長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部は山北王の攀安知を倒すまでの活躍です。お楽しみください。

2-41.眠りから覚めたガーラダマ(改訂決定稿)

 二月九日、三度目の首里(すい)グスクのお祭り(うまちー)が始まった。今年は楼閣の普請中で西曲輪(いりくるわ)が使えないため、北曲輪(にしくるわ)で行なわれた。西曲輪に上がれないので、百浦添御殿(むむうらしいうどぅん)(正殿)を見る事はできないが、城下の人たちは恒例のお祭りを楽しみにしていて、多くの人たちで賑わった。
 何とか準備が間に合って、佐敷ヌルもほっとしていた。今年の佐敷ヌルは博多で手に入れた綺麗な花を散りばめたヤマトゥ(日本)の着物を着ていて、お揃いの着物を着たユリと一緒に舞台の進行役を務めていた。
 佐敷ヌルを知らない者はいないが、一緒にいる美人は誰だと人々の話題に上った。ユリという名で、水軍大将のヒューガ(日向大親)の娘だとわかると、あっという間に城下に広まって、ユリを見るために、さらに人々が集まって来た。
 佐敷ヌルはユリの笛の音を聞いて、すっかり魅了されてしまった。佐敷ヌルは平田大親(ひらたうふや)の妻、ウミチルの笛も聞いているし、サハチ(島添大里按司)の笛も聞いている。以前は笛に興味がなかったのに、ヤマトゥ旅から帰って来たら興味を持つようになったらしい。対馬の自然の中で何かを感じたのかもしれなかった。
 佐敷ヌルはユリに笛を教えてくれと頼んだ。ユリは快く引き受けて、さらにお祭りの準備も手伝ってくれたのだった。
 舞台ではユリ、ウミチル、ササ、女子(いなぐ)サムレーのチタの笛の競演が行なわれ、大喝采を浴びていた。ササに引っ張られて無理やり舞台に上げられたサハチも笛を披露した。佐敷ヌルに頼まれたと言って、ウニタキ(三星大親)が娘のミヨンと一緒に三弦(サンシェン)を披露した。三弦を弾きながら歌うウニタキの歌は哀調を帯びていて人々を感動させた。一転して躍動的な明るい歌になると、踊り出す人たちも現れ、歌に合わせて指笛も響き渡った。
 ササはシンシン(杏杏)と三星党(みちぶしとー)のシズと三人で、例年のように城下の娘に扮して見回りをした。マウシは五番組のサムレーとしてグスクの警護に当たり、八番組のジルムイは浮島(那覇)の警護に当たっていた。
 今年は去年よりも人出が多く、ヤマトゥンチュ(日本人)たちも大勢やって来たが、騒ぎが起こる事もなく、無事にお祭りは終了した。
 お祭りの翌日、御内原(うーちばる)で舞台の再現が行なわれた。お祭りに行けない女たちのために、舞台を再現するのは恒例行事となって、御内原は一日遅れのお祭りを楽しんだ。
 お祭りの後片付けが終わると佐敷ヌルはユリを連れて島添大里(しましいうふざとぅ)に帰った。今度は二十九日に島添大里グスクのお祭りがあった。休む間もなく、その準備を始めなければならない。佐敷ヌルとユリの娘はナツに預けてあった。サハチの子供たちと一緒に、相変わらず笛を吹いて遊んでいた。
 島添大里グスクのお祭りは、サハチが島添大里グスクを奪い取った時に、周りに警戒されないように盛大に催したお祭りだった。たった一度のお祭りを復活させて、今年から毎年行なうように決めたのだった。さらに、四月二十一日は佐敷グスクのお祭り、九月十日は平田グスクのお祭りも催す事に決まった。共にグスクを築き始めた日だった。最初のお祭りなので、すべて、佐敷ヌルに取り仕切ってもらう事になった。お祭り奉行(うまちーぶぎょう)に任命された佐敷ヌルは、忙しいわねと言いながらもお祭りが増えるのは嬉しいようだった。
 御内原でのお祭りの次の日、馬天(ばてぃん)ヌルはササとシンシン、ユミーとクルーを連れて旅立った。護衛に奥間大親(うくまうふや)がついて行った。『ティーダシル(日代)の石』を探す旅だった。
 サハチは馬天ヌルから『ティーダシルの石』の事を聞いて驚いた。話を聞いてみれば、成程とうなづけた。『ツキシル(月代)の石』があって、太陽の石がないというのはおかしな事だった。太陽と月が揃って、キーヌウチ(首里グスク内のウタキ)は完成する。光る石がもう一つあるなんて信じられないが、馬天ヌルが探し出すのが楽しみだった。新しい謎にぶつかって、馬天ヌルは生き生きしていた。
「必ず見つけて来るわね」と張り切って出掛けて行った。
 マチルギは忙しい毎日に戻り、首里にいる事が多くなった。もうすぐ、浦添(うらしい)グスクが再建されるので、浦添に行く侍女や女子(いなぐ)サムレーを選ばなければならない。そして、その補充のため、キラマ(慶良間)の島から修行を積んだ娘たちを呼ばなければならなかった。
 サハチは朝鮮(チョソン)とヤマトゥに行く計画をじっくりと練り、半年間の留守中に何事も起きないように手配しなければならなかった。
 ウニタキからの報告によると、山南王(さんなんおう)(シタルー)は二年前に娘婿に迎えた承察度(うふざとぅ)(先々代の山南王)の弟を長嶺按司(ながんみあじ)に任命して、もうすぐ完成する長嶺グスクを守らせるようだという。守りを固めて、やがては首里を攻めるつもりに違いない。
 山北王(さんほくおう)(攀安知)は恩納(うんな)と金武(きん)にグスクを築いたあと、他にグスクを築いている様子はなく、今帰仁(なきじん)グスクの二の曲輪を改築していたらしい。首里グスクを真似して二の曲輪に御庭(うなー)を造り、元旦の儀式はそこに家臣たちを並べて行なったという。
 去年、山北王は進貢船(しんくんしん)に兵を乗せて徳之島(とぅくぬしま)を攻めた。
「今年も進貢船を明国(みんこく)に送らないのか」と聞くと、
「今年は奄美(あまみ)の大島(うふしま)を攻めるらしいぞ」とウニタキは言った。
 サハチは昔、奄美大島の手前にある島で水の補給をしたのを思い出した。山北王に奄美大島を取られると、伊平屋島(いひゃじま)のあとトカラの宝島まで、どこの島にも寄れなくなってしまう。水の補給ができないとなると進貢船に積み込む水のように、一度沸かさなければならなくなる。手間が掛かるが仕方がない。今、奄美大島を守るために、山北王と戦(いくさ)をするわけにはいかなかった。
「山北王は進貢(しんくん)はやめたのか」とサハチはウニタキに聞いた。
「リンジェンフォン(林剣峰)との密貿易で手に入る商品で充分に間に合うのだろう。去年は三隻の船でやって来ている」
「山北王との交易で、リンジェンフォンは益々、勢力を拡大するな」
「それは三姉妹にも言える事だ。いつの日か、三姉妹とリンジェンフォンは戦うだろう。三姉妹が勝てばリンジェンフォンは来なくなり、山北王は困った立場に追い込まれる」
「三姉妹たちはリンジェンフォンに勝てるだろうか」
メイリン(美玲)は新しい拠点にした西湖のほとりはいい場所だと言っていた。かつて、あの辺りは三人の祖父、ヂャンシーチォン(張士誠)の支配地だったので、隠れていた祖父の家臣たちが密かにやって来て、力を貸してくれるらしい」
「三姉妹がヂャンシーチォンの孫だとわかったら危険じゃないのか」
「わかったら危険だ。永楽帝(えいらくてい)が黙っていないだろう。あの屋敷では三姉妹は倭寇(わこう)に襲撃されて広州(グゥァンジョウ)から逃げて来た商人の娘たちという事になっている。毎日、着飾って優雅に暮らしていて、海賊だと疑う者は誰もいない。それでも、裏の世界では三姉妹がヂャンシーチォンの孫だという事は知れ渡っているらしい」
「裏の世界というのは何なんだ?」
「あの国は歴史が古い。明(みん)の国の前は元(げん)の国で、その前は宋(そう)の国だった。国が変わる度に殺された者たちの数は物凄い数に上る。生き残った者たちは裏の世界に隠れるんだ。どういう仕組みになっているのかは知らんが、そういう世界があるようだ。武当山(ウーダンシャン)を破壊した白蓮教(びゃくれんきょう)の者たちも裏の世界に隠れていて、密かに手を結ぼうとやって来たらしい」
「そうなのか‥‥‥」
「今は三姉妹も慎重に動いている。そいつらが本物かどうか確かめなくては下手(へた)に動けんからな」
「どうやってそれを調べるんだ?」
「それを調べるために、メイリンは『三星党(みちぶしとー)』のような組織を作ると言っていた。俺は配下の者をメイリンに付けて明国に送ったんだ」
「なに、配下の者をか」
「以前、ファイチ(懐機)の護衛に付けていた奴らで、明国の言葉がしゃべれる二人だ。その二人を中心に組織を作れば、裏の世界も探れるだろう。そして、裏の世界を味方に付ければ、三姉妹の勢力はリンジェンフォンを凌ぐ事になる」
「そうか‥‥‥うまく行くといいな」
 ウニタキは今、首里のビンダキ(弁ヶ岳)の拠点作りに熱中していた。
 去年、山南王と約束した、『ハーリー』に中山王(ちゅうざんおう)の龍舟(りゅうぶに)を出すための準備をそろそろ始めなくてはならない時期になっていた。龍舟を出すのはいいが、もう一つの約束、中山王と王妃を豊見(とぅゆみ)グスクに来させてくれというのをどうしたらいいか、サハチは思紹(ししょう)(中山王)と相談した。
「わしが行くのは構わんが、王妃も一緒に行くのか」と思紹は彫刻の手を止めて、サハチを見た。
「王妃だけでなく、孫たちも連れて来いと言っていました。実際、ハーリーの日の豊見グスクの中は子供たちだらけでした」
「危険ではないのか」
「グスク内は大丈夫でしょうが、行き帰りは何者かの襲撃があるかもしれません」
「何者かとは?」
「武寧(ぶねい)(先代中山王)の弟の米須按司(くみしあじ)と瀬長按司(しながあじ)、武寧の次男の兼(かに)グスク按司です。去年は兼グスク按司が襲撃を計画していましたが、ヂャンサンフォン(張三豊)殿のお陰で助かりました」
「ヂャンサンフォン殿は修理亮(しゅりのすけ)を連れて、兼グスク按司の阿波根(あーぐん)グスクに行っているそうじゃないか。大丈夫なのか」
 サハチがマチルギと語り合っていた夜の翌日、ヂャンサンフォンはナツに伝言を残して、兼グスク按司のもとへ行ったのだった。
「ウニタキの配下が見張っています。阿波根グスクの近くに大きなガマ(洞窟)があって、そこでヂャンサンフォン殿の指導のもと、兼グスク按司は修行を積んでいるようです」
「お前たちがやった暗闇を歩いたりする修行をか」
「多分、そうでしょう」
 思紹はうなづいて、「王妃に孫たちか」と言った。
「孫たちは喜ぶだろうが、シタルー(山南王)は大丈夫か。全員が捕まってしまい、殺されたくなかったら首里グスクを引き渡せと言ってきたらどうする?」
「シタルーがそんな事はしないとは思いますが、ないとは言えません。女子サムレーを侍女にして、孫たちの面倒を見させますか」
「それにしたって、子供たちを守るのは難しいぞ。一人が捕まってしまえば、手出しができなくなる」
「孫たちを連れて行くのはやめて、王と王妃だけにしますか」
 思紹はうなづいた。
「王妃だけなら何とか守れるじゃろう。今回は様子を見て、来年以降の事を考えよう」
 サハチもそれで納得した。
「ところで、何を彫っているのです?」とサハチが思紹に聞くと、「麒麟(きりん)」と答えた。
「縁起のいい動物らしい」と言って、思紹は彫りかけの麒麟を見せた。
「不思議な動物ですね。そんなのが実際にいるんですか」
 思紹は首を傾げた。
「ヂャンサンフォン殿に聞いたら、明国の山奥に行けばいるかもしれんと言っておった」
「頭は龍に似ていて、体は牛で、足は馬ですかね」とサハチは言って、手を振ると思紹と別れた。


 『ティーダシルの石』を探しに行った馬天ヌルたちは勝連(かちりん)グスクに向かい、勝連ヌルの協力のもとグスクの中は勿論、グスクの周辺も探し回ったが、それらしい石は見つからなかった。ただ、ササの導きで、山中にある『望月党』の隠れ家を見つけた。ウニタキによって望月党が壊滅されてから四年近くが経っているが、その後、誰かが来たという形跡はなく、あちこちに白骨化した死骸が放置されていた。
「放って置いたら危険だわ」と馬天ヌルは言って、ササもうなづいた。
 望月党はウニタキの存在を知らなかった。突然の襲撃に遭い、勝連按司の仕業だと思っていた。殺された者たちはマジムン(悪霊)となって、勝連グスクに集まった。勝連グスクでマジムン退治はしたが、マジムンとなったこの場所を祓(はら)い清めなければならなかった。
 みんなで白骨を拾い集めて、屋敷の裏にある岩陰にまとめて、お祓(はら)いをした。いつの間にか日が暮れてしまい、その晩は望月党の隠れ家に泊まった。綺麗に掃除をすれば、まだ充分に使える屋敷だった。ウニタキに言って、拠点に使えばいいわと馬天ヌルは言った。
 甕(かーみ)に入った猪(やましし)の肉の塩漬けがあったので、それを焼いて食べ、空腹を凌いだ。
 勝連から山田に向かい、山田按司に歓迎された。山田按司に聞いてみたが、今まで、光る石を見た事はないし、そんな噂も聞いた事がないという。それでも一応、マウシの姉の山田ヌルと一緒にグスク内とその周辺を探してみたが何も出て来なかった。
 山田グスクをあとにして海辺に出た時、「傷ついたヌルたちが上陸するのが見えた」と突然、ササが言った。
「ここから上陸したの?」と馬天ヌルが期待を込めて聞くと、ササは首を傾げた。
「ここじゃないみたい」
 そう言って、ササは右を見て、左を見て、左の方を指さした。一行は海岸に沿って左へと向かった。やがて海岸は岩場になり、上陸できるような場所ではなくなった。さらに進むと砂浜が現れた。
「ここかしら?」と馬天ヌルがササを見た。
 ササは目を閉じて、しばらくして左の方を向いて、「もっと向こうよ」と言った。
 砂浜が途切れて、また岩場が続き、川に出た。少し上流まで行って、川の中に入って渡った。川に沿って下流に行くと、ウミンチュ(漁師)たちの家々が建ち並ぶ集落に出た。海辺に出ると砂浜が続いていた。
「ここよ」とササが言った。
「ヌルたちはここから上陸したんだわ」
 馬天ヌルは海の方を眺め、振り返って集落の方を見た。
「ここはクグルー(小五郎)のお母さんの生まれ村(じま)だわ。確か、長浜っていう所よ。宇座(うーじゃ)の牧場はすぐそこよ」
 馬天ヌルは前回、運天泊(うんてぃんどぅまい)まで行った帰りに宇座の牧場に寄っていた。サハチやマチルギから話を聞いて、一度、行ってみたかったのだった。宇座按司に歓迎されて、サハチの事や明国の話を聞いて過ごした。ササとシンシンはヂャンサンフォンと一緒に旅に出た時、宇座按司のお世話になっていた。
「今晩は宇座の牧場に泊めてもらいましょう」とササが楽しそうに言った。
「仔馬が可愛かったわね」とシンシンが嬉しそうな顔をした。
「上陸したヌルたちはどこに行ったの?」と馬天ヌルがササに聞いた。
 ササは目を閉じて、しばらく考えていた。
「二百年前はこんなにもおうちがなかったわ」
 そう言って、集落の先に見える小高い森を示した。
「多分、あの山ね」
 ササが示した山に向かう途中、地面がぐらっと揺れた。
「なに、どうしたの?」とササが叫んだ。
地震(ねー)だわ」と馬天ヌルが言った。
 揺れはしばらく続いた。皆、地面に座り込んで揺れが治まるのを待った。
「びっくりした」と揺れが治まるとササが言った。
 シンシンは青ざめた顔をしてササを見ると、「一体、何なの?」と聞いた。
「もう大丈夫よ」とササはシンシンに言った。
地震なんて久し振りだわね」と馬天ヌルは奥間大親を見た。
「結構大きな地震でしたね。被害が出なければいいが‥‥‥」と奥間大親は心配そうに辺りを見回した。
 集落の方を見ても、家が倒れているような様子はなかった。一行は気を取り直して山へと向かった。また地震が来ないかしらと心配しながら、山の中を探し回ったが、『ティーダシルの石』は見つからなかった。山から下りる時、大きな木が倒れて、行く手をふさいでいた。
「さっきの地震で倒れたのね」と馬天ヌルが言った。
「かなり古い木だわ」とササが言った。
 大きな根が掘り起こされて、地面に大きな穴が空いていた。
「あれ、何かしら?」とササが言って、穴の中に入って行った。
「気をつけなさいよ」と馬天ヌルが言った。
 シンシンもササのあとを追って、穴の中に入った。
「見て、ガーラダマ(勾玉(まがたま))よ」とササが叫んだ。
「凄い。いっぱいあるわ」
 様々な色をしたガーラダマが壊れた木の箱に入っていた。
地震のお陰で土の中から出て来たんだわ」とササが言って、大きな真っ赤なガーラダマを手に取って眺めた。
 馬天ヌルたちもササのそばに行った。
「凄いわね」と馬天ヌルもガーラダマを手に取って眺めた。
「かなり古い物だわ」
 ユミーとクルーも凄いわと言いながら、ガーラダマを手に取った。
「ねえ、これ、もらってもいい」とササが真っ赤なガーラダマを馬天ヌルに見せながら言った。
「それはガーラダマが決めるわ。身に付けて、具合が悪くならなければ、それはあなたのものよ」
「大丈夫よ。神様があたしのために掘り出してくれたのよ」
 馬天ヌルは笑って、「まずは神様にお祈りしましょう」と言った。
 馬天ヌル、ササ、シンシン、ユミー、クルーはガーラダマを前にしてお祈りを捧げた。
 お祈りのあと、「傷ついたヌルたちがここに埋めたのよ」とササが言った。
「すると二百年前のガーラダマね」と馬天ヌルが言って、「ねえ、そのヌルたち、石を運んでいるの?」とササに聞いた。
「石は運んでいないわ。箱のような物をいくつも持っていたわ」
「この箱以外にもまだ箱があるのね」
「そうみたい」
 穴の中を探してみたが、ほかの箱は見つからなかった。二百年の間に誰かが掘り起こしてしまったのか、あるいは別の所に埋まっているのかもしれない。ヌルたちが石を持っていなかったのなら、『ティーダシルの石』は別の場所に持って行ったのかもしれなかった。もっと、北の方に持って行ったのかもしれない。敵地に潜入しなければならないかと思ったが、ふと、以前、サスカサ(運玉森ヌル)から言われた言葉を思い出した。
 物事にはすべて決められた時がある。いくら焦ってみても、その時が来なければ何も始まらない‥‥‥
 今回、ガーラダマが見つかったのは、その時だったのだろう。ガーラダマを見つけるために旅に出たのかもしれない。『ティーダシルの石』はその時が来るまで待とうと馬天ヌルは思った。
 ササがガーラダマを見つけたその日、山南王の進貢船が出帆していた。今年はなぜか、随分と遅い船出だった。正使を務めるのは首里から出奔(しゅっぽん)した大(うふ)グスク大親だった。うまく、山南王に取り入ったようだ。そして、米須按司もタブチを見習ったのか、自ら明国に出掛けて行った。一月ずれているが向こうで出会うかもしれない。タブチと米須按司は明国での再会を喜ぶだろうが、タブチと大グスク大親はまた喧嘩を始めるかもしれなかった。大きな騒ぎにならなければいいが、とサハチは願った。

 

 

 

 

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