長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-178.婿入り川(第一稿)

 十二月の初め、島尻大里(しまじりうふざとぅ)ヌル(前豊見グスクヌル)と座波(ざーわ)ヌルが島添大里(しましいうふざとぅ)グスクにやって来た。
 安須森(あしむい)ヌルは留守なのに、何の用だろうとサハチは門番と一緒に大御門(うふうじょー)に向かった。
「お久し振りです」と言って島尻大里ヌルは頭を下げて、一緒に来た座波ヌルを紹介した。
 座波ヌルはシタルーの側室だったと聞いているが、娘の島尻大里ヌルと大して違わない年齢に見えた。
「去年の首里(すい)のお祭り以来だな。父親の死と戦(いくさ)を乗り越えたせいか、一段と美しくなったようだな」とサハチは言った。
按司様(あじぬめー)、何をおっしゃっているんですか」と島尻大里ヌルは戸惑ったような顔をして笑った。
「手登根(てぃりくん)のお祭りで、そなたの母親と初めて会った。そなたの美しさが母親譲りだという事がよくわかったよ」
 島尻大里ヌルは顔を赤らめた。美しいと言われたのは久し振りだった。
 若ヌルだった頃、島尻大里グスクで修行していた時、若いサムレーたちから、凄い美人(ちゅらー)だと騒がれた。でも、言い寄って来るサムレーはいなかった。皆、祖父(汪英紫)を恐れて、近づいては来なかった。豊見(とぅゆみ)グスクヌルになって、豊見グスクに帰っても、サムレーたちの視線は気になったが、近づいて来る男はいなかった。
 父が山南王(さんなんおう)になってからはなおさらだった。王様の娘である豊見グスクヌルは雲の上の人のような存在になってしまった。いつの日か、父を恐れないで言い寄って来る強い男が必ず、現れるはずだと思っていたが、そんな男が現れる事もなく三十を過ぎてしまった。座波ヌルの可愛い子供を見る度に、自分も子供が欲しいと思う。尊敬する馬天ヌルは、いつか必ず現れるから心配するなと言ったが、島尻大里ヌルは半ば諦めていた。
「母も按司様と初めてお話をして、不思議な人だと言っていました。父は生前、敵なんだが、なぜか、按司様を憎めないと言っていたそうです。按司様と会って、その気持ちが少しわかったような気がすると言っていました。そして、ヤンバルの旅から帰って来た母は、祖父の察度(さとぅ)様がもし、按司様に会っていたら、世の中は変わっていたかもしれないと変な事を言っていました」
「察度殿と俺が会っていたなら、世の中は変わっていた?」
 親父は東行法師(とうぎょうほうし)になった時、首里天閣(すいてぃんかく)で察度と会っていたが、サハチは会った事がなかった。ヤンバルの旅から帰って来て、どうして、そんな事を考えるのか、サハチにはさっぱりわからなかった。
「安須森ヌルは留守だけど、サスカサにでも用があるのか」とサハチは聞いた。
 島尻大里ヌルは首を振って、
「お祭り奉行(ぶぎょう)のユリ様に会わせて下さい」と言った。
「ユリに?」
「馬天浜(ばてぃんはま)のお祭りが凄かったと噂を聞きました。それで、頼みがあるのです。今月の十五日、山北王(さんほくおう)の若按司が、山南王(さんなんおう)の婿としてやって参ります。山南王としては、盛大にお迎えしたいと思っております。そこで、ユリ様のお知恵をお借りしたいのです」
「成程。お祭りのように派手にお迎えしたいという事だな」
「そうです」
「それは他魯毎(たるむい)の意向なのか」
「弟は大げさに迎える事はないと言ったのですが、母がお祭りのように迎えろと言ったのです」
「前王妃様か‥‥‥今帰仁(なきじん)に行って来たそうだな?」
 島尻大里ヌルはうなづいた。
今帰仁で山北王の若按司に会ってきたと言っていました。山北王の若按司も好きで島尻大里に来るわけではない。ママチーのためにも歓迎してやるべきだと言いました」
 ウニタキが言ったようにトゥイ様は山北王の若按司を歓迎するようだった。それもいいだろうとサハチはうなづいて、二人を東曲輪(あがりくるわ)の安須森ヌルの屋敷に連れて行ってユリと会わせた。
 ユリもハルもシビーも次の新作『ササ』を作るために頭をしぼっていた。サハチが二人を紹介して、わけを話すと、
「面白そうね」とハルが乗り気になった。
「あと十日余りしかないわ」とユリは難しそうな顔をした。
「できる事だけでいいのです。よろしくお願いします」と島尻大里ヌルは頼んだ。
 ユリは引き受ける事に決め、ハルとシビーを連れて、島尻大里ヌルたちと一緒に島尻大里グスクに向かった。女子(いなぐ)サムレー三人が護衛のために付いて行き、念のため、侍女のマーミに、ウニタキに知らせて、ユリたちを守るように頼んだ。
 その翌日、サタルーが研ぎ師を連れて来たとマチルギから知らせがあり、サハチは首里に向かった。
 龍天閣(りゅうてぃんかく)に行くと思紹(ししょう)とマチルギが研ぎ師の家族たちと話をしていた。サタルーの姿はなかった。
「ミヌキチの孫のジルキチじゃ」と思紹が紹介した。
「娘のウトゥミが女子サムレーになりたいらしい。チューマチに嫁いだマナビーに憧れていたそうじゃ」
「マナビーなら島添大里にいる。マナビーに会いたいなら島添大里に来ればいい」とサハチはウトゥミに言った。
 ウトゥミは、違いますと言うように手を振った。
「マナビー様は王女様(うみないび)です。馬に乗っている姿を見て憧れただけで、マナビー様はわたしの事なんて知りません」
「そうか。それなら強くなって、マナビーを驚かせてやれ」
「今、ジルキチと話していたんじゃが、ジルキチを島添大里の研ぎ師として迎えてくれんか」と思紹がサハチに言った。
「えっ、首里じゃなくて?」
首里にはジルキチの兄弟子がいるんじゃよ。ジルキチとしても兄弟子の邪魔はしたくないらしい」
「そういう事か。そうしてもらえれば、こちらとしてもありがたい。是非とも、島添大里にお越し下さい」
 島添大里にも研ぎ師はいるが、名刀を研ぐほどの腕はなく、名刀は首里の研ぎ師に頼んでいた。以前にお世話になったミヌキチの孫が島添大里に来てくれれば恩返しにもなるとサハチは喜んだ。
按司様が今帰仁に来た時の事を覚えております」とジルキチは言った。
「わたしが六歳の時でした。山伏のクマヌ殿と一緒に来られたのを覚えています」
「そうですか」とサハチは言った。
 当時、ミヌキチの孫は四、五人いたような気がする。その中の誰がジルキチだったのか、サハチは覚えていなかった。
按司様が朝早く、木剣を振っている姿を見て、サムレーになりたいと憧れたのです。それで、娘の気持ちもわかるのですよ」とジルキチは笑った。
「どうして、サムレーにならなかったのです?」
「親父から剣術を教わって、俺は夢中になりました。次男だったので、サムレーになってもいいと親父は言いました。でも、十四の時、親父が山北王から頼まれた家宝の名刀を研ぐ姿を見て、俺も研ぎ師になろうと決心したのです。あの時の親父は凄かった。俺も親父みたいになりたいと思いました。まだまだ、修行中の身ですが、よろしくお願いします」
「そなたに研いでほしい刀がいくつもある。こちらこそ、よろしくお願いします」
 サハチはジルキチにそう言って、ウトゥミを見ると、「島添大里には強い女子(いなぐ)がいっぱいいるぞ」と言って笑った。
「ところで、サタルーはどこに行ったんだ?」とマチルギに聞いた。
「奥間(うくま)から他魯毎に送る側室を連れて来て、島尻大里グスクに連れて行ったわ」
「奥間からも来たか。マチルーも大変だな。サタルーは国頭按司(くんじゃんあじ)の材木を運んで来たのか」
「そうよ。材木を運んで来た人たちは夏まで玻名(はな)グスクで働いてもらうって言っていたわ。サタルーは用が済んだら陸路で帰るそうよ」
「そうか。ササたちがいないから遊び相手もいないか」
「焼き物(やちむん)が忙しいって言っていたわ」
「サタルーが焼き物をやるとは驚いた」と思紹が笑った。
 ジルキチの家族は城下にあるサハチの屋敷に泊まって、首里見物を楽しんでから、島添大里にやって来た。ウトゥミは来年の正月から娘たちの稽古に加わる事になった。
 十二月十日、山南王になった他魯毎の最初の進貢船(しんくんしん)が船出した。先代の死を永楽帝(えいらくてい)に告げ、永楽帝冊封使(さっぷーし)を送ってくるだろう。山南王のための冊封使だが、中山王が黙って見ているわけにもいかない。中山王は他魯毎の義父なので、それなりの接待はしなければならなかった。そして、国相(こくしょう)になったワンマオ(王茂)がいる久米村(くみむら)は、明国の出先機関として冊封使を迎えなければならなかった。
 前回、冊封使が来たのは十年前だった。まだ完成していなかった首里グスクで、武寧(ぶねい)が中山王に、シタルーが山南王に冊封された。その時の冊封使は、当時のサハチにはまったく縁がなかった。浮島に半年間、滞在していたが、何をやっていたのか興味もなかった。風水師(ふんしーし)として久米村に住んでいたファイチは冊封使と会ったようだが、当時の久米村はアランポーが仕切っていて、アランポーが中心になって冊封使を接待していた。
 明国の役人は前例を重んじるので、アランポーが残した記録を読んで、冊封使を迎える準備はしているとファイチは言っていた。
 山南王の進貢船が船出した二日後、手登根グスクのウミトゥクが次女のククを産んだ。父親のクルーはヤマトゥに行っていて留守で、長女のミミはササと一緒に南の島に行っていた。ウムトゥクの母親のトゥイと佐敷大親(さしきうふや)の妻、キクが来て、お産を助けてくれた。
 トゥイはキクが奥間の出身だと聞いて驚いた。父は玻名グスク按司になった奥間大親(うくまうふや)で、十三歳の時に奥間から佐敷に来たという。トゥイが奥間に行って来たと言ったら、今度はキクが驚いて、懐かしそうに故郷の話を聞いていた。

 


 十二月十五日、山北王の若按司が婚約者のママチーを連れて、糸満(いちまん)の港にやって来た。
 山北王の叔父である伊差川大主(いじゃしきゃうふぬし)を重臣として連れ、サムレー大将の古我知大主(ふがちうふぬし)は百人もの兵を引き連れていた。迎えたのは島尻大里ヌルと座波ヌル、糸満大親(いちまんうふや)と兼(かに)グスク大親、本部(むとぅぶ)のテーラーもいた。
 川船に乗り換えた一行は糸満川をさかのぼって行った。若按司とママチーが乗っている先頭の船は花で綺麗に飾られ、ユリが横笛を吹いていた。サハチが首里のお祭りで吹いた曲だった。
 若按司のミンもママチーもチヨもユリの吹く曲に感動していた。一緒に乗っているテーラー、伊差川大主、古我知大主も感動していた。
 照屋(てぃら)グスクの北の崖に挟まれた狭い所を抜けると、川の両側に小旗を振った人々が若按司たちを歓迎した。ミンもママチーもその人の数に驚いていた。
 ママチーが今帰仁に行く時、見送ってくれたのは王妃のトゥイと数人の侍女だけだった。今帰仁から帰って来て、こんな歓迎を受けるなんて思ってもいなかった。
 ミンは若按司である自分が、山北王の世子(せいし)ではなく、山南王の世子になれと父から言われた時、自分の耳を疑った。弟のフニムイが父の跡を継ぐのかとがっかりした。しかし、父は、
「わしは山南王を倒すつもりじゃ」と言った。
「山南王を倒したあと、お前の義兄である保栄茂按司(ぶいむあじ)を山南王にする。そのあと、中山王を倒して、わしは中山王になる。お前は中山王の世子となって、わしの跡を継ぐ。山北王にはフニムイになってもらうつもりじゃ」
「父上が中山王になるのですか」
「そうじゃ。琉球を支配するには、今帰仁にいるより首里の方がいい」
 父は凄い事を考えると思いながらミンは父を見ていたが、「兄上が山南王になるのなら、俺が南部に行かなくてもいいのではありませんか」と聞いた。
 ミンがそう言うと父は笑った。
「今、南部には保栄茂按司のグスクに五十人、テーラーのグスクに五十人、島添大里のミーグスクに五十人の兵がいるが、それだけでは足らんのじゃよ。かといって同盟を結んでいるのに、兵を送るわけにもいかん。そこで、お前に南部に行ってもらうんじゃ。大事な若按司の護衛として兵を送るんじゃよ」
 ミンは父の言う事に納得して南部にやって来た。山南王にも若按司はいると聞いている。自分は山南王にとっては邪魔者だろう。どんな扱いを受けても、父が山南王を倒すまではじっと我慢しようと覚悟を決めてやって来た。まさか、こんな風に歓迎されるなんて夢にも思っていなかった。
 大村渠(うふんだかり)の船着き場で船を降り、ミンたちは近くの家で一休みした。兵たちが皆、到着すると、ミンは山南王が用意してくれた馬に乗り、ママチーと母のチヨはお輿(こし)に乗って、テーラーの先導で、隊列を組んで大通りを行進した。大通りの両側にはサムレーたちが等間隔に並び、その後ろでは人々が小旗を振って歓迎してくれた。
 大御門からグスクに入ったミンは、山南王の他魯毎と王妃のマチルーに迎えられ、御庭(うなー)で婿入りの儀式を行ない、正式に山南王の世子となった。
 山南王はミンの婿入りを記念して、糸満川を婿入り川(報得川(むくいりがー))と命名した。
 人々が振っていた小旗を考えたのはユリたちだった。準備の時間が短いので、大げさな物を作るわけにはいかなかった。ある物を利用するしかない。島尻大里ヌルに連れられて、物置を見て歩いた時、大量の端布(はぎれ)を見つけた。王妃がもったいないと言うので取っておいてあるが、使い道がないので、どんどん増えていったという。様々な色があるので、何かに飾ったらいいんじゃないとハルが言って、端布を手に取って振ってみた。それを見て、シビーが見物人たちに端布を振らせたらいいんじゃないのと言った。
 ユリも端布を手に取って振ってみたが、見物人たちがこれを振ってくれるとは思えなかった。
「旗にすればいいのよ。お祭りの時、グスクに飾られる巴紋(ともえもん)の旗みたいにすれば、みんなが振ってくれるわ」とシビーが言った。
 それがいいとユリも賛成して、「さっき、戦(いくさ)で使った弓矢がいっぱいあったわ」とハルが言った。
 戦が終わったあと、拾い集めた弓矢が束ねられて、いくつもあった。鉄の鏃(やじり)は再利用するが、竹の矢柄(やがら)と変形してしまった矢羽根は捨てるという。ユリたちは矢柄と端布を使って、小旗をいくつも作って、見物人たちに配ったのだった。
 サハチは知らなかったが、奥間の側室を島尻大里グスクに連れて行ったサタルーは、グスク内でユリたちと出会って、小旗作りを手伝っていた。ユリたちと一緒に島添大里グスクに来て、奥間に行ったトゥイ様の様子を詳しく話してくれた。
「リイの母親がトゥイ様のお姉さんだったなんて、初めて知りましたよ」とサタルーは言った。
「何だって? 長老の奥さんがトゥイ様の姉なのか」
「そうなんですよ。察度(さとぅ)が奥間に来て、生まれた娘がリイの母親だったんです。だから、トゥイ様は俺にとっても叔母さんというわけです。それだけじゃないんです。奥間ヌルの母親はトゥイ様の従姉(いとこ)だったんですよ」
「何だって? どういう事だ?」
「察度の弟の小禄按司(うるくあじ)が奥間に来た時に生まれたのがクダチという娘で、その娘がヤマトゥに行って具足師(ぐすくし)(鎧師)になった先代の奥間ヌルの息子と結ばれて、今の奥間ヌルが生まれたのです」
 父親が具足師だというのは奥間ヌルから聞いていたが、母親が宇座の御隠居(うーじゃぬぐいんちゅ)の娘だったなんて聞いていなかった。
「奥間ヌルが宇座の御隠居の孫だったとは驚いた」とサハチは目を丸くしていた。
 翌日、サタルーが玻名グスクに行くというので、サハチも一緒に行く事にした。
 久し振りに来た玻名グスクは随分と変わっていた。崖の下にある砂浜には小舟(さぶに)がいくつも置いてあり、砂浜へと続く道も造られてあった。
 大御門(うふうじょー)の上の櫓(やぐら)にキンタがいた。キンタはすぐに下に降りてきて、サハチたちを迎えた。
「順調に行っています」とキンタは笑った。
 キンタは父親の跡を継いで、奥間大親になり、島添大里から首里に移る事になっていた。玻名グスクの準備のため、今は家族を連れてグスク内で暮らしていた。
 三の曲輪(くるわ)内に大きな作業場が出来ていて、若い者たちが鍛冶屋(かんじゃー)の修行に励んでいた。
「親父が出て来なくてもいいと言っているのですが、ちょっと目を離すと、すぐにここに来るのです」とキンタが父親のヤキチを見ながら言った。
按司になっても鍛冶屋である事は忘れていないようだ」とサハチは笑った。
 サハチとサタルーはヤキチとキンタと一緒に一の曲輪内の屋敷に行って、お茶を御馳走になった。
「作業場にいた若者たちは奥間から連れて来たのか」とサハチはヤキチに聞いた。
「そうです。各地にいる鍛冶屋の親方は家族を呼んで一緒に暮らしていますが、職人たちの家族は奥間にいます。倅たちは奥間で修行をしていたのです。南部に住んでいる職人たちの家族をここの城下に呼んで、その息子たちをここで修行させているのです」
「成程。家族がここにいれば、すぐに会いに来られるな。以前、城下に住んでいた者たちは皆、出て行ったのか」
首里から戻ってきたサムレーの家族は残っていますが、鳥島硫黄鳥島)に送られたサムレーたちの家族は皆、出て行きました。空き家だらけになってしまったので、奥間から呼んだ家族たちが、その家で暮らしています」
 捕虜となった百五十人の兵は首里に送られたが、管理するのが大変だった。鳥島に送ると言っても、南風が吹く夏になるまで送れない。その間、食糧を与えなければならないので、兵たちの身元を詳しく調べて、按司重臣たちとつながりがなく、年若い兵は許して玻名グスクの城下に帰したのだった。その数は五十人近くに上り、ほとんどの者が新しい按司に仕える事になった。
「鍛冶屋だけではありません」とサタルーが言った。
木地屋(きじやー)の家族も来ています。二の曲輪にある作業場で息子たちが修行しています。それに、炭焼きも来て、南にある山の中に入っています」
「そうか。奥間の拠点として機能し始めたようだな。よかった」とサハチは満足そうにうなづいた。
按司様、まもなく、年が明けますが、このグスクにはまだ、ヌルがおりません。キンタの娘のミユが来年から馬天ヌル様のもとで修行する事になっておりますが、新年の儀式をするヌルがおりません。どなたかお願いしたいのですが」
「わかった。馬天ヌルと相談しよう」
 安須森ヌルとササがいなくて、山グスクヌルもいなくなってしまった。ヌルがいないのはここだけでなく、与那原(ゆなばる)も八重瀬(えーじ)も山グスクも手登根(てぃりくん)もいなかった。馬天ヌルと相談して、それらのグスクにヌルを送らなければならなかった。
 ヤキチに米須(くみし)と真壁(まかび)の様子に注意してくれと頼み、サタルーを玻名グスクに残して、サハチは首里に向かった。

 


 山北王の若按司が島尻大里にやって来た五日後、六月に船出した中山王の進貢船が帰って来た。島添大里にいたサハチは知らせを受けて、首里に向かった。
 首里の城下は凄い人出だった。見物人たちが大通りの両側で、小旗を持って、使者たちが帰って来るのを待っていた。この人出は城下の者たちだけでなく、近在に住む者たちもいるようだ。誰かが進貢船が帰って来た事を村々に知らせたらしい。そして、山北王の若按司を迎えた小旗を真似して配ったに違いない。マチルギの仕業だろうと思い、サハチはグスクの南側に回って南御門(ふぇーぬうじょう)からグスクに入った。
 南側に門を作ったのは、北曲輪(にしくるわ)に石垣を築いた時だった。グスクへの入り口は西御門(いりうじょー)と東御門(あがりうじょう)があるが、共に大御門(うふうじょー)から入らなければならなかった。大御門を敵に塞がれた場合、逃げ道はなかった。そこで、東曲輪(あがりくるわ)の南側に新しく出入り口を作ったのだった。グスクの南側は樹木が生い茂っていたが、今では家々が建ち並んでいた。島添大里と佐敷から移り住んできた人たちがそこで暮らしていた。
 百浦添御殿(むむうらしいうどぅん)(正殿)の二階で待っていると、正使のサングルミーと副使のハンワンイー(韓完義)がやって来て、順天府(じゅんてんふ)(北京)まで行って、永楽帝(えいらくてい)に会ってきたと報告した。ヂュヤンジン(朱洋敬)も永楽帝に従って順天府にいたという。
永楽帝は戦をしておりました。皇帝なのに自ら指揮を執って、元(げん)の残党を倒したようです」
「元の残党がまだいるのか」
「大陸は果てしもなく広いですからね。壊滅するのは大変のようです」
「そうか」と言いながら、サハチは永楽帝と会った時の事を思い出していた。宮殿にいるよりも戦場にいる方が好きなようだったが、あれから七年が経つというのに、まだ戦を続けているなんて驚きだった。
「順天府では今、新しい宮殿を作っていますが、その規模がとてつもなく広いのです。完成するまで、あと五、六年は掛かるそうです」
「凄いな。完成したら、盛大な儀式を行ないそうだな」とサハチが言うと、
琉球の王たちも招待されるでしょう」とサングルミーは言った。
「五、六年後か‥‥‥親父の代理として俺が行ってくるか」とサハチは笑った。
按司様が行けば、ヂュヤンジン殿が歓迎してくれるでしょう」
「ファイチも連れて行かなければならんな。そういえば、山南王の進貢船が十日前に船出したぞ。永楽帝冊封使を送ると思うか」
「ヂュヤンジン殿にそれとなく聞いてみたのですが、多分、冊封使を送れるだろうと言っていました」
「そうか。来年は忙しくなりそうだな」
 サングルミーは思紹に挨拶に行くと言って、ハンワンイーを連れて龍天閣に向かった。
 ハンワンイーはサングルミーの隣りで時折、笑みを浮かべるだけで何もしゃべらなかった。永楽帝の側室の一族で、何か事情があって琉球に来たようだった。
 クグルーとシタルー、マグルーとウニタルが元気に帰って来た。サムレー大将のマガーチと飯篠修理亮(いいざさしゅりのすけ)も無事に帰って来た。
 修理亮は行って来てよかったと嬉しそうに言ったが、ヂャンサンフォンが去って行った事を知らせると、「そんな‥‥‥」と言ったまま呆然としていた。
「右馬助も一緒に行ったぞ」
「そうですか。奴も一緒に‥‥‥」
琉球を去る前に、ヂャン師匠は慈恩禅師(じおんぜんじ)殿にすべてを授けたようだ。何か疑問があったら慈恩禅師殿に聞いたらいい」
「わかりました」と修理亮はうなづいた。
 その夜、会同館の帰国祝いの宴(うたげ)で、マグルーはマウミと、ウニタルはマチルーと再会を喜び、明国での経験を得意になって話していた。
 ウニタルはマグルーより一つ年上なので、今まで一緒に遊んだ事はなかったが、一緒に唐旅をした事で、仲よくなっていた。二人は応天府(おうてんふ)(南京)の国子監(こくしかん)に行って、ファイテと会って来たという。ファイテの妻のミヨンは目を輝かせて、ファイテの事を聞いていた。
 ファイテが留学してから四年が経っていた。二人の話によると、あと一年、勉学に励んで、来年に帰ると言ったらしい。
「来年に帰って来るのね」とミヨンは嬉しそうに言って、義母のヂャンウェイを見た。
 ヂャンウェイはファイチを見て、嬉しそうに笑った。
 サングルミーがみんなから頼まれて、二胡(アフー)を披露した。広大な大陸を悠々と流れる長江(チャンジャン)(揚子江)の流れのような雄大な曲だった。皆、うっとりしながら聴き入っていた。
 それから二日が経って、島尻大里ヌルと座波ヌルが、若按司の歓迎が成功したお礼を言いに島添大里グスクに来た。サハチは門番に、東曲輪の安須森ヌルの屋敷に案内してくれと言った。
 明国から帰ってきたばかりで非番だったマガーチが弟の慶良間之子(きらまぬしぃ)(サンダー)に会いに来ていて、マガーチが二人を案内したらしい。島尻大里ヌルとマガーチが出会った時、座波ヌルは異変に気づいたという。
 島尻大里ヌルと座波ヌルがユリたちにお礼を言って、屋敷から出るとマガーチが外で待っていた。
「先に帰って」と座波ヌルに言うと、島尻大里ヌルはマガーチと一緒にどこかに行ってしまったという。
「マガーチ様はマナビー(島尻大里ヌル)のマレビト神ですよ」と座波ヌルはサハチに言った。
 意外な展開に驚いたが、息子がヌルと仲よくなっても、父親の苗代大親(なーしるうふや)は怒る事はできないだろうとサハチは思った。

 

 

 

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目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第二稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第二稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第二稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第二稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第二稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第二稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第二稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第二稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第二稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第二稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第二稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第二稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。
  165. ウムトゥ姫とマッサビ(第二稿)   ササたち、ノーラ姫とウムトゥ姫に会う。
  166. 神々の饗宴(第二稿)   於茂登岳の山頂で、神様たちと酒盛り。
  167. 化身(第一稿)   名蔵の白石御嶽と水瀬御嶽で神様と会う。
  168. ヤキー退治(第一稿)   ササたち屋良部岳に登り、山頂で雷雨に遭う。
  169. タキドゥン島(第一稿)   タキドゥンの話を聞いて驚くササたち。
  170. ユーツンの滝(第一稿)   クンダギに登って、イリウムトゥ姫と会う。
  171. ドゥナン島(第一稿)   ササたち、クン島からドゥナン島へ向かう。
  172. ユウナ姫(第一稿)   ウラブダギに登ったササたち、ドゥナン島の村を巡る。
  173. 苗代大親の肩の荷(第一稿)   尚巴志、苗代大親の隠し事を知って笑う。
  174. さらばヂャンサンフォン(第一稿)   会同館で三姉妹たちの送別の宴が開催。
  175. トゥイの旅立ち(第一稿)   前山南王妃、ナーサと一緒に奥間に行く。
  176. 今帰仁での再会(第一稿)   前山南王妃、今帰仁に行って姪と会う。
  177. アミーの娘(第一稿)   尚巴志、ウニタキからトゥイの事を聞く。
  178. 婿入り川(第一稿)   山北王の若按司が山南王の婿になる。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣
波平大親      1366-    山南王の重臣
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司
チルカマ      1349-    クマラパの妹。先代の石原按司
阿嘉のトゥム    1365-    久米島からミャークに渡った兄弟の弟。伊良部島に住む。
スタタンのボウ   1360-    多良間島の女按司。クマラパの弟子。
ハリマ大殿     1359-    ボウの夫。ターカウの倭寇
平久保按司     1355-    石垣島按司。ターカウの倭寇
ブナシル      1360-    名蔵の女按司
ミッチェ      1387-    ブナシルの娘。父親は富崎按司
マッサビ      1369-    ウムトゥダギのフーツカサ。池間島出身。
サユイ       1391-    マッサビの娘。弓矢の名人。
阿嘉のグラー    1362-    マッサビの夫。久米島からミャークに渡った兄弟の兄。
ガンジュー     1386-    熊野の山伏、願成坊。
タキドゥン     1348-    島添大里按司の息子で、タキドゥン島の按司になる。
ユミ        1361-    ドゥナン島サンアイ村のツカサ。
ナーシル      1391-    ユミの娘。父は苗代大親

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。
クミ姫             久米島の神様。ビンダキ姫の三女。
ウパルズ            池間島の神様。ウムトゥ姫の長女。
赤名姫             ウパルズの孫。ユンヌ姫と行動を共にする。
ウムトゥ姫           石垣島於茂登岳の神様。ビンダキ姫の次女。
ノーラ姫            石垣島の名蔵の神様。ウムトゥ姫の次女。
ヤラブ姫            ノーラ姫の三女。
ビシュヌ            クバントゥオンの神様。シィサスオンの神様でもある。
ラクシュミ           ビシュヌの妻。ミズシオンの神様。
サラスワティ          ヤラブダギの神様。弁財天。
イリウムトゥ姫         二代目ウムトゥ姫の次女。クン島の神様。
ユウナ姫            イリウムトゥ姫の次女。ドゥナン島の神様。

 

2-177.アミーの娘(第一稿)

 ヂャンサンフォン(張三豊)がいなくなって半月余りが過ぎた。何となく、琉球が静かになってしまったようだとサハチは感じていた。
 今、改めて思い出してみると、もし、ヂャンサンフォンが琉球に来なかったら、ハーリーからの帰り道で、サハチはンマムイの襲撃を受けていた。あの時、ウニタキと苗代大親(なーしるうふや)が敵の襲撃に備えていたので、サハチが殺される事はなかったかもしれないが、ンマムイは死んでいたかもしれない。ンマムイのその後の活躍を見ると、サハチにとってもンマムイが生きていてよかったと思った。今、明国に行っているマグルーはンマムイの娘のマウミと出会わなかっただろうし、ンマムイがいなくなけば、シタルーは山北王(さんほくおう)と同盟を結ぶ事もできなかったに違いない。シタルーを殺したチヌムイもンマムイのもとで剣術修行はできないし、ヂャンサンフォンのもとでも修行はできない。抜刀術(ばっとうじゅつ)を知る事もなく、敵討ちは諦めたかもしれなかった。
 ヂャンサンフォンが琉球に来たか来なかったで、その後の琉球の歴史は大きく変わっていたように思えた。ササはヂャンサンフォンのもとで修行して、持って生まれた才能を開花させて、神様たちと会話をするようになり、サハチがスサノオの声を聞く事ができるようになったのも、ヂャンサンフォンの修行のお陰だったに違いない。そう考えると、ヂャンサンフォンは琉球の偉大なる恩人と言えた。
「おーい。そんな所で、ササたちの心配をしているのか」と声が聞こえた。
 下を見るとウニタキがいた。
「ミャーク(宮古島)は見えるか」と聞いて、ウニタキは物見櫓(ものみやぐら)に登ってきた。
「ササは大丈夫だろう。ヂャン師匠の事を考えていたんだ」
「シタルーがいなくなって、ヂャン師匠もいなくなるとはな」とウニタキは言った。
 シタルーが生きていれば、冊封使(さっぷーし)が来る事もない。シタルーが亡くなったから、ヂャンサンフォンが琉球を去る事になったのかとサハチは今になって気づいた。
「トゥイ様は旅から帰って来たのか」とサハチは聞いた。
「ああ、昨夜(ゆうべ)は恩納岳(うんなだき)のタキチの屋敷に泊まって、宇座(うーじゃ)の牧場に寄って帰って行ったよ」
「なに、宇座の牧場に寄ったのか」
「宇座の御隠居(うーじゃぬぐいんちゅ)様はトゥイ様の叔父さんだからな。嫁入り前に乗馬を習ったのだろう。懐かしそうな顔をして仔馬と遊んでいた。俺たちよりかなり年上なんだが、可愛い女だと思ったよ。シタルーには勿体ない奥方様だな」
「確かにな」とサハチはうなづいた。
「威厳のある王妃様(うふぃー)の顔も持っているんだが、可愛い娘のような所もある。そんな所がウミンチュたちの心を奪うのだろう。宇座按司が何を言ったかわからんが、俺が宇座の牧場に出入りしていた事を知られたかもしれんな」
「多分、知られただろう」とウニタキは笑って、「それどころじゃないぞ」と言った。
「トゥイ様を奥間(うくま)から今帰仁(なきじん)まで案内したのはサタルーとクジルーだ。クジルーから、トゥイ様が奥間にいた時の様子を聞いたら、トゥイ様はサタルーがお前の息子だと知ってしまったようだぞ」
 サハチは苦笑した。
「サタルーが子供の名前に俺とマチルギの名前を付けるとは思ってもいなかった。子供の名前を知れば、誰でも気づいてしまうだろう」
「トゥイ様はお前の名前を知っているが、お前の名前を知っている者はそう多くはない。心配するな」
 そう言われてみれば、ウニタキの言う通りだった。サハチと呼ばれていたのは幼い頃で、その後は若按司様(わかあじぬめー)と呼ばれ、今は按司様(あじぬめー)と呼ばれている。幼馴染みか親戚の者以外で、サハチの名前を知っている者は少なかった。しかし、マチルギの名前は有名だった。マチルギにあやかろうと、マチルギと名付けられた娘が何人もいると聞いている。サタルーが娘にマチルギと名付けた所で、怪しむ者はいないかもしれなかった。
「すると、ナーサが話したのか」
「どうも、そうらしい。奥間とお前のつながりをトゥイ様に教えて、ナーサなりにトゥイ様を味方に引き入れようと考えたようだ」
「トゥイ様が味方になってくれれば、確かに心強いが、シタルーの隠れた軍師だったからな。そう簡単には心を動かすまい。それより、ヤキチ(奥間大親)が玻名(はな)グスク按司になってから、奥間と玻名グスクを行き来する小舟(さぶに)が増えている。中山王(ちゅうさんおう)と奥間の関係が山北王に気づかれるかもしれんな」
「山北王は今の所、奥間はヤンバルの村の一つに過ぎないと思っている。玻名グスク按司になった奥間大親が奥間の出身というのも知っている。奥間の若者たちが小舟に乗って玻名グスクに行っているのも知っている。奥間の鍛冶屋(かんじゃー)が各地にいる事も知っている。しかし、奥間の鍛冶屋と木地屋(きじやー)が皆、中山王とつながっている事は知らない。その事を知れば、山北王は奥間を滅ぼすに違いない」
「サタルーによく言っておいた方がいいな」とサハチは言って、「トゥイ様は山北王と会ったのか」と聞いた。
「山北王は留守だったようだ。多分、沖の郡島(うーちぬくーいじま)(古宇利島)に行っているのだろう」
「例の若ヌルに会いに行っているのか」
「若ヌルのために立派な御殿(うどぅん)を築いている。妻の王妃には、国頭按司(くんじゃんあじ)の船を見張るためのグスクを築いていると言っているようだ。国頭按司が中山王に材木を送っているのが気に入らないらしい」
「山北王と国頭按司が仲違いしてくれるのはいいが、奥間の船も見張られるぞ」
「船の見張りなんて、沖の郡島に行くための口実に過ぎんよ。御殿が完成したら、見張りなんて置かんだろう。山北王が息抜きをする別宅のようなものだ」
「明国と密貿易ができなくなったというのに、のんきなものだな」
リュウインに感謝しているようだ。リュウインのお陰で、中山王の進貢船(しんくんしん)に便乗して、使者を送る事も決まって、安心して沖の郡島に行ったんだろう。山北王は留守だったが、湧川大主(わくがーうふぬし)が宴席に顔を出したようだ。湧川大主は去年、意気揚々と鬼界島(ききゃじま)から帰ってきたら、母親が亡くなっていた。そして、今年は妻を亡くし、妻の父親の羽地按司(はにじあじ)も亡くなっている。さらに、海賊のリンジョンシェン(林正賢)が戦死した。リンジョンシェンの戦死はかなり応えたようだ。今帰仁に住んでいた唐人(とーんちゅ)たちも、リンジョンシェンが来ないのなら今帰仁から引き上げようと考えている者も多いようだ」
「帰ると言っても、どうやって帰るんだ。唐人たちは船を持っているのか」
「船はない。財産などない身軽な奴はすでに、三姉妹の船や旧港(ジゥガン)やジャワの船に潜り込んで帰っている。だが、たっぷりと稼いだ奴は財産を持って帰る事もできず、このまま今帰仁で商売でも始めるかと考えている奴もいるようだ」
「そうか。それで、トゥイ様は湧川大主に会ったんだな?」
「おう。話が飛んでしまったな」とウニタキは笑って、「湧川大主はすべて、お見通しだったようだ」と言った。
「各地に奴の配下がいて、トゥイ様の動きは皆、知っていた。名護(なぐ)から奥間に向かう時、女ばかりだったのに、どうして、今、護衛のサムレーがいるんだと聞かれたんだ。トゥイ様は驚いた顔をしたが、笑って、二人は奥間の若者で、今帰仁まで案内してくれただけだと言った。湧川大主はその事は大して気にもせず、今帰仁に来た目的は何だと聞いたんだ。トゥイ様はママチーと姪のマアサに会うためだと言った。湧川大主は笑って、まさか、山南(さんなん)の王妃様(うふぃー)が今帰仁までやって来るとは思わなかったと言って、歓迎したようだ。奴の事だから、トゥイ様を利用しようと考えているに違いない」
「どう利用するんだ?」
「若按司の保護者にしようとたくらんだようだ。湧川大主は御内原(うーちばる)に行って、若按司を連れてきてトゥイ様と対面させたんだ。若按司は礼儀正しい美男子だったようだ。トゥイ様は一目で気に入ったらしい。島尻大里(しまじりうふざとぅ)に来たら、わたしを母親だと思って何でも聞いてちょうだいと言ったようだ。湧川大主はうまく行ったとほくそ笑んだそうだ」
「若按司はそんなにいい男なのか」
「まだ十三だ。いい男というより、綺麗な顔付きをしているんだろう。だが、トゥイ様の心をつかんだ事は確かだ。トゥイ様は本気で、若按司を世子(せいし)にしようと考えるかもしれない」
「まさか? 孫のシタルーを差し置いてか」
「先の事はわからんからな。山南王の他魯毎(たるむい)は中山王の娘婿だ。世子を山北王の若按司にしておけば、この先、中山王と山北王が戦をして、どっちが勝ったとしても生き残れると考えるかもしれん」
「成程、トゥイ様としては、シタルーの子孫を何としても残したいと思っているのだな?」
「本当は自分の子孫を残したいのだろう。保栄茂按司(ぶいむあじ)はトゥイ様の息子で、山北王の娘を妻に迎えている。時期を見て、若按司は山北王に返して、保栄茂按司を山南王にするかもしれんな。仮に、山北王が勝った場合の話だけどな。中山王が勝てば、他魯毎はそのまま山南王で、山北王の若按司は、どこかの按司にしておけばいい」
今帰仁攻めもいよいよ迫って来た。絶対に負けるわけにはいかんな」
 ウニタキはうなづいて、
「俺は旅芸人を連れて、南部の状況を調べてくるよ。南部が安泰じゃないと、北(にし)には行けないからな」
「ああ、頼むぞ」
 ウニタキは手を振ると物見櫓を下りて行った。
 サハチは景色を眺めた。いつの間にか夕暮れになっていた。サハチはふと、シタルーと一緒にここから景色を眺めていた時の事を思い出していた。
 サハチが物見櫓から下りようとしたら門番がやって来て、「東行法師(とうぎょうほうし)という僧が按司様に会いたいと言って来ておりますが、どうしますか」と聞いた。
 親父が今頃、何の用だとサハチは思った。親父も高い所が好きなので、「ここに呼んでくれ」と門番に言った。
 二の曲輪(くるわ)から東曲輪(あがりくるわ)に入ってきた東行法師は父ではなかった。何者だとサハチは一瞬、慌てたが、今でも、子供たちを集めている東行法師がいる事を思い出した。確か、ヒューガが山賊をやっていた頃の配下で、タムンという男だった。首里(すい)グスクを奪い取った時、タムンはヒューガに会いに来て、その時に思紹(ししょう)と一緒に会って、お礼を言ったが、その後、一度も会ってはいなかった。
按司様、お久し振りです」とタムンは頭を下げた。
 サハチは上がって来るように言った。見かけによらず身が軽く、あっと言う間にタムンはやって来た。
「素早いな」とサハチが言うと、
「逃げ足が速いのだけが取り柄で」と笑った。
「気持ちいいですな」と言って、タムンは景色を眺めた。
「旅の途中ですか」とサハチは聞いた。
「そうです。与那原(ゆなばる)に行ったらヂャンサンフォン殿が琉球を去ったと聞いて驚きましたよ」
「ヂャンサンフォン殿を知っていたのですか」
「わしも一か月の修行を積んでいるのです。按司様の息子さんのサグルー殿と一緒でした」
 サグルーから旅の禅僧と一緒に修行を積んだとは聞いていたが、タムンだとは知らなかった。
「あの時、東行法師を名乗るのはうまくないような気がして、南行法師(なんぎょうほうし)と名乗ったのです」
南行法師か」と言ってサハチは笑った。
「実は按司様のお耳に入れておいた方がいいと思いまして、訪ねて参ったのですが」と言ってから、「ヂャンサンフォン殿と運玉森(うんたまむい)ヌル様が我謝(がーじゃ)に孤児院を作って、身体(からだ)の不自由な子供たちを預かっていたのです」と言った。
「何だって?」とサハチはタムンの顔を見た。
「ヂャンサンフォン殿から、内緒にしておいてくれと言われていたので黙っていたのですが、ヂャンサンフォン殿が去って行ってしまったからには、按司様に知らせた方がいいと思いまして」
「どうして、ヂャンサンフォン殿が孤児院なんか始めたんだ?」
「三年前の春の事です。与那原を旅していた時、村はずれにあった朽ちかけた空き家に泊まったのです。朝、目が覚めたら、目の見えない女の子がいたのです。女の子に親の事を尋ねると、泣いてばかりいて何もわかりません。わしは困って運玉森に登って、運玉森ヌル様を頼ったのです。親元に帰しても、また捨てられるじゃろうとヂャンサンフォン殿が言って、その子を我謝ヌルに預けたのです。我謝ヌルは我謝に帰って孤児院を始めました。わしは旅をして、その子と同じ境遇の子を何人も見ています。可哀想だと思いますが、そんな子をキラマ(慶良間)の島に連れて行っても使い物になりません。見て見ぬ振りをしていたのです。我謝に孤児院ができてからはそんな子は皆、我謝に連れて行きました。今では十数人の子供たちが暮らしています」
「子供たちの食い扶持(ぶち)はどうしているんだ?」とサハチは聞いた。
「すべて、ヂャンサンフォン殿が出していました」
 ヂャンサンフォンは家臣ではないが、中山王のサムレーたちの武術指導をしていたので、思紹は毎年、礼金を贈っていた。ヂャンサンフォンはその礼金を孤児院のために使っていたに違いなかった。
 サハチはタムンを引き留め、その晩、タムンの旅の話を聞きながら一緒に酒を飲んだ。
「ヤンバルに可愛い娘がいるんです」とタムンは嬉しそうに言った。
 詳しく聞くと、娘の母親は本部(むとぅぶ)ヌルで、本部ヌルの兄はテーラーだった。
テーラーに会った事はあるのですか」とサハチは聞いた。
「山北王と喧嘩をして、テーラー殿が本部に戻っていた時期がありました。その時に会って、一緒に酒を飲みました。テーラー殿は進貢船の護衛のサムレーとして何度も明国に行っていたようです。また、明国に行きたいと言っていました」
 サハチは笑って、
「来年、テーラーは明国に行く事になっている」と言った。
「えっ、本当ですか」
「来年、山北王は久し振りに進貢船を出すのです。でも、船がないので、中山王の船に乗って行くんですよ」
「そうでしたか。今頃は浮き浮きしながら旅の準備をしていそうですね」
 翌日、サハチはタムンと一緒に与那原の北にある我謝に行って孤児院を訪ねた。運玉森の裾野に孤児院はあった。広い庭で子供たちが遊んでいて、若い女たちが世話をしていた。
 我謝ヌルは思っていたよりも若かった。二十代の半ばで、ササと同じくらいに見えた。
「お久し振りです」と我謝ヌルはタムンに挨拶をして、サハチを見ると、
「島添大里(しましいうふざとぅ)の按司様ですね」と言った。
「どこかでお会いしましたっけ」とサハチが聞くと、我謝ヌルは首を振って、
「与那原グスクのお祭りの時に何度か拝見しましたが、お話をするのは初めてです」と言った。
 我謝ヌルは家に上がってくれと言ったが、サハチは遠慮して縁側に腰を下ろして話を聞いた。
「わたしは祖母の跡を継いでヌルになりました。でも、祖母はわたしが二十歳の時に亡くなってしまいました。祖母は運玉森に登って、運玉森ヌル様から教えを受けなさいと言って亡くなりました。その年に運玉森にグスクが完成して、運玉森ヌル様もいらっしゃったのです。運玉森ヌル様は運玉森のマジムンを退治なさった凄いヌルだと祖母は尊敬しておりました。わたしが子供の頃、運玉森には恐ろしいマジムンがいて、山賊もいるので近づいてはならないと言われました。運玉森ヌル様がマジムンを退治して、お山の上にグスクが出来て、ヂャンサンフォン様がやって来ると、運玉森は武芸の聖地となりました。大勢の武芸者たちが集まって来るようになって、悪い人たちも近づかなくなって、この辺りは平和になりました。ヂャンサンフォン様が運玉森ヌル様と一緒に明国に帰ってしまったのは、とても悲しい事です」
「ヂャン師匠に言われて、この孤児院を始めたのですか」とサハチは聞いた。
「祖母が亡くなったあと、わたしは運玉森に登って、運玉森ヌル様の指導を受けました。その時、運玉森ヌル様は二人の若ヌルの指導をしていました。わたしは六つ年下の若ヌルたちと一緒に指導を受けました。ヂャンサンフォン様は明国に行って、十月に帰って来ました。その年の暮れ、わたしは若ヌルたちと一緒にヂャンサンフォン様の一か月の修行を受けました。呼吸を数えて行なったり、真っ暗なガマの中を歩いたりと、わけのわからない修行でしたが、一か月後、わたしは生まれ変わったかのような気分になりました。そして、なぜか、他人の心がわかるようになったのです」
「他人の心がわかるとは、何を考えているのかがわかるという意味ですか」
「そうです。でも、わたしよりもシジ(霊力)の高い人の心は読めません。山グスクに行ってしまったヂャンサンフォン様と運玉森ヌル様が子供たちに会いに来た時、お別れに来たのだとは、わたしにはわかりませんでした。東行法師様が目の見えない女の子を連れて来た時、その子が死にたいと考えている事がわかって、放っておいたら危険だと思いました。わたしは運玉森ヌル様に頼んで、この子の事は任せて下さいと言ったのです。そして、我謝に孤児院を開いて、東行法師様に可哀想な子供たちを連れて来てほしいと頼んだのです」
「集まって来た子供たちの心が読めたのですね?」とサハチが聞くと我謝ヌルはうなづいた。
「言葉がしゃべれない子供もいましたが、心を読む事ができて、その子の心を癒やしてやる事ができました」
「成程、そなたにしかできない仕事だな」と言って、サハチは庭で遊んでいる子供たちを見た。
 腕がやけに短い子供がいた。頭がやけに大きい子供もいた。足の長さが違うのか、おかしな歩き方をする子供もいた。目の見えない子や、言葉がしゃべれない子は、ここから見てもわからないが、みんな、楽しそうに遊んでいた。タムンが言うように、この子たちをキラマの島に連れて行っても修行はできない。かといって放置しておくわけにはいかなかった。
「ヂャン師匠はいなくなってしまったが、心配はいらん。この孤児院は中山王が面倒を見よう。今まで通り、子供たちの世話をしてやってください」とサハチは我謝ヌルに言った。
 サハチはタムンと一緒に与那原グスクに寄って、与那原大親(ゆなばるうふや)(マウー)と会った。伊是名島(いぢぃなじま)から来た若者たちと娘たちが修行に励んでいた。
 タムンは運玉森に登ったのは久し振りだと言って、ヒューガと出会った頃の事を懐かしそうに話してくれた。

 


 来年の正月に送る進貢船の準備でサハチは忙しくなった。十二月になるとヤマトゥの商人たちがやって来て忙しくなるので、今のうちに進貢船の準備をしておかなければならなかった。いつもと違って、山北王の使者と従者、護衛のサムレーたちも乗せて行くので、その分、人員を削減しなければならず、山北王の荷物も積むので、荷物も減らさなければならない。増やすのと違って減らすのは、思っていた以上に大変な事だった。
 サハチが頭を悩ませている時、女子(いなぐ)サムレーの補充のためにキラマの島に行ってきたマチルギが凄い剣幕でサハチを問い詰めた。
アミーが娘を産んだわよ。あなたの子供だって言うじゃない。一体、どうなっているのよ」
「ちょっと待て。アミーが子供を産んだだと?」とサハチは驚いた振りをして、「アミーが俺の子だと言ったのか」と聞いた。
アミーは高貴な人の子供だから、今は名前を明かせないって言ったらしいわ。島の人たちは、あなたに違いないって誰もが思っているわよ」
「落ち着いてくれよ。今、生まれたとすれば、俺は正月か二月にキラマの島に行った事になる」
「隠れて行って来たんでしょう」
「何を言っているんだ。その頃、戦(いくさ)だったんだぞ。親父が中山王の介入を決めて、中山王の兵たちが南部に出陣したのが正月の半ばだ。俺は玻名グスクを攻めていて、玻名グスクが落城したのが二月の半ばだった。俺が抜け出して、キラマの島に行けるわけがないだろう」
 マチルギも思い出して、サハチの言う事に納得したようだった。
「それじゃあ、アミーの相手は誰なの?」
「わからんよ。戦に関係しなかった者だろう」
「一体、誰なのかしら?」とマチルギは首を傾げた。
久米島(くみじま)に行く時、アミーの様子が変だったんだ。まさか、妊娠していたとは知らなかった」とサハチはとぼけた。
 重臣たちとの話し合いを重ねて、進貢船の準備が整ったのは、十一月の末になっていた。
 一仕事を終えたサハチが島添大里に帰って、安須森(あしむい)ヌルの屋敷に顔を出すと、ハルとシビーがサスカサからヤマトゥ旅の話を聞いていた。
「今度の新作は、サスカサか」とサハチが聞くと、
「お父さん、何を言っているの。あたしがお芝居になるわけないじゃない。ササ姉(ねえ)の事を話していたのよ」
「なに、今度はササが主役か」
「ササ姉がいないうちにお芝居にしちゃうのよ。いれば怒られるからね」とハルが笑った。
「ササから話を聞かなけりゃ詳しい事はわからんだろう」
「今回はサスカサさんと一緒に行ったヤマトゥ旅を中心にまとめようと思っています」とシビーが言った。
「そうか。首里のお祭りで上演するんだな。楽しみにしているよ」
「そういえば、按司様の事もまだ書いてないわ」とハルが言った。
「俺の事などいい。俺より親父の方がいいお芝居になるんじゃないのか」
「王様(うしゅがなしめー)の話か‥‥‥」
「親父も喜んで話をしてくれるだろう」
「ササ姉の次は『王様』で行こう」とハルは手を打った。
 ユリは楽譜の整理をしていた。
「凄いな。全部、お芝居の音曲(おんぎょく)か」とサハチが聞くと、ユリは笑って、
按司様が吹いた一節切(ひとよぎり)の楽譜もあります」と言った。
「なに、俺が吹いた曲も楽譜になっているのか」
「はい。とても、いい曲なので楽譜に残したのです」
「それにしても一度しか吹いていない曲をよく楽譜に残せたな」
「わたしは一度聴いた曲は覚えていて、楽譜に移す事ができるのです」
「凄いな。一度、聴いた曲を覚えているのか」
 ユリはうなづいた。
「俺なんか、前に吹いた曲を吹こうと思っても思い出せない事もある。俺にもその楽譜の読み方を教えてくれないか」
 ユリは首を振った。
「楽譜に頼ると感性が失われてしまいます。按司様は心に感じた通りに吹けば、それでいいのです。前に吹いた曲なんて忘れてかまいません。今、感じた事を吹けば、皆が感動します」
「そうなのか‥‥‥」とサハチは首を傾げた。
按司様の一節切、安須森ヌル様とササの横笛、皆、感性が違って、その感性に素直に吹いています。それだから、神様も感動するのです」
 サハチは『見事じゃ』と言ったスサノオの神様の声を思い出した。ユリの言う通り、自分に素直に吹けばいいのかと納得した。
 安須森ヌルの屋敷から出たら、ウニタキとぶつかりそうになった。
「おっと、お前、旅から帰って来たのか」とサハチが言うと、
「今、帰った所だ」とウニタキは言った。
「そうか。俺も首里から帰って来たばかりだ」
 二人は物見櫓の上に登った。
「南部の様子はどうだった?」とサハチは聞いた。
「島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクの東曲輪に山北王の若按司の屋敷を新築している。まもなく、若按司はやって来るようだな」
「山北王はわざわざ、若按司を人質として山南王に贈るのか」
「人質かもしれんが、姉は保栄茂(ぶいむ)にいるし、島添大里にもいる。叔母も兼(かに)グスクにいる。寂しくはあるまい」
「そういう問題ではないが、今の所、中山王の娘は今帰仁には行っていないな」
「山北王の次男と婚約している娘をよこせとはまだ言うまい。リンジョンシェンが戦死したあと、中山王のお世話になっているからな。進貢船にも使者を乗せて行ってやるんだ。山北王も強気には出られないだろう」
「本部のテーラーとは会ってきたのか」
テーラーグスクの城下で、お芝居を演じてきたよ。テーラーの配下になって、今帰仁に帰らずに残った兵たちがいたんだ。そいつらが城下造りに励んで住む家もできて、家族を呼んだんだよ。油屋の船に乗って来たらしい。子供たちも多かったんで、お芝居を演じて喜ばれたんだ」
テーラーのグスクはテーラーグスクと言うのか」
テーラーが名付けたそうだ。テーラーは瀬底之子(しーくぬしぃ)と呼ばれていて、テーラーという名前を知っている者は少ない。わしらの御先祖様にあやかってテーラー(平)と名付けたと言ったそうだ。テーラーもグスクの主(あるじ)になって、瀬底大主(しーくうふぬし)に昇格したようだ」
テーラーも家族を呼んだのか」
「いや、妻と子は呼んでいない。明国に行くから呼ばなかったのだろう。留守を守るために弟を呼んでいる」
「弟がいたのか」
今帰仁のサムレーだったようだ。辺名地之子(ひなじぬしぃ)という名前だ。油屋の船には他魯毎に贈られた側室も乗っていたようだ」
「山北王が他魯毎に側室を贈ったのか」
「王様が変われば、側室を贈るのは当然の事だろう。中山王は贈らないのか」
「馬鹿を言うな。マチルーが困るような事はしない」
 ウニタキは笑った。
「側室を贈ったのは山北王だけではないぞ。小禄按司(うるくあじ)と瀬長按司(しながあじ)は自分の娘を側室として贈っている」
「なに、娘をか」
「最初に贈ったのは小禄按司だ。小禄按司は中山王とも山南王ともつながりがない。とりあえず、山南王とつながりを持ちたかったのだろう。小禄按司が娘を贈ったら、瀬長按司も真似したというわけだ。瀬長按司の娘は他魯毎の従妹(いとこ)なんだが、つながりを強化したいようだ」
「すると、他魯毎はすでに三人の側室を持っているのか」
「もう一人いる。すでに子供がいる伊敷ヌルだ。それに、まもなく、奥間からも贈られて来るだろう」
 サハチは口を鳴らした。
「マチルーが可哀想だ」
「何を言っている。マチルギは可哀想じゃないのか」
 サハチはポカンとした顔でウニタキを見ていたが、「アミーが娘を産んだぞ」と言った。
「えっ!」とウニタキは驚いて、「娘を産んだのか」と言った。
「配下の者から何も聞いていない。どうして、お前が知っているんだ?」
「マチルギがキラマの島に行ったんだよ。島の者たちは俺の子供だと思っていると言って、凄い剣幕で怒ったんだよ」
「それで、お前、それを認めたのか」
「馬鹿を言うな。戦の最中にキラマの島に行けるわけがないと言ったら納得してくれた。マチルギさえ納得してくれれば、島の者たちがどう思おうと俺はかまわん。ほとぼりが冷めるまで、用もないのにキラマの島に行くなよ」
「そうか‥‥‥娘が生まれたか‥‥‥名前は聞いたのか」
「マナビーだ。母親がナビーだったので、高貴な人の娘だから、『マ』を付けたと言ったそうだ」
「マナビーか‥‥‥」
 ウニタキが娘に会いたいような顔をしていたので、「しばらくの間、キラマの島に行くなよ」とサハチはもう一度言った。
 ウニタキはうなづいて、物見櫓から下りようとした。
「ちょっと待て。まだ、テーラーの事と他魯毎の事しか聞いていないぞ」
 ウニタキは苦笑して、
「アニーの娘の事を聞いたら、すっかり忘れちまったよ。どこまで話したっけ」
他魯毎の側室の話だ」
「おう、そうだった。他魯毎が側室を何人も持ったので、弟たちも兄貴を見倣っているようだ。豊見(とぅゆみ)グスク按司になったジャナムイは、糸満(いちまん)ヌルと仲よくやっている。長嶺按司(ながんみあじ)は、うるさい親父がいなくなったので、新垣ヌルとよりを戻したようだ。ジャナムイは来月に送る進貢船の準備を手伝うために糸満の港に行って、糸満ヌルと出会ったようだ。準備が忙しいと言って、糸満ヌルの屋敷に泊まり込む事も多いらしい。長嶺按司は兵たちの補充で、島尻大里グスクに行く事が多く、城下に屋敷はあるんだが、新垣ヌルの屋敷から通っているようだ」
「長嶺按司が若い者たちを鍛えているのか」
「そうらしい。兵たちの補充は何とかなるのだが、諸喜田大主(しくーじゃうふぬし)に殺された事務を担当していた役人たちの補充は大変らしい。重臣たちが何かを命令しても、それをこなせる役人がいなくて、重臣たちが自ら動き回っているようだ。冊封使を呼ぶ重要な任務を帯びる正使は李仲按司(りーぢょんあじ)が行くべきなんだが、李仲按司が明国に行ってしまうと、グスクが機能しなくなってしまうので、李仲按司は残り、石川大親(いしちゃーうふや)が正使として行くらしい。副使は李仲按司の娘婿で、長嶺按司の兄貴の大里大親(うふざとぅうふや)が行くようだ」
「準備は整ったんだな?」
「整ったようだ。来月になったら船出するだろう」
按司たちの様子はどうだ? 他魯毎に敵対しそうな奴はいそうか」
「敵対しそうな奴らは皆、戦死したから大丈夫だ。ただ、気になるのは真壁按司(まかびあじ)だな。祖母が具志頭按司(ぐしちゃんあじ)の娘だ。祖母の妹の中座大主(なかざうふぬし)の妻も真壁グスクにいる。その二人が若い按司に余計な事を言って、具志頭グスクを取り戻せとけしかけるかもしれん」
「玻名グスク按司に真壁の様子を探らせた方がいいな」
「それと米須按司(くみしあじ)も若いからな。摩文仁(まぶい)の妻だった祖母と島尻大里ヌルになった伯母が健在だ。豊見グスクで戦死した先代の具志頭按司の妻も戻ってきているし、伊敷按司(いしきあじ)の妻も戻ってきている。皆、他魯毎に恨みを持っているだろう。マルクなら大丈夫だと思うが、様子は見ておいた方がいいだろう」
「マルクも大変だな」
「サムレー大将の石原大主(いさらうふぬし)がいるから大丈夫だろう」
「そうだな」とサハチはうなづいて、
「新(あら)グスク按司は、マタルーが八重瀬按司(えーじあじ)になった事に不満を持ってはいないか」と聞いた。
「エーグルーは若い頃から、姉のマカミーには頭が上がらなかったようだ。姉の夫が八重瀬按司になれば親父も喜ぶだろうと言っていた。正式に按司を名乗れるようになっただけで満足だと言ったよ」
「そうか。東方(あがりかた)の連中は大丈夫だな?」
「大丈夫だと思うが、糸数按司(いちかじあじ)の動きは見守っていた方がいいだろう。糸数按司の妻はトゥイ様の妹だ。瀬長按司の妹でもある。北に出陣中、糸数按司が寝返って、東方の按司たちの動きを止め、長嶺按司を先鋒として首里を攻めるかもしれん。糸数按司が兵力を増やして、グスクを強化するような事があれば、その危険があるぞ」
「糸数按司か‥‥‥」
 サハチは南にある糸数グスクの方を見てから、東にある長嶺グスクの方を見た。島添大里グスクと長嶺グスクの中程に、ンマムイの兼グスクがあった。首里グスクと長嶺グスクの中程には上間(うぃーま)グスクがあった。兼グスクと上間グスクを強化した方がいいなとサハチは思った。
 我謝の孤児院の事を思い出したサハチは、ウニタキに話して、旅芸人たちを連れて行ってお芝居を見せてやってくれと頼んだ。
「ヂャン師匠が孤児院をやっていたのか」とウニタキは驚いて、旅芸人たちを連れて行こうと言った。
「今夜はチルーを相手に一杯やるか」とウニタキは笑って帰って行った。