長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部は山北王の攀安知を倒すまでの活躍です。お楽しみください。

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

2-115.マツとトラ(改訂決定稿)

サイムンタルー(早田左衛門太郎)は倭寇(わこう)働きをするために、去年の末、明国(みんこく)に行った。戦(いくさ)の経験のない跡継ぎの六郎次郎も連れて行き、浅海湾(あそうわん)内の浦々で暮らしている者たち一千人近くを率いて行ったという。「六郎次郎…

2-114.報恩寺(改訂決定稿)

島添大里(しましいうふざとぅ)グスクの刺客(しかく)襲撃事件から二十日が過ぎた。 女子(いなぐ)サムレーたちはユーナが山南王(さんなんおう)の間者(かんじゃ)だったと知って驚いたが、自分たちを裏切らなかったので、いつの日か、また会える事を願っていた。…

2-113.親父の悪夢(改訂決定稿)

山南王(さんなんおう)のシタルーは夢を見ていた。 子供の頃、八重瀬(えーじ)グスクの庭で、兄弟が揃って遊んでいる夢だった。その年、上の姉のウシが中山王(ちゅうさんおう)の若按司(武寧)に嫁いで行った。下の姉のマチはヌルになるための修行を始めた。あ…

2-112.十五夜(改訂決定稿)

与那原(ゆなばる)が台風にやられてから半月後、与那原グスクのお祭り(うまちー)が行なわれた。 家や舟を失った人たちも多いので、今年のお祭りは中止しようと与那原大親(ゆなばるうふや)(マタルー)の妻、マカミーは考えたが、グスクに避難している人たちは…