した。
 川船の中で、「これからどうする」とファイチがメイファンに聞いた。
「福州から離れるわ」とメイファンは言った。
「一からやり直しよ。リンジェンフォンは必ず倒すわ。でも、今は勢力を立て直さなくてはならない。琉球と交易をして、リンジェンフォンよりも大きな勢力を持つ海賊になるわ。なんたって、琉球の王様が味方なんだから、必ずできるわよ」
「できるだけの事はする」とサハチはメイファンに答えた。