長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部は山北王の攀安知を倒すまでの活躍です。お楽しみください。

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

2-97.大聖寺(改訂決定稿)

与那原(ゆなばる)グスクのお祭り(うまちー)が無事に終わった。 サハチ(中山王世子、島添大里按司)は忙しくて行けなかったが、慈恩禅師(じおんぜんじ)が越来(ぐいく)ヌルと一緒に来たらしい。佐敷ヌルの話だと、二人は夫婦のように仲がよかったという。意外…

2-96.奄美大島のクユー一族(改訂決定稿)

中山王(ちゅうさんおう)(思紹)と山北王(さんほくおう)(攀安知)の同盟を決めるために、今帰仁(なきじん)に来たンマムイ(兼グスク按司)を見送った本部(むとぅぶ)のテーラー(瀬底之子)は、その三日後、奄美大島(あまみうふしま)攻めの大将として二百人…

2-95.新宮の十郎(改訂決定稿)

熊野の本宮(ほんぐう)から新宮(しんぐう)までは船だった。淀川下りのようにお酒を飲みながら、のんびりできるとササたちは思っていたが、山の中の川はそんな甘くはなかった。 淀川のような大きな船ではなく、四、五人乗りの小さな舟で、曲がりくねった川を下…

2-94.熊野へ(改訂決定稿)

三姉妹の船が浮島(那覇)に着いた頃、ヤマトゥ(日本)に行ったササ(馬天若ヌル)たちは、京都から熊野に向かっていた。 五月十四日に与論島(ゆんぬじま)から交易船に乗り込んだササたちが、薩摩の坊津(ぼうのつ)に着いたのは五月三十日だった。坊津で交易…