長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部は山北王の攀安知を倒すまでの活躍です。お楽しみください。

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

2-06.宇座の古酒(改訂決定稿)

遊女屋(じゅりぬやー)の懇親(こんしん)の宴(うたげ)がうまく行って、重臣たちの心も一つにまとまった。 中山王(ちゅうさんおう)の思紹(ししょう)はサハチ(島添大里按司)、ソウゲン(宗玄)、ファイチ(懐機)、安謝大親(あじゃうふや)と相談して、新しい王…

2-05.ナーサの遊女屋(改訂決定稿)

首里(すい)の城下町造りを始めてから半年余りが経って、ようやく中山王(ちゅうさんおう)の都らしくなっていた。首里グスクへと続く大通りの両側に建つ屋敷はほとんどが完成して、城下に移って来た人々は新しい暮らしを始めていた。 大通りに面してグスクに近…

2-04.キラマの休日(改訂決定稿)

降るような星空の中、大きな満月が東の空に浮かんでいた。耳を澄ませば波の音が聞こえ、時々、そよ風が揺らす樹木の葉音が聞こえるだけの静かな夜だった。 広場を囲むように、クバの木で作った小屋がいくつも建ち並んでいる。その中でもひときわ大きな小屋の…

2-03.恋の季節(改訂決定稿)

頭がズキンズキンと鳴っていた。昨夜(ゆうべ)、慣れない酒を飲み過ぎたようだ。 ササに案内された屋敷は思っていたよりも、ずっと立派な屋敷だった。庭の片隅に厩(うまや)があって、マウシとマサルーが乗って来た馬が、荷物を積んだまま二人の帰りを待ってい…

2-02.胸のときめき(改訂決定稿)

島添大里(しましいうふざとぅ)グスクへと向かう山道の途中だった。「何者だ!」と誰かが言った。 前を見ても後ろを振り返っても人影はなかった。さては左右の森の中に隠れているのかとマウシ(真牛)とマサルー(真申)は馬を止めて、刀に手を掛けた。「若様…

2-01.山田のウニウシ(改訂決定稿)

日差しが強かった。暑い夏が始まろうとしていた。 海辺の道を二頭の馬がのんびりと歩いている。馬に乗っているのは真新しいクバ笠をかぶった若いサムレー(侍)と小柄だが貫禄のあるサムレーだった。若いサムレーは希望に目を輝かせ、時々、笑みを浮かべなが…