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長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-74.刺客の襲撃(第二稿)

尚巴志伝 第二部

 奥間(うくま)から今帰仁(なきじん)に帰って来たンマムイは、山北王(さんほくおう)に付き合って早朝の弓矢の稽古をしたり、湧川大主(わくがーうふぬし)と少林拳(シャオリンけん)の稽古をしたり、遊女屋(じゅりぬやー)に繰り出して騒いだり、『天使館』に行って海賊たちと酒を飲んだりと相変わらずフラフラしていた。
 妻のマハニは仲良しだったマカーミと一緒に過ごす事が多かった。お互いに四人の子供がいて、子供たちも仲よく遊んでいた。驚いた事に、マカーミの夫は、山北王の前でンマムイが剣術の試合をしたジルーと呼ばれていた諸喜田大主(しくーじゃうふぬし)だった。本部(むとぅぶ)のテーラーがいない今、山北王にもっとも信頼されているのが諸喜田大主だった。
 帰る前夜、今帰仁グスクの二の曲輪(くるわ)の屋敷で送別の宴が開かれ、マハニは母や叔母、兄弟姉妹との別れを惜しんだ。ンマムイも妹たちとの別れを惜しみ、山北王からは、山南王(さんなんおう)と同盟するに当たっての条件を書いた書状をもらっていた。
 七月十日、二十日余り滞在した今帰仁をあとにして、ンマムイたちは帰路についた。マミンはアタグが背負っていた籠(かご)が気に入って、サムレーたちが代わる代わるマミンを乗せた籠を背負っていた。
 その日は本部までの、のんびりした旅だった。正午(ひる)前に着いたので海に入って遊んだ。
「ウクに会ったわ」と遊んでいる子供たちを眺めながらマハニはテーラーに言った。
「なに、会ったのか」
「テーラーの事を心配していたわよ。迷惑を掛けてしまって申し訳ないって謝っていたわ。あたしと同い年で、可愛い女の子が一人いたわ。本当の名前はマーイだって言っていた。奥間から来たからウクってお兄さんが名付けたらしいわ」
「マーイか。可愛い名前だな」
「話をしたのはほんの少しだったけど、あなたが惚れたのもわかるような気がしたわ。こそこそ会っていないで、お兄さんにウクを下さいって言ったら」
「そんな事を言ったら、謹慎だけでは済まなくなる」
 テーラーは情けない顔をして笑った。
「テーラーの夢は何なの?」とマハニは聞いた。
「俺の夢か‥‥‥」とテーラーは目を細めて海の遠くの方を見つめた。
「お兄さんの夢は琉球を統一する事だって言っていたわ。山北王じゃなくって、琉球王になるんですって。でも、今すぐじゃないらしいの。中山王の都、首里(すい)はまだできたばかりで完成していないわ。首里今帰仁よりも立派な都になったら、奪い取って首里に移るって言ったわ。十年近く先になるかもしれないけど、今は中山王の都造りを見ている。そして、奄美の島々をすべて支配下に置くって言っていたわ」
琉球の統一か。ハーンが琉球の王様(うしゅがなしめー)になるんだな。俺の夢はそんな琉球を見る事かもしれない」
「お兄さんにはテーラーが必要だわ。お兄さんを助けてね」
 テーラーはマハニを見つめて、うなづいた。
「今度はいつ会えるかな」とテーラーは聞いた。
「十年先に、お兄さんが首里を攻めた時かしら」
「十年後か‥‥‥そんな事を言わずに、また来てくれよ」
「そうね。来られたら来るわ。お船に乗ったらすぐですものね」
 その夜はテーラーの屋敷に泊めてもらい、次の日、名護(なぐ)に向かった。
 綺麗な砂浜で遊びながらの、のんびりした旅だった。名護では湧川大主の側室、マチのお世話になった。前回、来た時も泊めてもらい、帰る時にも必ず寄ってねと言われていた。マチは気さくな女で、近所の者たちが気軽に出入りしていた。ンマムイたちも気兼ねなく、ゆっくりする事ができた。
 名護から先は山の中に入ったり海岸沿いを歩いたりと険しい道が続いた。今帰仁合戦の時、大勢の兵が往復したため、自然と広い道ができたが、あれから二十年近くが経ち、歩く者がいないので、道は草で覆われてしまって、まったくわからない所もあった。
「道に迷ったようじゃのう」とヤタルー師匠が辺りを見回しながら言った。
「高い所に登って海が見えれば、海を右手に見ながら進めばいい」とンマムイは言った。
 ンマムイが周りを見回し、左前方に見える山を指さして、「あそこに登ろう」と言った時、弓矢が飛んでくる鋭い音がした。
「危ない!」と言ってヤタルー師匠が刀を抜いて矢をはじき飛ばした。
 ンマムイは刀の柄(つか)をつかんで、矢が飛んできた方を見つめて耳を澄ました。
「子供たちを守れ!」とンマムイがサムレーたちに叫んだ。
 サムレーたちはマハニと子供たちを囲んで、敵の動きを探っていた。
 第二矢が飛んできた。ンマムイが刀ではじき飛ばした。
 あちこちから悲鳴やうめき声が聞こえて来た。草の茂みの中から敵が現れた。ンマムイを目掛けて斬り付けて来た。見た事もない男だった。
 ンマムイは敵の刀をかわして、一刀のもとに敵を倒した。ヤタルー師匠が敵のとどめを刺した。
 子供たちの方に敵が現れたが、すでに血だらけになって倒れ、そのまま動かなくなった。
 侍女が悲鳴を上げた。サムレーが血だらけの敵のとどめを刺した。
「わしらの味方がいるようじゃ」とヤタルー師匠が言った。
 山北王が妹を守るために護衛の兵を付けてくれたのかとンマムイは思った。それとも、マチが曲者(くせもの)に気づいて湧川大主に知らせたのか。しかし、誰が襲って来たのか見当もつかなかった。
 辺りが急に静かになった。
「おい、みんな、無事か」と言って、草の中から出て来たのはウニタキだった。
「ウニタキ師兄(シージォン)、どうしてこんな所に?」とンマムイは驚いた顔でウニタキを見た。
「師兄が師弟(シーディ)を守るのは当然だろう」とウニタキは笑った。
「すると、師兄は俺たちをずっと守っていたのですか」
今帰仁で、お前たちがのんびりしているので待ちくたびれたぞ」
「俺にはわけがわかりません。どうして、師兄が俺たちを守るのか。そして、俺たちを襲ったのは一体、誰なんです」
「お前を助けたのは、お前が師弟だからと言っただろう。そして、お前を襲ったのは山南王の刺客(しかく)だ」
「山南王? どうして、山南王が俺の返事も待たずに俺を殺そうとするのです。同盟が決まったら、あとは用無しだと殺されるかもしれないとは思っていましたが、まだ同盟も決まっていないのに、俺を殺したら同盟できなくなってしまいます」
「それはどうかな」とウニタキはニヤッと笑った。
「山北王は山南王との同盟にあまり乗り気じゃなかっただろう」
「どうして、そんな事まで知っているのですか」
「山北王は今、奄美を攻めている。奄美が片付くまでは南を攻める事はあるまい。それに、中山王はこれからお寺(うてぃら)をいくつも建てる。お寺を建てるにはヤンバルの材木が必要だ。山北王は首里の城下造りの時、大量の材木を浮島に送ってかなり稼いでいる。今回も稼がせてもらおうと思っているに違いない。お寺が完成するまでは首里を攻める事はあるまい」
「山北王は山南王に、首里を挟み撃ちにするのは山南王が南部を平定してからだと条件を付けました」
「そうか。山南王が南部を平定するのは難しい。時間稼ぎに、その条件を付けたのだろう」
「しかし、同盟はすると言っていました。なのに、どうして使者となった俺を殺すのです」
「山南王が殺すのはお前だけではないんだよ」とウニタキは言って、マハニを見た。
 マハニもそばに来てウニタキの話を聞いていた。どうして、この人は兄の考えを知っているのだろうとマハニは不思議に思っていた。首里に『油屋』がいるように、今帰仁にもこの人の配下の者たちがいるのかしら。
「まさか。マハニまで殺そうとしたのか」とンマムイはウニタキに聞いた。
「子供たちもだ」とウニタキは答えた。
「何という事を‥‥‥」
 マハニは真っ青な顔をして、子供たちの方を見た。何も知らない子供たちは侍女と花を摘んで遊んでいた。
「お前たちを始末したあと、お前たちがいつまで経っても帰って来ないので、山南王は山北王に連絡を取る。山北王はもうかなり前に帰ったという。山南王はお前たちの足取りを追って、ここまで来てお前たちの死体を見つけ、中山王に殺されたと山北王に知らせる。山北王は妹を殺された事で頭にきて、山南王と同盟して戦の準備を始め、中山王を挟み撃ちにするという筋書きだ」
「何という事を‥‥‥」とンマムイはまた同じ事を言って、マハニと顔を見合わせた。
「しかし、中山王の仕業だとはわからないでしょう」
「山南王の事だ。何か証拠になる物を残すつもりだったのかもしれん。しかし、そんな物は必要ないだろう。山北王はお前が今帰仁に行く前、島添大里按司(しましいうふざとぅあじ)を訪ねている事は知っているはずだ。お前が同盟の使者になった事を知って、中山王は同盟を阻止するためにお前たちを殺したと考えるに違いない」
「何という奴だ。でも、俺たちを襲ったのが山南王の仕業だという証拠はあったのですか」
「残念ながら、身元がわかる物は何も持っていなかった」と言って、ウニタキは小さな紙切れを見せた。
「そいつが何だかわかるか」
 ンマムイは記号のような物が並んで書いてある紙切れを見て、「何かの暗号ですか」と聞いた。
「わからん。刺客の首領らしき男が持っていた。山南王の所で、こんな記号を見た事はないか」
 ンマムイは首を傾げたが、急に何かを思い出したような顔をした。
「山南王の所ではなく、浦添(うらしい)グスクで見ました」
「何だって?」
「親父の側室だったアミーです。アミーがそんな紙切れを持っていて、俺が何だと聞いたら、ただのいたずら書きよと言いました」
「アミーがこれを持っていたのか」
「書いてある記号は違いますが、似たような記号が並んでいました」
「そうか。アミーは刺客だった。刺客同士の連絡に、この記号が使われているのかもしれんな」
 ウニタキはンマムイを見て笑うと、「お前は兼(かに)グスク按司になったあとも、浦添の御内原(うーちばる)に出入りしていたのか」と聞いた。
「ナーサも怒るのを諦めたようです。それに、御内原の女たちは外に出られませんからね、俺が持って行ったお土産や、俺が話す外の出来事の事を楽しそうに聞いていました。俺がアミーと会ったのは、親父が亡くなった前の年のハーリーでした。また、新しい側室を迎えたなと思って、そのあと、アミーに会いに行ったのです。その時、アミーがそんな紙切れを見ていたのです。俺はアミーの言葉を信じて、別に気にも止めませんでした」
「お前が物覚えがいいというのは前から思っていたが、そんな些細な事をよく覚えていたな。お礼を言うよ」
「俺を殺そうとしたのは、親父を殺したアミーの仲間だったのですね。アミーが親父を殺したと聞いた時、とても信じられなかった。あのアミーが刺客で、山南王がそれを命じたなんて‥‥‥」
「山南王の親父は目的のためには手段を選ばない男だった。恐ろしい男だったよ」
「俺のお袋の父親ですね。親父も恐れていたようです」
「山南王にもその父親の血が流れているんだよ」
 山の中から男たちがぞろぞろと現れた。
「始末したか」とウニタキが男たちに聞くと、一人の男が、「すべて、谷底に落としました」と言った。
 ンマムイに斬り付けた敵も子供たちの前で倒れた敵もいつの間にか消えていた。
「二度目の襲撃があるかもしれん。油断はするな」とウニタキが言うと、男たちは返事をして消えていった。
 さっきの男たちとは違う猟師の格好をした男が現れた。
「奥間の者で、キンタという。山道に詳しいから一緒に連れて行け」とウニタキはンマムイに言った。
「奥間の者?」とンマムイはキンタを見た。
 ンマムイと同年配のがっしりした体格の男だった。
 キンタは奥間大親(ヤキチ)の息子で、奥間之子(うくまぬしぃ)を名乗って、ヤキチの跡継ぎになっていた。今回、ンマムイを守るために、ウニタキと一緒に配下の者たちを率いてやって来ていた。
「奥間でナーサと会いました」とンマムイはウニタキに言った。
「なに、ナーサは里帰りしていたのか」
「何もかもナーサから聞きました」
「そうか‥‥‥こんな所で立ち話もなんだ。どこか、景色のいい所で休もう」
 キンタの案内で道なき道を進み、しばらく行くと青い海が見える高台に出た。一行は一休みした。
「師兄がウニョン姉さんの夫だったのですね」とンマムイは海を眺めながら言った。
 ウニタキはうなづいた。
「師兄は俺の義兄だったのですね。どうして黙っていたのです?」
「お前が敵だか味方だかわからないからだよ。ウニョンからお前の事は何度か聞いていた。子供の頃から変わっていたようだな。浜川大親(はまかーうふや)だった頃、俺は何度も浦添グスクに行ったが、お前に会ったという記憶がないんだ。どうしてだろう」
今帰仁合戦の前は宇座(うーじゃ)の牧場にいましたし、今帰仁合戦のあとは祖父が首里天閣(すいてぃんかく)を造っていたので、首里にいる事が多かったのです。浦添グスクにいたとしても御内原の女たちの所で遊んでいました」
浦添グスクの御内原には美女がいっぱいいたらしいな」
「祖父の側室、親父の側室、それに侍女たちも皆、美人揃いでした。その中でもナーサは特別でしたよ」
「お前もナーサを抱いたのか」とウニタキが聞くと、ンマムイはポカンとした顔になった。
 子供たちと一緒におにぎりを食べているマハニを見てから、「妻には絶対に内緒です」と言った。
 ウニタキは笑った。
「しかし、姉がナーサの娘だったなんて驚きましたよ」
「お前の親父もナーサの魅力には勝てなかったんだよ」
 ンマムイは苦笑してから、「『望月党』の事も聞きました」と言った。
「ナーサのお陰で、妻と娘の敵討ちができたんだ」
「『望月党』を倒すには、『望月党』と同じような裏の組織を作らなければなりません。師兄は島添大里按司のために裏の組織を作ったのですね」
「とうとう俺の正体を知ってしまったようだな。その事もナーサから聞いたのか」
「いえ、ナーサから聞いたのは、姉の夫が生きていて、それが師兄だという事と、師兄が見事に敵を討ったという事だけです。裏の組織の事は教えてくれませんでした。でも、俺を守るために師兄が現れたのを見て、何もかもわかったのです」
「妻と娘を殺されて、俺はサハチを頼って佐敷に逃げた。敵を討たなければならないと思いながらも、たった一人で『望月党』を相手に戦うのは無理だった。俺は毎日ずっと妻と娘の事を思いながら、海を眺めていたんだ。敵討ちを諦めて、俺も死のうと決心した時、馬天ヌルが現れて、『やるべき事をしなさい』と言ったんだ。俺は毎日考えた。俺がやるべき事は何だってな。ある日、星を見上げていて、ようやくわかったんだ。サハチのために裏の組織を作って、サハチを助けようってな‥‥‥『望月党』に負けない組織ができれば、いつか必ず、敵を討つ時がやってくるに違いないって思ったんだ。それから十三年後、その時はやって来た。俺は見事に敵を討ったのさ」
「佐敷の小さな按司だった島添大里按司が、今のようになったのは、師兄の裏での活躍があったからなんですね」
「俺の力だけじゃない。王様は密かに兵を育てていたし、ヒューガ殿は海賊になって敵地を荒らし回っていた。みんながサハチのためにやるべき事をやっていたんだよ」
「サハチ師兄のためにですか‥‥‥」
「俺はここで消える。お前が無事に帰るまでは見守っている。お前も油断をするなよ」
「ちょっと待って下さい。無事に帰ったとして、俺はこれからどうすればいいのです?」
「山の中で何者かの襲撃に遭ったが、無事に乗り越えたと言って、山南王と会って同盟の話を進めればいい」
「俺たちを殺そうとした山南王に会うのですか」
「奴の驚く顔でも見て、今後の事を考えるんだな。ただ、お前の奥さんの命は危険なままだぞ。阿波根(あーぐん)グスクに刺客を入れてお前たちを殺し、中山王の仕業にするかもしれんからな」
 そう言うとウニタキは山の中に消えていった。
 マハニが来て、「あの人がウニョン姉さんの夫だった人なのね」と聞いた。
 ンマムイはウニタキが消えた山の中を見つめながらうなづいた。
「これからあたしたちどうなるの。南部に帰ったら危険だわ。今帰仁に戻った方がいいんじゃないの」
「なに、今帰仁に戻るのか」
「島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクと阿波根グスクは近すぎるわ。不安で眠る事もできないわよ」
「ウニタキ師兄は、お前の命は阿波根グスクに帰ってからも狙われるだろうと言っていた。お前たちはしばらく今帰仁にいた方がいいかもしれんな。どうせ、俺は山南王の返事を持って、もう一度、今帰仁に行く事になるだろう。その時、今後の事を考えよう」
 マハニはうなづいたが、「山南王に襲撃された事は兄に話した方がいいの?」と聞いた。
「話せば、山北王は同盟を中止にするだろう。そうなると山南王は窮地に陥る事になる。何をするかわからん。俺が戻って来るまでは、襲撃の事は伏せておいてくれ」
「あたしが伏せても子供たちがしゃべるわ」
「子供たちには猟師たちが山で喧嘩をしていた事にしておけ」
 マハニはうなづいた。
 ンマムイはキンタにわけを話して、名護に引き返した。キンタの案内で、近道を通って、日暮れ前には今帰仁に着いた。近いうちにまた来るので、それまで妻と子を預かってくれと山北王に頼み、次の日、ンマムイはヤタルー師匠とキンタだけを連れて南部へと向かった。
 その夜は恩納岳(うんなだき)の木地屋(きじや)の親方、タキチの屋敷に泊まった。タキチの話だと、今年の正月にはササたちが来て、その前には馬天ヌルも来たという。ナーサが島添大里按司を助けているように、奥間の者たちは皆、島添大里按司を助けているような気がした。
 次の日には首里の城下に着いた。グスクに行く事はなく、一徹平郎(いってつへいろう)の屋敷に泊めてもらい、翌日には阿波根グスクに帰り、山北王の書状を持って島尻大里グスクに山南王を訪ねた。
 山南王は平静を装っていたが、心の動揺は隠せなかった。目の前にいるンマムイを見ながらも、どうして生きているのか理解ができなかった。
 ンマムイは山北王の書状を見せた。
 山南王は書状を読むと、「思っていた通りじゃな」と静かな声で言った。
「そなたの妻は初めての里帰りに、さぞ喜んだ事じゃろう」
「はい。皆が妻を歓迎してくれました。山北王から山南王の返事を持って来いと言われましたので、妻と子は今帰仁に預けてきました」
「なに、向こうに置いてきたのか」と山南王は少し驚いたような顔をしてから笑って、「そうじゃな、それがいい」とうなづいた。
 妻と子がいなかったので、襲撃は中止したんだなと山南王は納得していた。
「そなたに何度も行かせるのも申し訳ない。婚礼の日にちなども詳しく決めて、そなたにもう一度行ってもらおう。返事の書状ができるまで、旅の疲れを取って、ゆっくりしていてくれ」
 ンマムイはうなづいて、山南王と別れた。

 

 

 

 

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