長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-172.ユウナ姫(第一稿)

 ササたちはドゥナンバラのツカサの案内でウラブダギ(宇良部岳)に登っていた。
 サンアイ村から坂道を下ってタバル川に出て、丸木橋を渡って密林の中に入った。密林の中にある沼を右に見ながら進んで、沼の先をしばらく行くとアラタドゥと呼ばれる分岐点に出た。右に行くとドゥナンバラ村に行き、左に行くとダティグ村に行く。ササたちは右に曲がって、ドゥナンバラ村を目指した。
 ドゥナンバラ村はユウナ姫が造った一番古い村だった。ユウナ(オオハマボウ)の木に囲まれた広場の周りに、サンアイ村と同じような造りの家が建ち並んでいた。
 クマラパの娘、ラッパの案内で、ドゥナンバラのツカサと会った。クマラパもツカサも再会を喜んでいた。もう六十を過ぎているとクマラパは言ったが、とても、そんな年齢(とし)には見えなかった。狩俣(かずまた)のマズマラーのような力強さはなく、優しそうな人だった。
 ツカサはササたちを歓迎して、ユウナ姫様があなたたちを待っていると言って、さっそく、ウラブダギへと案内した。
「ここは昔、ユウナバルと呼ばれていたらしいわ」とツカサは歩きながら言った。
「夏になるとユウナの花だらけになるのよ。辺り一面が黄色くなって、とても綺麗なのよ」
「どうして、ユウナがドゥナンになったのですか」とササは素朴な疑問を聞いた。
「いつ頃からドゥナンになったのか、わからないんだけど、風のせいじゃないかしら。この島は年中、海から風が吹いているの。風が強くて、よく聞こえない『ゆ』が『どぅ』に変化したんじゃないかしら。よくわからないけどね」
 『ゆうな』が『どうな』になって、『どぅなん』になったのかと、ササたちは一応、納得した。
 ウラブダギはこの島で一番高い山と言っても、大した高さはないので、すぐに山頂に着いた。途中、大きな蝶々が優雅に飛んでいて、ササたちを歓迎してくれた。夜になれば、アヤミハビル(ヨナグニサン)という大きな蛾も見られるとラッパは言った。
 山頂の近くに大きな岩があって、そこがユウナ姫のウタキだった。男たちには山頂で待っていてもらって、女たちはツカサに従って、お祈りを捧げた。
 ユウナ姫はササたちにお礼を言って、母(イリウムトゥ姫)がこの島にスサノオを連れて来てくれたと言った。
「母から御先祖様のスサノオ様の事は聞いていたけど、こんな遠くの島にやって来るなんて思ってもいなかったので、腰を抜かすほどに驚いたわ」と言ってユウナ姫は笑った。
 美しい声をしていて、姿を見たら、きっと美人だろうとササは思った。
「ユウナ姫様がこの島にいらした時、やはり、この島にも南の国から来た人たちが暮らしていたのですか」とササは聞いた。
「驚いた事に、誰も住んでいなかったのよ」とユウナ姫は言った。
「えっ!」とササたちは驚いた。
「この島に来る前、クン島(西表島)のウミンチュたちから、三十年くらい前に、ユウナ島に火の雨が降って、住んでいた島人(しまんちゅ)たちは全滅したと聞いていたの。でも、火の雨が降るなんて信じられなかったわ。この島に来て、あちこちに黒焦げになった木があって、火の雨が降って、みんな焼けてしまったらしいとわかったの。火の雨と関係があるのかわからなかったけど、軽い石もあちこちに落ちていたわ。わたしたちは島中を巡って、生き残った人たちを探したけど、見つからなかったの。それでも、不思議と虫や蝶々、蛇やネズミは生き残ったらしくて、山の中にいたわ。わたしたちはこの島に十人で来たんだけど、子孫を増やすには、もっと連れて来なければ無理だと思ったわ。それで、クン島から十組の若者たちを連れて来て、ユウナバル村を造ったのよ。馬(んま)や牛、鶏(にわとぅい)も連れて来て増やしたわ。わたしは従兄(いとこ)のインヒコと結ばれて、五人の子供を産んだの。三女は生まれてすぐに亡くなってしまったけど、長女はわたしの跡を継いで、次女はクブラ村のツカサになったわ。二人の息子は村造りに貢献してくれたのよ。わたしたちがこの島に来て、五年目の夏だったわ。タオという男が丸木舟(くいふに)に乗って、この島にやって来たの。言葉が通じなくて困ったけど、身振り手振りで話をして、タオが以前、この島に住んでいた事がわかったのよ。タオが八歳の時、火の雨が降ったらしいわ。島は火の海になって、海に逃げた人たちのほとんどが黒潮(くるす)に流されて、遭難してしまって、西方(いりかた)にある大島(うふしま)にたどり着いたのはタオと父親、あと数人しかいなかったらしいわ」
「西方の大島というのは、ターカウ(台湾)の事ですか」とササは聞いた。
「そうよ。晴れた日には西の彼方に大きな島が見えるのよ」
「どうして、西に逃げたのですか。東(あがり)に行けばクン島やイシャナギ島(石垣島)があるのに」と安須森(あしむい)ヌルが聞いた。
「大島はタオたちの故郷だったようだわ。とっさの事で、皆、故郷を目指して逃げたようなの。それに、タオたちが住んでいたのは、この島の西にあるクブラだったのよ。その時は火の雨というのがどんなものなのか、わたしにはわからなかったけど、一千年の間に、何回か火の雨が降っているのよ。海の中にある火山が噴火していたんだわ。この島を全滅したほどの大きな噴火はなかったけど、海の中から火が飛び出して来るのよ。その前後には大きな地震もあるわ。火の雨の正体は真っ赤に燃えた軽石だったのよ。噴火のあと、海に浮いていた軽石はあちこちの島の浜辺に流されて来たわ」
 話を聞いていたササたちは驚いていた。海の中の火山が噴火するなんて思ってもみない事だった。
「タオはもっと早くに戻って来たかったようだけど、父親が許さなかったらしいわ。お前には黒潮は越えられない。死にに行くようなものだと言われたみたい。父親が亡くなって、タオはウミンチュたちから黒潮の事を詳しく聞いて、体も鍛えて、この島までやって来たらしいわ。タオは懐かしそうに島を巡って、昔、呼ばれていた地名を教えてくれたわ。火の雨で亡くなった人たちのためにも、当時の地名を残した方がいいだろうと思って、今、呼ばれている地名のほとんどはタオたちの御先祖様が付けた地名なのよ。このお山もそうだわ。タオは一旦、大島に戻って、家族たちと仲間を連れてやって来たわ。家族の中には幼い子供たちもいて、よく黒潮を乗り越えてやって来たと感心したわ。タオたちはクブラの村を再興したのよ。あとでわかったんだけど、タオの母親と幼い姉弟(きょうだい)はおうちの中にいて、焼け死んでしまったらしいわ。タオは母親と姉弟を弔うためにも、この島に戻って来たかったのよ。わたしの次女はクブラ村に行って、タオの孫息子と結ばれたわ。クブラ姫になってクブラダギ(久部良岳)に祀られているわ。クブラ姫の次女がダンヌ姫になって、ダンヌ村を造ったのよ。四代目のダンヌ姫の次女がサンバル村を造ったわ。サンバル村は六十年ほど前、ダンア村に移動して、五十年近く前、ブシキ村と一つになってサンアイ村ができたのよ。アディク村は従妹のメイヤが造って、ユシキ村はわたしの孫娘が造ったわ。どちらもなまってしまって、アディク村はダティグ村に、ユシキ村はブシキ村と呼ばれるようになったの。ナウンニ村は四代目のユシキ姫の次女が造った村だわ。わたしの子孫たちとタオの子孫たちで、この島を造ってきたのよ」
「三百年前に、大津波は来ませんでしたか」と安須森ヌルが聞いた。
「イシャナギ島は大津波にやられたようだけど、この島は大丈夫だったわ。ナンタ浜に大波が来たけど、あの湿地帯には誰も住んでいないし、ウミンチュたちは異変に気づいて、高い所に避難したから被害はなかったのよ」
「ミャーク(宮古島)を襲った倭寇(わこう)の佐田大人(さーたうふんど)は、この島に来なかったのですか」とナナが聞いた。
「ターカウ(台湾の高雄)に行くお船はこの島に来るけど、ターカウからミャークに向かうお船はこの島には来ないのよ。ターカウはこの島より、かなり南方(ふぇーかた)にあるらしいわ。ターカウから船出したお船はパティローマ(波照間島)に寄って、そこから黒島(ふしま)に寄って、多良間島(たらま)に寄って、ミャークに帰るはずよ」
「この島からミャークに行くのは難しいという事ですか」とササは聞いた。
「この島では西風(うてぃぶち)は滅多に吹かないの。九月頃、戌亥(いんい)(北西)の風が吹くので、その風に乗ってパティローマまで行って、南風(ぱいかじ)の吹く夏まで待ってから、北上してミャークに行く事になるわ」
 九月まで帰れないなんて大変な事だった。ターカウに行ったら、ここには戻って来られない。この島にいるうちに、この島の事をもっと知らなければならないとササは思った。
 ユウナ姫と別れて、ウラブダギを下りたササたちがダティグ村に行こうとしたら、今晩はこの村に泊まって行ってねとツカサに言われた。
「あなたたちが来るって聞いて、六人のツカサが集まって相談したのよ。各村々で歓迎の宴(うたげ)を開いて一泊してもらい、そのあとはあなたたちが好きな村に滞在してもらおうってね」
 ツカサたちが決めたのなら従わなければならなかった。六つの村を見るのに六日も掛かるけど、この島でのんびりするのもいいだろうとササは思った。
 広場の近くに、ササたちのために新築した家が四軒建っていた。その事もツカサたちで決めたようだった。ササたちが家の中で休んでいると、若ツカサのラッパが娘のフーと一緒に、お握りを持ってやって来た。フーは十七歳で、父親はアコーダティ勢頭の長男のマフニだという。マフニはアコーダティ勢頭の跡を継いで、今頃はトンド(マニラ)に行っているはずだった。
「お父さんはよく来るの?」と聞いたら、フーは首を振って、「三年前に会いました」と言った。
 クマラパたちの家にお握りを持って行ったナーシルが、「誰もいないわ」と言って戻って来た。
「父はみんなを連れて、母のおうちにいましたよ」とラッパが言った。
「早々と酒盛りを始めているに違いないわ」とナナが言った。
「お酒は今晩、飲めるわ。それより、この村に古いウタキはありませんか」とササはラッパに聞いた。
「この村はユウナ姫様が造った村なので、それよりも古いウタキはありません。でも、何だかよくわからないけど、ウタキのような所はあります」
 お握りで腹拵えをして、ササたちはラッパの案内で、村の南側にある小高い丘に登った。密林を抜けると急に視界が開けて海が見えた。
 キャーキャー騒ぎながら若ヌルたちが駈け出した。
「崖だから気を付けて!」とラッパが叫んだ。
 フーは若ヌルたちと一緒にいた。若ヌルたちのお姉さんという感じだった。
 高い崖から下を見下ろすと奇妙な岩が海の中に立っていた。
「トゥンガン(立神岩)と言って、南の国から来た人たちが、神様として崇めていたのかもしれないって祖母が言っていたわ」とラッパが言った。
 そう言われてみれば、どことなく神々しさが感じられた。
 崖から離れて岩場だらけの所を通って、密林を抜けると、また海岸に出た。そこは奇妙な岩場だった。平たい岩が幾重にも重なっているように見えた。岩場の上に上がると眺めがよくて気持ちよかった。
「ここはサンニヌ台といいます」とラッパが言った。
「ユウナ姫様がこの島に来て三十年くらい経った頃、ドゥナンバル村で争い事が起こったようです。ユウナ姫様の従妹(いとこ)のメイヤ姫様が何かと威張って、クルマタの女たちが反発したのです。ドゥナンバラ村はユウナ姫様の子供たちと、従妹のメイヤ姫様の子供たちと、クルマタの女たちが産んだ子供たちで成り立っていました。メイヤ姫様はイリウムトゥ姫様のお兄さんの娘です。ユウナ姫様と同じように二代目のウムトゥ姫様の孫なのです。誇りがあったのかもしれません。でも、みんなで力を合わせて作った村に、上下関係は必要ありません。村を統治するツカサ以外は皆、平等だというように、ここで決めたそうです。三人の根人(にっちゅ)が話し合った所なので、三根(さんに)の台と呼ばれるようになったのです。その時は納得したメイヤ姫様でしたが、結局は村から出て行って、ダティグ村を造って、自分がツカサになりました。以後、この島は神人(かみんちゅ)であるツカサ以外は、皆、平等という事を守っています」
「皆、平等ですか‥‥‥」と安須森ヌルが呟いた。
 琉球は皆、平等とは言えなかった。力を持った按司がいて、領地を増やすために戦(いくさ)をして、戦をするために領内の人たちから兵糧(ひょうろう)を集めている。商人たちは銭を稼ぐ事に熱中して、貧しい者たちは益々、貧しくなっていく。兄は琉球を統一して、戦のない平和な国にすると言っているが、それは皆が平等な国ではないだろう。皆が平等に暮らしているこの島は、夢のような島だと安須森ヌルは思った。
 サンニヌ台から下を覗くと、ここにも海の中に奇妙な大きな岩(軍艦岩)があった。
「あれは何?」とササがラッパに聞くと、
「ウプイチ(大きな石)」と言って笑った。
 帰りは密林の中に入らずに草原を通った。馬たちがのどかに草を食べていた。
 村の広場で、歓迎の宴が行なわれた。サンアイ村に負けるものかというように豪華な料理とヤマトゥのお酒が出できて、村の若者たちの歌や踊りが披露された。クマラパが孫娘のフーと武当拳(ウーダンけん)の模範試合をして、村人たちを喜ばせた。
 ササたちはクマラパが武当拳を身に付けている事に驚き、その強さにも驚いていた。クマラパは七十歳の半ばなのに身が軽く、その軽快な動きはヂャンサンフォンとよく似ていた。もしかしたら、ヂャンサンフォンのように百歳以上も生きるのかもしれないとササたちは思った。
 若ヌルたちが騒いでいるので、何事かと見ると大きな蛾が飛んでいた。アヤミハビルだった。その大きさと羽根の美しさにササたちは呆然として、飛んでいるアヤミハビルを見ていた。
 宴が終わったあと、ササと安須森ヌルはツカサに呼ばれた。サンアイ村の時と同じで、これもツカサたちが決めた事だろうかと思った。
「ラッパからあなたたちの事を聞いて驚いたわ」とツカサは言った。
「あなたたちはナーシルの従姉(いとこ)で、琉球の王様の娘だっていうじゃない。わたしが琉球に行った時、苗代大親(なーしるうふや)様のお兄さんは、佐敷按司を隠居して旅に出たって聞いたけど、その旅に出た人が王様になったって本当なの?」
「本当です。父は隠居して、近くの島で一千人の兵を育て、中山王(ちゅうさんおう)を倒して王様になったのです」と安須森ヌルが言った。
「凄いわね」とツカサは目を丸くして驚いていた。
「わたしが琉球に行った時、中山王は丘の上に建つ首里天閣(すいてぃんかく)という凄い御殿(うどぅん)に住んでいたわ。あんなに高い建物を見た事がないから、わたしたちは驚いて言葉も出なかったわ。わたしたちは中山王に歓迎されて、首里天閣に登ったのよ。いい眺めだったわ。中山王の跡継ぎがいる浦添(うらしい)グスクも凄いグスクだったわ。高い石垣に囲まれていて、絶対に攻め落とす事なんてできないだろうと思ったわ。あなたたちのお父様はあのグスクを攻め落としたの?」
浦添グスクは焼け落ちて、首里天閣のあった所に首里グスクができて、新しい都もできました。是非、琉球にいらしてください。そして、正確に言うと、安須森ヌルは中山王の娘ですけど、わたしは姪です。わたしの母は中山王の妹の馬天(ばてぃん)ヌルです」
「えっ、馬天ヌル‥‥‥」と言ってツカサは昔を思い出していた。
「馬天浜で会ったわ。赤ちゃんを連れていたけど、あの時の赤ちゃんがあなたなのね?」
 ササはうなづいた。赤ん坊の時に会っていたなんて驚きだった。ササはツカサの顔をじっと見つめたが、思い出せなかった。
「わたしはユミに頼まれて、ナーシルが生まれた事を苗代大親様に伝えたのよ。苗代大親様は喜んで、ナーシルの守り刀にしてくれって言って、短刀をくれたのよ。今もナーシルが持っているはずだわ」
「父が隠居して、兄が佐敷按司になりましたが、兄には会わなかったのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「残念ながら会っていないわ。佐敷按司様は奥さんと一緒に旅に出ているって馬天ヌル様が言ったわよ」
 夫婦揃っての毎年、恒例の旅だわと安須森ヌルは思った。きっと、首里天閣を見に行ったのだろう。もし、兄がドゥナンバラ村のツカサと会っていたら、ナーシルの事もわかったかもしれない。そしたら、もっと早く、南の島に行く船を出したかもしれなかった。でも、あの頃の安須森ヌルは豊玉姫(とよたまひめ)の事も、琉球の古い歴史の事も知らなかった。この島に来たとしても、神様の事は何もわからなかったに違いない。やはり、今、この島に来た事が重要なんだと思った。
 ツカサと別れて家に戻ると、ジルーたちの家が賑やかだった。昨夜(ゆうべ)のサンアイ村でもそうだった。村の娘たちが訪ねて来ていて、ジルー、ゲンザ、マグジ、ガンジューは鼻の下を伸ばして、でれでれとしていた。ササは男たちに文句を言ったが、一番、怒っていたのはミッチェだった。ミッチェの剣幕に驚いて、ガンジューは俯いたまま何も言えなかった。それなのに、懲りずにまた村の娘たちと楽しそうに酒を飲んでいるようだ。
 ササたちが怒鳴り込んでやろうと顔を出したら、一緒にいたのはミッチェ、サユイ、タマミガ、ミーカナ、アヤー、ナーシル、それに玻名(はな)グスクヌルもいた。
「見張っているのよ」とミッチェが言って、
「村の娘たちは、この様子を見て帰って行ったわ」とタマミガが笑った。
 ササたちも加わって、酒盛りの続きをした。
 次の日、ササたちはナーシルの案内でダティグ村に行った。
 ダティグ村を造ったのはユウナ姫の従妹のメイヤ姫で、メイヤの夫はユウナ姫の弟のトゥイヒコだった。トゥイヒコは姉とメイヤ姫が対立するのを見かねて、新しい村を造ろうと言い出した。東崎(あんあいさてぃ)の近くに新しい村を造って、アディクの木がいっぱいあったので、アディク村と名付けた。アディクの木は堅くて、島人の誰もが持っている槍(やり)の柄になり、実も食べられた。いつしか、アディク村はダティグ村となまってしまった。ただ、木のアディクはダティグとは言わず、アディガと呼ぶらしい。
 東崎から続くダティグチディと呼ばれる高台の裾野にダティグ村はあった。村の造りはどこも似ていて、広場を中心に家々が建ち並んでいた。ササたちはダティグのツカサに歓迎された。
 若ツカサのアックはナンタ浜にササたちの出迎えに来て、一緒にサンアイ村に行ったが、昨日、ササたちがドゥナンバラ村に行く時、分岐点のアラタドゥで別れて、ダティグ村に帰っていた。アックにはユナパという十七歳の娘がいた。名前を聞いて、すぐに与那覇勢頭(ゆなぱしず)の娘だとわかった。ドゥナンバラ村のフーと同い年なので、琉球との交易をやめた与那覇勢頭がターカウに行く時、マフニも一緒に乗って来たようだ。
 アックはアコーダティ勢頭の娘で、ユナパが与那覇勢頭の娘だとすると、アコーダティ勢頭は与那覇勢頭の義父という事になる。アコーダティ勢頭の長男、マフニと結ばれたラッパは、アコーダティ勢頭の義理の娘で、ラッパの父親はクマラパなので、マフニはクマラパの義理の息子でもあるわけだ。何だか複雑な家族関係だった。
 ササたちはユナパの案内でダティグチディに登った。眺めのいい所で、東側の海が見渡せた。ササたちが船の上から見たのは、ここに立っていた見張りのサムレーだった。眺めはいいが、風が強かった。人の声もよく聞き取れず、言葉がなまってしまうのも当然のように思えた。
 ダティグチディにメイヤ姫のウタキがあったのでお祈りを捧げた。
「いらっしゃい」とメイヤ姫の陽気な声が聞こえた。
「ユンヌ姫様と一緒にスサノオ様を送って琉球まで行って来たのよ。初めて琉球に行って来たわ。スサノオ様やユンヌ姫様を連れて来てくれて、本当にありがとう」
 威張っていたと聞いていたので、意地悪な神様かもしれないと思っていたが、ユンヌ姫と仲よくなったとすれば、いたずら好きだが、決して威張ったりはしないだろう。
「サンニヌ台の話を聞きました。メイヤ姫様が威張っていたので、三人の根人が相談して、皆、平等だと決めたと聞きましたが」
「あらやだ」と言ってメイヤ姫は笑った。
「それはわたしの事ではないわ。わたしの夫のトゥイヒコの事を相談したのよ。トゥイヒコはユウナ姫の弟だから、それをいい事に、見境もなく娘たちに言い寄っていたのよ。村を造り始めた頃は子孫を増やさなくてはならなかったので、トゥイヒコの女好きは咎められなかったけど、五十歳近くになるというのに、女好きは治まらず、若い娘たちに言い寄っていたの。その中には自分の娘もいたのよ。このまま放っておいたら大変な事になるので、根人たちが集まって、トゥイヒコの処置を相談したのよ。ユウナ姫はイシャナギ島に連れて行ってしまえばいいと言ったけど、それでは可哀想なので、わたしが新しい村を造って、トゥイヒコも連れて行く事で解決したのよ。そして、一緒に連れて行く女たちはトゥイヒコの血を引いていない女たちにしたの。トゥイヒコは年を取っても女たちに持てたわ。わたしが女たちにトゥイヒコには近づくなって言っていたから、威張っていたという事になってしまったのね」
「そんな事があったのですか」
 他人の話を鵜呑みにしてしまうと真実を見失ってしまう。気を付けなければならないとササは肝に銘じていた。
 歓迎の宴のあと、ダティグ村のツカサから琉球に行った時の話を聞いた。
 ツカサが琉球に行った時、南部で戦(いくさ)があったあとで、残党狩りをしているので南部には行くなと言われたという。その時の南部の戦というのは、島添大里按司(しましいうふざとぅあじ)だった汪英紫(おーえーじ)が島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクを攻め落として、山南王(さんなんおう)になった時の戦だった。佐敷按司は戦には関わらなかったが、山賊になったヒューガと『三星党(みちぶしとー)』のウニタキが裏で活躍したと安須森ヌルはサハチから聞いていた。
「佐敷には行かなかったのですか」と安須森ヌルが聞いたら、
「帰る少し前に行ったわ」とツカサは言った。
登野城(とぅぬすく)の女按司(みどぅんあず)とタキドゥン島の若按司は馬天浜(ばてぃんはま)のサミガー大主(うふぬし)様の所で、鮫皮(さみがー)を作るために島の若者たちを修行させていたの。その若者たちを連れて帰らなければならなかったので、許可を得て行って来たのよ。王様が警護のサムレーを付けてくれたので、自由に動けなくて、うまく苗代大親様に会えるかどうか心配だったけど、サミガー大主様のお屋敷に馬天ヌル様がいたのよ。可愛い娘さんを連れてね。あの娘さんがあなただったのね」
 ササはうなづいて、ツカサの顔を見つめたが、やはり思い出せなかった。
「馬天ヌル様のお陰で、苗代大親様に会えて、ユミとナーシルが元気だと教えてあげたのよ。一緒にドゥナン島(与那国島)まで行きたいって言ったけど、今は無理だって首を振ったわ」
 ツカサはアコーダティ勢頭との出会いも話してくれた。
 丸木舟でミャークからやって来たアコーダティ勢頭は英雄として迎えられて、ドゥナンバラ村にやって来た。当時はナックと呼ばれていた。
「何かを始める時、一番古いドゥナンバラ村が最初で、次がダティグ村、サンアイ村、ナウンニ村、ダンヌ村、そして、最後が二番目に古いクブラ村なの。今回は例外で、ナーシルが琉球に関係あるので、サンアイ村が最初になったのよ」とツカサは言った。
「ナックが来た時、ドゥナンバラ村の若ツカサのパンにはクマラパ様の息子がいたわ。それにナックよりも六つも年上だった。次の日、ナックはダティグ村に来たわ。わたしはナックの心をつかもうと着飾ってお持てなしをしたんだけど、何も起こらず、ナックはサンアイ村に行ってしまったの。サンアイ村のユミとナウンニ村のマヤは、まだ幼いので大丈夫だけど、ダンヌ村のレンは十六で、クブラ村のメイは十七で、その二人は強敵だったわ。ナックはレンかメイに取られてしまったかもしれないと悲しんでいたら、ナックがこの村に戻って来て、わたしはナックと結ばれたのよ。ナックが帰る夏まで、わたしたちは幸せに暮らしたわ。翌年も、その翌年もナックは来たけど、その後は来なくなってしまったの。クマラパ様に聞いたら、ナックはトンドの国に行っていて忙しいって言ったわ。琉球に行く時にミャークに行って再会したけど、昔の面影は消えてしまって、すっかり逞しい船頭(しんどぅー)(船長)になっていたわ」
 次の日、サンアイ村に戻って、隣り村のナウンニ村に行ったら、ムカラーがいた。ムカラーは子供たちと遊んでいて、その中の二人はムカラーの子供だった。
 母親は若ツカサのリーシャで、ムカラーはリーシャと子供たちに会いたくて、ササたちの案内役を志願したのだった。船頭になったマフニに信頼されて、トンドの国に行っているので、なかなかドゥナン島には来られなかった。ムカラーはミャークに妻はいなくて、リーシャが妻だと言っていた。できれば、リーシャと子供たちをミャークに連れて行きたいけど、リーシャはドゥナン島がいいと言う。ムカラーはリーシャの気持ちを尊重して、自分が通うと言ったが、思うようにはいかなかった。今は無理だが、あと何年かしたら、必ず、この島にやって来て、この島に住むと言っていた。
 ナウンニ村のツカサのマヤはダティグ村のツカサの次に琉球に行くはずだったが、子供が幼かったので最後でいいと遠慮した。
琉球には行けなかったけど、ターカウに行って、珍しい物をいっぱい見て驚いてきたわ」とマヤは楽しそうに笑った。
 リーシャの父親はユミの弟のロンだった。幼い頃から父親に武当拳を仕込まれたロンは、武当拳の名人だった。謙虚な人で、その強さをひけらかす事はなく、ナーシルと試合をしても負けているらしい。本当に強くなれば、試合をしなくても相手の強さがわかるはずだ。ナーシルもいつか、本当の強さを手にするだろうとマヤに言ったという。
 ロンはサンアイ村に住んでいるが、マヤと三人の子供がいるので、ナウンニ村によくやって来て、若者たちに武当拳の指導をしているという。マヤは他所(よそ)からやって来る船頭と結ばれて、贅沢な物を手に入れるよりも、村を守るために武当拳の名人を選んだのだった。
 ナウンニ村の歓迎の宴で見た武当拳の演武は、他の村よりも気合いが入っているように感じられた。
 翌日、ササたちは、昔、ダンア村があったというトグル浜に行った。この浜にムラカミという倭寇がやって来た。船を修理するためにしばらく滞在して、ムラカミはユミの母親と結ばれて、ユミが生まれた。そのムラカミがあやの祖父だとしたら、この島にあやの親戚がいる事になる。あやに知らせたら、船を出して会いに来るかもしれないとササは思って、一人で笑った。
 昔、サンバル村があった場所は牧場になっていて、馬と牛が放牧されていた。その牧場の先にダンヌ村があった。
 ダンヌ村のツカサのレンはウプラタス按司の娘だった。野崎按司(ぬざきあず)と結ばれて、娘のユッカが生まれ、ユッカは与那覇勢頭の息子のトゥクと結ばれて、娘のジーナを生んでいる。ジーナは十七歳で、ドゥナンバラ村のフーとダティグ村のユナパと同い年だった。
 レンは琉球に行った時の事を話してくれた。
「その年の琉球旅が最後だったのよ。最後だってわかっていたわけじゃないけど、その年はヌルたちが多く乗っていたわ。ウムトゥダギのフーツカサのマッサビもいたのよ。わたしよりも十歳も年下なのにヌルとしての貫禄があって、凄い神人(かみんちゅ)だと思ったわ。マッサビはミャークの上比屋(ういぴやー)のリーミガといつも一緒にいたわ。二人は同い年で、とても仲良しだったの。イシャナギ島では登野城の女按司、新城(あらすく)の女按司、名蔵(のーら)の女按司がいて、クン島からクンダギのツカサ、ミャークからは百名(ぴゃんな)のウプンマがいたわ。わたしは同年配の登野城の女按司と百名のウプンマと一緒にいる事が多かったの。琉球に行って驚いたんだけど、中山王が亡くなって、息子が跡を継いでいたのよ。わたしは初めて琉球に行ったので、何を見ても驚いてばかりいたけど、何度も行っていた登野城の女按司は、何となく様子がおかしいって言っていたわ。わたしは登野城の女按司に連れられて、馬天浜に行ったのよ。ユミからの言づてもあったので、馬天ヌル様を探したんだけど、旅に出ていて留守だったの。馬天ヌル様には会えなかったけど、苗代大親様には会えて、ユミとナーシルの事を伝えたわ。苗代大親様はナーシルに会いたいと言ったわ。今は無理だけど、いつの日か必ず会いに行くと約束してくれたのよ」
 ササは南の島に船出する前、叔父の苗代大親と会った時、叔父が何かを言いたそうな顔をしていたのを思い出した。あの時、ナーシルの事を告白しようと思ったのかもしれない。でも、叔父は、気をつけて行ってこいと言って笑っただけだった。本心は、叔父も一緒に行きたかったのかもしれないと思った。
「あの時、馬天浜で一人で遊んでいる女の子がいたわ。マッサビ様が女の子に声を掛けたら、『遠い国から来たのですね』と女の子が言ったので、あたしたちは驚いたわ。女の子は海の方をじっと見つめて、『高い山が見えるわ。綺麗な滝もあるわ』と言ったのよ。マッサビ様は笑って、この娘(こ)、今に凄いヌルになるわねって言ったわ。もしかしたら、その女の子はあなたではなかったの?」
 そう言ってレンはササを見た。
 ササの脳裏に当時の情景がはっきりと思い出された。当時、六歳だったササは旅に出てしまった母を思いながら浜辺で貝殻を拾っていた。寂しくて泣きたくなった時、見た事もない女の人たちが近づいて来て声を掛けて来た。
 マッサビがいた。ブナシルもいた。上比屋のリーミガもいた。百名のウプンマもいた。クンダギのツカサもいた。そして、目の前にいるレンもいた。ササは十八年前に、それらの人たちに会っていたのだった。
 マッサビから南の島の話を聞いた。幼いササは行ってみたいと思った。すっかり忘れていたが、心の奥に残っていた記憶が、ササを南の島へと誘(いざな)ったのかもしれなかった。

 

 

 

国泉 どなん クバ巻 43度 600ml  [泡盛/沖縄県]

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第二稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第二稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第二稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第二稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第二稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第二稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第二稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第二稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第一稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第一稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第一稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第一稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。
  165. ウムトゥ姫とマッサビ(第一稿)   ササたち、ノーラ姫とウムトゥ姫に会う。
  166. 神々の饗宴(第一稿)   於茂登岳の山頂で、神様たちと酒盛り。
  167. 化身(第一稿)   名蔵の白石御嶽と水瀬御嶽で神様と会う。
  168. ヤキー退治(第一稿)   ササたち屋良部岳に登り、山頂で雷雨に遭う。
  169. タキドゥン島(第一稿)   タキドゥンの話を聞いて驚くササたち。
  170. ユーツンの滝(第一稿)   クンダギに登って、イリウムトゥ姫と会う。
  171. ドゥナン島(第一稿)   ササたち、クン島からドゥナン島へ向かう。
  172. ユウナ姫(第一稿)   ウラブダギに登ったササたち、ドゥナン島の村を巡る。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司の重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司
チルカマ      1349-    クマラパの妹。先代の石原按司
阿嘉のトゥム    1365-    久米島からミャークに渡った兄弟の弟。伊良部島に住む。
スタタンのボウ   1360-    多良間島の女按司。クマラパの弟子。
ハリマ大殿     1359-    ボウの夫。ターカウの倭寇
平久保按司     1355-    石垣島按司。ターカウの倭寇
ブナシル      1360-    名蔵の女按司
マッサビ      1369-    ウムトゥダギのフーツカサ。池間島出身。
サユイ       1391-    マッサビの娘。弓矢の名人。
阿嘉のグラー    1362-    マッサビの夫。久米島からミャークに渡った兄弟の兄。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。

 

2-171.ドゥナン島(第一稿)

 ササたちは十日間、クン(古見按司と対抗するために、ユーツン(高那)の若者たちと娘たちを鍛えていた。
 若ツカサのリンとユマは思っていたよりも強く、若者たちもその強さに驚いていた。二人はミッチェのもとで修行を積んで、ユーツンに帰って来てからも稽古は続けていたが、その実力を披露する事はなかったので、誰もその強さを知らなかった。二人の強さを知った若者たちは、女に負けてはいられないと真剣に剣術の稽古に励んだ。
 あとの事はリンとユマに任せておけば大丈夫だろうと、ヤマトゥの刀を五十本贈って、十月の末、ササたちはドゥナン島(与那国島)に向かった。
 ドゥナン島は思っていたよりも遠かった。天気がよくて波も穏やかだったが、風に恵まれなかった。ササは焦る事はないわと言ったが、ジルーは船乗りたちに艪(ろ)を漕がせた。
 太鼓の音に合わせて掛け声が響き渡り、船は気持ちよく進んで行った。一時(いっとき)(二時間)ほど漕ぐと風が出て来た。漕ぐのをやめて、帆を上げて、あとは風の力で進んで行った。
 正午(ひる)前に丁度中間地点に来たのか、前方にドゥナン島が見え、後方にクン島(西表島)が見えた。
「このまま順調に行けば、日が暮れる前にナンタ浜に着くでしょう」とムカラーが言った。
「ただ、ドゥナン島の手前に難所があって、船がかなり揺れますので覚悟していてください」
 ササはうなづいて、クマラパからドゥナン島の事を聞いた。
 クマラパは楽しそうに笑って、
「ドゥナン島は、男にとって夢の島じゃよ」と言った。
「どういう意味ですか」と安須森(あしむい)ヌルが聞いた。
「あの島には夫婦という決まりがないんじゃ。男は女のもとに通い、女が承諾すれば結ばれるんじゃよ。生まれた子供は女が育てる。夫婦という決まりがないから、男は別の女の所にも通うし、女は別の男でも気に入れば迎えるんじゃ。それは島人(しまんちゅ)だけでなく、よそ者にも言える事なんじゃよ。島の女が受け入れてくれれば、いい思いができるというわけじゃ」
「クマラパ様もいい思いをしたのですね?」と安須森ヌルが横目で睨んだ。
「ドゥナン島にわしの子供が二人おるんじゃよ。まだ、マズマラーに出会う前の事じゃ。息子はすでに四十を過ぎ、娘も三十の後半じゃ。前回、行ったのは五年前じゃった。タマミガと多良間島(たらま)のトンドをターカウ(台湾の高雄)に連れて行った時じゃよ。五年振りの再会じゃな」
「ターカウに行く船は必ず、ドゥナン島に寄るのでしょう?」とササが聞いた。
「ああ、そうじゃ。ターカウに行くには黒潮(くるす)を越えなくてはならんからな、いい風を待たなくてはならん」
「すると、与那覇勢頭(ゆなぱしず)様やアコーダティ勢頭様の子供もいるのではありませんか」
「ハハハハ」とクマラパは楽しそうに笑って、「その通りじゃ」と言った。
「アコーダティ勢頭が小舟(さぶに)に乗って、ドゥナン島に行ったのは十八の時じゃった。島の娘たちにもてて、ミャーク(宮古島)に帰るのはやめようかと悩んだそうじゃ。アコーダティ勢頭の娘もいるし、野崎按司(ぬざきあず)の娘も、与那覇勢頭の娘もいるよ。そういえば、平久保按司(ぺーくばーず)の娘もいたな」
「娘ばかりで、息子はいないのですか」
「息子もおるよ。与那覇勢頭の息子とウプラタス按司の息子もおったのう」
「まったく、男っていやねえ」と安須森ヌルが冷たい目をしてクマラパを見た。
琉球に行ったドゥナン島の女按司(みどぅんあず)が、帰って来てから子供を産みませんでしたか」とササは聞いた。
「サンアイ村のユミじゃろう。ユミは琉球から帰って来てから娘を産んでいる。ナーシルという可愛い娘じゃ」
「ナーシル?」と安須森ヌルとササが同時に言って、顔を見合わせて溜め息をついた。
「サジルー叔父さんだわ」とササが言った。
 武芸ばかりに熱中していて、女なんて眼中にないといった叔父の苗代大親(なーしるうふや)が、ドゥナン島の女按司と結ばれて、娘が生まれたなんて信じられなかった。叔父はきっと知らないのに違いない。苗代大親の娘のマカマドゥには絶対に内緒にしなければならないとササは思った。
「なに、ナーシルの父親は、そなたたちの叔父なのか」とクマラパが驚いた。
「タキドゥン様がドゥナン島に行ったら驚く事があると言って笑っていたのです。叔父は苗代大親といって中山王(ちゅうさんおう)の弟で、サムレーたちの総大将を務めています」とササが説明した。
「ユミもいい相手を見つけたようじゃのう。わしがウプラタス按司と一緒に、初めてドゥナン島に行った時、ユミは九歳じゃった。サンアイ村のツカサの娘で、父親は倭寇(わこう)だったという。倭寇といっても、ドゥナン島を襲ったわけではなく、船を修理するために、しばらく滞在していたらしい。その時、ツカサと仲よくなって、ユミが生まれたんじゃよ」
「その倭寇はターカウの倭寇ですか」
「いや。その時はまだ、キクチ殿は来ておらん。ムラカミとかいう倭寇らしい。その倭寇からツカサは弓をもらったんじゃ。その弓は家宝として大事に飾ってある。そして、生まれてきた娘にユミという名をつけたんじゃよ」
「村上という倭寇だったのですか」とササが聞いた。
「ムラカミという倭寇を知っているのかね」
「ヤマトゥの瀬戸内海に村上水軍という海賊がいます。村上水軍南北朝(なんぼくちょう)の戦(いくさ)の時、九州で南朝のために活躍したと聞いています」
 もしかしたら、あやのお祖父(じい)さんがドゥナン島に行ったのかしらとササは思った。
「ほう。子孫は海賊をやっているのか」と言ってクマラパは笑った。
「ユミはわしの弟子なんじゃよ。ムラカミという父親も武芸が達者だったようじゃ。ユミも武芸の才能があった。スタタンのボウより一つ年下で、わしがボウをドゥナン島に連れて行った時には、お互いに負けるものかと稽古に励んでおった。二人は仲よくなって、その時、ユミも一緒にターカウまで行ったんじゃよ。ドゥナン島しか知らなかったユミは、ターカウの賑わいに驚いておったわ。大勢のヤマトゥンチュを見て、父親の面影を探しているようじゃった。キクチ殿もムラカミという倭寇を知っていた。ムラカミナガト(村上義弘)という凄い大将がいたと言っていた。将軍宮(しょうぐんのみや)様(懐良親王(かねよししんのう))を九州にお連れしたのも、ムラカミナガトだったと言っておったのう。丁度、キクチ殿が九州からターカウに行った頃、ムラカミナガトは行方知れずになってしまったらしい。嵐に遭って遭難したのか、明国の官軍にやられたのかわからんと言っていた。年齢からいって、ムラカミナガトの息子がユミの父親かもしれんとキクチ殿は言っていた。ユミは美人(ちゅらー)なんだが、男運に恵まれなかったんじゃ。ツカサの娘であるユミに言い寄る度胸のある男がいなかったんじゃよ。平久保按司は言い寄ったようだが、ユミに嫌われたようじゃ。ユミは三十歳になってしまい、琉球への旅に出た。心の中で、いい相手に巡り会える事を祈っていたんじゃろう。そして、苗代大親に出会えたんじゃ。たった一度の出会いだったが、琉球から帰って来たユミは幸せそうじゃった。念願の跡継ぎの娘、ナーシルも生まれた。ナーシルは母親から武芸を習って強くなった。五年前、わしがタマミガを連れてターカウに行った時、ナーシルも一緒に行ったんじゃよ。トンドも一緒じゃった。ナーシルが一番年下なんじゃが、一番、体格がよかったわ」
「ユミさんの娘のナーシルは、あたしたちの従妹(いとこ)になるわけね」と安須森ヌルが言った。
「もしかしたら、ササと同い年じゃないかしら」
「えっ、本当なの?」
「だって、ドゥナンの女按司が来たのはササが生まれる前の年だったのよ」
 ササは突然、旅立つ前に母が言った事を思い出した。
「昔、ササが生まれる前、馬天浜(ばてぃんはま)に南の島から来た人たちが来たのよ。ミャークじゃなくて、別の島の人だったわ。何という島だったのか忘れたけど、ユミという名のヌルと親しくなったの。縁が会ったら会えるわね。もし、会ったらよろしく伝えてね」と母は言った。
 どこの島の人かもわからないヌルに会えるなんて思わなかったので、ササは聞き流していたが、もしかしたら、ユミと苗代大親を会わせたのは母ではないのかと疑った。
「サジルー叔父さんの娘って、どんな人かしら? 会うのが楽しみだわね」とササは言った。
 ササと同い年なら、マカマドゥのお姉さんになる。もし、マカマドゥよりも弱かったら、従妹として認めないとササは密かに思った。
「まさか、南の島に従妹がいるなんて‥‥‥」と言って安須森ヌルは首を振った。
「もう一つ、驚く事があるぞ」とクマラパは言った。
「えっ、何です?」とササは聞いたが、クマラパは笑っているだけで教えてくれなかった。
「行ってからのお楽しみじゃ」
 ササと安須森ヌルは顔を見合わせて、何だろうと考えた。二人はもしかして、サハチの娘がいるのかもしれないと疑った。ドゥナンの女按司琉球に行ったのは、サハチの長男のサグルーが生まれた年だった。ドゥナンの女按司は娘を産んだので、その後は行けなかっただろうが、代わりに誰かが行ったはずだ。その娘とサハチが結ばれたのかもしれないと二人は疑い、舌を鳴らした。
 船は東風(くち)を受けて順調に進んでいるのに、前方に見えるドゥナン島はなかなか近づいて来なかった。
 若ヌルたちが笛の稽古を始めた。玻名(はな)グスクヌルも笛を吹いていたので、不思議に思って安須森ヌルが聞くと、クマラパから作り方を教わって自分で作ったと言った。
「安須森ヌル様とササ様の笛に感動して、わたしもやってみたくなったのです」
「そう、頑張ってね。あなたならできるわよ」
「頑張ります」と玻名グスクヌルは嬉しそうに笑った。
 クマラパに、笛も作れるのかと聞いたら、「わしは見よう見真似で、船を造ったんじゃよ。笛などわけない事じゃ」と笑った。
「実はわしも笛が吹きたくなってな」と言って、懐(ふところ)から笛を出して吹き始めた。
 音程が少し狂っているような気がしたが、明国風な曲をクマラパは吹いた。
「まだまだ稽古中じゃよ」と途中でやめて、照れ臭そうに笑った。
 クマラパの吹く曲を聴いて、安須森ヌルもササもヂャンサンフォンが吹いていた曲を思い出した。琉球に帰っても、あの曲はもう聴けないと思うと、急に悲しくなってきた。
 タマミガも女子(いなぐ)サムレーのミーカナとアヤーも、自分で作った笛を出して吹き始めた。みんながそれぞれ勝手に吹いているので、ピーピーとやかましいが、安須森ヌルもササも笑いながら眺めていた。
 ドゥナン島が近くに見えて来た時、突然、船が揺れだした。若ヌルたちは慌てて船室に逃げ込んだ。
 大きな揺れは半時(はんとき)(一時間)ほど続いて、穏やかな波になったが、風は強かった。
 目の前に見えるドゥナン島は険しい崖に囲まれていた。東側に飛び出た東崎(あんあいさてぃ)の北側を進んだ。崖の下に小さな砂浜も所々にあるが、上陸するのは難しそうだった。崖の上に見張り台のような物があって人影が見えた。
 延々と崖が続いていて、崖が途切れたと思ったら岩場が続いた。小さな島があって、その先が少し窪んでいて、白い砂浜が見えた。
「あそこがナンタ浜じゃよ」とクマラパが言った。
 先程の崖の上にいた見張りの者が知らせたのか、ナンタ浜に数人の人影が見えた。ムカラーの指示で、珊瑚礁に気をつけながら、小島の裏側に回って、そこに船を泊め、いつものようにササたちが小舟に乗ってナンタ浜を目指した。
 ナンタ浜の右側には川があるようだった。ナンタ浜の向こうは鬱蒼(うっそう)とした森があり、その後ろに大きな崖があった。この島は崖に囲まれた大きなグスクのようだとササは感じていた。
 小舟が砂浜に近づくと、「お師匠!」と叫びながら女が近づいて来た。ヌルでもなく、女子サムレーでもなく、普通の着物を着た女だが、なぜか、五尺(約一五〇センチ)ほどの槍(やり)を持っていた。
「イヤ(お父様)」と叫びながら近づいて来る女もいた。
「クンダギのツカサさんが、お師匠が琉球のお姫様を連れて、この島に来ると知らせてくれました」と女が琉球の言葉で言った。
 身なりは質素だが、女按司という貫禄があった。そして、クマラパが言ったように美人だった。
スサノオの神様からも、あなたたちの事は聞いています。ようこそ、ドゥナン島(ちま)へ」
スサノオの神様はこの島にもいらっしゃったのですね?」
「はい。驚きました。ユウナ姫様も驚いて、島のツカサたちを集めて、ウラブダギ(宇良部岳)の山頂で歓迎の宴(うたげ)を開いたのです。スサノオの神様はとても感激してくれました」
 ユウナ姫はイリウムトゥ姫の娘で、この島に来たのだった。ユウナ(オオハマボウ)の花が一面に咲いていたこの島は、当時、ユウナ島と呼ばれていたという。
 小舟から下りて上陸すると、ユミの隣りにいる娘を見て、「ナーシルじゃよ」とクマラパがササたちに言った
「お久し振りです」とナーシルは頭を下げた。
 母親と同じように槍を持っているナーシルは、背が高く体格もよくて、顔付きは何となく、苗代大親の面影があるような気がした。
「この二人は苗代大親の姪なんじゃよ」とクマラパがユミに言ったら、ユミは驚いた顔をして、ササと安須森ヌルを見た。
「ササは馬天ヌルの娘で、安須森ヌルはサグルーの娘なんじゃ。今は苗代大親の兄のサグルーが琉球の中山王になっている」
「何ですって!」
 ユミは驚きのあまり、ポカンとしてササと安須森ヌルを見ていた。
「ちょっと待って下さい」と言って、ユミは頭の中を整理していた。
「馬天ヌル様にはとてもお世話になりました。あなたが馬天ヌル様の娘さんなのですね。すると、お父様はヒューガ様ですね」
「えっ、父を知っているのですか」
「馬天ヌル様に連れられて会った事があります」
「そうだったのですか」
 ユミは安須森ヌルを見て、
「あなたは佐敷按司様の娘さんなのですね」
 安須森ヌルはうなづいて、「当時は佐敷ヌルでした」と言った。
 ユミは納得したようにうなづいて、
「そして、今は佐敷按司様が中山王になったのですね?」と聞いた。
 ササと安須森ヌルはうなづいた。
スサノオの神様は、琉球から凄いヌルがやって来るとおっしゃいました。わしがこの島に来られたのも、そのヌルのお陰じゃと言いました。わたしはそんな偉いヌル様をどうお迎えしたらいいのだろうと悩みました。そして、クンダギのツカサから琉球のお姫様が行くと知らされて、わたしは混乱しました。お姫様とその凄いヌル様は別行動を取っているのかもしれないと思いましたが、お姫様と凄いヌル様というのは同じ人だったのですね」
 ユミは改めて、ササと安須森ヌルを見つめ、
スサノオの神様を連れて来ていただき、ありがとうございました」とお礼を言った。
 そばで話を聞いていたナーシルは、
「わたしの従姉なのですか」とササと安須森ヌルに聞いた。
 二人がうなづくと、ナーシルは嬉しそうに笑った。その笑顔を見た時、ササも安須森ヌルも従妹に間違いないと思った。滅多に笑わない叔父の苗代大親が笑った時の笑顔にそっくりだった。
 クマラパは娘と息子との再会を喜んでいた。娘はラッパといい、ドゥナンバラ村の若ツカサで、その兄のクマンはドゥナンバラ村のサムレー大将だった。
 ダティグ村の若ツカサのアックも来ていて、アックはアコーダティ勢頭の娘だった。崖の上の見張り台でササたちの船を見ていたのは、ダティグ村のサムレーで、すぐにユミに知らせたのだった。
 ササは不思議に思って、どうして、みんな、槍を持っているのかナーシルに聞いた。
「敵が来たら、これを投げて敵を倒します」とナーシルは言った。
「えっ、槍を投げるの?」
「敵は一発で死にます」
「そうなの」と言って、ササは槍の穂先を見た。
 鋭い鉄の刃が付いていた。
 ナーシルが海と反対側の森を見て、大きな木を指差した。そして、槍を構えて素早く投げると、槍は真っ直ぐに飛んで行って、ナーシルが示した木に刺さった。あれが人だったら間違いなく死ぬだろうとササたちは思った。
「この島の者たちは皆、身に付けています」とナーシルは言った。
「ナーシル、武当拳(ウーダンけん)は身に付けたかね?」とクマラパが聞いた。
 ナーシルはうなづいて、
「祖父からみっちり仕込まれました」と言った。
 ササたちは驚いた。どうして、この島に武当拳があるのか、さっぱりわからなかった。
「驚く事とは、この事じゃよ」とクマラパは笑った。
「ユミの母親は倭寇のムラカミと結ばれてユミを産んだあと、ウプラタス按司が連れて来た武当山(ウーダンシャン)の道士、ウーニン(呉寧)と結ばれたんじゃ。ウーニンはこの島に住み着いて、島の者たちに武当拳を教えたんじゃよ。さっきの槍投げの指導をしたのも、ウーニンなんじゃ」
「その道士はヂャンサンフォン様の弟子だったのですか」
「直接の弟子ではないようじゃ。その道士の師匠はヂャンサンフォン殿の一番弟子のフーシュ(胡旭)という道士だったそうじゃ」
 フーシュという名前は、ササも安須森ヌルもヂャンサンフォンから聞いていた。
 ササはナーシルを見ると、
「行くわよ」と言って、武当拳で掛かって行った。驚いたナーシルは武当拳でササの技を受け止めた。
 突然、武当拳の試合が始まったので、皆が二人を囲んだ。ササの実力がわかったのか、ナーシルは本気になって戦った。打っては受け、受けては打ち、蹴りが飛んで、それをよけるように飛び跳ねた。見事な技の掛け合いが続き、皆が固唾(かたず)を呑んで見守っていた。ナーシルがササの右拳を払って、右足で蹴りを入れようとした時、ササの左掌がナーシルの胸を突いた。しかし、その掌は胸に当たる一寸前で止まった。
「参りました」とナーシルが言って、ササに頭を下げた。
「素晴らしいわ」とユミが言った。
「この娘(こ)、今まで誰にも負けた事がなかったの。このまま行ったら進歩しなくなるって心配していたのよ。まさか、この娘より強い人がいたなんて、信じられないわ」
 ササは笑って、
「わたしよりも、シンシンはもっと強いわ」と言った。
「わたしはササ、よろしくね」とササはナーシルに手を差し出した。
「ナーシルです」と言ってナーシルはササの手を握りしめた。
琉球の人がどうして、武当拳を身に付けているのですか」とユミが聞いた。
「ヂャンサンフォン様は今、琉球にいるのです。琉球にはヂャンサンフォン様の弟子が大勢います。中山王もヂャンサンフォン様の弟子なのです。ところで、あなたのお祖父(じい)様は健在なの?」
 ナーシルは首を振って、「六年前に亡くなりました」と言った。
「祖父からもっと教わりたい事があったのですが、残念です。祖父が亡くなってから、疑問を正してくれる人がいなくなってしまいました。わたしに御指導お願いします」
「それはシンシンに頼んで。シンシンは幼い頃からヂャンサンフォン様の弟子だったから、あなたの疑問に答えられると思うわ」
「日が暮れないうちに、村に帰りましょう」とユミが言った。
 ササたちが話をしているうちに、ユミが出してくれた小舟に乗って、ジルーたち、若ヌルたち、ミッチェとサユイも上陸していた。
 ナンタ浜の西側にあるタバル川に沿って上流に向かった。この辺りは湿地帯だった。川が狭くなった所に丸太の橋が架かっていて、それを渡って対岸に行き、密林の中の細い坂道を登って行った。途中から崖に沿った細い道を進んだ。
 大きな岩が庇(ひさし)のようにせり出した窪みに出て、突然、視界が開けた。ナンタ浜が見下ろせ、島の近くに浮かぶジルーの船も見えた。
「いい眺めね」とナナが言って笑った。
 若ヌルたちが来てキャーキャー騒いだ。
 青い海があって、真っ白なナンタ浜があって、その奥は緑の密林が広がっていた。密林の中に沼があった。密林の向こうには船の上から見た東崎が見えた。
「ここはティンダハナタというの。ここに見張りをおいて、あなたたちが来るのを待っていたのよ」とナーシルが言った。
「そうだったの。見張りの人に迷惑をかけたわね」とササが言うとナーシルは笑った。
「見張りをしていたのは子供たちよ。ここで遊びながら見張りをしていたの。気にする事はないわ」
 ティンダハナタにはおいしい水が湧き出ている岩場があった。こんな高い所にどうして水が湧き出しているのか不思議だった。その水は日照りの時も枯れた事がないという。
 来た道を戻って、途中から山道を登って行くとサンアイ村に着いた。
 大きなガジュマルの木がある広場から形のいい山が見えた。
「あれがウラブダギよ」とナーシルが言った。
「ユウナ姫様はあの山にいらっしゃるわ。あの山の東の方(あがりかた)にドゥナンバラ村があるの。この島で一番古い村なのよ。そして、このサンアイ村は一番新しい村なの。ガジュマルの事をこの島ではサンアイって呼ぶの。この辺りにはサンアイの木がいっぱいあったらしいわ」
 広場を囲んで、奇妙な形をした家がいくつも建っていた。その家の古さからいって、新しい村と言っても、それは最近の事ではないようだった。
「いつ、この村はできたの?」とササは聞いた。
「五十年近く前よ。母が八歳の時、西の方(いりかた)にあったダンア村からここに移って来て、村造りをしたの。この村の隣りにブシキ村という古い村があって、祖母の父親はブシキ村のツカサの息子だったらしいわ。ブシキ村のツカサは跡継ぎに恵まれなくて、ブシキ村とダンア村は一つになって、サンアイ村が生まれたの。祖母がサンアイ村の初代のツカサになったのよ」
 広場の南側に新しい家が何軒も建っていた。
「あなたたちのために建てたのよ」とナーシルは言った。
 ササたちは新しい家に入って一休みした。屋根の後方が地面につきそうなくらい長く、壁と床は竹でできていた。
 新しい家は四軒あったので、ササ、安須森ヌル、シンシン、ナナが一軒に入り、玻名グスクヌルと五人の若ヌルたちが一緒に入り、タマミガ、ミッチェ、サユイと女子サムレーのミーカナとアヤーが一緒に入り、クマラパとガンジュー、ジルーたち男たちが一軒に入った。
「今晩、広場で歓迎の宴があるわ。用意ができたら呼びに来るから、それまで待っていてね」と言って、ナーシルは広場の方に帰って行った。
「楽しそうな島ね」とナナが背負ってきた荷物を下ろしながら言った。
「明日、ウラブダギに登って、ユウナ姫様に御挨拶して、そのあと、島を巡ってみましょ」
 ササが言うとみんながうなづき、
「ナーシルはいい娘だったわね」と安須森ヌルが笑った。
「ナーシルの事はマカマドゥには内緒にしようと思ったけど、教えた方がいいかしら?」とササがみんなの顔を見た。
「教えたら会いたくなるわよ」と安須森ヌルが言った。
「マウシと一緒に来ればいいわ」とササは言ったが、
「マカマドゥは二人も子供がいるのよ。無理だわ」とシンシンが言った。
「そうか。幼い子供を連れては来られないわね。やっぱり、内緒にしておいた方がいいわね」
「ねえ、サジルー叔父さんには教えるの?」と安須森ヌルがササに聞いた。
「どうしよう?」
「サジルー叔父さんの唯一の弱みだから、何か叔父さんに頼みがある時に使いましょうよ」
「それがいいわね」とササは笑った。
「お兄さんにも言っちゃだめよ」
「そうね。若ヌルたちにも口止めしなくちゃね」
 ナーシルが呼びに来て、広場に行くと、村の人たちが大勢、集まっていた。ツカサたちが琉球の言葉をしゃべったので、この島は言葉が通じると思っていたが、村人(しまんちゅ)たちがしゃべっている言葉は、まったくわからなかった。
 ササたちは拍手で迎えられて、上座にいる長老たちに紹介された。挨拶が済むと、指定された所に座って酒盛りが始まった。出されたお酒はヤマトゥのお酒だった。ターカウから仕入れたようだ。料理も贅沢なものだった。新鮮な魚貝類は勿論の事、猪(やましし)の肉や海亀の肉、ザン(ジュゴン)の肉もあった。
 篝火(かがりび)が焚かれて明るい広場の中央では、娘たちの歌と踊りが披露された。若者たちの武当拳套路(タオルー)も披露された。ササたちが武当拳の名人だという事はすでに村人たちの間に広まっていて、武当拳を披露してくれと頼まれた。シンシンとナナが模範試合をして、皆から喝采を浴びた。安須森ヌルの笛に合わせて、ミーカナとアヤーが琉球の踊りを披露して、皆に喜ばれた。まるで、お祭りのようで楽しかった。
 宴は一時ほどでお開きになって、村人たちは散って行った。ササたちも引き上げようとしたら、ユミに引き留められた。
 安須森ヌルとササはユミの家に呼ばれた。ツカサの家もみんなと同じ小さな家だった。
「この島は変わったわ」とユミは言った。
「外の事なんて何も知らなかった島人が、スーファンが来てから、色々な事を知るようになったの」
「スーファンて明国の人ですか」とササは聞いた。
「そうよ、唐人(とーんちゅ)よ。ミャークと交易をしていて、ミャークの行き帰りに、この島に寄ったのよ。初めて来たのは、わたしが生まれる前だったわ。わたしが六歳の時、その人はミャークに住み着いて按司になったのよ」
「もしかして、その人、ウプラタス按司の事ですか」
「そうよ。ミャークに住み着いてからは一度、クマラパ様と一緒に来たけど、そのあとは来なくなってしまったわ。スーファンはダンヌ村のツカサと仲よくなって、今のダンヌ村のツカサの父親はスーファンなのよ。ダンヌ村はスーファンから色々な物を贈られて豊かになったわ。スーファンは一年おきにやって来たけど、みんながスーファンが来るのを首を長くして待っていたのよ。スーファンが来なくなって、島は昔のように静かになったわ。そして、わたしが十三歳の時、ナックが来たのよ。今はアコーダティ勢頭って呼ばれているわね。当時は若かったわ。ナックは丸木舟でミャークからやって来たのよ。それは衝撃だったわ。スーファンのような大きなお船でなければ、ミャークに行けないと思っていたのに、ナックは丸木舟でやって来た。島のウミンチュたちがナックを真似して、クン島やイシャナギ島(石垣島)に行くようになったのよ。そして、三年後、ナックはクマラパ様と一緒に大きなお船でやって来て、ターカウに行ったわ。ミャークとターカウの交易が始まって、その行き帰りにミャークのお船が立ち寄るようになって、今の状況になったのよ。今まで食べる分だけを捕っていたウミンチュたちは、欲しい物と交換できるザンや海亀を捕るのに夢中になったわ。牛の肉は食べないけど、牛の肉が取り引きに使える事がわかると牛を殺して、肉を塩漬けにする人も現れたのよ。鉄の斧(おの)や鉄の鍋も手に入って、ヤマトゥのおいしいお酒も手に入って、生活は豊かになったけど、島の人たちに落ち着きがなくなってきたような気がするわ。男だけじゃなくて、女たちもそうなのよ。ミャークから来た船乗りたちと仲よくなれば、欲しい物が手に入るって、みんな、着飾って、よそ者の男たちを待っているのよ。それはツカサたちにも言えるわ。この島のツカサたちの娘はみんな、船頭(しんどぅー)(船長)たちの娘なのよ」
「ユミさんはこの島の按司なのですよね?」と安須森ヌルは聞いた。
 ユミは笑って、
「この島には按司はいないわ」と言った。
琉球に行った時、この島の代表として按司を名乗ったけど、按司を名乗ったのはその時だけよ。この島には六つの村があるけど、どの村のツカサが一番偉いという事はないの。島全体に関わる事は六人のツカサが集まって決めるのよ。わたしが最初に琉球に行ったのは、切羽詰まった理由があったからなの。その念願はかなって、二度目の時はドゥナンバル村のツカサ、三度目はダティグ村のツカサ、四度目はダンヌ村のツカサが行って、次はクブラ村のツカサの番だったんだけど、琉球行きは中止になってしまって、クブラ村とナウンニ村のツカサは琉球に行けなかったのよ」
「切羽詰まった理由というのは跡継ぎの事ですね?」とササは聞いた。
 ユミはうなづいた。
「跡継ぎを産まなければ、ツカサを継げないわ。妹のムーに譲らなくてはならなくなるの。わたしは最後の頼みを琉球旅に託したのよ」
「叔父とはどこで出会ったのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「佐敷の武術道場よ。馬天ヌル様と一緒にヒューガ様のおうちを訪ねる途中、武術道場を覗いたら、物凄く強い人がいて、馬天ヌル様に、あの人を紹介してって頼んだら、あれはわたしの弟で、妻も子供もいるからだめよって言われたの。でも、わたしは諦めなかったわ。あの人しかいないって心に決めて、わたしの事情を説明したの。馬天ヌル様もわたしの気持ちはよくわかるって言ったわ。馬天ヌル様も三十を過ぎてもマレビト神に出会えない事に悩んでいたって言ったわ。そして、わたしを苗代大親様と会わせてくれたのよ」
 あの頃、叔父が美里之子(んざとぅぬしぃ)の武術道場で師範を務めていたのを安須森ヌルは思い出していた。美里之子が大(うふ)グスクの戦で戦死してしまい、まだ若かった跡継ぎの長男を助けて、若い者たちを鍛えていたのだった。
「やっぱり、母だったんですね」とササが言った。
「叔父とは武術道場で会ったのですか」と安須森ヌルは聞いた。
 ユミは首を振った。
「その日はヒューガ様のおうちに泊めてもらって、次の朝、山の中のお稽古場で会ったのよ」
「ヒューガさんのおうちの隣りが叔父のおうちだって知っていました?」
「えっ、そうだったの。それは知らなかったわ」
「山の中のお稽古場で出会って、どうなったのですか」
「あの時の事は今でも夢のようだわ」とユミはうっとりとした顔をした。
「苗代大親様はわたしをじっと見つめたわ。わたしも苗代大親様をじっと見つめたの。何も話さなくても目を見ただけで、すべてがわかったような気がしたわ。わたしたちはお稽古場にあった小屋の中で結ばれて、その後、苗代大親様は色々な所へ連れて行ってくれたのよ」
「色々な所ってどこですか」
「景色の綺麗な所だったわ。素敵な人に巡り会えたかと思うと、一緒にいるだけで、もうとても幸せだったわ」
「わかります」と安須森ヌルが言った。
「今回、娘も一緒に来ているんですけど、わたしも運命の人に出会った時は夢のような気分で、とても幸せでした」
「そう。あなたもそうだったのね」とユミは嬉しそうな顔をして笑った。
「わたしは馬天ヌル様の妹のマチルー様のおうちにお世話になっていたの。三人のお子さんがいたわ。みんな、大きくなったでしょうね」
 マチルー叔母さんまで関わっていたなんて、安須森ヌルもササも驚いていた。
「わたしたちは毎朝、山の中のお稽古場で会って、わたしは剣術を教わって、あの人に武当拳を教えたのよ」
「えっ、叔父さんはヂャンサンフォン様に会う前から武当拳を知っていたのですか?」
「素手で戦う武芸があるなんて知らなかったって言って、真剣にお稽古をしていたわ」
「サジルー叔父さんはずっと隠していたのよ。武当拳の事を話すとユミさんの事も言わなければならなくなるので、知らない振りをしていたんだわ」とササが言った。
「サジルー叔父さんも役者だわねえ」と安須森ヌルは笑った。
「でも、わたしはサジルー叔父さんがユミさんと出会えてよかったと思っているわ。こんな遠く離れた島に従妹がいるなんて、本当に夢でも見ているような気分だわ。あたしたち、もしかしたら、ナーシルに会うために今回の旅を計画したのかもしれないわ。ナーシルを立派に育ててくれてありがとうございます」
 安須森ヌルは本心からユミにお礼を言った。

 

 

崎元 与那国クバ 60度 1.8L  [沖縄県]