長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-118.マグルーの恋(第一稿)

 キラマ(慶良間)の島から帰って来たら梅雨に入ったようだった。
 サハチはヤマトゥに行く交易船と朝鮮(チョソン)に行く勝連船(かちりんぶに)の準備で忙しくなっていた。早いもので、今年で五度目だった。最初の年は朝鮮とは交易をしたが、ヤマトゥとはしていない。それでも、将軍様と会う事ができて、交易をする事に決まった。将軍様との交易で、琉球に来る商人たちからは手に入らない高級品も手に入る事になって、それらを永楽帝(えいらくてい)に贈って喜ばれていた。朝鮮との交易で手に入る綿布(めんぷ)も、ヤマトゥの商人やメイユーたちに喜ばれていた。
 将軍様は明国の使者を追い返して、明国との交易をやめてしまった。琉球を頼りにしている将軍様のためにも毎年、明国の商品と南蛮(なんばん)(東南アジア)の商品をヤマトゥに送らなければならなかった。
 帰る準備でシンゴも忙しく、マツとトラは毎日、海に潜ってカマンタ(エイ)捕りをしていた。旅芸人たちが早く帰って来ないかと首を長くして待ちながら、馬天浜(ばてぃんはま)でウミンチュたちを相手に酒盛りをしているようだった。
 四月二十一日、雨降りの中、佐敷グスクのお祭りが行なわれた。毎年、雨に降られるので、舞台に屋根を付けたが、お客の集まりは悪かった。
 ササとシンシンとナナは頭を抱え、鍋をたたきながら『ナンマイダー』と叫び、念仏踊りをしながら城下を巡った。何事だと城下の者たちは驚き、子供たちが面白がって、真似して付いて来た。
 『ナンマイダー』の声が佐敷中に響き渡って、空も驚いたのか雨もやみ、大勢の人たちがササたちのあとに従って佐敷グスクに集まって来た。お祭りの準備をしていたユリ、ハル、シビーは大喜びをして、一緒に念仏踊りを踊って、佐敷のお祭りは念仏踊りで始まった。
 お芝居は『酒呑童子(しゅてんどうじ)』だった。二年前に島添大里(しましいうふざとぅ)で初演され、去年は平田で演じられた。鬼退治の話で、佐敷ヌルはユリ、ハル、シビーの三人に任せて、『小松の中将(くまちぬちゅうじょう)様』の台本造りに専念していた。旅芸人たちが戻って来るに違いないとマツとトラは期待していたが、旅芸人たちは帰って来なかった。
 佐敷のお祭りの七日後、去年の十月に行った進貢船(しんくんしん)と十一月に行った進貢船が一緒に帰って来た。浮島はお祭り騒ぎで、二隻の進貢船を迎え、首里(すい)の会同館(かいどうかん)で帰国祝いの宴が盛大に行なわれた。二隻の船が同時に帰って来ると会同館も賑やかだった。『宇久真(うくま)』の遊女(じゅり)だけでなく、『喜羅摩(きらま)』の遊女も呼んで、無事に帰国した者たちの相手をさせた。
 二人の正使、タブチ(八重瀬按司)とタキ(島尻大親)は応天府(おうてんふ)(南京)で出会ったという。先に行ったタキが役目を済ませて応天府を去ろうとした時、タブチたちが応天府の会同館に来た。タブチに誘われて富楽院(フーレユェン)の『桃香楼(タオシャンロウ)』に行って、一緒に飲んだらしい。
「驚きましたよ」とタキはタブチを見ながらサハチに言った。
「噂には聞いていましたが、その変わりようには本当に驚きました。今帰仁合戦(なきじんがっせん)の時の猛勇の面影はすっかり消えて、立派な使者になっていました。わたしも色々と勉強させていただきました」
 今帰仁合戦の時、タキは伯父の小禄按司(うるくあじ)に従って今帰仁まで行き、タブチの活躍を実際に見ていた。父の宇座按司(うーじゃあじ)が山南王(さんなんおう)の正使になって、タキも父と一緒に島尻大里(しまじりうふざとぅ)の城下に移った。先代の山南王が亡くなった時、タブチは島尻大里グスクにやって来て、父親の跡を継ぐと言った。重臣たちも賛成して、タキもそれが当然だろうと思った。しかし、弟のシタルーが攻めて来て、結局、タブチはシタルーに負けて八重瀬(えーじ)に帰って行った。その後、タキはタブチと会ってはいない。
「八重瀬殿のお陰で、偉い役人も紹介してもらいました。本来なら、決して会う事もできない偉い役人と親しくしているので驚きました。山南王は若い頃、国子監(こくしかん)に留学していたのですが、知っていた役人は誰もいなくなってしまったと嘆いていました。海船(かいしん)を下賜(かし)してもらうのにも苦労しておりました。やはり、中山王の使者は違うと改めて思いました」
「これからも中山王の使者として、よろしくお願いします」とサハチはタキに言った。
「応天府では、永楽帝がヤマトゥを攻めるに違いないとの噂が流れていたぞ」とタブチがサハチに言った。
「えっ!」とサハチは驚いた。
「ヤマトゥが明国の使者を追い返したからですか」
「そのようじゃな」
「しかし、あれは一昨年(おととし)の事だろう。どうして、今頃になって、ヤマトゥを攻めるんだ?」
 タブチは首を傾げた。
永楽帝は二月の半ばに順天府(じゅんてんふ)(北京)に行ってしまったので、その後、ヤマトゥ攻めがどうなったのかはわからん。もし、ヤマトゥを攻める事に決まれば、百年余り前に、蒙古(もうこ)が攻めた時(元寇)のような大戦(うふいくさ)になるだろうと噂されておった」
「朝鮮も加わるのか」
「朝鮮軍は先鋒を務める事になろう」
「そんな大戦が起こったら、対馬は全滅してしまう」
 シンゴたちに知らせなければならないとサハチは思った。
「今、鄭和(ジェンフォ)の船団は帰って来ている。その船団をそっくりヤマトゥ攻めに向けるという事も考えられる。鄭和は今年の冬にまた西の方に旅に出るとの噂もあるので、鄭和が西に行けば、ヤマトゥ攻めは中止されるかもしれない」
「是非、中止してほしいものだ」とサハチは本心からそう思った。
 次の日、馬天浜に行って、シンゴ、マツ、トラと会い、永楽帝のヤマトゥ攻めの噂を話した。
「冗談じゃないぜ」とトラが怒った顔をして言った。
「どうして、将軍様は明国の使者を追い返したんだ?」とマツが聞いた。
将軍様永楽帝から日本国王に任命されるわけにはいかないからだよ」とサハチは説明した。
「北山殿(きたやまどの)(足利義満)は隠居していて、出家までしていた。永楽帝から日本国王に任命されて、明国と交易をしていたけど、将軍様日本国王に任命されるのはうまくないらしい。ヤマトゥの国は神国(しんこく)で、明国の臣下になるわけにはいかないと言っていた」
「誰がそんな事を言ったんだ?」とトラが聞いた。
「もう亡くなってしまったけど、勘解由小路殿(かでのこうじどの)(斯波道将)という将軍様の側近のお方だよ」
「お前、そんなお方と会ったのか」
 シンゴが笑って、
「サハチは将軍様とも会っているんだよ」と言った。
「ええっ?」とマツとトラは驚いて、サハチを見た。
将軍様と会った?」
「正式に会ったんじゃない。お忍びの将軍様と会ったんだ」
「それだけじゃないぞ」とシンゴは言った。
「ササは将軍様の奥方様と仲良しで、毎年、将軍様の御所にお世話になって、一緒に伊勢参詣や熊野参詣に行っているんだよ」
「なに、あの若ヌルのササがか‥‥‥」
 マツとトラは口をポカンと開けたのままサハチを見ていた。
「運がよかっただけだよ。そんな事より、対馬に帰ったら、永楽帝のヤマトゥ攻めをちゃんと調べた方がいいぞ。実際に攻めて来る事がわかったら、その前に琉球に逃げて来いよ。戦って勝てる相手じゃないぞ」
「わかった」とマツとトラは真面目な顔付きでうなづいた。
「イトたちを頼むぞ」とサハチはシンゴに言った。
「わかっている。女たちは真っ先に逃がすよ」
 五月九日に梅雨が明けた。翌日、マツとトラの送別会を遊女屋(じゅりぬやー)『宇久真』で行ない、その翌日、シンゴ、マグサ、マツとトラの三隻の船は馬天浜から伊平屋島(いひゃじま)に向かった。サハチの五男のマグルーとヤグルー(平田大親)の長男のサングルーがヤマトゥ旅に出た。二人とも十六歳で、誰か一緒に行く者がいないかと探した所、シビーの兄のクレーが行ってくれる事になった。クレーは佐敷のサムレーで、美里之子(んざとぅぬしぃ)の武術道場で師範代を務めていた。
 うまい具合に旅芸人たちが馬天浜に来て、ほんのつかの間、マツとトラは舞姫たちとの再会を喜び、別れを惜しんで小舟(さぶに)に乗り込んだ。
「また来るからな。待っていろよ」と二人は舞姫たちに言っていたが、今度会えるのは、いつになるのかわからなかった。
 同じ日、浮島からヤマトゥに行く交易船も船出した。今回の総責任者はクルー(手登根大親(てぃりくんうふや))で、サムレー大将は首里七番組の宜野湾親方(ぎぬわんうやかた)と島添大里一番組の小谷之子(うくくぬしぃ)だった。苗代大親(なーしるうふや)はさっそく、首里以外のサムレーたちを船に乗せていた。島添大里の一番組のサムレーの半数がヤマトゥ旅に出掛けて行った。小谷之子は副隊長だったが、隊長の苗代之子(なーしるぬしぃ)(マガーチ)が首里の十番組の隊長になったので、隊長に昇格していた。正使はジクー禅師、副使はクルシ、ヌルはいつもの顔ぶれに浦添(うらしい)ヌルのカナが加わり、女子(いなぐ)サムレーの隊長は島添大里のカナビーだった。
 その船は四月の末に明から帰って来た船だったので、荷物の入れ替えと船の整備で大忙しだった。それに、初めてヤマトゥに行くので、クルシの活躍が必要だった。サハチは無事の帰国を祈って、交易船を見送った。
 勝連からも朝鮮に行く交易船が旅立って行った。それらの船は伊平屋島で落ち合い、薩摩の坊津(ぼうのつ)を目指した。
 ヤマトゥから来ていた商人たちも交易船のあとを追うように、次々に帰って行き、浮島も静かになった。
 五月の半ばに『小松の中将様』の台本が完成して、佐敷ヌルはユリ、ハル、シビーを連れて手登根(てぃりくん)グスクに行った。六月二十四日に手登根グスクでお祭りを行なう事に決まり、そのお祭りで『小松の中将様』を演じようと皆が張り切っていた。旅芸人たちも一緒にお芝居の稽古に励むために手登根に行った。手登根グスクは主人のクルーがヤマトゥに行っていて留守だが、急に賑やかになっていた。
 クルーの妻のウミトゥクは佐敷グスクの東曲輪(あがりくるわ)に住んでいた時、ずっと剣術の修行を続けていて、クルーやササたちから武当拳(ウーダンけん)も習っていた。手登根グスクに移ったウミトゥクは、近隣の娘たちを集めて剣術を教え始めた。
 佐敷グスクの女子サムレーのイリと剣術の修行を積んでいた娘のアキとユンとハニの三人が手登根に来てくれて、ウミトゥクを手伝った。アキとユンとハニの三人は女子サムレーになりたくて修行を続けていたが、誰かが辞めない限り補充はないので、なかなか女子サムレーにはなれなかった。マチルギの許しがあって、手登根の女子サムレーになる事ができたのだった。ほかの者たちはキラマの島から送るとマチルギは言ったが、ウミトゥクは断って、自分で育てると言った。
「キラマの島にも女子サムレーになりたくて待っている娘がいるのよ。四人を島から呼んで、あとの四人はあなたが育てなさい」とマチルギは言った。
 ウミトゥクはそれで納得して、うなづいた。
 ウミトゥクが娘たちを鍛え始めてから一年半近くが経ち、四人の娘が選ばれて女子サムレーになった。イリを隊長とした女子サムレー十二人がお芝居の稽古に励んでいた。
 サハチは子供たちを連れて、手登根グスクに行って、お芝居の稽古を見学した。クルーが造ったというセーファウタキへと向かう道も見て、感心した。人が歩けるだけの簡単な道だろうと思っていたが、荷車も通れる立派な道だった。南部に新しい道は必要ないだろうと思っていたサハチは、もう一度よく確認して、必要な道は拡張した方がいいと思った。
 子供たちと一緒に歌を歌いながら島添大里グスクに帰ると、珍しく、ンマムイ(兼グスク按司)が来ていた。
 ナツと一緒にお茶を飲んでいたンマムイは、
「マグルーの事をナツさんから聞いていたんです」とサハチに言った。
「マグルー? マグルーはヤマトゥ旅に行ったぞ。マグルーに何か用なのか」とサハチは二人の間に座り込むと聞いた。
「マグルーのお嫁さんだけど、もう決めてあるのですか」とお茶の用意をしながらナツがサハチに聞いた。
「いや。まだ決めていないよ。誰かいい娘でもいるのか」
 ナツが笑って、ンマムイを見た。子供たちの所に行くと言ってナツは出て行った。
「師兄(シージォン)、マグルーが弓矢の稽古に夢中だったのを知っていますか」とンマムイは聞いた。
「イハチの嫁のチミーから弓矢を習っているというのは聞いていたが、夢中になっていたかどうかは知らんな。マグルーがどうかしたのか」
「うちのマウミとマグルーが、どうも恋仲になっているようなのです」
「えっ、何だって!」とサハチは驚いて、ンマムイを見た。
 ンマムイの長女、マウミは美人(ちゅらー)で有名だった。南部の按司たちが、マウミを嫁に迎えようと狙っているとも聞いていた。
「マグルーはマウミに会っていたのか」とサハチは聞いた。
 マウミは母親と一緒に、首里や島添大里のお祭りに来ているので、マグルーと会っていても不思議ではないが、二人が恋仲になっているなんて、サハチはまったく知らなかった。
「マグルーが初めて兼(かに)グスクに来たのは、兼グスクが完成して、しばらくしてからでした。グスクを見学したあと、マグルーはマウミと弓矢の試合をして負けたようです。その後、マグルーは弓矢の稽古に励んで、一年後にも試合をしますが負けます。そして、今年の四月、マグルーはマウミに勝ったようです。マウミは自分よりも強い男でないとお嫁には行かないと言っていました。そのマウミがマグルーに負けたのです。マグルーはヤマトゥ旅に出る前に、帰って来るまで待っていてくれとマウミに言ったようです。マウミはうなづいて、今は毎日、マグルーの無事の帰国を祈っています。俺も二人の事は知らなかったのです。マハニに言われて、マウミから話を聞きました」
「マグルーがマウミと試合をして勝ったのか‥‥‥」
 信じられないという顔でサハチは首を振った。
「二人を結ばせてやりたいのですが、師兄はどう思われますか」とンマムイは聞いた。
「お前の娘なら文句などあるわけがない。こっちから頼みたいくらいだ」とサハチは言った。
「師兄、ありがとうございます」
「マグルーがマウミを落としたか‥‥‥マグルーもいつの間にか、恋をする年頃になっていたんだな。それにしても、いい相手を選んでくれた。めでたいのう」
 マウミは十二歳の時に家族と一緒に母親の故郷の今帰仁に行った。その帰り道、マウミの人生を変える事件が起こった。刺客(しかく)の襲撃だった。恐ろしい経験だったが、マウミは逃げなかった。家族を守るために強くなろうと決心をして、武芸を習った。今帰仁には師と仰ぐ、従姉(いとこ)のマナビーがいた。マウミは今帰仁に滞在していた三か月余り、マナビーに師事して、馬術と弓矢の基本を徹底的に仕込まれた。
 今帰仁から阿波根(あーぐん)グスクに帰ったが、阿波根グスクも襲撃を受け、新(あら)グスクに移った。新グスクに来たヂャンサンフォンのもとで一か月の修行も積んだ。その時、一緒に修行を積んだ仲間に、サスカサとシビー、八重瀬の若ヌルとチヌムイがいた。
 父は大勢の武芸者を家臣にしていたので、マウミが師と仰ぐべき人は何人もいて、マウミは武芸の修行に熱中した。首里グスクのお祭りで、女子サムレーを見て憧れ、やがては女子サムレーを作って、自分が率いようと思った。
 新グスクにいた時、具志頭(ぐしちゃん)グスクの奥方様(うなじゃら)(ナカー)が弓矢の名人だと聞いて、具志頭まで通って指導をお願いした。マウミは兼グスクに移るまで、四か月間、ナカーの娘のチミーと一緒に稽古に励んだ。チミーはまだ十七歳なのに、神業とも思える凄い腕を持っていた。
 南風原(ふぇーばる)に兼グスクが完成して、新グスクから移り、馬場で馬術の稽古をしていた時、マグルーがやって来た。マグルーとは首里のお祭りや島添大里のお祭りで何度か会って、話をした事があるが、マウミは別に興味もなかった。
 お嫁に行くなんて考えた事もなく、ひたすら、武芸の稽古に励んでいた。それでも、持って生まれた美貌に惹かれて、縁談話はいくつもあった。マウミは自分よりも弱い男にはお嫁に行かないと宣言して、言い寄って来る男たちと弓矢の試合をして、打ち負かして来た。
 マウミはマグルーも簡単に打ち負かし、マグルーはうなだれて帰って行った。その後、マウミはマグルーの事は忘れた。去年の二月、従姉のマナビーが今帰仁から島添大里に嫁いで来て、ミーグスクに入った。マウミはマナビーとの再会を喜んだ。
 五月にマグルーが兼グスクにやって来て、試合を申し込んだ。マウミはマグルーと試合をした。マウミは勝ったが、マグルーの上達振りに驚いた。いつかはマグルーに負けてしまうかもしれないとマウミは焦り、久し振りに本気になって修行に励んだ。
 ある時、マウミがマナビーに会いにミーグスクに行ったら、マグルーがミーグスクの的場で弓矢の稽古をしていた。
「マナビー姉さんが、マグルーさんに教えていたの?」とマウミが聞いたら、
「あたしが教えたのは馬術よ。弓矢はチミー姉さんが教えているのよ」とマナビーは言った。
 チミーが島添大里に嫁いだのは、兼グスクが完成する半月ほど前の事だった。マウミが師と仰いでいるマナビーとチミーの二人が島添大里に嫁いで行くなんて不思議な事だった。
「マグルーはあなたに勝つために必死だわ。寝ても覚めても、あなたの事しか考えていないわよ。本気であなたが好きなのよ。恋っていうものね。あたしには経験がないけど、人を好きになるって素晴らしい事だと思うわ。あなたはどう思っているの、マグルーの事?」
 弓を構えているマグルーを見ながら、「何とも思っていないわ」とマウミは言ったが、胸の中に何か熱い物を感じていた。
「あたし、マグルーを応援しているのよ」とマナビーは言った。
「えっ?」とマウミは驚いてマナビーを見た。
「だって、マグルーとあなたが一緒になれば、あたしたち、姉妹になるのよ。あなたも島添大里に来て、一緒に暮らす事になるのよ。考えただけでも楽しいわ」
 今まで考えた事もなかったけど、マナビーの言う通りだった。島添大里にはマナビーとチミーだけでなく、佐敷ヌルもサスカサもいる。こんな凄い所にお嫁に来られたら素晴らしい事に違いなかった。
 マナビーに言われたからではないが、マウミは少しづつ、マグルーの事を意識し始めるようになっていった。マウミは馬に乗って、度々、ミーグスクを訪ねた。マグルーがいる時は一緒に稽古をしたり、稽古のあとに話をしたりして楽しい時を過ごした。マグルーがいない時は、マナビーが呼んでくれた。マグルーは汗びっしょりになって飛んできた。そんなマグルーを見ながら笑って、お互いの事を話し合うのが楽しかった。
 今年の四月、マウミはマグルーと弓矢の試合をして負けた。悔しかったが、自分よりも強い男がマグルーだったのは嬉しかった。マグルーは来月、ヤマトゥ旅に出るけど、帰って来るまで待っていてくれと言った。マウミは、待っていると答えた。会えなくなって、マウミはマグルーの面影を思い出しながら、マグルーを好きになっていた自分に気づいていた。
 ンマムイが帰ったあと、サハチは東曲輪(あがりくるわ)に行って、チミーと会った。
「マグルーが弓矢を教えてくれと行って来たのは、わたしがここに嫁いで来て、すぐの頃です。わたしには弟がいないので、姉さんと呼ばれて頼りにされると嬉しくなって教える事にしたのです。武術道場の的場は昼間はサムレーたちが使うので、早朝、そこでお稽古をして、あとは馬天浜の的場でお稽古させました」
「馬天浜の的場?」
「昔、按司様(あじぬめー)がお稽古していたと聞いています」
「あの的場がまだあったのか」
「サミガー大主(うふぬし)様(ウミンター)の息子さんが時々、お稽古をなさっているようです」
「そうか。シタルーだな」
 チミーは首を傾げて、話を続けた。
「小舟(さぶに)の上から的を狙わせたりもしました。マグルーは指を血だらけにしながらも頑張っていました。サムレー大将になるためだと言っていましたが、あとになって、好きな女子(いなぐ)に勝つためだとわかりました。その娘が兼グスク按司の娘のマウミだと知って驚きました。マウミはわたしの弟子のような娘なんです」
「なに、チミーはマウミを知っていたのか」
「マウミが新グスクにいた頃、マウミは具志頭グスクに通って、母とわたしの指導を受けていたのです」
「そうだったのか」
「マウミは美人ですからね。マグルーが必死になるのもよくわかりましたよ」
「それじゃあ。マウミもマグルーもお前の弟子という事になるな」
「ミーグスクのマナビーもマウミとマグルーの師匠です。マウミとマグルーはミーグスクでよく会っていました」
「二人がミーグスクで会っていたのか」
「マウミとマナビーは従姉妹(いとこ)同士ですからね。マウミは馬に乗ってよく遊びに来ていました。そして、マグルーはあそこの的場でお稽古をしていたのです」
「成程な。ミーグスクで会っていたとは知らなかった」
 サハチがミーグスクに行くと言ったら、チミーも付いて来た。ミーグスクにマウミが来ていて、的場の近くにある東屋(あずまや)でマナビーと話をしていた。サハチの顔を見ると二人は驚いて立ち上がって頭を下げた。
「お前の親父が、お前の事で話に来たぞ」とサハチはマウミに言った。
 マナビーが屋敷の方に案内しようとしたが、サハチは断って、東屋の縁台に腰を下ろした。
「父が何を言って来たのですか」とマウミは聞いた。
「大事な娘に虫が付いたようだとな。でも、娘もその虫が好きなようだから、何とかしてやりたいと言ってきたんだよ」
「そんな、虫だなんて‥‥‥」とマウミは言って俯いた。
「二人の話を聞いて、わしは昔の事を思い出したよ」とサハチは笑った。
「わしもマチルギに負けた時、悔しかった。一月後に試合をやる約束をしたんだが、急にヤマトゥ旅に出る事になってしまって、試合はできなかった。ヤマトゥに行く前、わしはマチルギに待っていてくれと頼んで旅に出たんだ」
「えっ、マグルーさんと同じです」とマウミが驚いた顔をして言った。
「わしもマチルギも、そんな昔の事を子供たちには話していない。偶然、同じ事が起こったのだろう」
「奥方様は待っていたのですね」とマナビーが聞いた。
 サハチはうなづいて、
「マチルギは佐敷に来ていて、娘たちに剣術を教えていたんだよ。本当に驚いた」と笑った。
 もっと詳しく聞かせてくださいと三人にせがまれ、サハチはマチルギとの出会いから話して聞かせた。
 首里に行ってマチルギに相談すると、マナビーとチミーからマグルーとマウミの仲は聞いていて、この先どうなるか、二人に任せてみようと見守っていたという。
「マグルーがうまくやったのね」とマチルギは驚き、
「マグルーはあなたに一番似ているのかしら」とサハチを見ながら笑って、
「マウミは素晴らしい娘さんだわ。マグルーはいいお嫁さんを見つけてくれたわね」と大喜びをした。

 

 

 

新訳 弓と禅 付・「武士道的な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)   弓具の雑学事典

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第二稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー、奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第一稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第一稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第一稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第一稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第一稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第一稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第一稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第一稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第一稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第一稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司次男尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
タルムイ(太郎思) 1385-1429  豊見グスク按司汪応祖の長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    山南王シタルーの娘。豊見グスク按司の姉。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫。
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
米須按司      1357-    武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
玻名グスク按司   1358-    タブチの義兄。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。

 

2-117.スサノオ(第一稿)

 佐敷ヌルたちがヤンバル(北部)の旅から帰って来たのは、島添大里(しましいうふざとぅ)のお祭り(うまちー)の四日前だった。
「いい旅だった。琉球は本当にいい所だ」とマツは満足そうな顔をして言った。
「こんな所で暮らしているなんて、お前が羨ましいよ」とトラは言った。
「早いうちに倅に跡を継いでもらって、俺たちは隠居して琉球に住もうとマツと相談していたんだよ」
「お前たちが隠居したら、サイムンタルー(早田左衛門太郎)殿が困るだろう。対馬を統一してから琉球に来ればいい」
対馬を統一するのは難しい。あとの事は倅に任せるさ」
 マツとトラは顔を見合わせて笑っていた。
「お兄さん、安須森(あしむい)にスサノオの神様が現れたのよ」と佐敷ヌルが驚いた顔をしてサハチに言った。
豊玉姫(とよたまひめ)様と御一緒に現れて、お礼を言われたの。本当に驚いたわ。スサノオの神様は琉球に来た時、安須森には登れなかったので、こんないい所だったのかと喜んでおられたわ。それにね、今帰仁(なきじん)のクボーヌムイ(クボー御嶽)では、小松の中将(ちゅうじょう)様とアキシノ様とも再会したのよ」
「小松の中将様は今帰仁におられるのか」
「初代の今帰仁按司なんだから当然なんだけど、ヤマトゥで出会わなければ、きっと、会えなかったでしょう」
「そうかもしれんな」とサハチはうなづいた。
「奥間(うくま)ヌルも一緒に安須森に行ったんだけど、奥間ヌルのガーラダマ(勾玉)が、安須森ヌル様の妹さんの物だってわかったのよ。安須森ヌル様の妹さんは安須森が襲われた時に行方知れずになってしまったらしいの。安須森ヌル様は、妹さんは殺されてしまったものと思っていたんだけど、奥間に逃げて子孫を残したみたい。奥間ヌルもその妹さんの子孫らしいわ。そのガーラダマなんだけど、アマン姫様がスサノオの神様から贈られた物だったのよ」
「ほう。奥間ヌルのガーラダマもスサノオの神様の物だったのか。やはり、奥間とはつながりがあったんだな。ところで、旅の途中、危険な目には遭わなかったんだろうな」
「大丈夫よ。何も起こらなかったわ」
「そうか。よかった」
 サハチは無事の帰郷を祝って、一階の大広間に酒の用意をさせた。福寿坊(ふくじゅぼう)と辰阿弥(しんあみ)の二人は、首里(すい)で思紹(ししょう)に挨拶をしたあと与那原(ゆなばる)に帰ったらしい。二人は行く先々で『念仏踊り』を披露して、人々に喜ばれたという。
「そのうち、あちこちのお祭りで念仏踊り(にんぶちうどぅい)が踊られるかもしれないわね」とササは面白そうに笑った。
「サタルーも安須森まで行ったのか」とサハチはササに聞いた。
「来なくもいいと言ったのに、結局、付いて来たのよ」
「余程、ナナに惚れたようだな」とサハチはナナを見た。
 ナナは浮かない顔をして、「奥間に行かなければよかった」と言った。
「サタルーの奥さんに会ってしまったのよ。子供たちにもね」とササが言った。
「前に奥間に行った時は会わなかったのか」
「会ったけど、あの時と今は違うもの」
「そうか‥‥‥」
 宴(うたげ)の準備が整ったので、サハチたちは一階に降りて、サグルー夫婦、サスカサ、イハチの妻のチミー、チューマチ夫婦を呼びにやり、お祭りの準備をしているユリたちと女子(いなぐ)サムレーたちも呼んだ。
 うまそうに酒を飲みながら、「カナ(浦添ヌル)も一緒に行ったのよ」とササが言った。
「なに、カナも安須森まで行ったのか」
「お母さんから話を聞いて、行ってみたいと思っていたんですって。安須森とは関係ないんだけど、カナも神様からお願い事を頼まれたのよ。それで、来年、ヤマトゥに行くって言っているわ」
「その話はササのお母さんから聞いたよ。英祖(えいそ)様のお父さんの事だろう」
「そうなのよ。英祖様のお父さん、ヤマトゥに行ったきり帰って来ないんですって。それを探しに行くって言っていたわ。一緒に行った熊野の山伏を探すって言っていたけど、サクライノミヤという名前しかわからないのよ。カナは絶対に探し出すって張り切っているけど、熊野は広いのよ。山伏だっていっぱいいるし。あたしは無理だと思ったわ。でもね、救いの神様が現れたのよ」
「救いの神様?」
「舜天(しゅんてぃん)様よ。舜天様は波之上(なみのえ)の熊野権現(ごんげん)様を建てたサクライノミヤという山伏を知っていたのよ。熊野の山伏だけど、備前(びぜん)の国の児島(こじま)という所から来た事を覚えていたの。児島と言えば福寿坊よ。福寿坊に聞いたら、桜井宮(さくらいのみや)様というのは法親王(ほうしんのう)様で、児島の熊野権現様を再興した偉い人だって言ったのよ」
「なに、ササが連れて来た福寿坊が、カナが探していたサクライノミヤを知っていたのか」
「そうなのよ。あたしだって驚いたわ。まるで、カナのために連れて来たような気がしたわ」
「そうか‥‥‥スサノオの神様のお陰かもしれんな」とサハチは言った。
「そうね。きっと、そうに違いないわ」
「児島は博多から京都に向かう途中だ。福寿坊に案内してもらったら、英祖様の父親の事もわかるだろう。お前も一緒に行くのか」
「カナが行くのなら、行かないわけには行かないわ」
 サハチはうなづいて、「来年も頼むぞ」と言った。
 ササを見ながら、シンシンとナナが嬉しそうに笑った。
スサノオの神様はまだ琉球におられるのか」とサハチが聞くとササは首を傾げた。
「安須森で会ったあと、声は聞いていないわ」
スサノオというのは日本の神様じゃないのか。どうして、琉球にいるんだ?」とトラがサハチに聞いた。
スサノオを祀った神社が対馬にもあるだろう。スサノオは昔、対馬を拠点に琉球と交易をしていたんだよ。琉球タカラガイを元手に、朝鮮(チョソン)の鉄を手に入れていたんだ。その鉄で武器を作って、ヤマトゥの国を造ったんだよ。当時は朝鮮ではなくて、カヤの国といったらしい」
「なに、そんな昔から対馬琉球と朝鮮と交易していたのか」
「そうさ。その事を調べたのがササなんだ。対馬豊玉姫を祀った神社があるだろう」
「仁位(にい)のワタツミ神社だろう」とマツが言った。
「そうだ。ササはワタツミ神社の豊玉姫のお墓を見て、南の島から来た人に違いないと思ったんだ。それで、色々と調べて、豊玉姫琉球の人で、スサノオの奥さんになった人だと突き止めたんだよ」
「なに、豊玉姫琉球の人?」
「そうさ。俺たちの御先祖様はスサノオ豊玉姫なんだよ。そして、スサノオ豊玉姫の娘の玉依姫(たまよりひめ)はヤマトゥの国の女王になった卑弥呼(ひみこ)で、のちに、アマテラスとして伊勢の神宮に祀られているんだよ」
「へえ、そうなのか。神様の事はあまりよく知らないんだ」とトラがマツの顔を見ながら言った。
 マツもわからんと言った顔で首を振って、
「船越にアマテル神社があるけど、あれはアマテラスを祀っているのか」と聞いた。
「アマテラスじゃなくて、父親スサノオだよ。本当は太陽の神様はスサノオだったんだ。ある時、女の天皇が太陽の神様をスサノオの娘の玉依姫に変えてしまったらしい。そして、伊勢に立派な神社を建てたようだ」
「へえ、琉球にいるお前の方が、日本の歴史に詳しいとは驚いた」
「ササのお陰さ。ササのお陰で、源氏や平家の歴史も詳しくなったんだぞ」とサハチは自慢気に言った。
対馬にも平家の伝説はあるぞ。平知盛(たいらのとももり)が安徳天皇を連れて対馬に逃げて来て、守護の宗氏は知盛の子孫だという」
 話を聞いていたササが、「平知盛安徳天皇を連れて対馬に逃げたの?」と聞いた。
「そういう伝説があるというだけで、真実なのかは誰も知らないよ」とマツが答えた。
安徳天皇の子孫はいないのですか」
「さあ、聞いた事ないな」とマツは言って、トラを見た。
「子孫はいないと思うよ」とトラは言った。
「きっと、若死にしたんじゃないのか」
 ササは、朝盛法師(とももりほうし)がヤマトゥに行って、安徳天皇の御陵(ごりょう)を封印した事をサハチに教えた。
「やり残した事というのは、本物の三種の神器(じんぎ)を隠す事だったのか」
「そうみたい。それが見つかったら大変な事になるらしいわ」
 佐敷ヌルはユリ、ハル、シビーとお祭りの事を話し合っていた。
「マシュー、小松の中将様のお芝居は書けそうか」とサハチは佐敷ヌルに聞いた。
 佐敷ヌルはサハチを見て笑うと、「うまく書けそうだわ」と言った。
「旅芸人に教えて、今帰仁で上演するのか」
「そのつもりよ」
「楽しみだな」とサハチは笑った。
 翌日から、佐敷ヌルはサスカサの屋敷に籠もって、『小松の中将様』の台本作りを再開した。
 二月二十八日、島添大里グスクのお祭りは小雨の降る中、行なわれた。それでも、正午(ひる)には雨もやんで、お芝居を観るために人々が集まって来た。
 お芝居は『瓜太郎(ういたるー)』だった。不思議な事に、島添大里で『瓜太郎』をやるのは初めてで、城下の者たちも楽しみにしているようだ。
 『瓜太郎』の初演は三年前の佐敷のお祭りで、ササ、シンシン、ナナが素晴らしい演技を見せて好評だった。二度目は平田のお祭りで、ササたちに負けるものかと平田の女子サムレーたちが頑張った。三度目は首里、四度目は与那原で、今回が五度目だった。旅芸人たちも馬天浜(ばてぃんはま)、浦添(うらしい)、佐敷で『瓜太郎』を演じていた。
 島添大里で『瓜太郎』をやる事は、佐敷ヌルがヤマトゥに旅立つ前から決まっていたので、女子サムレーたちも気合いを入れて稽古に励んでいた。主役の瓜太郎はアミーで、サシバはカルー、犬(いん)はシジマ、亀(かーみー)はユーナだったが、キラマの島に行ったので、クトゥに代わる事になった。クトゥはユーナの分まで頑張ろうと張り切っていた。
 話の筋は変わらないが、台詞(せりふ)や演技は少しづつ変わっていった。子供たちにもわかるように難しい言葉はやめて、遠くで見ている観客にもわかるように身振り手振りが大きくなっていた。笑わせる場面も多くなって、観客は腹を抱えて笑っていた。格闘場面では、ササたちの演技をさらに拡張して、見応えのある場面となり、観客たちは固唾(かたず)を呑んで見守った。サハチもマツとトラと一緒に酒を飲みながら観ていたが、酒を飲む手が止まってしまうほど面白かった。
 旅芸人たちは『浦島之子(うらしまぬしぃ)』を演じた。『浦島之子』は佐敷ヌルが初めて作ったお芝居だった。四年前に平田のお祭りで演じられてから、以後、女子サムレーたちは演じていない。旅芸人たちのお芝居になっていた。『舜天』と『瓜太郎』を演じるまで、旅芸人たちは『浦島之子』を何度も演じてきていた。文句なく、一流の芸になっていた。
 お芝居のあと、佐敷ヌルとササとユリが笛を吹いた。心に染みる幽玄な調べだった。佐敷ヌルの笛に合わせて、ササが高音を吹き、ユリが低音を吹いていた。
 まるで、神様が現れて来るような神秘的な曲だと思っていたら、スサノオの神様の声が聞こえてきた。
「佐敷ヌルとササは知っているが、もう一人の女子(おなご)は誰じゃ?」とスサノオは言った。
 自分が答えていいものか迷ったが、
「もう一人はユリです」とサハチは答えた。
「ユリか。いい女子じゃ」とスサノオは言った。
 サハチの言葉がスサノオに通じたようだった。
「ササとは腹違いの姉妹です」
「なに、ササの姉か。成程のう」
 スサノオの神様に聞きたい事があったはずなのに、突然の事だったので思いつかなかった。その後、スサノオの神様の声は聞こえず、佐敷ヌルたちの曲も終わった。
 ウニタキがヤンバルに行っていて留守なので、ミヨンとウニタルが三弦(サンシェン)を披露した。ヤマトゥ旅のお陰か、ウニタルの歌は以前よりもずっとうまくなっていた。その後、辰阿弥と福寿坊の鉦(かね)と太鼓に合わせて、「ナンマイダー」と叫びながら念仏踊りをみんなで踊って、お祭りは終わった。
 三月三日、恒例の久高島参詣が行なわれ、慈恩寺(じおんじ)の普請(ふしん)も始まった。十日には久場(くば)ヌルが、首里の御内原(うーちばる)でサイムンタルーの娘を産み、跡継ぎができたと喜んだ。十九日はクマヌの一周忌で、中グスクでお祭りが行なわれ、旅芸人の『舜天(しゅんてぃん)』が演じられた。その翌日は、丸太引きのお祭りで、シズが率いる若狭町(わかさまち)が優勝した。シズが倭寇(わこう)の荒くれ者たちに気合いを入れたようだった。
 四月の三日、ファイチ(懐機)の娘のファイリン(懐玲)がマサンルー(佐敷大親)の長男、シングルーに嫁いだ。思紹(ししょう)は首里で婚礼を挙げようと言ったが、世子(せいし)の息子ではないので、そんな大げさにやる必要はないとマサンルーが主張して、佐敷グスクで行なわれる事となった。
 ファイリンが琉球に来たのは四歳の時だった。五歳の時に久米村(くみむら)から佐敷に移り、六歳の時には島添大里に移った。首里に城下が完成したあと、一時、首里で暮らしたが、やはり、島添大里の方がいいと言って戻って来た。十二歳の時に母と兄と一緒に明国に帰って、祖父母と再会して、翌年、戻って来た。十五歳になると島添大里グスクに通って剣術を習い初め、佐敷から島添大里のソウゲン寺に通っていたシングルーと親しくなったのもその頃らしい。シングルーがヤマトゥ旅に行った時は、ずっと、無事の帰国を祈っていた。そして、無事に帰って来たシングルーから、お嫁に来てくれと言われて、ファイリンは迷う事なくうなづいた。
 マサンルーから相談を受けたサハチは、ファイチと会って話をまとめた。ファイチも妻のヂャンウェイからシングルーの事は聞いていたので、二人の婚礼を認めた。
「速いものです」とファイチは言った。
「ファイリンがお嫁に行く年齢(とし)になるなんて‥‥‥ファイリンが選んだ男ですから大丈夫でしょう。サハチさんの甥ですから、文句はありませんよ」
 ファイチが吉日を選んで、四月三日と決まったのだった。
 花嫁のファイリンは島添大里の城下の者たちに祝福されて、佐敷へと嫁いで行った。王様も王妃もサハチもマチルギも来るなとマサンルーは言った。王様や世子が来ると、佐敷グスクは厳重に警固されて、城下の者たちが自由に出入りできなくなってしまう。若い二人を、これからお世話になる城下の者たちに祝福してもらいたいとマサンルーは言った。
 マサンルーの言う事は正しいが、甥の婚礼に出席できないのは残念だった。婚礼の儀式を手伝ったササたちの話によると、佐敷ヌルはサハチとマチルギの婚礼を思い出して、あの時の婚礼によく似ていると言った。城下の者たちに祝福されて、二人は幸せそうだったという。ファイチと親戚になったウニタキは出席していて、サハチだけのけ者にされたような気分だった。
 新郎新婦は東曲輪(あがりくるわ)の屋敷に入り、新しい生活が始まった。明人(とーんちゅ)の妻を娶(めと)ったシングルーは、妻の国を見てみたいので、進貢船(しんくんしん)の使者になるとマサンルーに言ったという。サハチはシングルーを報恩寺(ほうおんじ)に入れて、明国の言葉を習わせようと思った。
 四月十日、浦添のお祭りが行なわれ、『鎮西八郎為朝(ちんじーはちるーたみとぅむ)』のお芝居が演じられた。サハチもマツとトラと一緒にお祭りに行った。旅芸人たちが旅に出て行ってしまい、マツとトラは退屈していた。サハチは二人を海に連れて行って、カマンタ(エイ)捕りをさせた。こいつは面白いと二人は熱中して、最近は毎日、海に潜っていた。
 浦添のお祭りの次の日、サハチはシンゴ、マツ、トラをヒューガの船に乗せて、キラマ(慶良間)の島に行った。
 サイムンタルーが感動したように、その美しい景色にマツとトラも、「凄えなあ」と言って感動していた。小舟(さぶに)に乗って島に上陸すると、大勢の若者たちがいるのに驚き、「この島は何だ?」とトラが聞いた。
「若い者たちを鍛えている武術道場だよ」とサハチは説明した。
「親父が密かにここで、一千人の兵を育てて、先代の中山王を倒したんだ。今は首里から食糧を送っているけど、当時は食糧を集めるために、ヒューガ殿が海賊になって、敵の食糧を奪っていたんだよ。シンゴにも食糧を運んでもらったんだ」
「ほう。内緒で兵を育てていたのか」
「そうさ。親父は隠居して、十年掛けて、一千人の兵を育てたんだ。その兵たちの活躍のお陰で、今があるんだよ。今は隠れて、兵を育てる必要はないんだけど、ここで一緒に修行した者たちは団結力が強いので、ここで修行を積んでから、首里や島添大里に送っているんだ」
「そう言えば、旅芸人たちもキラマの島の事を言っていたけど、ここの事だったんだな」
「旅芸人だけじゃない。女子サムレーもサムレーもみんな、ここで修行を積んでいるんだよ」
「当時はここで修行している者たちは、倭寇になって南蛮(なんばん)(東南アジア)に行く事を信じて修行を積んでいたんじゃ」とヒューガが言った。
 サハチは笑って、「ヒューガ殿にも倭寇に扮してもらいましたね」と言った。
「どうして、倭寇なんだ?」とマツが聞いた。
「中山王や島添大里按司に怪しまれないためだよ。佐敷按司が密かに兵を鍛えているとわかったら、本拠地の佐敷グスクが潰されてしまうからな」
「確かにな。当時の状況を聞いて驚いたよ。島添大里グスクに敵がいて、あんな小さな佐敷グスクがよく潰されなかったものだと不思議に思った」
「今、思えば、十年間も、よく持ちこたえたと思うよ」
 サハチたちは若い者たちを鍛えて、一汗かいたあと、海に潜って魚を捕って、浜辺で酒盛りを始めた。
「俺が初めて対馬に行った時、一緒に遊んだ仲間なんだ」とサハチは総師範のマニウシに言って、マツとトラを紹介した。
 六人の師範と島ヌルのタミーが来て加わった。
「今回は佐敷ヌル様は来なかったのですね」とタミーはサハチに聞いた。
「佐敷ヌルは新しいお芝居の台本作りに忙しいんだよ」
「そうですか。ここの者たちにもお芝居を見せてあげたいわ」
「それはいい考えだな。旅芸人たちをここに連れて来よう」とサハチは言ってヒューガを見た。
「そうじゃな。ここの者たちにも、いい気分転換になるじゃろう」とヒューガは笑った。
「本当ですか」とタミーは喜んだ。
「旅芸人の舞姫になったフクは、ずっと一緒に修行を積んだ仲なんです。久し振りに会いたいわ」
「なに、フクと一緒に修行したのか」とトラが言ってタミーを見た。
「あたしたち佐敷の生まれなんです。佐敷ヌル様に憧れて、島添大里グスクに通って、剣術を習いました。十七の時にこの島に来て、さらに修行を積んで、あたしは島添大里の女子サムレーになり、フクは『三星党(みちぶしとー)』に入ったのです。その後、わたしはヌルになってこの島に来て、フクは旅芸人になりました」
 三人の女師範がアミーとユーナを連れて来た。
按司様(あじぬめー)、お久し振りでございます」と言ったアミーは日に焼けて真っ黒な顔をしていて、明るい表情になっていた。妹のユーナも元気そうだった。
「島での暮らしはどうだ?」とサハチはアミーに聞いた。
「ここに来て、まもなく五か月になります。若い娘たちに囲まれて、毎日、楽しくやっております」
「二人のお陰で、随分と助かっております」と女師範のレイが言った。
按司様、お話があります」とアミーが言ったので、サハチはうなづいて、アミーとユーナを連れてその場から離れた。
 この島の者たちは二人が山南王(さんなんおう)の間者(かんじゃ)だった事は知らなかった。アミーは三星党の者で、ユーナは島添大里の女子サムレー、二人は事件に巻き込まれてしまい、山南王から命を狙われているので、しばらく、島に隠れているという事になっていた。
「山南王はわたしたちが死んだものと思っていますか」とアミーが聞いた。
 サハチはうなづいた。
「噂を信じて、二人とも殺されたと思っている。お前たちの遺体を探していたが見つからず、探すのも諦めたようだな」
 アミーとユーナは顔を見合わせて、ほっとしていた。
「いつになったら戻れるかわからんが、それまで、島の娘たちを鍛えてやってくれ」
 二人はうなづいた。
「女子サムレーたちは、あたしの事を恨んでいるでしょうね」とユーナが言った。
「そんな事はないよ。死ぬ覚悟で、本当の事を言ってくれたんだから、今でも仲間だと思っている。お祭りのお芝居で、お前がやるはずだった亀の役はクトゥが代わりに演じた。お前のためにも、いいお芝居にしようと、みんな、頑張っていたよ」
「クトゥが‥‥‥」と言って、ユーナは涙ぐんでいた。
「いつの日か、必ず、お前が戻って来るとみんな信じて待っているよ」
「きっと、戻れるわよ」とアミーは言って、妹の肩をたたいた。
「わたしはずっとここにいるわ」とアミーは言った。
「ここはいい所です。みんな、優しくしてくれるし、娘たちは素直で可愛いし」
 サハチはうなづいて、二人を連れて戻り、酒盛りに加わった。サハチが席をはずしている隙に、マツとトラは女師範たちを口説いていた。
 レイは首里の女子サムレーのクムと同期で、チニンマチーとアカーはイーカチの妻になったチニンチルーと同期だった。三人とも女子サムレーになる事なく、若い娘たちを鍛えるためにこの島に残ってくれたのだった。三人の女師範と六人の男の師範を眺めながら、慈恩寺にも立派な師範を集めなければならないとサハチは思っていた。
 ヒューガは次の日に帰ったが、サハチたちは五日間、島に滞在して、のんびりと過ごした。マツとトラは女師範たちを口説いていたが、女師範たちが自分たちよりも強い事を知ると、女に負けられるかと修行者たちと一緒に修行に励んだ。さらに、サハチの強さにも驚いていた。
 タミーは初めて神様の声を聞いたと騒いでいた。サハチが不思議に思って、
「今まで神様の声を聞いた事がなかったのか」と聞くと、タミーは真面目な顔でうなづいた。
「あたし、ヌルの修行を始めたのが遅かったから、ヌルになるのは難しいって馬天ヌル様から言われたのです。でも、どうしてもヌルになりたくて、そしたら、馬天ヌル様が、この島で一心にお祈りを続けていれば、いつか、神様の声が聞こえるようになるって言われました。ようやく、あたし、神様の声が聞こえるようになったのです」
「そうか。それはよかったな」とサハチはタミーと一緒に喜んだ。
「それで、神様は何と言ったんだ?」
「『気に入ったわ。しばらく、いるからよろしくね』っておっしゃいました」
「なに? すると、その神様はこの島の神様じゃなくて、どこか、よそから来たのか」
 タミーは首を傾げた。
「ここの神様はヤカビムイのウタキにいらっしゃるはずなんですけど、あたし、一度も声を聞いた事はありません。以前、この島にいらした運玉森(うんたまむい)ヌル様の話だと、遠い昔、南の方からやって来た人たちの御先祖様で、この島に住んでいたんだけど、大きな台風にやられて、生き残った人たちはヤンバルの方に移って行ったとおっしゃいました。あたしが聞いた声はその神様ではないような気がします。それに、その神様と御一緒に男の神様もいらして、『いい所じゃのう』とおっしゃいました」
 サハチは話を聞いて、何となく、スサノオの神様のような気がして、ヤカビムイの山を見上げた。山の山頂にウタキがあって、男は入る事ができなかった。
「サハチよ。わしはそろそろ、ヤマトゥに帰る。ユンヌ姫はここに残ると言っておる。気まぐれな娘じゃがよろしく頼むぞ」
 サハチは驚いて、空を見上げた。
「色々とありがとうございました」とサハチは言って、両手を合わせた。
「さらばじゃ」とスサノオは言って帰って行った。
「サハチ、よろしくね」とユンヌ姫が言った。
「もうすぐ、ササとカナがヤマトゥに行きます。一緒に行って、みんなを守ってください」とサハチが言うと、
「任せてちょうだい」とユンヌ姫は答えた。
 サハチと神様のやり取りを聞いていたタミーは腰を抜かしたように、その場に座り込んで、両手を合わせてサハチを見つめていた。
 サハチはタミーを見ると、
「今の神様の声、聞こえたか」と聞いた。
 タミーはうなづいた。
スサノオの神様とその孫娘のユンヌ姫様だよ。スサノオの神様の声が聞こえれば、きっと、ほかの神様の声も聞こえるに違いない。馬天ヌルにお前の事を知らせる。きっと、お前が活躍する時が来るだろう」
按司様は神人(かみんちゅ)だったのですか」とタミーが驚いた顔のまま聞いた。
「最近、神人になったようだ」とサハチは笑った。
「凄いわ」とタミーは言って、サハチに両手を合わせた。
 その頃、山南王が今年二度目の進貢船を明国に送っていた。正使は李仲按司(りーぢょんあじ)だった。キラマの島から帰って、その事を聞いてサハチは驚いたが、息子が国子監(こくしかん)に留学しているので会いに行ったのだろうとウニタキは言った。

 

 

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