2015-01-01から1年間の記事一覧
サハチたちが武当山(ウーダンシャン)で武術修行をしていた頃、琉球では馬天(ばてぃん)ヌルが久高島(くだかじま)のフボーヌムイ(フボー御嶽)に籠もっていた。 首里(すい)グスクのお祭り(うまちー)の時、ヌルのスズナリが中山王(ちゅうざんおう)を殺した事件…
サハチたちは武当山(ウーダンシャン)の山の中で、ヂャンサンフォン(張三豊)の指導のもとに武術修行に励んでいた。 数日前の朝早く、『朝天宮(チャオティェンゴン)』を出発して天界に入った。細い山道を登って、一天門、二天門、三天門と三つの門をくぐって…
果てしない大地が延々と続いていた。 軽い気持ちで武当山(ウーダンシャン)に行くと決めたが、武当山はあまりにも遠かった。辺り一面、広々とした平原が延々と続き、山はずっと遠くの方に見えた。人とまったく出会わない事もあり、人が大勢いた都が懐かしく思…
富楽院(フーレユェン)の『桃香楼(タオシャンロウ)』で、ヂュヤンジン(朱洋敬)とリィェンファ(蓮華)の婚約のお祝いだとサハチたちは一晩中騒いでいた。 前回に一緒だった可愛い三人の妓女(ジーニュ)、リーファ(梨華)、ランファ(蘭華)、ジュファ(菊華…
ファイチ(懐機)は再会した友、ヂュヤンジン(朱洋敬)と一晩中、話し込んでいた。お陰で、サハチとウニタキも妓楼『桃香楼(タオシャンロウ)』に泊まる事になった。 泊まったといっても、妓女(ジーニュ)と夜を共にしたわけではない。『富楽院(フーレユェン)…
サハチたちは杭州(ハンジョウ)に来ていた。 海賊船の鉄炮(てっぽう)を見て驚いた次の日から五日間、サハチとウニタキは三姉妹から明国(みんこく)の言葉の特訓を受けた。メイユー(美玉)とメイリン(美玲)はサハチとウニタキから琉球の言葉を教わり、必ず琉…
朝早くから首里(すい)グスクの太鼓が、ドンドコドドドンと鳴り響いていた。 今日は思紹(ししょう)王が首里グスクに入って一周年を祝うお祭り(うまちー)だ。サハチ(島添大里按司)たちが明国に旅立った日から十日余りが経った二月の九日、その日は朝からいい…
襲撃されたのは隠れ家だけではなかった。城内にある店も何者かに襲撃され、チェンイージュン(陳依俊)の家族たちも全員、殺された。高価な絹織物は勿論の事、隠してあったと思われる財産すべても奪われた。ソンウェイ(松尾)と名乗ったヤマトゥンチュ(日…
福州(ふくしゅう)の街も泉州(せんしゅう)と同じように高い城壁で囲まれていた。 サハチたちは三姉妹と一緒に福州の街に来ていた。三姉妹は勿論、海賊の格好ではなく、ごく普通の女たちの格好だった。敵を倒すにはまず敵を知らなければならない。三姉妹の敵(…
メイファン(美帆)の手下のスンリー(孫里)はグスク(城壁)の中にある宿屋にいた。それほど高級な宿屋ではなさそうだが、広い庭があって、二階建ての建物の中には大勢のお客がいるようで騒々しかった。 スンリーは頭に鉢巻きを付け、ちょっととぼけた顔を…
何とか無事に泉州(せんしゅう)に着いたものの、すぐに上陸はできなかった。 半島に囲まれた泉州湾に入ると、役人らしい男たちが小舟でやって来た。サングルミー(与座大親)は丁重に役人たちを迎えて必要書類を見せた。役人たちは尊大な態度で丹念に書類を調…
朝早くから浮島(那覇)はお祭り騒ぎになっていた。進貢船(しんくんしん)を見送るために集まった人出は、浮島が人々で埋まってしまったかと思えるほど凄いものだった。新しい中山王(ちゅうさんおう)、思紹(ししょう)が初めて明国(みんこく)に送る進貢船だっ…
年が明けて、永楽(えいらく)五年(一四〇七年)となった。 思紹(ししょう)が中山王(ちゅうさんおう)になって初めての正月は、慣れない事ばかりで慌ただしくて忙しかった。元旦は東曲輪(あがりくるわ)にある物見櫓(ものみやぐら)から初日の出を拝む事から始ま…
遊女屋(じゅりぬやー)の懇親(こんしん)の宴(うたげ)がうまく行って、重臣たちの心も一つにまとまった。 中山王(ちゅうさんおう)の思紹(ししょう)はサハチ(島添大里按司)、ソウゲン(宗玄)、ファイチ(懐機)、安謝大親(あじゃうふや)と相談して、新しい王…
首里(すい)の城下町造りを始めてから半年余りが経って、ようやく中山王(ちゅうさんおう)の都らしくなっていた。首里グスクへと続く大通りの両側に建つ屋敷はほとんどが完成して、城下に移って来た人々は新しい暮らしを始めていた。 大通りに面してグスクに近…
降るような星空の中、大きな満月が東の空に浮かんでいた。耳を澄ませば波の音が聞こえ、時々、そよ風が揺らす樹木の葉音が聞こえるだけの静かな夜だった。 広場を囲むように、クバの木で作った小屋がいくつも建ち並んでいる。その中でもひときわ大きな小屋の…
頭がズキンズキンと鳴っていた。昨夜(ゆうべ)、慣れない酒を飲み過ぎたようだ。 ササに案内された屋敷は思っていたよりも、ずっと立派な屋敷だった。庭の片隅に厩(うまや)があって、マウシとマサルーが乗って来た馬が、荷物を積んだまま二人の帰りを待ってい…
島添大里(しましいうふざとぅ)グスクへと向かう山道の途中だった。「何者だ!」と誰かが言った。 前を見ても後ろを振り返っても人影はなかった。さては左右の森の中に隠れているのかとマウシ(真牛)とマサルー(真申)は馬を止めて、刀に手を掛けた。「若様…
日差しが強かった。暑い夏が始まろうとしていた。 海辺の道を二頭の馬がのんびりと歩いている。馬に乗っているのは真新しいクバ笠をかぶった若いサムレー(侍)と小柄だが貫禄のあるサムレーだった。若いサムレーは希望に目を輝かせ、時々、笑みを浮かべなが…
奪い取った越来(ぐいく)グスクは叔父の美里之子(んざとぅぬしぃ)と百人の兵に守らせて、サハチ(島添大里按司)は六百の兵を率いて『勝連(かちりん)グスク』に向かった。美里之子にはそのまま、越来按司になってもらうつもりでいた。大(うふ)グスクの戦(いく…
中グスクの城下は朝早くから騒然としていた。信じられない噂が飛び交っていたのだった。 中山王(ちゅうざんおう)が戦死した‥‥‥ 中グスク按司も戦死した‥‥‥ できたばかりの首里(すい)グスクは奪われ、浦添(うらしい)グスクは焼け落ちた‥‥‥ 浦添グスクを攻め落…
中山王(ちゅうざんおう)の兵と中部の按司たちの兵が島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクの包囲陣から引き上げて行った事を知った、八重瀬按司(えーじあじ)のタブチは鬼のような顔をして八重瀬の奥間大親(うくまうふや)を怒鳴っていた。「どうして、こんな事…
夜明けと共に、豊見(とぅゆみ)グスクを包囲しているマサンルー(佐敷大親)のもとへ、サハチ(島添大里按司)からの使者が来ていた。首里(すい)グスクを奪い取って、浦添(うらしい)グスクは焼き討ちにしたと使者は伝えた。 マサンルーはうなづくと、撤収を開…
サハチ(島添大里按司)が首里(すい)グスクを奪い取った日の夕方、浦添(うらしい)の遊女屋(じゅりぬやー)『喜羅摩(きらま)』では、早々(はやばや)と戦勝祝いの宴(うたげ)が賑やかに開かれていた。招待したのは侍女の頭(かしら)を務めるナーサで、招待された…
二月九日、島添大里(しましいうふざとぅ)グスクで、馬天(ばてぃん)ヌルと佐敷ヌル、それに、久高島(くだかじま)のフカマヌル(外間ノロ)も加わって、武装した兵たちの見守る中、出陣の儀式が厳かに執り行なわれた。馬天ヌルの娘のササとサハチの長女のミチ…
正月二十五日、八重瀬按司(えーじあじ)のタブチから出陣要請が来た。二月十一日に山南王(さんなんおう)のシタルーを攻めるという。十一日といえば、首里(すい)グスクの完成の儀式の翌日だった。思っていたよりも早かった。一仕事を終えて、ホッと安心してい…
年末年始をヒューガ(三好日向)は、久し振りに馬天(ばてぃん)ヌルと娘のササと一緒に過ごしていた。前回、一緒に過ごしたのは四年前の正月だった。大(うふ)グスクを攻めていた時で、サハチ(当時は佐敷按司)に言われて、サハチの父(前佐敷按司)と一緒に…
ウニタキ(三星大親)が、浦添(うらしい)グスクにいる侍女の『ナーサ』を仲間に引き入れる事に成功した。 娘のウニョンの敵(かたき)だった『望月党(もちづきとう)』をウニタキが倒してから、ナーサはちょくちょく、『よろずや』に遊びに来るようになった。特…
北谷按司(ちゃたんあじ)の義父、江洲按司(いーしあじ)の敵(かたき)だった長男の勝連按司(かちりんあじ)と次男の江洲按司がいなくなって、北谷按司の妹婿である四男のシワカー(四若)が勝連按司に納まった。すべて、北谷按司の思惑通りになっていた。 江洲按…
年が明けて永楽(えいらく)三年(一四〇五年)の正月の末、シンゴ(早田新五郎)とクルシ(黒瀬)の船が馬天浜(ばてぃんはま)に来た。サム(マチルギの兄)とクルー(サハチの弟)が無事にヤマトゥ(日本)旅から帰って来た。 サムもクルーも目の色が違ってい…