長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部は山北王の攀安知を倒すまでの活躍です。お楽しみください。

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

2-215.それぞれの新年(改訂決定稿)

ファイテ(懐徳)とジルーク(浦添按司の三男)は島添大里(しましいうふざとぅ)に帰って来た。年が明けたら旅に出て、旅から帰って来たら首里(すい)に移り、とりあえずは『報恩寺(ほうおんじ)』の師匠として修行者たちを指導するという事に決まった。 ジルー…

2-214.ファイテとジルーク(改訂決定稿)

十二月七日に奥間(うくま)のサタルーと一緒にヤンバル(琉球北部)に行ったハルたちは、十四日に無事に帰って来た。知らせを受けて、サハチ(中山王世子、島添大里按司)が安須森(あしむい)ヌルの屋敷に行くと、シジマを囲んで、みんなが騒いでいた。「按司…

2-213.湧川大主の憂鬱(改訂決定稿)

ハルたちが屋嘉比(やはび)のお婆と別れて、奥間(うくま)に着いた頃、運天泊(うんてぃんどぅまい)に鬼界島(ききゃじま)(喜界島)から帰って来た湧川大主(わくがーうふぬし)の武装船と三隻の船が着いた。 台風で座礁(ざしょう)した四隻の船のうち、一隻は修理…

2-212.志慶真のウトゥタル(改訂決定稿)

十二月になって、そろそろ湧川大主(わくがーうふぬし)が鬼界島(ききゃじま)(喜界島)から帰って来るだろうとウニタキ(三星大親)は今帰仁(なきじん)に向かった。 鬼界島に何人の兵がいるのか知らないが、四百の兵と鉄炮(てっぽう)(大砲)で攻めれば、今年…

2-211.ナコータルー(改訂決定稿)

十一月の初め、島尻大里(しまじりうふざとぅ)ヌル(前豊見グスクヌル)が無事に女の子を産んだ。跡継ぎができたと島尻大里ヌルは涙を流して喜んだ。三十歳を過ぎて、跡継ぎの事はもう諦めていた。それなのに突然マレビト神が現れて、娘を授かった。島尻大里…

2-210.大義名分(改訂決定稿)

シタルー(先代山南王)の命日に豊見(とぅゆみ)グスクのシタルーのお寺(うてぃら)で、護国寺(ぐくくじ)の僧たちと山南王(さんなんおう)(他魯毎)のヌルたちによって法要が行なわれた。トゥイ様(先代山南王妃)とマアサはいないが、子供たちや孫たちは皆集…

2-209.南蛮船の帰国(改訂決定稿)

十月二日、リーポー姫(永楽帝の娘)たちは『油屋』の船に乗って無事に浮島(那覇)に帰って来た。今帰仁(なきじん)に帰ったテーラー(瀬底大主)がリュウイン(劉瑛)の家族を連れて一緒に乗っていた。 テーラーは明国(みんこく)に連れて行った二十人の兵を…