長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-136.小渡ヌル(第一稿)

 シタルーが亡くなってから二か月近くが経っていた。
 タブチはチヌムイを連れて琉球から去り、八重瀬(えーじ)グスクはタブチの娘婿のマタルーが入って、八重瀬按司を継いだ。具志頭(ぐしちゃん)グスクにも娘婿のイハチが入って、具志頭按司を継いだ。
 島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクでは摩文仁(まぶい)(前米須按司)が山南王(さんなんおう)になって、豊見(とぅゆみ)グスクの他魯毎(たるむい)と対抗している。
 他魯毎は明国から帰って来た進貢船(しんくんしん)を手に入れ、糸満(いちまん)の港も支配下に入れ、何と言っても山南王の王印を持っていた。どう見ても、他魯毎の方が圧倒的に有利なのだが、摩文仁は降参しなかった。
 摩文仁の山南王就任の儀式が行なわれた日、島尻大里グスクは他魯毎の兵に囲まれた。翌日の早朝、摩文仁他魯毎の陣地を攻めたが、逆に攻められて、グスクに逃げ込んだ。これで、摩文仁の兵はグスク内に閉じ込められたかと思われたが、翌朝、他魯毎の兵は摩文仁の兵に攻められ、包囲陣は壊滅した。
 島尻大里グスクに抜け穴がある事を知った他魯毎は島尻大里グスクを攻めるのをやめて、糸満の港を守るために、照屋(てぃら)グスクと国吉(くにし)グスクをつなぐ長い防壁を築き始めた。摩文仁は防壁造りをやめさせるために何度も攻撃をしたが守りは堅く、防壁は完成してしまった。
 摩文仁は裏でも色々と動いていた。兼(かに)グスク按司、保栄茂按司(ぶいむあじ)、長嶺按司(ながんみあじ)、本部(むとぅぶ)のテーラーを味方に引き入れようとしていて、保栄茂按司を保栄茂グスクに戻す事に成功していた。
 保栄茂按司の妻のマサキは豊見グスクに来てから一月余りが過ぎ、王妃と一緒なので気疲れしていた。早く保栄茂グスクに帰って、ゆっくりしたいと思っていた。保栄茂按司の側近の前原之子(めーばるぬしぃ)も、ここにいると息が詰まると言ってマサキをそそのかした。前原之子は武術師範、真壁大主(まかびうふぬし)の次男で、摩文仁から保栄茂按司を保栄茂グスクに戻すように頼まれていたのだった。
 マサキは他魯毎に相談した。糸満の港を守るために八百の兵がいるのだから帰っても大丈夫だろうと他魯毎は許可を出した。マサキは喜んで、保栄茂按司、テーラーを連れて保栄茂グスクに戻った。
 保栄茂按司が戻った事を知った王妃は怒った。摩文仁は保栄茂按司を狙っているから危険だと他魯毎を責めたが、他魯毎は大丈夫だと言って撤回はしなかった。山南王になったのに、すべての事を王妃が決めてしまうので、他魯毎は母親に反感を抱いていたのだった。
 保栄茂按司が保栄茂グスクに戻るのと同じ頃、摩文仁は甥のイシムイに賀数(かかじ)グスクを攻めさせ、イシムイは見事に攻め落としていた。
 賀数大親の長男は摩文仁の兵の反撃に遭って戦死した。賀数大親は糸満の港を守るために出陣していて、賀数グスクを守っていたのは次男だった。次男の妻、マニーは真栄里按司(めーざとぅあじ)の娘で、以前から離縁したいと願っていた。嫁いで五年になるが、どうしても相手が好きになれず、子供もいない。重臣同士の婚姻で世間体もあるので、父は許さなかった。そんな父が離縁を許すから内通しろと言ってきたのだった。
 マニーは喜んで引き受け、イシムイの兵をグスク内に誘い込んで賀数グスクは落城した。夫は殺されたが、悲しみの感情はわかず、ようやく解放された喜びが込み上げていた。イシムイは賀数グスクを本拠地にして、賀数按司を名乗った。
 賀数グスクを敵に奪われ、保栄茂グスクが危険だと感じたテーラーは李仲按司(りーぢょんあじ)と相談して、豊見グスクと保栄茂グスクの中程にある山の上にグスクを築き始めた。この山を敵に奪われたら豊見グスクと保栄茂グスクが分断される恐れがあった。
 テーラーはまだ摩文仁の誘いには乗っていなかった。今の状況では山北王(さんほくおう)の兵が来たとしても、摩文仁に勝ち目はないと思っていた。山北王の兵が海上から攻めて、糸満の港を奪い取れたとしても、糸満グスク、兼グスク、照屋グスクの三つのグスクを落とすのは難しい。豊見グスクを攻めたとしても、中山王(ちゅうさんおう)が介入して来るだろう。まずは、他魯毎を山南王にして、その後の様子を見て、保栄茂按司に挿(す)げ替えた方がいいだろうと思っていた。
 李仲按司はテーラーの意見に賛成しながらも、保栄茂按司とテーラーを切り離そうと考えていた。グスクが完成したら、テーラーと山北王の兵を新しいグスクに移して、保栄茂グスクには豊見グスクの兵を入れようと決めた。李仲按司は島尻大里グスクの抜け穴の出口を探していたが、見つける事はできなかった。
 テーラーが新しいグスクを築いている事を知ると、イシムイは摩文仁と相談して、賀数グスクの東にある當銘蔵森(てぃみぐらむい)と呼ばれている山にグスクを築き始めた。當銘蔵森は昔、舜天(しゅんてぃん)の息子がグスクを築いたという伝説のある山だった。

 


 十二月も半ばになって、ヤマトゥからの商人たちが続々とやって来た。浮島は賑わい、首里(すい)の役人たちも忙しくなっていた。他魯毎の配下の役人たちも糸満の港と国場川(くくばがー)で、ヤマトゥの商人たちと取り引きを始めていた。久米村(くみむら)もヤマトゥの商人たちと取り引きをしているので、ファイチは久米村に帰っていた。
 サハチは思紹(ししょう)と一緒に絵地図を見ながら、龍天閣(りゅうてぃんかく)で奥間大親(うくまうふや)の報告を聞いていた。
「イシムイもとうとう按司になったか」とサハチは苦笑した。
「テーラーもグスクを持ちそうじゃな」と思紹は言った。
「テーラーのグスクは石屋のテスが築いています。そして、當銘蔵森のグスクは親方のテサンです」
「石屋を味方に組み込まなければなりませんね」とサハチは思紹に言った。
「そうじゃな。テスはそのまま他魯毎に仕えるじゃろうから、テサンの配下の石屋たちをクムンの配下にしなくてはならんな」
「テハは今、どこにいるんだ?」とサハチは奥間大親に聞いた。
「テハは豊見グスクの城下で、シタルーの側室だったマクムと暮らしております」
「マクムというのはウニタキの配下じゃったな」と思紹がサハチに聞いた。
「そうです。テハを使って、石屋たちをクムンのもとへ連れて行けばいい」
「テハは使えそうか」と思紹は奥間大親に聞いた。
「使えるかもしれませんが、山南の王妃に筒抜けになると思います」
「そうか。シタルーの配下だった石屋を取ろうとすれば気を悪くするな」
「グスクを造っているなら、人足(にんそく)を送り込みましょう」とサハチは言った。
「クムンが今、中山王に仕えている事を教えて、クムンのもとに行きたいように仕向けたらどうです。グスクが完成したら、クムンのもとに送ります」
「そうじゃな。ウニタキはヤンバルに行っているが大丈夫か」
「チュージに頼みます」
「そうか。頼むぞ」
 玻名(はな)グスクを包囲して半月が経つが、状況に変化はなかった。中座按司(なかざあじ)も懲りたとみえて、攻めては来なかった。
 忘れ去られたウタキを巡ったあと、ササたちは玉グスクヌルと一緒に、改めてウタキを綺麗にして、セーファウタキに行って豊玉姫(とよたまひめ)の神様の話を聞いた。
 どうして、そんな大事なウタキの事を教えてくれなかったのですかとササが聞くと、教えられた事はすぐに忘れてしまう。自分で気づく事が肝心なのよと言われたという。そして、忘れ去られた古いウタキを復活させるのも、あなたたちのお役目なのよと豊玉姫に言われて、ササたちはユンヌ姫と一緒に、古いウタキ探しに熱中しているようだった。
 思紹と別れて、サハチは城下の『まるずや』に向かい、店主のトゥミと会って、チュージを呼んでもらった。店の裏にある屋敷でチュージと会って、當銘蔵森のグスクに入れる人足の事を頼み、店に顔を出すと、五歳くらいの娘を連れた女とトゥミが話をしていた。
 女が言った『今帰仁(なきじん)』という言葉が気になって、サハチは密かに母子(おやこ)を観察した。見た感じはウミンチュの母子という感じだが、どことなく上品さが感じられ、ただ者ではないような気がした。トゥミが女に頭を下げて、サハチの所に来たので、誰だと聞いてみた。
「お得意さんですよ。小渡(うる)ヌル様です」とトゥミは言った。
 サハチは驚いて、改めて、小渡ヌルを見た。
今帰仁に里帰りをしていて、今日、帰って来たばかりだそうです。お土産をいただきました」
 そう言ってトゥミは風呂敷包みをサハチに見せた。
「この店によく来ていたのか」
「お祭りの時には必ず、寄ってくれます。年に四、五回は来ていましたが、米須(くみし)に『まるずや』ができてからは、年に二、三回になりました。お祭りが好きで、島添大里(しましいうふざとぅ)や佐敷にも行くようです。お頭(かしら)から聞いて驚きましたが、山北王の従妹(いとこ)なんですってね。耳を疑いましたよ。本当に気さくで、とてもいい人です」
 サハチは小渡ヌルの買い物が終わるのを待って、一緒に店を出て、声を掛けた。
按司様(あじぬめー)」と言って小渡ヌルは笑った。
「俺を知っているのか」
「島添大里のお祭りで何度か、お見かけしました」
「そうか。今帰仁から帰って来たのか」
「はい。母の里帰りがようやくできました」
「お母さんは置いてきたのか」
「ええ。こっちに帰ったら、また伯父に利用されますから」
「そなたは大丈夫なのか」
「わたしの故郷(うまりじま)は今帰仁ではありません。越来(ぐいく)です」
「越来に帰りたいのか」
 小渡ヌルはサハチを見て笑い、首を振った。
「今では越来より小渡の海の方が故郷のようです。この子の故郷ですから」
 サハチが娘を見ると、娘は可愛い顔をして笑った。名前を聞いたら恥ずかしそうに、ユイと答えた。
「これから小渡に帰るのか」とサハチは小渡ヌルに聞いた。
「島添大里に行って、お師匠に挨拶しようと思っています。馬天(ばてぃん)ヌル様に会ってしまったので、お師匠もわたしの正体を知ってしまったでしょう。改めて、挨拶に参ります。それと、山北王の娘のマナビーが按司様の息子さんに嫁いだと聞きました。今帰仁でマナビーの話を聞いて会ってみたいと思いました」
「そなたならマナビーと気が合いそうだな。俺もこれから帰る所だ。一緒に行こう。歓迎するよ」
 小渡ヌルは娘と一緒に喜んだ。サハチたちは馬に乗って島添大里に向かった。
 佐敷ヌルはサスカサの屋敷で、お芝居『豊玉姫』の台本を書いていた。セーファウタキに通って豊玉姫の神様から当事の様子を詳しく聞いて、楽しいお芝居を作ると張り切っていた。サハチが連れて来た小渡ヌルを見ると驚いて、「あら、小渡ヌルじゃない。お久し振りね」と笑った。
「覚えていてくれたのですね」と小渡ヌルは嬉しそうな顔をして言った。
「勿論、覚えているわよ。住み込みでお稽古に励んだのはあなたしかいないもの。あなたがマユの面倒を見てくれたので、随分と助かったのよ。あなたがいなくなったあと、マユはしばらく、しょんぼりしていたわ」
「マユちゃん、お元気ですか。もう随分と大きくなったでしょうね」
「今年からヌルになるための修行を始めたのよ」
「そうなんですか」と小渡ヌルは驚いていた。
「あのあと、ヂャンサンフォン様のもとでも修行を積んだんですってね」
「はい。八重瀬の若ヌルからヂャンサンフォン様のお話を聞いて、わたしも修行させていただきました」
「わたしも按司様もヂャンサンフォン様の弟子なのよ。あなたを歓迎するわ」
 佐敷ヌルの屋敷に行って、小渡ヌルはユリとハルとシビーと会った。三人はお芝居に使う音楽を明国の楽譜を真似して、楽譜に移していた。今まではユリが笛を吹いて皆に教えていたが、お芝居が増えて、ユリもどれがどれだかわからなくなってきていた。主要な節(ふし)を楽譜にして書き留めておけばわかるので、お芝居の台本に楽譜を書いて、整理をしていた。
 佐敷ヌルが小渡ヌルを紹介すると三人は作業をやめて、小渡ヌルを歓迎した。マユもサスカサと一緒に来て、小渡ヌルとの再会を喜んだ。小渡ヌルを知っている女子(いなぐ)サムレーたちも集まって来て、懐かしそうに話をした。ミーグスクからマナビーもやって来た。小渡ヌルとマナビーは初対面だったが、今帰仁の様子や山北王の事を話すと、マナビーは親戚が近くにいた事を喜んだ。
 夕方になって娘たちの稽古が始まると小渡ヌルも一緒に参加した。
 娘たちの稽古が終わると小渡ヌルを囲んで酒盛りが始まった。小渡ヌルもお酒が好きなようで、楽しそうに飲んでいた。娘のユイはナツが一の曲輪(くるわ)の屋敷に連れて行って、サハチの子供たちと遊ばせた。
 ギリムイヌル(前越来ヌル)が来て、懐かしそうに小渡ヌルと昔話に花を咲かせていたが、
按司様に聞きたい事があったのです」と小渡ヌルが急にサハチに言った。
「わたしの父の事です。父は病死と公表されましたが、実は何者かに殺されたのです。父の兄の中山王(武寧)に報告したら、病死という事にしろと言われて、そのようにしましたが、結局、誰に殺されたのかわからないままなのです。もしかしたら、按司様はその事について、何か知っているのではありませんか」
「まさか、俺を疑っているのか」とサハチは聞いた。
「父が殺される一か月前、中グスク按司が殺されています。中グスク按司と山南王が同盟して、その婚礼の日に殺されました。中グスク按司の死と父の死はつながっているような気がします。そして、今、中グスクも越来も、按司様の身内の方が按司になっています」
 佐敷ヌルが驚いた顔をして小渡ヌルを見て、「それを調べるために、わたしに近づいて来たの?」と聞いた。
「ヌルとして佐敷ヌル様に憧れたのは本当です。でも、剣術を身に付けたのは敵討ちのためでもあります。ここに住み込めば、色々な事がわかるだろうと思ったのです」
「それで、何かわかったの?」
 小渡ヌルは首を振った。
按司様の評判はよくて、父を殺すような人ではないとわかりました。でも、完全に疑いは晴れないのです。父はなぜ、死ななくてはならなかったのか。越来按司(ぐいくあじ)を継いだ弟は南風原(ふぇーばる)で戦死して、その下の弟たちは仲宗根大親(なかずにうふや)に殺されました。残っているのはわたしと北谷按司(ちゃたんあじ)に嫁いだ末の妹だけです。何としても真相が知りたいのです」
「『まるずや』の主人のウニタキを知っているだろう」とサハチは小渡ヌルに言った。
「はい、存じております。『まるずや』の御主人というのは表の顔で、裏の顔もあるような気がします」
 サハチは笑った。
「それで、山北王の書状をウニタキに託したのか」
 小渡ヌルはうなづいた。
「『望月党(もちづきとー)』というのを知っているか」
 小渡ヌルは首を振った。
「『望月党』というのは勝連(かちりん)の裏の組織だ。敵の情報を集めたりするだけでなく、数多くの暗殺もやって来た恐ろしい集団なんだ。ウニタキは勝連按司の三男で、妻は中山王の娘だった。ウニタキは今帰仁の合戦の時に水軍として活躍して、その名が知れ渡った。二人の兄はウニタキの活躍を妬んで、望月党に暗殺を頼んだんだ。望月党は山賊を装ってウニタキを襲撃した。ウニタキは何とか逃げる事ができたが、妻と娘は殺された。ウニタキは佐敷に逃げて来て、自分は死んだ事にして妻と娘の敵討ちを誓ったんだ。ウニタキがいなくなって、今度は長男の勝連按司次男の江洲按司(いーしあじ)が争いを始めた。望月党も分裂して、兄と弟が対立したんだ。勝連按司の妻の父親は中グスク按司だった。江洲按司は望月党に命じて中グスク按司を殺させた。江洲按司の妻の父親は越来按司だった。今度は、勝連按司が望月党に命じて、越来按司を殺させたというわけだ。ウニタキは妻と娘の敵を討つために、じっと機会が来るのを待っていた。望月党が分裂して争いを始めて、勢力が弱まった所に総攻撃を掛けて、望月党を壊滅したんだよ」
「勝連だったのですか‥‥‥確か、父が殺されたあと勝連按司も亡くなっていますが、それも望月党の仕業だったのですか」
「そうだ。江洲按司に付いた望月党に殺されたんだよ」
「ウニタキさんが父の敵を討ってくれたのですね?」
 サハチはうなづいた。
「ありがとうございます」と言いながら、小渡ヌルは涙を流していた。
「あなたも苦労して来たのね」と佐敷ヌルが小渡ヌルに言った。
「これからは一人で悩んでいないで、わたしたちに相談してね」
「お師匠‥‥‥」と小渡ヌルは言ったが、佐敷ヌルは首を振って、「あたしたちのお師匠はヂャンサンフォン様よ。あたしたちは同門の弟子なのよ」と言った。
 ササたちが賑やかに現れた。
按司様、何でこんな所でお酒を飲んでいるのよ。みんな、寒い中、戦をしているのに」とササは言って、サハチの酒を取り上げると、「喉が渇いたわ」と言って一息に飲み干した。
 小渡ヌルが驚いた顔をしてササを見ていた。
「馬天ヌルの娘のササだよ」とサハチはササを紹介した。
「丸太引きのお祭りで拝見しております」と小渡ヌルは言った。
「佐敷のお祭りの「瓜太郎(ういたるー)」も観ました。凄い人だと思っていました。近くで見ると、やっぱり凄いですね」
「ああ、凄い飲みっぷりだよ」とサハチは笑った。
 ササは首を傾げながら小渡ヌルを見て、「どこかで会ったような気がするんだけど」と言った。
「米須(くみし)の近くの小渡のヌルだよ。ヂャンサンフォン殿と旅をした時、小渡にも行ったんじゃないのか」
「あの時、具志頭(ぐしちゃん)、玻名グスク、そして、米須に行ったんだけど、その時は会っていないわ」
「そこの物見櫓(ものみやぐら)です」と小渡ヌルが言った。
「ササ様が物見櫓の上で景色を眺めていました。わたしが登ってもいいですかと聞いたら、いらっしゃいとおっしゃって、わたしも登って景色を楽しみました。ササ様は西の方を眺めながら、時々、明国に行った按司様の姿が見えるとおっしゃいました。わたしはまさかと思いましたが、ササ様は按司様が仙人と出会って、凄い岩山に登っているとおっしゃいました。その仙人がヂャンサンフォン様の事だとあとになってわかりました」
 ササは思い出したらしく、「あの時の居候(いそうろう)の人だったのですね」と笑った。
「古いウタキは見つかったのか」とサハチは聞いた。
「そう簡単には見つからないわよ。玉グスク、垣花(かきぬはな)、知念(ちにん)、あの辺りのウタキを巡っていたのよ。ウタキ巡りをしてみて、やっと、お母さんがウタキを巡っている意味がわかったわ。あたしは今まで、偉大な神様ばかりを追っていたけど、名もない神様がいっぱいいる事に気づいたの。戦によって滅ぼされた一族もいっぱいいて、忘れ去られたウタキもいっぱいあるわ。今でもヌルたちがお祈りをしているけど、どんな神様だかわからないウタキも多いのよ。神様のお話を聞いても、いつの頃のお話なのか、よくわからない。あたしももっと学ばなければならない事が多いって実感したわ」
「二千年の歴史があるからな。いつの頃の神様なのかを見つけるのは大変だろう」
「二千年?」と小渡ヌルが聞いた。
琉球の御先祖様のアマミキヨ様が南の国からやって来たのが二千年前の事らしい」
「二千年ですか」と小渡ヌルは驚き、「わたしもウタキ巡りに連れて行って下さい」とササに頼んだ。
「一緒に行きましょう」とササは笑って、小渡ヌルと乾杯をした。

 


 その頃、鬼界島(ききゃじま)(喜界島)ではヤマトゥに行った船がなかなか帰って来ないと湧川大主(わくがーうふぬし)が気をもんでいた。
 奄美按司の報告だとヤマトゥの船は続々やって来ていて、琉球に向かっているという。もしかして、仲間の知らせで待ち伏せを知って、鬼界島に寄らずにそのまま琉球まで行ったのかもしれなかった。琉球まで行ったら、夏になるまで帰っては来られない。
 湧川大主はあとの事を鬼界按司になった一名代大主(てぃんなすうふぬし)に任せて、引き上げる事にした。百人の兵を残し、島の若い者たち百人も鍛えてあるので大丈夫だろう。すでに、浦添(うらしい)ヌルのマジニは奄美大島(あまみうふしま)の赤木名(はっきな)に送ってあった。
 マジニと過ごした日々は楽しかった。マジニは何度もウタキに籠もって、生まれ変わったかのように明るくなっていった。別れるのは辛かった。一緒に連れて帰りたかったが、二年間で若ヌルを立派なヌルに育てて、運天泊(うんてぃんどぅまい)に帰るから待っていてとマジニは言った。
「二年は長すぎる。一年にならないか」と湧川大主は言った。
「一年じゃ無理よ」とマジニは言ったが、浦添のヌルと違って、島のヌルなら一年でも大丈夫かなと思い、「早く終わったら、早く帰るわ」と言った。
 湧川大主はうなづいて、マジニを強く抱きしめて別れた。
 ヤマトゥに行った船が帰って来た時の手筈を改めて確認して、湧川大主は鬼界按司と別れて、今帰仁へと帰った。

 

 

 

草津温泉膝栗毛 冗談しっこなし

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第二稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー、奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第一稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第一稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第一稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第一稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第一稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第一稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第一稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第一稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第一稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第一稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第一稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第一稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第一稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第一稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司次男尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-    タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫。
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
米須按司      1357-    摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-    米須按司次男
玻名グスク按司   1358-    中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-    山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は察度の三男の越来按司。母は山北王珉の妹。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-    山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-    山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。

 

2-135.忘れ去られた聖地(第一稿)

 具志頭(ぐしちゃん)グスクを出て、仕事に戻れとサタルーを追い返したあと、ササたちを八重瀬(えーじ)グスクに連れて行こうかとサハチが思っていたら、耳元でユンヌ姫の声が聞こえた。
「面白い所に連れて行くわ」と言ってから、「ササには聞こえないから大丈夫」とユンヌ姫は言った。
 サハチはユンヌ姫に案内されるままに馬に乗って北へと進んだ。ササたちは重い鎧(よろい)を脱いで、イハチに預け、いつもの女子(いなぐ)サムレーの格好に戻っていた。
「ねえ、面白い所ってどこなの?」とササがサハチに聞いた。
「ササが興味を持ちそうな古いウタキだよ」
「どうして、按司様(あじぬめー)がそんな事を知っているの?」
「お前のお母さんに聞いたんだよ。俺も行った事がない。近くまで来たので、お前と一緒に行ってみたいと思ったんだよ」
按司様も古いウタキに興味があるの?」
「俺も一応、神人(かみんちゅ)だからな」
 サハチがそう言うとササは笑った。その笑顔が美しく、サハチはドキッとした。お転婆娘だと思っていたササもいつの間にか、大人の女になっていた事に改めて気づいた。
「お前、いくつになったんだ?」とサハチは聞いた。
「もうすぐ、二十四になるわ」
「なに、もう二十四か」とサハチは驚いた。
 二十四といえば、子供が二、三人いるのが普通だった。
「あたしのマレビト神は一体、どこにいるのかしら?」とササは空を見上げた。
「何度もヤマトゥに行っているのに、いい男は見つからなかったのか」
「ヤマトゥに行ったら、あたしがマレビト神になってしまうもの。琉球にいて、待っていなくては駄目だわ」
「成程。そういうものか。いつか必ず、お前にふさわしいいい男が現れるさ」
「そうだといいんだけどね」とササは力なく笑った。
 ユーナンガー(雄樋川)に架かる橋を渡って、南へと戻った。この橋はタブチが造った橋だった。東方(あがりかた)の按司たちと手を結ぶために、新(あら)グスクから玉グスクへと向かう道に橋を架けたのだった。
 馬に揺られて一里半(約六キロ)ほど、のんびり行くと百名(ひゃくな)という古い集落に着き、そこから海岸に向かった。草木が生い茂った林の前で馬を下りて、ユンヌ姫の指示通りに草をかき分けて、邪魔な枝を刀で切りながら進んで行った。
按司様、本当にこの中に古いウタキがあるの?」とササが聞くが、サハチにもわからず、「あるはずなんだよ」と答えて、先へと進んだ。
 シンシンが突然、悲鳴を上げた。シンシンが指差す方を見るとハブが鎌首を上げていた。
 サハチが刀を構えたが、ササが「行きなさい」と言うと、ハブは素直にうなづいて、消えて行った。
 藪をかき分けて険しい岩場を下りて行くと、ようやく視界が開けて綺麗な海が見えた。下を見ると切り立った崖で、そこから先には進めなかった。
「まあ、綺麗!」とナナが言って海を眺めた。
「なぜか、ほっとする眺めね」とササが言った。
 海の中にいくつもの岩が点在していて、海の向こうには久高島が見えた。
「まさか、ここを降りるんじゃないでしょうね?」とササがサハチを見た。
「そうじゃない。お目当てはこっちだ」
 サハチは生い茂った草をかき分けて、崖とは反対側に行った。岩に囲まれた所にウタキらしい物があった。近くにある岩から綺麗な水が湧き出していた。
「これだよ」とサハチはウタキを示した。
「かなり、古いウタキみたいね」とササは言った。
 湧き水でお清めをして、サハチもササたちと一緒にお祈りをした。
「このウタキは『浜川(はまがー)のウタキ』といって、遠い南の国からやって来たアマミキヨ様が上陸して、しばらく暮らしていた所なの」とユンヌ姫がサハチに言った。
アマミキヨ様というのはユンヌ姫のお母さんだろう」とサハチが言うと、
「違うわよ。もっとずっと昔の神様よ」とユンヌ姫は言った。
 サハチにはよくわからなかった。
按司様、何をぶつぶつ言っているの?」とササが言って、シンシンとナナもサハチを見ていた。
「ちょっと、神様と話をしていたんだ」とサハチは言った。
 ササは笑って、またお祈りを始めた。
 ユンヌ姫は黙った。
 サハチは無心になってお祈りをしたが、神様の声は聞こえなかった。しかし、強い霊気のような物を感じ、神様の気配も感じていた。ユンヌ姫に言われるままに来てしまったが、ウタキに男が入っていいものなのか、今更ながら不安を感じていた。
 ササは神様の声を聞いていた。神様は怒っていて、「やっと来たわね。早く、ここを綺麗にしてちょうだい」と言ったきり、ササが神様の名前を尋ねても教えてはくれなかった。
 ササは諦めて、お祈りをやめると、空を見上げて、「ユンヌ姫様、ここは何なの? 教えてちょうだい」と言った。
「サハチのお芝居が下手だからばれちゃったじゃない」とユンヌ姫はサハチに文句を言ってから、「ここはあたしの御先祖様のウタキなの」とササに言った。
「あなたの御先祖様なら、あたしたちの御先祖様でしょ。どうして、こんなありさまなの?」
「かなり古いウタキだから忘れ去られてしまったの。ここを蘇(よみがえ)らすのがササのお役目よ」
「いいわ。草を刈りましょう」とササは言って、みんなで草刈りをして綺麗にした。
 改めてお祈りをすると、神様は機嫌を直してお礼を言って、百名ヌルだと名乗った。
「わたしはこのウタキを守っていましたが、わたしが亡くなったあと、何代かして百名ヌルは絶えてしまったのです。この下にある『ヤファラチカサ』は玉グスクヌルが守っていますけど、ここは忘れ去られてしまったのです。ここは『スーバナチカサ』といって、ヤファラチカサから上陸したアマミキヨ様がしばらく住んでおられた聖地なのです。二つが揃って浜川ウタキと呼ばれていたのです」
アマミキヨ様がここに住んでいたのですか」とササは聞いた。
「この裏にガマ(洞窟)があります。そこで、しばらく暮らして、この辺りの様子を調べたのです」
 豊玉姫(とよたまひめ)様の娘のアマン姫様は、豊玉姫様と一緒に馬天浜(ばてぃんはま)(ハティヌハマ)から上陸して、玉グスクに行ったはずだった。こんな所で暮らすはずはなかった。
アマミキヨ様はアマン姫様の事ではなかったのですか」とササは神様に聞いた。
「違います」と神様ははっきりと言った。
スサノオ様と豊玉姫様が偉大な神様だったために、二人の娘のアマン姫様がアマミキヨ様だと勘違いしている神様が多いのですが、アマミキヨ様はアマン姫様よりも一千年も前に、南の方から琉球に来られた御先祖様なのです。アマミキヨ様の子孫たちが北上してヤマトゥの方に行ったため、途中の島々がアマンと呼ばれるようになって、アマン姫様のお名前もそれにちなんで名付けられたのだと思います」
 確かにそうだとササは思った。玉依姫(たまよりひめ)の神様は南の島は皆、『アマン』と呼ばれていたと言っていた。
アマミキヨ様はどこから琉球にいらしたのですか」とササは聞いた。
「アマンという国だと思います。遙か南にある遠い島からやって来られたのです。天孫氏(てぃんすんし)はここから始まりました。ここは重要な聖地なのです。しっかりと守って下さい。お願いします」
 ササは必ず守ると神様に約束した。神様は喜んだあとユンヌ姫に、「叔母様、ありがとうございます」とお礼を言っていた。
「ササならちゃんとやってくれるから大丈夫よ」とユンヌ姫は神様に言った。
 お祈りを終えたあと、ササはみんなにこの場所の事を説明した。シンシンもナナもアマン姫とアマミキヨが別の神様だと聞いて驚いていた。
スサノオ様が琉球に来られた時、豊玉姫様は玉グスクにいらしたわ。豊玉姫様の御先祖様がアマミキヨ様で、その子孫が天孫氏だったのよ」
 ササがそう言うとシンシンもナナも真剣な顔をしてうなづいた。
「俺がここにいても大丈夫なのか」とサハチはササに聞いた。
「神様は何も言わなかったわ。神様も按司様を神人だと認めているのよ」
「そうか。スサノオの神様のお陰だな」とサハチは天に向かって両手を合わせた。
 アマミキヨ様が暮らしていたガマを見てから海岸へと降りた。かなり崩れていたが、下へ降りる道があった。
 潮が引いているので、岩がいくつも顔を出していた。
「あれね」とササが言って、塔のように立っている岩の所に行ってお祈りをした。
「潮が満ちて来ると隠れちゃうのよ」とユンヌ姫が言った。
「あたしがヌルの修行を始めた時、母に連れられてここに来たの。母は海の向こうを見つめながら、御先祖様が遠い国からやって来て、ここから上陸したのよって教えてくれたわ」
「ユンヌ姫がその話を聞いたのは、いつの事なんだ?」とサハチが聞いた。
「よくわからないけど、一千年くらい前じゃないかしら」
「なに、一千年‥‥‥ユンヌ姫はそんな昔の神様だったのか。すると、アマミキヨ様は二千年前の神様か‥‥‥」
 サハチは驚いて声も出なかった。ユンヌ姫が一千年前の神様なら、スサノオも一千年前の神様だった。一千年前の神様が、今も大切に祀られているのだから、スサノオはサハチが思っているよりもずっと偉大な神様に違いなかった。
 お祈りが終わるとササは南の海をじっと見つめていた。その横顔を見ながら、いやな予感がするのをサハチは感じていた。
 ユンヌ姫の案内で、険しい崖を登って、着いた所は『ヤファサチムイ(藪薩御嶽)』という古いウタキだった。ここはちゃんと道もあって、ウタキの周辺も綺麗に草が刈ってあった。
「ここはササのお母さんが見つけて、玉グスクヌルに教えたのよ。玉グスクヌルがちゃんと守っているわ」とユンヌ姫が言った。
「お母さんがここを?」
「もう二十年近く前の事よ」
 ササが六歳の時だった。ササは祖母と叔母に預けられて、母は五年間、ウタキ巡りの旅をしていた。母に会えないのは寂しかったけど、ササは時々、母の姿を夢に見ていた。母が知らない場所の古いウタキで、神様とお話ししている場面だった。あの時は夢だと思っていたが、夢ではなく無意識のうちに遠隔視をしていたのだった。
 サハチもササたちと一緒にウタキの前でお祈りをした。サハチには神様の声は聞こえなかった。ササには聞こえたが、何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「ねえ、何と言っているの?」とササはユンヌ姫に聞いた。
「あたしにもわからないわ。アマンの国の言葉をしゃべっているのよ。ここの崖は古いお墓だったの。琉球に来て、まだ、琉球の言葉がしゃべれない人たちが眠っているのよ」
「二千年前の御先祖様なのね」
 ササたちは御先祖様たちの冥福(めいふく)を祈ってから、馬を置いた場所に戻った。
「次はこっちよ」とユンヌ姫は案内をした。
「シンシンはユンヌ姫の声が聞こえるのか」とサハチはシンシンに聞いた。
「聞こえます」とシンシンは笑った。
 ナナに聞くと首を振って、「あたしはまだ修行が足りないわ」と言った。
 ナナを見ながら、サタルーといい仲になると俺の娘になるわけかと思い、それも悪くはないなと思っていた。
 次の目的地にはすぐに着いた。草茫々(ぼうぼう)の荒れ地の先にこんもりとした小さな山があった。
「これも古いウタキなの?」とササがユンヌ姫に聞いた。
「あの山は『ミントゥングスク』って呼ばれているわ。浜川ウタキから、アマミキヨ様はここに移り住んだのよ。あの上にお屋敷を建てて暮らしたの。何人も子供をお産みになられて、あそこで亡くなったらしいわ」
「旦那さんも一緒に連れて来たのか」とサハチは聞いた。
「シルミキヨ様という名前の神様よ」
「初めて聞くわ」とササが言った。
「いつも男子(いきが)は女子(いなぐ)の後ろに隠れているの。あたしが生まれた時もそうだったけど、グスクの主(あるじ)はヌルだったのよ。旦那さんはその補佐役だったのよ」
按司はいなかったのか」
「ここにいたシルミキヨ様が何て呼ばれていたかわからないけど、あたしの父はアジサーって呼ばれていたわ。アジサーは梓弓(あずさゆみ)の事で、父は梓弓を鳴らしてマジムン(悪霊)を追い払って、母を助けていたの。アジサーがいつの間にか、アジに変わっていったんだと思うわ。でも、今とは違って、ヌルの方が偉くて、アジサーはヌルを補佐していたの。母はヌルトゥチカサ(祝詞司)って呼ばれていて、玉グスクの宮殿で女王様のように暮らしていたのよ。あたしだって、与論島(ゆんぬじま)の宮殿で暮らして、島の人たちを守っていたのよ。戦なんてなかったからサムレーもいなかったわ。ヤマトゥとの交易が盛んになって、蔵に溜めた財宝を守るために、サムレーが生まれたのよ。そして、戦世(いくさゆ)になるとアジが村(しま)の人たちを守るためにグスクの主人になって、ヌルはアジを助けるようになっていったの」
 スサノオ琉球に来た時は、まだ、按司はいなくて、玉グスクヌルがこの辺り一帯を治めていたのかとササは考えていた。豊玉姫様の娘の玉依姫様はヤマトゥの国の女王様になったと言っていたけど、豊玉姫様もこの辺り一帯の女王様だったのに違いない。いえ、スサノオの神様と出会った時は若かったから、女王様の娘の若ヌルだったんだわと思った。
 草をかき分けて、崩れかけた石段をよじ登って、山の上に着いた。山の上も草茫々だった。
「仕方ないわね」とササは言って、みんなで草刈りをした。
「刀の刃がぼろぼろになっちゃうわ」とナナが文句を言った。
「大丈夫よ。按司様が代わりの刀をくれるわ」とササが言った。
「ああ。草刈り専用の短い刀をあげるよ」とサハチは言った。
「そんなの鎌で充分よ。立派な名刀を頂戴ね」
「わかっているよ。毎年、ヤマトゥに行って活躍しているからな。御褒美をあげなくちゃならんな」
 ナナとシンシンが顔を見合わせて喜んでいた。
 草刈りが終わって周りを見ると、四方が見渡せて、いい眺めだった。東には久高島が見え、北を見れば、すぐそばに垣花(かきぬはな)グスクが見えた。西を見れば玉グスクが見え、南を見れば、浜川ウタキがある森が見えた。山の上は思っていたよりも狭く、四つのウタキがあった。
 ユンヌ姫の言う通りに順番にお祈りをした。最後のウタキがアマミキヨ様とシルミキヨ様のお墓だった。ササは神様の声を聞いたが、やはり、アマンの言葉だったので、さっぱりわからなかった。
「ここも大切にしてね」とユンヌ姫は言った。
 ササはうなづいて、南の海をじっと見つめていた。
「アマンの国が見えるのか」とサハチはササに聞いた。
 ササは首を振った。
アマミキヨ様はどうして、アマンの国から琉球に来たのかしら?」
「何かが起こったんだろう。二千年も前の事だからな。大きな台風にやられて住めなくなってしまったのかもしれない」
「大きな津波に呑み込まれちゃったのかもしれないわね」
「次に行くわよ」とユンヌ姫が言った。
「まだ忘れ去られた聖地があるの?」とササが聞いた。
「もう一つあるわ。アマミキヨ様の子孫たちが、ここから移り住んだ場所よ」
「どうして、ここから移ったの?」
「子孫が増えて、ここが狭くなったからよ」
「成程」とササは納得したようにうなづいたが、「どうして、ここはミントゥングスクって呼ばれているの?」と聞いた。
「母から聞いた話だと『ミントゥン』というのは、『星』の事だって。アマンの国の言葉じゃないかしら。ここから星を見上げて、色々な事を占っていたんだと思うわ」
「星か」と言って、ササは空を見上げた。
 サハチも見上げて、夜だったら素晴らしい眺めが見られるだろうと思った。
 ミントゥングスクから西に、玉グスクへと向かう道を進んで行くと、玉グスクの城下の一番奥に出た。大通りの正面に玉グスクの大御門(うふうじょー)(正門)が見える。城下の村(しま)を挟んで、玉グスクと向かい合うようにあるのが、城下を守っている中森(なかむい)というウタキだった。
「中森の裏にあるのよ」とユンヌ姫が言って、サハチたちはまた藪をかき分けて、中に入って行った。
 草刈りをすると大きな岩の前にあるウタキが現れた。
「垣花森(かきぬはなむい)っていうウタキよ」とユンヌ姫が言った。
「玉グスクにあるのに垣花なの?」とササが聞いた。
「垣花の元はここなのよ。村を囲っていた垣根に綺麗な花が咲いていたので、垣花って呼ばれるようになったの」
「綺麗な村だったのですね」とシンシンが言った。
「そうよ。綺麗で平和な村だったらしいわ。あたしたちの御先祖様は五百年くらい、ここで暮らしていたらしいわ」
「五百年もいたのか」とサハチは驚いた。
「それじゃあ、ここは都だったんだな」
「そうよ。立派な宮殿もあって、大勢の人々が平和に暮らしていた古い都だったのよ。ここを拠点にヤマトゥまで行って交易をしていたのよ」
「貝殻を持って行ったのか」
「そうよ。貝殻を持って行って、ガーラダマ(勾玉)や石斧(いしおの)や弓矢の鏃(やじり)に使う硬い石を手に入れていたの。鍋(なびー)や甕(かーみ)なども手に入れていたみたい。交易をしていただけでなくて、奄美の島々やヤマトゥや朝鮮(チョソン)に移り住んだ人たちも多いのよ。お祖母(ばあ)様(豊玉姫)に聞いたんだけど、お祖父(じい)様(スサノオ)が玉グスクに来た時、玉グスクからこの垣花森を見て、懐かしい景色だって言ったらしいの。もしかしたら、お祖父様も天孫氏かもしれないって言っていたわ」
「ここに住んでいた人たちがヤマトゥの九州まで行って、イトの国を造って、イトの国で生まれたスサノオ様は本人も知らずに御先祖様がいた琉球に来たのかしら」とササが言った。
「多分、そうだと思うわ。お祖父様は海の男よ。アマンの国から来た御先祖様の血が流れているに違いないわ」
天孫氏は海の男か」とサハチは一人で納得していた。
「海の女もいたのよ」とササがサハチに言った。
「その頃はきっと、ヌルが男たちを率いてヤマトゥまで行ったに違いないわ」
「そうかもしれんな」とサハチはうなづいた。
スサノオ様が来た時はもうここの都はなかったのね?」とササがユンヌ姫に聞いた。
「もうウタキになっていたわ。平和だった都もだんだんと悪い人たちが現れるようになって、都を守るために東(あがり)と西(いり)にグスクを築いたの。東が垣花グスクで、西が玉グスクよ」
按司が生まれるんだな」とサハチが聞くと、ユンヌ姫は笑って、「まだよ」と言った。
「だって、まだろくな武器しかない時代なのよ。竹槍とか棒とか、弓矢だって大した威力はないし、まだ、サムレーは現れないのよ。サムレーが現れるのは、ヤマトゥから刀が渡って来てからよ。刀を持った敵と戦うには武装しなければならないので、サムレーたちを率いる按司が生まれるのよ」
「刀はいつ、琉球に来たんだ?」
「ヤマトゥで源氏と平家が争っていた頃じゃないの」
「舜天(しゅんてぃん)の頃か」
「そうだと思うわ」
 ササは安須森(あしむい)を思い出していた。安須森の麓(ふもと)の村が小松の中将様に滅ぼされたのは、武器の違いがあったに違いないと思った。平家の鋭い刀を相手に棒で戦って敗れてしまったのだろう。
「二つのグスクを築いて、やがて、女王様だったヌルが玉グスクに移って、妹が垣花グスクに移ったの。だんだんとグスクのそばに移る人たちが現れて来て、それぞれの城下の村ができるんだけど、ここは自然消滅してしまったのよ」
「玉グスクができたのはいつなんだ?」とサハチは聞いた。
「あたしが生まれる百年くらい前だったみたい」
「すると一千百年前か」
 サハチはそう言って唸った。
 玉グスクの城下も垣花の城下もヤマトゥの京都よりも古かった。
 サハチたちはお祈りをした。サハチには聞こえなかったが、ササは神様の声を聞いていた。ここの神様は琉球の言葉をしゃべった。察度(さとぅ)が浦添按司(うらしいあじ)の西威(せいい)を滅ぼした時、極楽寺(ごくらくじ)の法会(ほうえ)に参加していて殺されてしまった西威の従妹(いとこ)の玉グスクヌルだった。
「やっと、来てくれたのね。ありがとう」と神様は涙声でお礼を言った。
「わたしが殺されてしまったために、重要な二つのグスクが忘れ去られてしまったわ。ミントゥングスクと垣花森は代々、玉グスクヌルしか入れない聖地だったの。先代は三年前に亡くなり、わたしはまだ二十歳だったわ。浦添按司になった伯父の法会を手伝うために、従姉の浦添ヌルに呼ばれて極楽寺にお手伝いに行ったのよ。まさか、襲撃されるなんて夢にも思っていなかった。わたしが亡くなって、妹が急遽、玉グスクヌルを継いだけど、こことミントゥングスクを知っている者は誰もいないわ。以後、六十年余りも放って置かれてしまったの。玉グスクヌルに教えて、二つの聖地を守るように伝えて下さい」
 ササは喜んで引き受けた。これでようやく、御先祖様に顔向けができると神様は泣いていた。
 ササはお祈りを終えてから、
「どうして、神様は玉グスクヌルに伝えなかったの? 玉グスクヌルなら神様の声が聞こえるはずだわ」とユンヌ姫に聞いた。
「神様じゃないのよ」とユンヌ姫は言った。
「えっ!」とササには意味がわからなかった。
「突然、殺されてしまって、マジムン(悪霊)のように、ここにさまよっているの。殺した者を恨むというより、ウタキの事を次代のヌルに伝えられなかった事を悔やんでいるので、悪い事はしないけど、神様にはなれないのよ」
「どうしたら神様になれるの?」
「悩みが消えれば、神様になれると思うわ」
 いつの間にか、夕暮れ時になっていた。
「この聖地の北(にし)に宝森(たからむい)というウタキがあるわ。そこには玉グスクの按司やヌルたちのお墓があるのよ」とユンヌ姫が言った。
 宝森の事はカナから聞いていた。母と一緒に宝森に行って、神様から英祖(えいそ)様の父親、グルーの事を聞いたと言っていた。
「神様になったヌルたちに聞けば、ここの事もミントゥングスクの事もわかるはずなんだけど、あまりにも昔のウタキなので、その重要さがわからなくなってしまったのかもしれないわね。ただ、先代のヌルから教わったというだけで、意味もわからずにお祈りしていたのかもしれないわ。昔のヌルたちは領内の者たちを守らなければならないと必死になっていたけど、今のヌルは按司を守ればいいと思っていて、決められた事しかしないわ。ヌルとは名ばかりで、神様の声が聞こえないヌルもいるのよ。あなたやあなたのお母さんみたいに、あちこちのウタキを巡って神様の声を聞いて、御先祖様の事を知ろうと思うヌルはいないのよ。まして、ヤマトゥまで行って、お祖父様やお祖母様の事を調べるヌルなんて、ササしかいないわ。与論島で退屈していたけど、あなたに会えてよかったわ」
「あたしもよ」とササは言った。
「ところで、グルー様はどうなったの? ヤマトゥに帰ったの?」
「帰らないわよ。伊祖(いーじゅ)ヌルと一緒にいるわ。熱くて見ていられないから放って来たの。帰りたくなったら一人で帰るでしょう」
 ササは笑った。今頃、カナが二人の神様の熱々振りに当てられているだろうと思った。
 サハチはササたちを玉グスクに送ると、島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに帰った。

 

 

 

銭泡記 太田道灌暗殺の謎