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長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-30.浜辺の酒盛り(第二稿)

尚巴志伝 第二部

 五月十日、マチルギ、馬天(ばてぃん)ヌル、ササ、佐敷ヌル、フカマヌル、ウニタキの妻のチルー、そして、ヒューガ、ジクー禅師、ヂャンサンフォンとシンシン三星党(みちぶしとー)のイーカチとシズ、十人の女子(いなぐ)サムレーを乗せたマグサの船は馬天浜を出帆した。それとは別に、サミガー大主(うふぬし)の次男のシタルーと宇座の御隠居(うーじゃぬぐいんちゅ)の息子のクグルーがシンゴの船に乗ってヤマトゥに向かった。
 宇座の牧場に行っていたシタルーは帰って来ると明国の使者になりたいと言い出した。宇座按司から色々な話を聞いて、自分がやるべき事を見つけたという。父親のサミガー大主は驚いたが、兄が中山王(ちゅうさんおう)なので、それも不可能ではないと思い、思紹(ししょう)に相談した。思紹は迷わず、明国に行って来いと言った。しかし、今年はすでに進貢船(しんくんしん)を出してしまった。明に行く前にヤマトゥに行って来いと送り出したのだった。一緒に行くのは苗代大親(なーしるうふや)の娘婿のクグルーだった。十三歳まで宇座の牧場で育ったクグルーは馬術の名手なので、馬好きのシタルーと気が合うだろう。
 風にも天気にも恵まれた最高の船出だった。
 マチルギたちのヤマトゥ旅は公表していなかったので、見送りの者も家族たちと佐敷の者たちに限られたが、それでも結構集まっていた。サハチは子供たちと一緒に、無事の帰国を祈りながらマチルギたちを見送った。
 サハチの子供たちは勿論の事、佐敷ヌルの娘とウニタキの四人の子供はサハチが預かる事になっていた。半年も留守にするので、ヌルの仕事も代わりの者がいなければならない。馬天ヌルの代わりは運玉森(うんたまむい)ヌル(先代のサスカサ)が務め、佐敷ヌルの代わりはサスカサ(ミチ)が務め、フカマヌルの代わりは平田城下に住んでいるフカマヌルの母親が久高島に帰って、孫娘の面倒とヌルの仕事を務める事になっている。
 運玉森ヌルは浦添按司(うらしいあじ)になった當山親方(とうやまうやかた)の娘、カナの指導も馬天ヌルから受け継いだ。按司になったからにはヌルが必要だった。カナは十八歳で、ヌルの修行を始めるには遅すぎるが、本人はどうしてもヌルになりたいと希望した。ササと同い年で、ササと一緒に剣術の修行に励み、剣術の師匠だった佐敷ヌルに憧れていた。運玉森ヌルはカナを指導するため、島添大里(しましいうふざとぅ)から首里(すい)へと移った。
 水軍大将のヒューガの代わりはクルシが引き受けてくれた。ヒューガが一緒なので、サハチは安心してマチルギたちを送り出せた。ヂャンサンフォンが一緒なのも頼もしかった。馬天ヌル、佐敷ヌル、フカマヌル、ササが危険を察知して、危険な場所には行かないだろう。無理をしないで、充分に旅を楽しんで来てほしいと思いながら、サハチは小さくなっていく二隻の船を見送った。
 船出の二日前の夕方、サハチは船頭(しんどぅー)(船長)のマグサ(孫三郎)と会っていた。正月の歓迎の宴で一緒に酒を飲んだが、あまり話はしていなかった。マグサはサンダーとクルーの旅の話を笑いながら聞いているだけだった。サハチやシンゴと同い年だが、何となく遠慮しているような様子だった。
 サハチが島添大里按司になったあと、空き家となった新里(しんざとぅ)のファイチの屋敷を船頭屋敷にして、シンゴとクルシに提供した。シンゴは佐敷ヌルの屋敷にいる事が多いので、マグサが一人でいるだろうと行ってみたが、屋敷には誰もいなかった。新里にはもう一軒、サハチの義弟とも言えるイトの弟のカンスケの屋敷もあった。カンスケは仲のいい仲間と一緒に暮らしていた。そこにも行ってみたが、やはり誰もいなかった。天気がいいので、海に出ているのかと馬天浜に行ってみた。
 馬天浜のサミガー大主の離れで、数人の者たちが酒盛りを始めていたが、マグサの姿もカンスケの姿もない。水夫(かこ)たちに聞いてみると、カンスケはカマンタ(エイ)捕りに行き、マグサは女の家だろうという。
 場所を聞いて行ってみると、海辺の近くの粗末な家の前で、マグサは魚をさばいていた。日に焼けて真っ黒で、島人(しまんちゅ)と見間違うほど、その場に馴染んでいた。
 マグサはサハチに気づくと、白い歯を見せて笑い、「オヤカタ様」と言った。ヤマトゥでは領主の事を『オヤカタ様』と呼ぶとは聞いていたが、そう呼ばれるのは初めてだったので、サハチは少し戸惑った。
「こんな所で何をなさっているんですか」とマグサは聞いた。
「お前に会いに来たんだ」とサハチは笑った。
「わしに何か御用で?」
「ちょっと話がしたくてな」
 小屋の中から女が顔を出し、サハチがいるのを見て驚いた。
「まあ、按司様(あじぬめー)ではございませんか」と言って女は恐縮した。
「わしのかみさんのイチでさあ」とマグサは言った。
 海辺で遊んでいた女の子が近寄ってきて、不思議そうな顔でサハチを見て、「お父さん、誰?」とマグサに聞いた。
 サハチは女の子とマグサを見比べて驚いていた。
 マグサは山の上にある島添大里グスクを指さして、「あそこのオヤカタ様じゃ」と娘に言った。
 娘は目を丸くしてサハチを見つめ、急に恥ずかしそうな顔をして母親の後ろに隠れた。
「お前にかみさんと子供がいたとは驚いた」とサハチは言った。
「わしが初めて琉球に来たのは十五の時でした。下っ端だったので雑用をやらされて、くたくたでしたが、この美しい琉球を見たら疲れなんか一遍に吹っ飛んでしまいました。こんな綺麗な所があったなんて、夢でも見ているような心地でした。それからわしは琉球に行く船には必ず乗って来たのです。初めて琉球に来て、ヤマトゥに帰る時、オヤカタ様はサンルーザ殿の船に乗ってヤマトゥに行かれました」
「なに、あの船に乗っていたのか」
「へい、あの船はいい船でした。今は対馬のオヤカタ様(サイムンタルー)と一緒に朝鮮(チョソン)に行っています。わしはウミンチュの倅で、イトとも幼なじみなんです。イトはわしらの憧れでした。みんな、イトが好きでしたよ。誰が口説いても見向きもしなかったイトが、オヤカタ様に惚れちまった。わしらはオヤカタ様を恨みましたよ」
 そう言ってマグサは笑った。
「もう二十年前の事ですが、いつか、オヤカタ様に恨み言を言ってやろうと思っていたんです。これで、ようやく気が晴れました」
 サハチはマグサに誘われ、採れたての魚をつまみながら浜辺に座り込んで酒の御馳走になった。
 ハマという娘はイチの連れ子らしい。イチの夫は十年前に海で遭難して帰って来なかった。それから二年後、マグサとイチは出会い、共に惹かれて一緒に暮らし始めたのだという。クルシのお陰で船頭になったが、船頭でいるのは船に乗っている時だけで、琉球に滞在中は、イチのために漁に出て働き、対馬に帰ってからは、対馬にいる家族のために漁に出ているという。
 五年前、クルシが一文字屋の船を借りて琉球に来た時、連れて来た五十人はクルシと共にサハチの家臣となった。船方(ふなかた)と呼ばれる船乗りたちが二十八人、護衛の兵が二十二人だった。
 船方たちは、船頭(船長)一人、舵取(かじとり)二人、帆役(ほやく)二人、竈役(かまどやく)二人、船大工一人と水夫二十人がいる。琉球に滞在中、船頭と舵取と帆役の五人は商品の取り引きを担当し、竈役は水夫たちの食事を担当し、船大工は船の修理を担当する。水夫たちはサミガー大主の仕事を手伝う事になっていた。護衛の兵は補充要員として佐敷、平田、島添大里のグスクの警固に当たった。
 シンゴの船の乗組員は早田(そうだ)家の家臣なので、シンゴの命令で動いていた。護衛の兵も含めて、サミガー大主のもとで働いている者が多かった。
 船頭のマグサは取り引きの仕事を終えてしまえば、あとは自由で、漁師をやる事もできたのだった。
「何度、琉球対馬を往復したのか数えきれません。半年は対馬、半年は琉球の生活をずっと続けています。わしには対馬琉球、両方にかみさんと子供がいるんでさあ」
 マグサは楽しそうに笑った。
 飾り気のない面白い男だとサハチは感じていた。シンゴやクルシと違ってサムレーではなく、生粋のウミンチュだった。グスクの中で行なわれた歓迎の宴は場違いな気がして、居心地が悪かったに違いない。波の音を聞きながら夕日に染まる海を見て、新鮮な魚をつまんで酒を飲むのが好きなのだろう。
 歓迎の宴は父が佐敷按司になったあと、グスクにサンルーザやクルシたちを招待して始まった。それ以前は祖父のサミガー大主が主催して、離れでみんなと一緒に騒いでいたらしい。サハチも父の真似をして、グスクにサイムンタルーやシンゴを呼んでいたが、そんな格式張った事はやめて、離れでみんなと一緒に騒いだ方がいいのではないかと思っていた。
「女たちを船に乗せても大丈夫か」とサハチはマグサに聞いた。それが一番気になっていた事だった。海が大荒れして、女が乗っていたからだと騒ぎになってはまずかった。
「大丈夫です」とマグサは何でもない事のように言った。
「女を乗せたら海が荒れると言い出したのはサムレーたちなんですよ。わしらウミンチュはそんな事は考えません。対馬ではみんな、かみさんと一緒に漁に出ています。女を乗せるな、なんて言ったら食ってはいけませんよ」
 確かにマグサの言う通りだった。後家のサワもイトも船を乗り回していた。
「サムレーたちは軍船(いくさぶに)に女を乗せたら気が散るんで、海の神様が怒るとか言い出したんです。海の神様はそんな小さな事で怒ったりはしませんよ。大きな心を持った神様です。たとえ、海が荒れたとしても、それは女が乗っていたからではありません。乗っていなくても荒れる時は荒れるのです」
「そうか」と言いながら、サハチは海を眺めた。
 目の前の海は遙か遠くのヤマトゥや明国、まだ知らぬ遠い国々までもずっと続いている。果てしなく大きな海、そこにいる神様も大きな心を持っているに違いなかった。
 サハチは改めて、マチルギたちの事を頼んで、マグサと乾杯した。
 イチが鍋を持って来た。おいしそうな煮物が入っていた。
 二人が昔の事を懐かしそうに話していると、「あら、サハチ、珍しいわね」と誰かが言った。
 振り返ると叔母のマチルーだった。馬天ヌルの妹のマチルーはウミンチュと一緒になって馬天浜で暮らしていた。
「偉くなったあんたがこんな所でお酒を飲んでいるなんて驚いたわ。やっぱり、お兄さんと似てるのね」
「お兄さんて親父の事ですか」
「そうよ。王様(うしゅがなしめー)になってからは来なくなったけど、毎年、正月にふらっとやって来て、こうして海辺で騒いでいたのよ」
 中山王になる前の父はキラマの島にいて、年末年始だけ帰って来た。その時、ここに来ていたのだろう。叔父のサミガー大主に会いに来ていたのは知っていたが、海辺でみんなと騒いでいたとは知らなかった。
「みんなも呼んでもいいかしら」と叔母は言った。
「みんな、一緒に飲みたいんだけど遠慮しているのよ」
 サハチが叔母の後ろを見ると大勢のウミンチュたちが酒や御馳走を持って待っていた。
 サハチは手招きしてみんなを呼んだ。ウミンチュたちはサハチたちを囲むようにして座り込んで酒盛りを始めた。
「サハチ兄さんどうぞ」と言って酒を注いでくれたのは従妹(いとこ)のミフーだった。サミガー大主の長女のミフーはカマンタ捕りのウミンチュに嫁いでいた。
「ナツの事、よろしくお願いします」と言ったのはナツの伯父のチキンジラーだった。久し振りに見るチキンジラーは随分と齢(とし)を取ったが、相変わらず元気そうだった。
 サミガー大主と離れにいる水夫たちも呼んで、送別の宴も一緒にした。
 その夜の星空の下での酒盛りは楽しい一時となった。そして、昨日の夜は島添大里グスクで、ヤマトゥに行く女たちとシタルーとクグルーの送別の宴を開いた。
 マチルギも佐敷ヌルもフカマヌルも浮き浮きしていた。馬天ヌルはこの年齢(とし)になってヤマトゥに行けるなんて思ってもいなかったと嬉しそうに言った。いつまでも若いと思っていた馬天ヌルもすでに五十歳を過ぎていた。冥土(めいど)のお土産になるわねと冗談を言った。チルーもみんなと一緒に旅ができるなんて楽しみだわと嬉しそうだった。ササはきっと素敵なマレビト神に出会えるわと張り切っていた。女たちはヤマトゥに行って来たサハチの弟たちから話を聞いて、期待に胸を膨らませた。
 二隻の船が見えなくなるとサハチは子供たちを連れて島添大里に帰った。
 島添大里グスクの大御門(うふうじょー)の前で、兼(かに)グスク按司が一人、乗って来た馬の横で、ぼうっとした顔で立っていた。
「師匠(ヂャンサンフォン)はヤマトゥに行ったのか」と兼グスク按司はサハチに聞いた。
 サハチはうなづいた。
「そうか」と言うと、兼グスク按司は馬にまたがり帰って行った。
「誰?」とサスカサが聞いた。
「兼グスク按司。先代の中山王の次男だ」
「敵なのに、たった一人でやって来るなんて、お父さんを馬鹿にしているの?」
 サハチはサスカサを見た。そう言われれば、そうかもしれないが、そんな事は考えてもみなかった。
「敵意はないようだけど、殺気はあるわね」とサスカサは言った。
 サハチはサスカサにうなづき、グスクの中に入った。
 ウニタキが調べた所によると、兼グスク按司はグスク内の屋敷に武芸者たちを集めているという。その中にはヤマトゥンチュや明人(とーんちゅ)、朝鮮人(こーれーんちゅ)もいる。総勢五十人はいるらしい。そいつらがハーリーの行なわれた日、饒波(ぬふぁ)川の東にある森の中に隠れていた。ウニタキはその事を苗代大親に知らせ、苗代大親は百人の兵を率いて、その森を襲撃するための準備を進めた。ハーリーからの帰りを襲うと思われたが、なぜか中止となって、武芸者たちは兼グスク按司の阿波根(あーぐん)グスクに引き上げて行った。そして、サハチたちの一行の中に兼グスク按司がいるのを見て、何が何だかわからなくなったという。
 サハチはヂャンサンフォンのお陰で助かったようだとウニタキに説明した。
「奴の武芸好きは親父の敵討ちより勝(まさ)ったというわけか」
「変わった奴だよ。好きな物には徹底してこだわり、何よりもそれを優先してしまう。たった一人で島添大里まで付いて来るなんて、ここが敵地だとは思っていないようだ。その夜は俺も付き合わされて、ヂャンサンフォン殿の屋敷で飲んだんだ。奴も泊まったんだが、まったく警戒はしていなかった。そして、次の日は首里の武術道場に行って、奴も一緒に稽古に参加した。勿論、兼グスク按司とは名乗らず、アスヌシィと名乗っていた」
「アスヌシィか‥‥‥奴の武芸の師匠がヤマトゥの武芸者、アスヤタルー(阿蘇弥太郎)という奴だ。十五年近く前に琉球に来て、ずっと奴の側にいる。奴が明や朝鮮に行った時も一緒に行ったはずだ。その師匠の影響で武芸好きになったのだろう。ところで奴の腕はどんなもんだ」
「かなりのものだろう。俺たちも負ける事はないが、勝てないかもしれない」
「成程、手ごわい奴だな」
「手ごわい奴だが、娘たちの剣術の稽古を見て驚いていたよ。ハーリーから帰って来た時、丁度、娘たちの稽古が始まる時だったんだ。奴に見せてやったら、目を点にして驚いていた。首里に女子サムレーがいるというのは噂で知っていたらしいが、城下の娘たちまで剣術をやっているのは知らなかったらしい。真剣な顔をして見ていた」
「今度は女の武芸者も集めるかもしれんぞ」とウニタキは笑った。
「ところで、奴の奥さんだが、えらい美人だったぞ」とサハチは言った。
「おう、俺も見た。山北王(さんほくおう)の妹があんな美人だったとは驚いたよ。噂では明国の血が入っているらしい。お祖母(ばあ)さんが明の女だそうだ。兼グスク按司のお祖母さんは高麗人(こーれーんちゅ)だ。二人の娘は明と高麗の血が入って、さらに美しくなるに違いないと言っている。まだ、十歳だが、確かに可愛い顔をしている」
 サハチはウニタキがいう娘の顔はよく見なかった。母親の美しさに目を奪われていたのかもしれない。十歳と言えば、サハチの娘のマチルーと同い年だった。
「嫁に迎えようと狙っている者がいそうだな」
「山北王とのつながりができるからな、狙っている者は多いだろう」
 サハチは笑って、「今回、奴は襲撃を中止したが、先の事はわからない。これからもよく見張っていてくれ」とウニタキに頼んだ。
 ウニタキはうなづくと消えて行った。
 島添大里グスクは子供たちで賑やかだった。ナツもマカトゥダルも、侍女も女子サムレーも子供たちに振り回されていた。
 首里グスクの西曲輪(いりくるわ)の楼閣造りは梅雨が上がったのと同時に始まっていた。西曲輪は資材置き場となって使えなくなり、娘たちの剣術の稽古は北曲輪(にしくるわ)に移っていた。
 思紹王は楼閣を飾る彫刻に熱中していた。いい話し相手だったジクー禅師はヤマトゥに行ってしまったが、首里に楼閣を建てる事を知ったファイチが、参考になりそうな明国の書物を持って来てくれた。アランポーの書物を整理していたら出て来たという。漢字ばかりで読めないが、絵も載っていて、楼閣の図や龍や麒麟(きりん)の図もあった。それを見た思紹は龍の彫刻を楼閣に飾ろうと張り切って彫り始めたのだった。百浦添御殿(むむうらしいうどぅん)の二階は工作場となって、木屑だらけとなり、それを片付ける城女(ぐすくんちゅ)たちは陰でブツブツ文句を言っていた。
 マチルギと馬天ヌルがいなくなった首里グスクは、まるで、主人がいなくなったかのように静かだった。今まで、いるのが当たり前だった二人がいない。グスクにいる者たちは顔を合わせれば、奥方様(うなじゃら)と馬天ヌル様(くみー)は今頃、どこかしら、無事にヤマトゥに着いたかしらと言い合っていた。
 サハチにはマチルギの代わりは務まらないが、なるべく首里グスクにいて、時々、子供たちの様子を見に島添大里グスクに通っていた。ウニタキも妻のチルーに言われたのか、一日おきくらいに島添大里グスクに顔を出して子供たちと会っていた。

 

 

 

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