長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-105.小松の中将(第一稿)

 琉球の交易船の警護をしなければならないと言って、あやは上関(かみのせき)に帰って行った。
 ササたちはあやにお礼を言って別れ、京都へと向かった。
 六月三十日、ササたちは京都に着き、いつものように高橋殿の屋敷に入った。男はだめよと言って、サタルーたちは一文字屋に預けた。
「ねえ、ササ、今年はどこに行くの?」と高橋殿は聞いた。
「御台所様(みだいどころさま)(足利義持の奥方、日野栄子)がまた熊野に行きたいって言っているわよ」
「熊野ですか‥‥‥」と言ってササは佐敷ヌルを見た。
「あたしも行ってみたいわ」と佐敷ヌルは言った。
「決まりね」と高橋殿は喜び、
「もう、先達(せんだつ)に頼んであるのよ」と笑った。
「去年はサハチさんの娘さんが来て、驚いたけど、今年も驚かされそうね」と高橋殿は佐敷ヌルを見た。
 佐敷ヌルは高橋殿を一目見て、その美しさに見とれ、兄のサハチと関係があったに違いないと思った。高橋殿は佐敷ヌルを一目見て、その美しさに驚き、ササ以上に凄い人が来たと思っていた。
 その夜、お決まりの酒盛りが始まった。ササたちが御所に来るのが待ちきれないと言って、御台所様も奈美と一緒にお忍びでやって来た。去年一緒に熊野に行った対御方(たいのおんかた)と平方蓉(ひらかたよう)もやって来て、賑やかな宴となった。
 高橋殿は佐敷ヌルが琉球でお芝居をやっていると聞いて驚いた。佐敷ヌルが熱心に話すお芝居の話を聞きながら、わたしも負けてはいられない。女猿楽(おんなさるがく)をやらなければならないと強く心に思った。佐敷ヌルは高橋殿から猿楽の事を興味深く聞きながら、是非とも見たいと思っていたが、いつしか酔い潰れてしまった。
 次の日、ササたちは船岡山に行って、スサノオの神様に挨拶をした。御台所様は用があるので帰らなければならないと寂しそうな顔をして帰って行った。奈美が御台所様を送って行き、高橋殿はササたちと一緒に来た。
「今年もやって来たな」とスサノオは言って、「おや、凄い美人を連れて来たのう」と嬉しそうに言った。
 ササは佐敷ヌルを紹介した。
「御先祖様にお会いできて光栄です」と佐敷ヌルが言うと、
「ユンヌ姫から聞いたぞ。小松の中将(ちゅうじょう)とやらを探しているそうじゃのう」とスサノオは言った。
「御存じなのですか」
「残念ながら、知らんのじゃよ。あの頃で知っていると言えば、建春門院(けんしゅんもんいん)(後白河上皇の妃)くらいかのう。あの女子(おなご)は美しい女子じゃった。美しいだけでなく、舞もうまいし、賢い女子でもあった。熊野にも何度も行っておるし、信心深い女子じゃった」
「建春門院様というのは、小松の中将様と関係がある御方なのですか」
「小松の中将と関係あるかは知らんが、建春門院の倅(せがれ)が高倉天皇で、その倅が安徳天皇じゃよ」
安徳天皇様はどこにいらっしゃるのですか」
「それも知らんのう。小松の中将とやらは、都でも有名な美男子だったから、必ず、誰かが知っているに違いないと言って、ユンヌ姫が今、探し回っておる。見つかれば知らせてくれるじゃろう」
「ユンヌ姫が探しているのですか」とササが聞いた。
「お前にお世話になったお返しだと言っていた。気まぐれな奴じゃが、義理堅い所もある。いい孫娘じゃよ」
「そうだったのですか」
 ササはユンヌ姫を見直し、ユンヌ姫が見つけてくれる事を祈った。でも、小松の中将様はアキシノが会わせてくれると言っていた。どうせなら、小松の中将様ではなく、安徳天皇を探してくれればいいのにとも思っていた。
スサノオ様、お願いがあるんですけど、鳥居禅尼(とりいぜんに)様に会わせていただけませんか。小松の中将様は熊野から琉球に向かいました。鳥居禅尼様なら、小松の中将様の事を知っているかもしれません」
「また、熊野に行くのか」
「はい、行きます」
「いいじゃろう。鳥居禅尼に会わせてやろう。去年と同じように、新宮の神倉山(かみくらやま)に来るがいい。待っておるぞ」
 ササたちはスサノオにお礼を言って別れると平野神社に向かった。平野神社に来たのは一昨年(おととし)の台風の時以来だった。
 境内は閑散としていた。参道を真っ直ぐ本殿の方に向かおうとしたら、アキシノの声が聞こえた。アキシノの声に従って、本殿の脇にある小さな神社の前で、ササたちはお祈りをした。
「小松の中将様の居場所がわかりました」とアキシノは言った。
「大原の山の中に寂光院(じゃっこういん)という古いお寺があるのですが、そこにおりました。新三位(しんざんみ)の中将(平資盛(たいらのすけもり))様も建礼門院右京大夫(けんれいもんいんうきょうのだいぶ)様と御一緒におりました」
建礼門院右京大夫様というのはどなたですか」と佐敷ヌルが聞いた。
「有名な歌人です。当時、新三位の中将様との仲が噂されておりました」
「女の方なのですね」
「そうです。美しいお方で、殿方たちの憧れの的だったようです。建礼門院様(安徳天皇の母、平徳子)にお仕えしておりました」
「大原ってここから近いのですか」とササが高橋殿に聞いた。
「大原? 今から大原に行くつもりなの?」
「できれば行きたいのですが」
「住心院(じゅうしんいん)よりも遠いわよ。ここから二時(にとき)(四時間)は掛かるわね」
 ササは佐敷ヌルを見て、「行きましょう」と言った。
「今から大原に行きます」と佐敷ヌルが言うと、
「御案内します」とアキシノは言った。
 ササたちはアキシノにお礼を言って、大原に向かった。
「去年は源氏で、今年は平家を調べるなんて、あなたたちも大変ね」と言いながらも、高橋殿も一緒に付いて来てくれた。
「平家を知るなら『平家物語』ね」と高橋殿は言った。
「琵琶(びわ)法師が語っている長い物語なのよ。最近は書物にもなって、将軍様もお読みになっているはずだわ」
 佐敷ヌルが目の色を変えて、「そんな書物があるのなら是非、読ませてください」と言った。
「御所に移ったら、好きなだけ読めるわよ」と高橋殿は笑った。
 戦(いくさ)の話なんて、女の人はあまり読みたがらないけど、佐敷ヌルはお芝居のためなら何でもやりそうだった。佐敷ヌルの情熱に、高橋殿は昔の自分を思い出していた。芸のためなら何でもやった若い頃を思い出し、そろそろ、将軍様のために働くのを引退して、女だけの猿楽座を作ろうかと本気で考え始めていた。
 歩きながらササは、壇ノ浦で滅んだ平家の残党が琉球に来て、今帰仁按司(なきじんあじ)になった。その今帰仁按司になったのが、小松の中将様という人らしいので、これからその人に会いに行くと高橋殿に説明した。
「わたしも『平家物語』は聴いているので、小松の中将の事は知っているわよ。平維盛(たいらのこれもり)という名で、光源氏と言われたほどの美男子だったんでしょ」
「高橋殿も知っていたのですか」
平家物語では、平維盛は熊野の那智で入水(じゅすい)した事になっているわ」
「それなんですよ。あの頃、熊野水軍琉球に来ていたのです。新宮の十郎様と同じように、熊野水軍お船に乗って琉球に行ったのだと思います。それを確認するために、もう一度、熊野に行かなければなりません」
「確かに、それは考えられるわね。もし、維盛が今帰仁按司になったとしたら、その子孫は美男子のはずよ」
「あたしは見た事はないけど、噂では、今の今帰仁按司も美男子らしいですよ。今帰仁按司の娘が、島添大里(しましいうふざとぅ)に嫁いで来たけど、美人だったわ」
「サハチさんの息子さんに嫁いで来たの」
「そうなんです。去年、ヤマトゥに来たチューマチですよ」
「あら、チューマチさんがお嫁さんをもらったの。それはめでたいわね」
 シンシンのガーラダマに憑(つ)いたアキシノの案内で、大原の山の中の寂光院に着いたのは、正午(ひる)過ぎだった。
 寂光院は荒れ果てていた。完全に世間から忘れ去られた存在のようだった。
「小松の中将様が笛を聴かせてくれと言っております」とアキシノが言った。
「えっ!」と佐敷ヌルとササは驚いた。
「お姉さん、頼むわ」とササが佐敷ヌルに言った。
 佐敷ヌルはうなづいて、腰に差していた横笛を袋から取り出した。半ば朽ちかけた本堂を見ながら、佐敷ヌルは笛を構えて吹き始めた。
 何も考えなかった。今、感じている事を素直に音として表現した。
 幽玄な調べが山の中に響き渡った。
 辺りが急に暗くなった。
 幻(まぼろし)が現れた。
 幻はきらびやかな衣装を身にまとった美しい男で、佐敷ヌルの笛に合わせて、華麗な舞を披露した。
 夢でも見ているのだろうかと思いながらも、佐敷ヌルは笛を吹き続けた。
 ササが佐敷ヌルの笛に合わせて、笛を吹き始めた。佐敷ヌルとササは、まったく別の調べを吹いているのに、うまく調和して、さらに幽玄さを増していた。
 高橋殿が舞い始めた。高橋殿は幻の貴公子を相手に華麗に舞っていた。
 シンシン、シズ、ナナの三人も幻を見ていて、高橋殿との華麗な舞を夢でも見ているかのような気持ちで、呆然と佇んだまま見つめていた。
 佐敷ヌルとササの笛に、もう一つの笛が加わった。誰が吹いているのかわからないが、低音で響くその笛は、幽玄な調べを荘厳な調べに変えていた。
 素晴らしい夢の世界が永遠に続くかと思われたが、佐敷ヌルとササの笛が静かに終わりを告げると幻は消え去り、もとの明るさに戻った。
 高橋殿は呆然とした顔付きで、佐敷ヌルとササを見た。
「わたし、どうしたのかしら?」と高橋殿は言った。
「素晴らしい舞でした」と佐敷ヌルが言って、拍手をした。
 ササ、シンシン、シズ、ナナも、「凄い」と言って拍手を送った。
「わたしじゃないわ」と高橋殿が言った。
「佐敷ヌルとササの笛よ。あんな曲、聴いた事もないわ。まるで、神様が奏でているような曲だったわ。わたしの体は自然に動いてしまったのよ。そして、一緒に舞っていたのは、もしかして、平維盛様だったの?」
「多分、小松の中将様に違いないわ」とササが言い、
「凄い美男子だったわ」とナナが言った。
「歓迎するよ」と神様の声が聞こえた。
「中将様です」とアキシノが言った。
 ササ、佐敷ヌル、シンシンはその場にひざまずいて、両手を合わせた。高橋殿、ナナ、シズもササたちに従って、神様にお祈りを捧げた。
「話はアキシノから聞いている」と小松の中将は言った。
「安須森(あしむい)の事は後悔している。しかし、あの時のわしは相手の事を考えるほどの余裕はなかったんだ。とにかく、落ち着く場所が欲しかった。謝って済む事ではないが、すまなかった」
「あなたは初代の今帰仁按司なのですね」と佐敷ヌルは聞いた。
「そうだ。わしは平家を棄てて、今帰仁按司になった。琉球に行って、わしは祖父(平清盛)や親父(平重盛)や叔父たちから解放されて、ようやく、自由になったんだよ」
屋島(やしま)から逃げ出した時、最初から琉球に行くつもりだったのですか」
「いや、あの時は琉球という島の事は知らなかった。どこでもいいから南の島に逃げたかったんだ」
屋島から熊野に向かったのですか」
「そうだ。紀伊国(きいのぐに)(和歌山県)の田辺に行った。田辺には熊野権別当(ごんのべっとう)の湛増(たんぞう)がいたんだ。湛増は親父と親しかった。湛増は京都に屋敷を持っていて、六波羅(ろくはら)の屋敷にも出入りしていて、わしも熊野の話など湛増から聞いていた。親父は亡くなった年に熊野参詣に行ったんだが、その時、わしら息子たちも一緒に行って、湛増のお世話になったんだ。湛増は突然のわしの出現に驚いたが、話を聞いてくれた。湛増から那智に行けと言われて、わしたちは熊野を参詣して那智に向かった。男は皆、山伏の格好になって行ったんだ」
那智に行くのにどうして、熊野参詣をしたのですか。船でまっすぐ行った方が安全だったのではありませんか」とササが聞いた。
「確かにそうだ。湛増から新宮の者たちは源氏贔屓(びいき)だと聞いていた。しかし、あの時のわしは、まだ迷っていたんだ。本当に、親父が言った通り、生き残る事が正しいのか、わからなかったんだよ」
「中将様のお父様は、もう亡くなっていたのでしょう?」
「ああ。五年前に亡くなっていた。親父は亡くなる前、わしたちを熊野に連れて行って、今後の事を話したんだ。あの時のわしたちには、親父が言った事は理解できなかった。親父は平家が滅びる事を予見していたのかもしれない。何が起こっても、一族と一緒に滅びる事なく、お前たちは必ず、生き延びろと言ったんだ」
「お父様がそう言ったので、琉球に逃げたのですか」
「そうだよ。それが親父の遺言だったんだ。京都に帰ってからは、その事には触れなかったけど、亡くなる前にも、熊野の事は決して忘れるなと言った。最初に親父の遺言に従ったのは弟の清経(きよつね)だった。奴は京都を落ちて九州に行った時、九州の奴らに裏切られて、横笛を吹いたあと、入水(じゅすい)したんだ。わしにはわかっていた。奴は入水したように見せかけて、どこかに逃げたに違いないと。わしも清経のあとを追って、南の島に行こうと思って、屋島から逃げたんだけど、まだ迷っていたんだよ。本当に逃げてもいいのか。それとも、熊野の水軍を引き連れて、屋島に戻った方がいいのか‥‥‥わしは心を決めるために、もう一度、親父と歩いた熊野参詣の道をたどってみたんだ」
「そして、答えが出たんですね」
「ああ、迷いは消えたよ。わしは中辺路(なかへち)を歩きながら、どうして親父があんな事を言ったのか、ずっと考えていたんだ。親父が亡くなったあと、祖父と後白河法皇(ごしらかわほうおう)は対立して、祖父は法皇を鳥羽に幽閉してしまった。そして、法皇の息子の以仁王(もちひとおう)が、『平家打倒』の令旨(りょうじ)を出して、各地の源氏が蜂起した。親父が源氏の蜂起まで、予見していたとは思えないけど、祖父と法皇の対立はわかっていたのだろう。そして、平家の嫡流が叔父の内府(だいふ)(平宗盛)に移ってしまう事もわかっていたのだろう。親父が亡くなったあと、小松家(重盛の子供たち)の者たちは孤立したような感じになった。わしたちが親父の喪(も)に服していた時、様々な事が起こったんだ。祖父が法皇を幽閉したのも、安徳天皇が即位したのも、祖父が都を京都から福原(神戸市)に移したのも、喪に服している時で、わしらは蚊帳(かや)の外に置かれたんだ。わしらには何の相談もなかった。そして、源氏が蜂起して、わしは総大将として関東に出陣した。あの時、祖父はわしを信頼していると喜んだけど、よく考えてみると、平家の棟梁(とうりょう)になった叔父のために、邪魔者のわしを総大将にして、戦死してくれればいいと思ったのかもしれないと疑った。北陸攻めの時もそうだった。あの時はもう祖父は亡くなっていて、叔父の内府が名誉挽回の機会を与えてくれたとわしは喜んだけど、内府はわしたちが戦死するのを願っていたに違いない。あの時、小松家の者たちは出陣して、内府の身内は京都を守っていたんだ。その事に気づいて、わしは改めて、逃げようと決心を固めたんだよ。内府のために戦死するなんて馬鹿げている。それに、一ノ谷の合戦で、平家が源氏に敗れて、大勢の武将が戦死したとの噂が熊野に流れて来た。すでに手遅れだと悟ったよ。わしは熊野で生まれ変わって、新しい生き方をしようと決めたんだ。わしたち小松家の兄弟は、親父の言いつけをちゃんと守って、みんな、生き延びたんだよ」
「熊野参詣をして、那智まで行って、それから琉球に行ったのですか」と佐敷ヌルが聞いた。
「いや、琉球に向かったのは、その年の冬になってからだ。北風が吹かないと琉球には行けないと言われて、冬まで隠れていたんだよ。那智に行くと熊野水軍の色川左衛門佐(いろかわさえもんのすけ)が待っていた。左衛門佐の船に乗って山成島(やまなりじま)に渡り、追っ手から逃れるために、入水したように見せかけたんだ。家宝の太刀を手放すのは残念だったけど、仕方がなかった。そのあと、左衛門佐の拠点がある山奥に行った。船に乗って太田川をさかのぼり、途中から険しい山道をどんどん進んで行った。山に囲まれた小さな村で、冬までの一年近くを隠れて暮らしていたんだよ」
「いい思いもしたんでしょ」とアキシノが言った。
「何を今更、言っているんだ」
「すっかり忘れていたのに、当時を思い出したら悔しくなったわ」
「あれは仕方がなかったんだよ。助けてもらったんだ。左衛門佐の願いを聞いてやるしかなかった」
「あたしに内緒で、都の話を聞かせてやるとか言って出掛けて、あちこちに女をこさえていたのよ」
「だから、仕方なかったんだよ。山の中の村だから、新しい血が欲しかったんだ」
「それにしたって、何人も相手にする事もないじゃない」
「夫婦喧嘩はやめてください」と佐敷ヌルが言った。
 二人とも黙った。
「山奥の村で冬まで待って、それから琉球に行ったのですね」と佐敷ヌルは小松の中将に聞いた。
「そうだよ。南には思っていた以上に、いくつもの島があった。わしは生まれ変わった気持ちになって南の島々を巡って、琉球にたどりついたんだよ」
「平家の御曹司(おんぞうし)という地位を捨てても惜しいとは思わなかったのですか」
「平家の御曹司か‥‥‥祖父や親父の時代だったら、面白おかしく暮らせただろうけど、わしの頃は、うるさい叔父や大叔父が何人もいて、何一つ思うようには行かなかったんだよ。十九歳の時に、法皇の御前で舞を舞って評判になったが、わしに近づいて来る女子(おなご)はいなかった。わしの顔を見るとキャーキャー騒いでいるのに、文(ふみ)を送って来るような娘はいなかったんだよ。わしは雲の上の人で、近寄りがたかったようだ。山奥の娘たちは文字も知らんし、歌など作れんが、わしを雲の上の人ではなく、地上にいる男として接してくれたんだ。そんなの初めてだったので、嬉しかったんだよ」
「奥さんはいたのでしょう?」
「十五の時に、親が決めた娘を嫁にもらった。可愛い娘だったよ」
「奥さんは琉球に連れて行かなかったのですか」
都落ちの時に、京都に残したんだ。わしの事は忘れてくれと言ってな」
「そんなのひどいわ」とササが言った。
「ああ、ひどい。でも、一緒に連れて行ったら、妻はもっとひどい目に遭ったかもしれない」
「どうしてですか」
「わしが二十歳の時、妻の父親藤原成親(ふじわらのなりちか))は謀叛(むほん)を企てて捕まり、流刑地(るけいち)で殺されたんだ。妻は裏切り者の娘という烙印(らくいん)を押されてしまったんだよ。都落ちしたら、妻はうるさい叔母たちと行動を共にしなければならなくなる。叔母たちにいじめられるのは目に見えている。きっと、妻には耐えられないだろう」
「中将様は大丈夫だったのですか」
「わしもさんざ陰口をたたかれたよ。妻の父親が殺され、その二年後には、親父が病死してしまった。親父の喪が明けたあと、わしは関東攻めの総大将に任命された。わしは張り切っていた。伊豆の三郎(源頼朝)の首を取ってくるつもりでいた。しかし、侍大将の上総介(かずさのすけ)(伊藤忠清)のお陰で、すべてが台無しになってしまった。上総介はわしの乳父(めのと)だったんだ。いつまで経っても、わしを子供扱いして、わしのやる事に一々文句を言ってきた。福原を発ったあと京都に入ると、上総介は日が悪いだのと言って、十日近くも京都から動かなかったんだ。その隙に、平家を裏切って、源氏に寝返った者たちが数多くいたはずだ。富士川に着いてからも、わしは攻めると言ったのに、上総介は戦わずして退却すると決めた。士気は落ち、皆、逃げる事しか考えていなかった。その夜、敵が夜襲を仕掛けて来たのか、水鳥が一斉に飛び立った。その音に驚いた兵たちは慌てふためいて、我先にと逃げ出したんだ。まったく惨めな戦(いくさ)だった。戦いもしないのに、わしは負け戦の大将になってしまったんだよ。祖父は鬼のような顔をして怒鳴った。宮廷の者たちは、わしの顔を見ると、こそこそと陰口を言っていた。いたたまれない気持ちだったよ。その翌年、祖父が平家の行く末を見る事もなく、熱病に罹って亡くなってしまった。祖父の死は大きかった。祖父がいれば、源氏なんか倒せると誰もが思っていた。祖父が亡くなって、平家の行く末に暗雲が立ち込めたんだ」
 小松の中将は昔を思い出しているのか、黙ってしまった。
 佐敷ヌルは中山王だった察度(さとぅ)を思い出していた。佐敷ヌルは察度に会った事がなかったので、察度のお芝居を作る時、ンマムイから察度の話を聞いた事があった。祖父が偉大過ぎたので、父(武寧)も俺も、祖父と比べられて大変だったとンマムイは言っていた。
「今思えば、祖父は物凄い人だったんだなと思うよ」と小松の中将は言った。
「祖父は福原に新しい都を造ろうとしていたんだ。源氏の蜂起がなかったら、福原は素晴らしい都になって、宋(そう)との交易で栄えた事だろう。富士川の負け戦のあと、祖父は福原を諦めて、また京都に戻ったんだよ。福原は半年足らずの都だった」
「中将様が富士川からお帰りになったあと、源氏は京都に攻めて来たのですか」と佐敷ヌルが聞いた。
「いや、まだだよ。祖父が亡くなったあと、わしはまた戦に出たんだ。叔父の三位中将(さんみちゅうじょう)(平重衡(たいらのしげひら))と一緒だった。叔父と言っても、わしより一つ年上で、三位中将とは気が合ったんだ。今もここに一緒にいる。その時の戦は美濃(みの)(岐阜県)まで行ったんだけど、勝ち戦だったんだ。祖父が亡くなったあとの勝ち戦だったから、京都はお祭り騒ぎになった。源氏なんて大した事はない。田舎者が平家に逆らうなんて、神様がお許しにならないだろうって、みんなの意気は上がったんだ。その時の勝ち戦で、わしは中将に昇進して、小松の中将と呼ばれるようになったんだよ。でも、喜んでばかりもいられなかった。大飢饉(だいききん)が襲って、京都には食糧がなくなって、大勢の餓死者(がししゃ)が出たんだ。祖父が亡くなる前の年、三位中将が南都(奈良)を焼き払ったんだけど、その祟(たた)りだと京都の者たちは騒いでいた。都中に死臭(ししゅう)が漂っていて、まったく、悲惨だったよ。あちこちで源氏の蜂起は続いていたけど、戦をやれる状況ではなかった。一年が過ぎて、ようやく、飢饉も下火となって、また戦が始まった。わしはまた総大将に任じられて、北陸へと向かったんだ。まず、越前(えちぜん)(福井県)で火打城(ひうちじょう)を攻め落として、加賀(石川県)に入った。木曽の山猿が越中富山県)にいると知らせが入ったので、わしらは二手に分かれて、越中との国境に向かったんだ」
「木曽の山猿って何ですか」とササが聞いた。
「木曽の次郎(源義仲)だよ。わしらは倶利伽羅峠(くりからとうげ)で、奴の夜襲に遭って敗れてしまったんだ。あの戦で多くの兵を失って、平家は再起不能になってしまった。あの負け戦のすべての責任がわしにあるわけではないが、いや、総大将だったわしの責任だろう。敵の動きをもっとよく調べればよかったんだ。わしは、あの負け戦から立ち直る事はできなかった」
「アキシノさんとはいつ出会ったのですか」と佐敷ヌルが聞いた。
「アキシノと出会っていなかったら、わしは倶利伽羅峠で戦死していたかもしれんな。あの時、大勢の兵が戦死するのを見て、わしは京都に帰るのが恐ろしくなった。富士川の戦の時のように、負け戦の大将と陰口をたたかれるのに耐えられないだろうと思ったんだ。供の者たちに、早く逃げようと言われた時、アキシノの顔が浮かんだんだ。わしは京都ではなく、アキシノがいる厳島神社(いつくしまじんじゃ)に帰ろうと思って、必死に逃げて来たんだよ。アキシノと初めて出会ったのは、富士川の合戦に行く前だった。戦勝祈願のために大叔父の薩摩守(さつまのかみ)(平忠度(たいらのただのり))と一緒に厳島神社に行った。迎えてくれた内侍(ないし)(巫女)の中にアキシノがいたんだ。一目見て、何か惹かれるものを感じたよ。でも、その時は言葉も交わさなかった。二度目に会ったのは、富士川の負け戦のあとだった。福原にいるのに耐えられず、わしは馬に乗って厳島神社に向かった。その時はアキシノの顔が浮かんだわけではない。負け戦の事で頭はいっぱいで、神様にすがる気持ちだったんだ。ところが、厳島神社に来て、ばったりとアキシノと出会った。アキシノはわしを覚えていてくれた。アキシノと一緒に弥山(みせん)に登って、わしは戦の事を話した。アキシノに話したら、なぜか、気が軽くなったんだ。周りの者が何と言おうと気にするなとアキシノは言った。そのあとは、戦勝祈願のためと言っては、何度も厳島神社に通って、アキシノと会ったんだ。倶利伽羅峠の戦から帰って来て、わしは戦死した者たちの平安を祈るために、厳島神社に行った。そして、都落ちのあとは、アキシノを連れて一緒に行動して、屋島に落ち着いた時、脱出の計画を練って、熊野に向かったんだよ」
「弟の新三位の中将様が安徳天皇様をお連れして、南の島へと逃げましたが、その天皇は偽者だったとアキシノ様から聞きました。本物の安徳天皇様がどこにいらしたのかご存じないのですか」
「わしも探しているんだが、どこにもおらんのだよ。何者かが結界(けっかい)を張ってしまったのかもしれんな」
「結界ですか。誰がそんな事をするのですか」
安徳天皇が壇ノ浦では亡くならず、どこかで生きていたという事が公表されたらまずいと思っている奴らだろう」
「その事が公表されたら、まずい事になるのでしょうか」
安徳天皇は本物の三種の神器(じんぎ)を持っておられたんだよ。壇ノ浦で沈んだのは偽物だ。鏡と勾玉(まがたま)は回収されたそうだが、あれは偽物だ。今の天皇は偽物を大切に持っているというわけだ。その事が公表されたら大変な事になるだろう。それで、安徳天皇は本物の三種の神器と一緒に隠されてしまったのだろう」
「探す事はできないのですか」
「どこにあるのかわからんが、その結界を破ると天変地異が起こるかもしれんな」
 突然、笛の調べが聞こえてきた。静かで優しい調べだった。小松の中将が吹いているようだ。佐敷ヌルはその笛に合わせて、笛を吹き始めた。
 源平の戦が始まる前の平和な京都の情景が思い浮かぶような曲だった。
 やがて、笛の音は消えた。佐敷ヌルは笛から口を離すと、両手を合わせて、お礼を言った。
「中将様はお帰りになられたのですか」と佐敷ヌルがアキシノに聞いた。
六波羅の方にお移りになられました。弟たちがあちらで酒盛りを始めたようです」
「弟たちと言いますと、新三位の中将様や小松の少将様たちですか」
「新三位の中将様はここにいらっしゃいました。左の中将様(平清経)、小松の少将様(平有盛(たいらのありもり))、丹後侍従(たんごじじゅう)様(平忠房(たいらのただふさ))、土佐侍従(とさじじゅう)様(平宗実(たいらのむねざね))、備中侍従(びっちゅうじじゅう)様(平師盛(たいらのもろもり))、が六波羅に集まっておられるようです。それと、琵琶の名人の但馬守(たじまのかみ)様(平経正(たいらのつねまさ))もいらっしゃるようです」
「賑やかそうですね」と佐敷ヌルは笑ったあと、「アキシノ様、熊野まで一緒に来ていただけないでしょうか」と頼んだ。
「まだ、何か、お調べになるのですか」
「小松の中将様の事をお芝居にして、今帰仁の人たちに見せたいと思っております。中将様の足跡を確かめたいのです」
「お芝居ですか。それは楽しそうですね。中将様もまだ帰りそうもないし、熊野に行っても構いませんよ」
 佐敷ヌルはアキシノにお礼を言って、小松の中将の神様から聞いた話をササ、シンシンと一緒に、高橋殿、ナナ、シズに話して聞かせた。

 

 

 

源平合戦事典<   平家物語図典

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第二稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー、奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第一稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第一稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第一稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第一稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第一稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第一稿)   佐敷ヌル、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第一稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第一稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ヌルとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第一稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。
ジルムイ      1391-    尚巴志次男。尚忠。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司次男尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
タルムイ(太郎思) 1385-1429  豊見グスク按司汪応祖の長男。妻は尚巴志の妹。
タブチ       1360-1414  八重瀬按司。シタルーの兄。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫。
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
米須按司      1357-    武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
玻名グスク按司   1358-    タブチの義兄。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。

 

2-104.アキシノ(第一稿)

 無事に坊津(ぼうのつ)に着いた交易船から降りた佐敷ヌルとササたちは、一文字屋の船に乗り換えて博多に向かった。サイムンタルーの船から降りたサタルー、ウニタル、シングルーも一文字屋の船に移った。
 六月の七日、博多に着くと、『一文字屋』で奈美が待っていた。ササたちを見て、奈美はホッとした顔をした。今年は来ないかもしれないと心配していたという。御台所様(みだいどころさま)(将軍の奥方、日野栄子)を喜ばせなくちゃと言って、奈美は京都に向かった。
 次の日、ササたちは佐敷ヌルを連れて、豊玉姫(とよたまひめ)のお墓に行った。来なくもいいと言ったのに、サタルーたちも付いて来た。
「女子(いなぐ)たちだけじゃ危険だろう」とサタルーは言った。
 その言い方が父親のサハチに似ていて、何となくおかしくて、ササは笑った。
「いいわ。あたしたちを守ってね」
 もし豊玉姫のお墓が草茫々(ぼうぼう)だったら、サタルーたちに草刈りをさせようとササは思った。
 こちらはまだ梅雨が明けていなくて、途中で大雨に降られたが、半時(はんとき)(一時間)程でやんだので助かった。
 豊玉姫のお墓は綺麗になっていた。誰かが守ってくれているようだった。
「これがヤマトゥのお墓なのか」とサタルーはこんもりとした山を不思議そうに眺めた。
「昔のお墓よ。豊玉姫様はスサノオ様の奥さんだったから、こんな立派なお墓が残っているの」とササは言った。
スサノオ様というのは誰なんだ」
「あたしたちの御先祖様よ」
「なに、俺たちの御先祖様はヤマトゥンチュだったのか」とサタルーは驚いた顔をした。
 奥間(うくま)の者たちの御先祖様がヤマトゥンチュだったというのは義父のヤザイムから聞いているが、実父の島添大里按司(しましいうふざとぅあじ)の御先祖様もヤマトゥンチュだったなんて初耳だった。
豊玉姫様は琉球人(りゅうきゅうんちゅ)よ。玉グスクのお姫様だったのよ」
「玉グスクの御姫様のお墓が、どうしてこんな所にあるんだ?」
「話せば長いわ。あとで教えてあげるわよ」
 ササたちはお墓の前に座り込んで、お祈りを始めた。サタルーたちもササたちに従って、お墓に両手を合わせた。
 玉依姫(たまよりひめ)はいた。
「そろそろ来ると思ってね、待っていたのよ」と玉依姫は言った。
 ササが挨拶をしようとしたら、
「また来ちゃった」と誰かが言った。
 その声はユンヌ姫だった。
「あら、いらっしゃい」と玉依姫は嬉しそうに笑った。
「どうして、あなたがここにいるの? 与論島(ゆんぬじま)には寄って来なかったわよ」とササはユンヌ姫に言った。
与論島からお船が見えたの。あなたがいるのがわかって一緒に来たのよ。だって、与論島は退屈なんですもの。お祖父(じい)様と一緒に、またあちこちに行きたいわ」
「きっと、お祖父様も喜ぶわよ」と玉依姫はユンヌ姫に言って、「また、新しい人を連れて来たのね」とササに言った。
「安須森(あしむい)ヌルを継ぐ人です」とササは佐敷ヌルを紹介した。
「安須森ヌルの事は母から聞いたわ。真玉添(まだんすい)と同じように滅ぼされてしまったんですってね」
「そうなんです。平家に滅ぼされたらしいのですけど、琉球に渡った平家の人たちを御存じですか」
「平家は壇ノ浦で滅びたって聞いているけど、詳しい事は知らないわね」
「昔、平家のお船与論島に来て、琉球に行ったわ」とユンヌ姫が言った。
「小松の中将(ちゅうじょう)様(平維盛(たいらのこれもり))っていう人?」とササは聞いたが、ユンヌ姫は答えなかった。
「平家と言えば、厳島(いつくしま)神社ね」と玉依姫が言った。
厳島神社ってどこにあるのですか」とササは玉依姫に聞いた。
「安芸(あき)の国(広島県)よ。博多から京都に行く途中にあるわ。平家の大将だった平清盛(たいらのきよもり)が建てた神社よ。凄く立派な神社だけど、本当の御神体は神社の裏にある弥山(みせん)という山なの。山の頂上に古いウタキがあるわ。あなたに話し掛けてくる神様がいるかどうかわからないけど、行ってみる価値はあると思うわ」
厳島神社と弥山という山ですね」
「今、思い出したわ。久留米(くるめ)に水天宮(すいてんぐう)という神社があるんだけど、壇ノ浦で亡くなった平家の天皇を祀っているわ。その水天宮を建てたのが、スサノオの剣(つるぎ)を祀っている石上神宮(いそのかみじんぐう)の神主(かんぬし)の娘さんだったの。壇ノ浦の生き残りで、出家して、亡くなった者たちを弔っていたわ」
「久留米ってどこなんですか」
「博多から一日で行ける距離よ。明日、いらっしゃい。わたしがその人を探しておくわ」
 ササはお礼を言って、佐敷ヌルを見た。
玉依姫様、あなたは安須森に行った事はありますか」と佐敷ヌルは聞いた。
「初めて琉球に行った時、母と一緒に安須森に登ったわ。あの時、母の故郷に来たって実感したのよ」
「ヌルたちの村にも行ったのですね」
「行ったわ。安須森ヌルとも会って、みんなが歓迎してくれたわ」
「どんな村だったのですか」
「みんな親切で、明るい顔をしていて、平和な村だったわ。各地からヌルたちも大勢、集まって来ていたわ。あの村が平家の落ち武者たちによって滅ぼされてしまったなんて悲しい事ね。あなたが安須森ヌルを継いで、昔のように栄えさせてね」
 佐敷ヌルは力強く返事を返して、「明日、また会いましょう」と言って玉依姫と別れた。
 ササがユンヌ姫に声を掛けると返事はなかった。
「勝手に憑(つ)いてきて、勝手にどこかに行ったみたい」とササは佐敷ヌルに言って笑った。
「誰が勝手に付いて来たんだ?」とサタルーがササに聞いた。
「気まぐれな神様よ」
 ササたちは一旦、博多に帰って、次の日、久留米の水天宮に向かった。一文字屋の三男、新四郎が久留米に用があるからと言って案内してくれた。
 筑後(ちくご)川沿いに建つ水天宮に着いたのは未(ひつじ)の刻(午後二時)頃だった。思っていたよりも小さな神社だった。南北朝の戦(いくさ)で焼け落ちてしまい、五年前にようやく再建されたと神主さんは言った。
 ササたちは社殿の前でお祈りをした。
「松の木の隣りにある小さな祠(ほこら)よ」と玉依姫の声がした。
 ササと佐敷ヌルは振り返って境内(けいだい)を見回した。境内のはずれに松の木があって、その下に小さな祠があった。ササと佐敷ヌルはうなづき合って、その祠に向かった。みんなも首を傾げながら二人のあとを追った。
 祠の前でお祈りを始めると、
「この祠は、水天宮を造った千代尼(ちよに)を祀っているの」と玉依姫が言って、千代尼を紹介した。
「わたしが千代尼です。南の方の島から来られたと聞きました。もしかしたら、主上(しゅしょう)が御無事だったのか御存じないでしょうか」
「シュショー?」とササは聞いた。
「安徳(あんとく)天皇の事よ」と玉依姫が言った。
安徳天皇様は壇ノ浦で亡くなったのではなかったのですか」
「源氏を欺いて、南の島に逃げたのでございます。新三位(しんざんみ)の中将様(平資盛(たいらのすけもり))が主上をお守りして、女官(にょかん)たちも従いました。わたしも従いたかったのですが、建礼門院(けんれいもんいん)様(安徳帝の母、平清盛の娘)にお仕えしていたわたしがいなくなると怪しまれると言われて、諦めました。敵の船に囲まれた時、二位尼(にいのあま)様(平清盛の正室)が身代わりとなった小松の少将様(平有盛(たいらありもり))の娘さんを抱いて海に飛び込みました。わたしも従って海に飛び込みましたが、死ねませんでした」
「娘が身代わりとはどういう意味ですか」
主上はまだ八歳で、小松の少将様の娘さんとよく似ていたのです」
「そんな幼い天皇だったのですか」とササは驚いていた。
「福原殿(平清盛)は建礼門院様が男の子をお産みになると、大層お喜びになられました。主上は三歳の時に天皇になられたのでございます」
「三歳で天皇ですか‥‥‥残念ながら、安徳天皇様が琉球に来られたという話は聞いた事がありません。どこか、別の島だと思います」とササは言った。
「小松の中将様を御存じですか」と佐敷ヌルが聞いた。
「勿論、存じておりますとも。わたしどもの憧れの御方でございました。この世の者とは思えないほど美しく、凜々(りり)しい御方でございました」
「小松の中将様も安徳天皇様をお守りして、南の島に行かれたのですか」
「いいえ、違います。小松の中将様は総大将として北陸に出陣なさいましたが、負け戦になってしまいました。その負け戦のお陰で、わたしどもは京都を追われる事になってしまいました。あの負け戦のあと、小松の中将様は孤立してしまって、いたたまれなくなってしまったのでございましょう。一ノ谷の合戦の前に姿を消されてしまいました。一ノ谷の合戦の前、わたしどもは讃岐(さぬき)の国(香川県)の屋島(やしま)を拠点にしておりましたが、その時、小松の中将様は厳島神社の内侍(ないし)(巫女(みこ))をお連れになっていて、わたしどもは嫉妬いたしました。その内侍が原因で、小松の中将様はお逃げになったのに違いないと噂されました。そして、一ノ谷の合戦のあと、再び、屋島に戻っていた頃、小松の中将様が熊野で入水(じゅすい)してお亡くなりになったとの噂が流れて参りまして、わたしどもは悲しみました」
「小松の中将様は熊野から琉球に行ったかもしれません」と佐敷ヌルは言った。
「えっ」と千代尼は驚いたようだった。
「わたしたちはそれを調べるために、ヤマトゥにやって来たのです」
琉球というのは南の島なのですか」
「そうです。当時、熊野水軍は交易のために琉球に来ていたのです」
「小松の中将様が生きておられた‥‥‥」
 そう言って、千代尼は泣いていた。
「できれば、主上の事も調べてください」と千代尼は泣きながら言った。
「わかりました」と佐敷ヌルは答えた。
 神様から頼まれて、やらなければならないと思っていた。
「わたしは安徳天皇様の事を知りません。調べるにはその人の事を知らなければなりません。話していただけますか」
 千代尼は話してくれた。
 安徳天皇父親高倉天皇で、母親は平清盛の娘の徳子(建礼門院)。高倉天皇の母親は、清盛の妻、時子(二位尼)の妹なので、高倉天皇と徳子は従姉弟(いとこ)同士だった。徳子は高倉天皇より六歳年上で、十八歳の徳子が、十二歳の高倉天皇に嫁いだ。清盛は徳子が皇子(おうじ)を産むのを切望するが、徳子はなかなか妊娠しなかった。嫁いでから六年目、ようやく、安徳天皇が生まれたのだった。
 安徳天皇は三歳で天皇になり、六歳になった七月、木曽義仲(きそよしなか)率いる源氏の大軍が攻めて来て、京都を追われた。船に乗って九州まで行くが、九州でも裏切り者が多く出て、安住の地はなく、十月になって、やっと屋島に落ち着いた。その頃、大軍を率いて鎌倉から攻めて来た源義経(みなもとのよしつね)と、京都を守っていた木曽義仲が戦(いくさ)を始めた。その隙を狙って、平家は勢力を盛り返し、翌年の正月には福原(神戸市)に戻る事ができた。京都に戻れる日も近いと思われたが、二月に源氏軍に攻められ(一ノ谷の合戦)、多くの武将を失って屋島に逃げ帰った。
 屋島に行宮(あんぐう)もでき、約一年間は安徳天皇も平安な日々を過ごした。各地で、平家と源氏は戦っていたが、水軍を持たない源氏は屋島まで攻めては来なかった。京都にいた時よりも安徳天皇はのびのびとしていて、子供らしく楽しそうだったという。
 一年後、悪夢のように源氏が攻めて来た。安徳天皇は船に乗って屋島をあとにした。瀬戸内海の島々を転々として、最後には壇ノ浦で全滅してしまった。
安徳天皇様はどこで身代わりと入れ替わったのですか」と佐敷ヌルは聞いた。
「壇ノ浦の近くにある彦島でございます。その島は中納言(ちゅうなごん)様(平知盛(たいらのとももり))が拠点にしておりました。そこで、主上とお別れしたのでございます。あのあと、どうなったのか、ずっと気になっております」
「南の島で、平家とつながりのある島はありますか」
「島の名前はわかりませんが、硫黄(いおう)が採れる島があって、その硫黄は宋(そう)の国との交易に使われていると聞いた事がございます」
 琉球奄美鳥島から硫黄を採っているが、他にも硫黄が採れる島があるのだろうかと佐敷ヌルは思った。佐敷ヌルは知らなかったが、何度もヤマトゥに来ているササは、口永良部島(くちのえらぶじま)から坊津に行く途中、煙を上げている島を何回か見ていて、あの島に違いないと思った。
「ヤマトゥから帰る時に調べてみます」と佐敷ヌルは言った。
「お願いいたします」と千代尼は頼んだあと、赤間関(あかまがせき)(下関)の阿弥陀寺(あみだじ)に安徳天皇のお墓がありますが、あれは偽物ですと言った。
主上が壇ノ浦で入水する前に、法皇様(後白河法皇)は、主上の弟君(おとうとぎみ)(後鳥羽天皇)を即位させました。弟君を天皇にするには、先代が崩御(ほうぎょ)しなければなりません。主上が亡くなったという事にして、立派なお墓を造ったのでございます」
 佐敷ヌルとササは玉依姫に感謝して、千代尼と別れ、水天宮をあとにして、一文字屋の知り合いの宿屋に泊まって博多に戻った。
 六月十一日、交易船より先に博多を発ったササたちは、船の上から、平家の拠点となった彦島を見て、平家と源氏が決戦をした壇ノ浦を見ながら瀬戸内海に入った。上関(かみのせき)で村上水軍のあやと再会して、あやの案内で厳島神社に向かった。
 厳島神社は海の上に建つ美しい神社だった。『浦島之子(うらしまぬしぃ)』に出てくる龍宮(りゅうぐう)はこんな感じなのだろうとササたちは思った。
 あやに従って、海の上に続いている回廊を渡って、拝殿に参拝したあと、ササたちは弥山に登った。
 山の中にはあちこちに大きな石がごろごろしていた。そして、山頂にも大きな石がいくつもあって、古いウタキのようだった。ここはスサノオとは関係なさそうだし、語りかけてくる神様もいないだろうと思いながらも、ササと佐敷ヌルはお祈りを捧げた。
 思っていた通り、神様の声は聞こえなかった。ササと佐敷ヌルが顔を見合わせて首を振り、立ち上がろうとした時、
「ちょっと、待って」とシンシンが言った。
「神様が降りて来るわ」
「えっ」とササと佐敷ヌルは驚いて、シンシンを見た。
 ナナとシズとあやも驚いていた。
 シンシンは無心にお祈りを続けていた。
 サタルーたちはお祈りには加わらず、あちこちにある大きな石を散策していた。
 シンシンのガーラダマ(勾玉)が一瞬、光ったような気がした。ササは佐敷ヌルにうなづくと、もう一度、お祈りを始めた。
「あなたは誰ですか」と神様の声が聞こえた。
「シンシンと申します」とシンシンが神様に答えた。
琉球から参りました。神様はどなたなのですか」
琉球‥‥‥やはり、間違いではなかったのですね。あなたが身に付けているガーラダマは、わたしが身に付けていたガーラダマです。また、こうして会えるとは思ってもいませんでした。わたしは厳島神社の内侍、アキシノと申します」
「あなたはどうして、琉球に行かれたのですか」とシンシンは聞いた。
「どうしてなのか、わかりません。神様のお導きとしか申せません」
「あなたは小松の中将様と一緒に琉球に行ったのですね」と佐敷ヌルがアキシノに聞いた。
「どうして、それを知っているのですか」
 アキシノは驚いていた。
「わたしは琉球の安須森ヌルに頼まれて、安須森を滅ぼした者を探しにヤマトゥに参りました。安須森を滅ぼしたのは、小松の中将様ではありませんか」
「それは‥‥‥」とアキシノは口ごもったが、力ない声で、「その通りです」と言った。
「言い訳に過ぎませんが、あれは言葉が通じなかったために起こってしまった悲劇なのです。ヤマトゥには女人禁制(にょにんきんぜい)の山はありますが、殿方が登れない山はありません。小松の中将様はただ山に登って、島の様子が知りたかっただけなのです。それを止めようとした安須森ヌルは、無礼者めと与三兵衛(よそうひょうえ)様に斬られてしまいました。山から降りて来たら、村の者たちが襲って来たので、仕方なく、戦になってしまったのです。戦わなければ、こっちが殺されてしまいます。実際、あの時は、わたしどもも恐ろしかったのです。南の島には人を喰う恐ろしい者たちがいると聞いておりましたから、呪いを掛けているに違いないと言って、お祈りをしているヌルたちも皆、殺してしまったのです。安須森ヌルの娘さんも殺されそうになりましたが、わたしが助けました。島の言葉をその娘から教えてもらうと言って助けたのです。他の者たちは皆、殺されてしまいました」
 言葉が通じなかったために、安須森が全滅されたなんてひどすぎる事だった。唖然として、佐敷ヌルは言葉も出なかった。
「安須森ヌルの娘さんはその後、どうなったのですか」とササが聞いた。
「小松の中将様が築いたお城で、わたしたちの娘を立派なヌルに育てたあと、古いウタキに籠もられ、その地でお亡くなりになりました」
「わたしたちの娘という事は、アキシノ様は小松の中将様と一緒になられたのですか」
「そうです。息子も生まれて、中将様の跡を継いで、按司(あじ)になりました。今ではわたしどもの子孫たちが、かなり琉球にいると思います」
「小松の中将様が築いたお城は、今帰仁(なきじん)グスクですね?」と佐敷ヌルが聞いた。
「そうです。お城の周りに島の人たちが住み着くようになって村ができ、いつしか、イマキシル(今来治ル、外来者が納める所)と呼ばれるようになりました。それがなまってナキジンとなったのです」
「あなたはどうして帰って来たのですか」とシンシンが聞いた。
「中将様を迎えに参ったのです。ヤマトゥに行ったまま、なかなか帰って来ないので、連れ戻しに参ったのです。京都に行く途中、ここに寄ってみたら、その懐かしいガーラダマを見つけたのです」
「中将様もこちらにいらっしゃるのですか」と佐敷ヌルは驚いて聞いた。
「昔のお仲間が懐かしいのでしょう。時々、帰って来るのですよ」
「中将様に会わせていただけないでしょうか」
「あなたたちは笛がお上手のようですね。中将様も笛がお上手で、舞の名人でした。きっと、喜んでお会いすると思います」
「今、どちらにいらっしゃるのですか」
「京都です。京都を追われるまで、贅沢な暮らしをしていたので忘れられないのです。六波羅(ろくはら)のお屋敷があった所か、あるいは大原の山の中かもしれません。今頃、昔のお仲間と楽しく過ごしているのでしょう」
「わたしたちも京都に行きます。是非、会わせてください」
「わかりました。京都に行ったら平野神社にいらしてください。御案内いたします」
「ありがとうございます」
 佐敷ヌルがお礼を言うと、
「このガーラダマは読谷山(ゆんたんじゃ)の山の中から出てきました。どうして、あなたのガーラダマがあそこから出てきたのですか」とシンシンが聞いた。
今帰仁に落ち着いて、しばらくしてから、わたしは島の様子を調べるために南部に行きました。わたしどもを琉球に連れて行ってくれた熊野水軍の者から、南部に栄えている都があると聞いていました。浦添(うらしい)のグスクを見て、真玉添のヌルたちの村を見て、大里(うふざとぅ)の城下を見て、玉グスクの城下を見て、また真玉添に戻って来た時、ヤマトゥから来た理有法師(りゆうほうし)に襲われたのです。わたしたちは真玉添のヌルたちと一緒に逃げました。逃げる途中、読谷山の山の中に、みんなのガーラダマを隠したのです」
「どうして、隠したのですか」
「わたしにはわかりません。神様のお告げがあったのではないでしょうか。わたしのガーラダマも一緒に埋められてしまったのです」
「理有法師は平家の陰陽師(おんようじ)だと聞いていますが、あなたは御存じでしたか」とササが聞いた。
「知っておりました。福原殿(平清盛)がお連れしているのを何度かお見かけしました。恐ろしい御方です。福原殿は理有法師を利用するつもりで、側近くに仕えさせたのですが、邪悪な心を見抜いて、遠ざけようとなさいました。しかし、逆に理有法師の妖術に掛かって亡くなってしまわれたのです。福原殿が亡くなってからは姿を見ませんでしたが、琉球に来ていると知った時は背筋が凍り付く程、恐ろしくなりました。きっと、中将様を追って来たのに違いないと思いました。早く、中将様に知らせなければならないと、南風が吹くのを待っていたのですが、その前に、真玉添が襲撃されてしまったのです。わたしたちはヌルたちと一緒に与論島まで逃げました。もし、理有法師が追って来たら大変なので、今帰仁には寄らずに、与論島まで行ったのです。それでも、今帰仁が心配で、冬になったら今帰仁に帰りました。理有法師が来ていないので、ほっとしました。与三兵衛様が浦添まで様子を見に行って、浦添按司と朝盛法師(とももりほうし)という御方が、理有法師を倒したと聞いて、助かったと思い、わたしは神様に感謝いたしました」
「朝盛法師は知らなかったのですか」
「知りません。与三兵衛様から、理有法師を追って来た源氏の陰陽師だと聞きましたが、わたしは知りませんでした。それよりも、浦添按司父親が新宮の十郎だと聞いた時は驚きました。新宮の十郎が、三条宮(さんじょうのみや)様(以仁王(もちひとおう))の令旨(りょうじ)を各地の源氏のもとへ伝えたのが、平家の悲劇の始まりとなったのです。中将様はそれをお聞きになって、笑いました。新宮の十郎は源氏の武将としては二流だったが、琉球に子孫を残していたとは見直した。あいつは戦死したし、琉球の倅には罪はあるまいと言っておられました」
「このガーラダマなのですが、あたしが身に付けていてよろしいのでしょうか」とシンシンが聞いた。
「わたしはあのあと、読谷山まで行って、そのガーラダマを探しましたが、見つかりませんでした。あなたが見つけたのなら、あなたが身に付けるべきです。それが神様の思し召しです」
「アキシノを継ぐという事ですか」
「アキシノは今帰仁ヌルの神名(かみなー)になっていますので、アキシノの名は継げません。そのガーラダマは、わたしが神様のお告げを聞いて、このお山で見つけたものです。綺麗な海の色をしていて、海の神様がわたしに授けてくださったものと思いました。そのガーラダマを手に入れて、しばらくして、中将様が京都から逃げて参りました。そして、琉球に行く事になったのです。そのガーラダマのお陰で、無事に琉球に着けたとわたしは信じております。きっと、あなたの航海を守ってくださるでしょう」
「ありがとうございます」とシンシンはお礼を言った。
「新三位の中将様(平資盛)を御存じですか」と佐敷ヌルが聞いた。
「はい、存じております。小松の中将様の弟です。新三位の中将様が今帰仁に現れた時には驚きました。戦死してしまったと思っていましたので、小松の中将様も驚いたあと、再会を喜んでおりました」
「新三位の中将様が今帰仁に来られたのですか」と佐敷ヌルもササも驚いていた。
「新三位の中将様は奄美の大島(うふしま)にいると申しておりました。新三位の中将様だけでなく、小松の少将様(平有盛)も左馬頭(さまのかみ)様(平行盛(たいらのゆきもり))も奄美の大島にいると聞いて、小松の中将様は大層喜んでおりました」
「小松の少将様と左馬頭様も兄弟なのですか」
「小松の少将様は弟です。左馬頭様は従弟(いとこ)です。お三人は安徳天皇様を連れて、逃げて来たようですが、その天皇は偽者だったと言っておりました。まさか、偽者だったなんて思わず、種子島(たねがしま)に着いた時、偽者に気づいたそうです。それでも、付き従って来た者たちに、今更、偽者とは言い出せず、そのまま旅を続け、奄美の大島に落ち着いたそうです。偽者は大島の隣りの鬼界島(ききゃじま)にいると申しておりました」
「偽者だったのですか」と佐敷ヌルは驚くと同時に、がっかりした。ヤマトゥの帰りに、島々を巡って探そうと張り切っていたのに、偽者だったなんて、急に力が抜ける思いだった。
「本物の安徳天皇様はどこに行ったのですか」とササが聞いた。
「わかりません」
「神様にもわからないのですか」
「当時、平家の棟梁(とうりょう)だったのは内府(だいふ)殿(平宗盛(たいらのむなもり))でしたが、実際に戦の指揮を執っていたのは、中納言様(平知盛)でした。中納言様か、安徳天皇、御本人から聞けばわかるのですが、どこにいらっしゃるのか見つからないのです。中将様もその事が気になっていて、度々、ヤマトゥに来るのかもしれません」
 ササは佐敷ヌルとシンシンを見て、まだ何か聞きたい事ある? という顔をした。佐敷ヌルもシンシンも首を振った。
「色々と教えていただきありがとうございました」とササはお礼を言って、京都の平野神社での再会を約束した。
 神様が去って行ったあと、ササはシンシンに笑って、「凄いじゃない」と言った。
「あたし、神様とお話ししたわ」とシンシンは胸に下げたガーラダマをじっと見つめた。
「凄いわ」とナナとシズとあやも、シンシンを尊敬の眼差しで見ていた。
「シンシンがそのガーラダマを選んだのも、ちゃんと理由(わけ)があったのね。シンシンがそのガーラダマを身に付けていなかったら、アキシノ様にも会えなかったわ。アキシノ様のお陰で、小松の中将様とも会えるのよ。シンシンのお手柄だわ。ありがとう」
 シンシンはササにお礼を言われて、照れていた。
「この山はすげえな」とサタルーとウニタル、シングルーがやって来た。
「これは自然にできたもんじゃねえぞ。誰かがこんな大きな石を積み上げたんだ。一体、誰がそんな事をしたんだ?」
「神様のために、昔の人たちが必死になってやったのよ」とササが言って、一行は山を下りた。

 

 

 

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