長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-196.奥間のミワ(第一稿)

 六月十二日、ササは愛洲(あいす)ジルーの船に乗ってヤマトゥに行った。 
 島添大里(しましいうふざとぅ)グスクで安須森(あしむい)ヌルの帰国祝いとタキドゥン按司たちの歓迎の宴(うたげ)を開いた次の日の夕方、ササたちがアンアンたちを連れて島添大里グスクにやって来た。ササは瀬織津姫(せおりつひめ)様のガーラダマ(勾玉)を手に入れたと言って大喜びしていた。その夜、ササたちの帰国祝いとアンアンたちの歓迎の宴を開いて、サハチはササから瀬織津姫様の事を聞いた。
 千五百年も前の神様の事を調べるためにヤマトゥに行くなんて、サハチには信じられなかった。
豊玉姫(とよたまひめ)様でさえ聞いた事もない瀬織津姫様の声がお前に聞こえるのか」とサハチが聞くと、ササはガーラダマを見せて、「これがあれば聞こえるわ」と自信たっぷりに言った。
 サハチが見た所、古いガーラダマだという事はわかるが、馬天(ばてぃん)ヌルのガーラダマより小さいし、特別な物とは思えなかった。
「そのガーラダマもしゃべるのか」と聞いたら、ササは首を振って、「まだしゃべらないけど大丈夫よ。まだ長い眠りから覚めていないの。瀬織津姫様の声を聞いたら目が覚めるわ」と言った。
「ユンヌ姫様も連れて行けよ」
「勿論よ。ユンヌ姫様も瀬織津姫様に会いたいはずよ。アキシノ様も行くわ。アキシノ様は、もしかしたら瀬織津姫様の子孫かもしれないって思っているの。それを確認しに行くのよ。南の島から来た赤名姫とメイヤ姫も一緒に行くわ」
 思紹(ししょう)が弁才天(びんざいてぃん)様を彫っている事を教えると、ササは持っていた袋の中から弁才天様の絵を出してサハチに見せた。
「トンドの弁才天様よ。南の島ではサラスワティ様って呼ばれているわ」
 綺麗に色まで塗られた見事な絵だった。やはり、手が四本あって、三弦(サンシェン)のような楽器を持っていた。
「お前が描いたのか」
「マグジが描いたのよ」
「ほう、あいつは絵も描くのか」
「南の島で絵心に目覚めたのよ。ターカウやトンドの絵も描いているからあとで見せてもらうといいわ」
「奴はどこにいるんだ?」
「アヤーと一緒に与那原(ゆなばる)グスクにいると思うわ」
「親父に見せたら喜ぶだろう」
「もう見せたわ」
「親父に会ったのか」
「ここに来る前、首里(すい)に寄って来たの。王様(うしゅがなしめー)はイーカチを呼んで、その絵を写せさせたわ。マグジの事を言ったら、イーカチは絵を見せてもらうって言って、途中まで一緒に来たのよ」
「そうだったのか」
「安謝大親(あじゃうふや)様にも会って、浮島に来ている倭寇(わこう)たちの事を聞いたのよ」
「なに? そんな事を聞いてどうするんだ?」
「まず最初の目的地は阿蘇山(あそさん)なの。阿蘇山に行くには現地の人の協力が必要だわ。浮島に来ている倭寇なら助けてくれるかもしれないでしょ」
「成程、ところで、阿蘇山はどこにあるんだ?」
 ササは袋から九州の絵図を出した。
「これもマグジが描いたのか」
「これはシンシンがお父さんが持っていた絵図を写したのよ」
「ほう、シンシンも絵心があるじゃないか」
 サハチがシンシンを見ると、嬉しそうな顔をして笑った。
 阿蘇山は九州のほぼ中程にあった。
「こんな所にあるのか。博多から行くわけにはいかんな」
「そうなのよ。阿蘇山はヤタルー師匠の故郷らしいの。慈恩寺(じおんじ)に寄って、ヤタルー師匠からお話を聞いてきたわ」
「ヤタルー師匠も連れて行けばいいんじゃないのか」
「あたしも頼んだんだけど、今、抜けるわけにはいかないって言われたわ」
「そうか。ヤタルー師匠が抜けたら慈恩禅師殿が大変だな」
「安謝大親様が息子の天久之子(あみくぬしぃ)を一緒に行かせるって言ったから大丈夫よ」
「なに、安謝大親の息子が一緒に行くのか」
「今までサムレーをしていて、二、三年前から安謝大親様の下で働くようになったみたい。サムレーだった時に明国に行っているけど、ヤマトゥには行っていないので行かせるって言っていたわ。それで、阿蘇山なんだけど、山の頂上近くに阿蘇神社の奥宮(おくのみや)があって、そこに阿蘇津姫(あそつひめ)様が祀ってあるらしいわ」
阿蘇津姫様というのは瀬織津姫様の事なんだな」
「そうなのよ。阿蘇山に登って、瀬織津姫様のお話を聞かなければならないわ。それでね、浮島に来ていた倭寇の中に名和弾正(なわだんじょう)という人がいたのよ。ここよ」と言ってササは九州の絵図を示した。
 絵図には『やつしろ』と書いてあり、阿蘇山の南西にある海辺だった。サハチは名和弾正を知らなかった。
琉球に来ているとはいえ、名和弾正がどんな奴だかわからないぞ。お前たちだけでは危険だ」
「大丈夫よ。トンドでもユンヌ姫様が危険を知らせてくれたわ」
「トンドにはアンアンたちがいたからいいけど、知らない土地では味方もいない。ヂャンサンフォン殿がいたら一緒に行ってくれって頼むのだが、もういないからな」
「ジルーたちがいるから大丈夫よ」
「でもな」と言ってから、「クマラパ殿に頼めないか」とサハチは言った。
「クマラパ様?」とササは首を傾げた。
「クマラパ様はヤマトゥに行った事はないわよ」
「そうか。それならクマラパ殿に慈恩寺の師範を頼んだらどうだ。そうすれば、ヤタルー師匠が一緒に行けるんじゃないのか」
「そうだわ。それがいいわ。ヤタルー師匠が一緒なら阿蘇山まで行けるわ」
「ヤタルー師匠が一緒なら俺も安心だ。俺からも頼んでみるよ」
 次の日、ササたちと安須森ヌルはアンアンたちと南の島のヌルたちを連れて久高島に行った。ユリはハルとシビーを連れて、手登根(てぃりくん)のお祭りの準備に出掛けた。
 その日、叔父のサミガー大主(うふぬし)がクマラパたちを連れて島添大里グスクに来た。サハチはクマラパたちを歓迎して、ナツはクマラパから祖父のカルーの事を聞いて驚いていた。
 翌日、サハチはクマラパたちを首里慈恩寺に連れて行って慈恩禅師と会わせた。クマラパは慈恩寺が気に入って、喜んで師範を務めると言ってくれた。そして、ヤタルー師匠にササたちの事を頼んだ。ヤタルー師匠は二十三年振りの里帰りを喜んだが、ヤタルー師匠以上に喜屋武(きゃん)ヌルが喜んでいた。
「ヤタルー師匠から阿蘇山の話を聞いて、行ってみたかったのです。それに、お義姉様(ねえさま)(トゥイ)もヤマトゥに行っているし、京都で会いたいわ」と嬉しそうに喜屋武ヌルは言った。
 クマラパと妹のチルカマ、娘のタマミガはそのまま慈恩寺に滞在する事になった。タマミガは修行に励んでいる若者たちを見て、わたしのマレビト神はいるかしらと目を輝かせていた。
 二日後、思紹は名護按司(なぐあじ)に贈る側室を船に乗せて名護に向かわせた。四月に名護按司が亡くなって若按司按司を継いだ。そのお祝いとして美人の側室を贈ったのだった。按司の代が変わると側室を贈るのは恒例となっていた。側室も一緒に行く侍女も『三星党(みちぶしとう)』の女だった。すでに、奥間(うくま)からも側室が贈られていた。
 その船には、真喜屋之子(まぎゃーぬしぃ)の事を調べるため、ウニタキが旅芸人たちと一緒に乗っていた。ピトゥ(イルカ)の塩漬け(すーちかー)を浮島まで運ぶ人足(にんそく)たちも乗っていた。冊封使(さっぷーし)のために大量のピトゥを買い付けなければならなかった。
 その日、行方知れずだった玻名(はな)グスクヌルが島添大里グスクに帰って来た。驚いた事に、奥間の若ヌルのミワとクジルーが一緒にいた。
「あなた、奥間まで行ってきたの?」と安須森ヌルは驚いた。
 玻名グスクヌルはうなづいた。
「どうやって行ったのか覚えていないんですけど、気がついたら奥間にいました。奥間ヌル様に、ササ様の弟子たちやマユ様も南の島に行って来たと言ったら、奥間ヌル様が驚いて、ミワ様もヤマトゥに連れて行ってくれと頼んだのです」
「カミーとフカマヌルの若ヌルもヤマトゥに行く事になったのよ。ミワも入れたら、八人の若ヌルを連れて行く事になるわ。ササたちだけじゃ、とても無理だわ。あなたも一緒に行ってくれないかしら」
「はい。そのつもりで預かってきました」
「お願いね。南の島でもあなたに預けっぱなしだった。本当に感謝しているわ」
 女子(いなぐ)サムレーから知らせを受けてサハチがやって来ると、「お父様!」と叫びながらミワがサハチに駆け寄った。
 皆が唖然とした顔で、サハチとミワを見ていた。サハチも驚いて、まいったなといった顔でミワを迎えた。
 安須森ヌルがサハチたちの所に来て、サハチとミワを見比べて、「やっぱり、そうだったのね?」とサハチを睨んだ。
「この事は内緒だったんだ」とサハチはミワに言った。
「あっ!」とミワは言って、「お母様からも内緒って言われていたんだけど、お父様の顔を見たら、つい‥‥‥」
「もういいんだ。いつかはわかってしまう事だ」
 そう言ってサハチは笑った。マチルギの怒った顔が目の前に浮かんだ。
「遠い所をよく来てくれた。お前の兄弟たちを紹介するよ」
 サハチはみんなの視線から逃げるように、ミワを連れて一の曲輪(くるわ)に向かった。
 奥間の若ヌルの父親がサハチだった事は、すぐにグスク内に知れ渡った。
「妹が増えたのね」と言いながらサスカサは頬を膨らませていた。
「ミワちゃんが俺の妹だったのか」とマグルーは目を丸くして、妻のマウミと顔を見合わせた。
 女子サムレーの隊長、カナビーはミワの事をマチルギに知らせた方がいいか安須森ヌルに相談した。
「噂はすぐに首里にも行くわ。その前に知らせた方がいいわよ」と安須森ヌルは言った。
 カナビーはうなづいて、近くにいたユーナを呼んで首里に送った。
 次の日、マチルギはやって来た。凄い剣幕で屋敷の二階にやって来ると刀を振り回した。侍女たちも女子サムレーたちも呆然として見守った。子供たちはナツがどこかに連れて行って、いなかった。
 サハチは土下座をして謝った。マチルギの怒りは治まらず、うなだれているサハチを連れて東曲輪(あがりくるわ)に行くと物見櫓(ものみやぐら)に登った。
 景色を眺めながらマチルギは深呼吸をして、「お芝居よ」と言った。
「えっ?」とサハチはマチルギを見た。
「グスク内に知れ渡って、城下にも知れ渡ってしまった。みんながわたしがどう出るのか見守っているわ。みんなの期待通りのお芝居をしたのよ。ミワはもう十二歳よ。そんな昔の事を今になって怒ったってどうしようもないでしょう。三年前に奥間ヌルと出会った時にわかったわ。ミワの年を聞いて、あなたがサタルーの婚礼で奥間に行った時と符合したものね。あの時、あなたを責めようと思ったけどやめたわ。サタルーを守るために、妹が必要だったんだってわかったのよ」
「サタルーを守る妹?」
「そうよ。あなたにとっての安須森ヌル、王様にとっての馬天ヌル、サタルーにもそんな妹が必要だったのよ」
「ウナイ神か」
「そうよ。奥間を守るためにはサタルーだけでなく、ミワも必要だったのよ」
 サハチはそんな事には気づかなかった。奥間ヌルがサハチが来るのをずっと待っていたのは、そんな理由があったのかと今になってわかった。
「でも、あなたの事を許したわけじゃないのよ。あとで借りはちゃんと返してもらうわ」
 わかっているというように、サハチはうなづいた。マチルギは冊封使を迎える準備で忙しいからと首里に帰って行った。
 ミワもヤマトゥに行く事を知ったサハチは心配した。ヤタルー師匠だけでは八人もいる若ヌルたちを守るのは難しいと思い、浦添(うらしい)に行って飯篠修理亮(いいざさしゅりのすけ)に頼んだ。ササの話をすると浦添ヌルのカナが乗り気になって、一緒に行くと言ってくれた。修理亮は阿蘇山にも登った事があるというので、ササに言うとササも喜んで一緒に行く事になった。
 琉球を直撃しなかったが、台風が近くを通ったらしく海が荒れた。うねりが治まるのを待って、ササたちはヤマトゥ旅に出掛けた。
 その頃、ヤマトゥでは戦(いくさ)が始まっていた。息子を人質として送り、頭を下げた北畠左中将(きたばたけさちゅうじょう)(満雅)だったが、約束を反故(ほご)にした将軍と北朝天皇を許す事ができず、二月に挙兵をした。三月には一族でありながら裏切った木造中納言(こづくりちゅうなごん)(俊康)の木造城を攻め落として、木造城(津市)、大河内城(おかわちじょう)(松阪市)、坂内城(さかないじょう)(松阪市)、玉丸城(玉城町)、多気(たげ)の霧山城(美杉町)に一族を配置し、北畠左中将は阿坂城(あざかじょう)(松阪市)で総指揮を執った。
 将軍義持(よしもち)は四月に美濃守護(みのしゅご)の土岐美濃守(ときみののかみ)(持益)を大将に命じて五万の兵を伊勢に送った。さらに、丹後と若狭の守護を兼ねる一色兵部少輔(いっしきひょうぶしょうゆう)(義貫)を援軍として伊勢に送り込んだ。各地で激戦が行なわれて、木造城が落城し、五月半ばには阿坂城も落城するが、琉球の交易船が博多に着いた六月十日、戦はまだ終わってはいなかった。北畠に従っている愛洲家も戦に参加していて、将軍の兵たちと戦っていた。

 

 

 

伊勢国司北畠氏の研究


 ササたちが船出した六日後、山南王(さんなんおう)の他魯毎(たるむい)が送った進貢船(しんくんしん)が糸満(いちまん)の港に帰って来た。他魯毎の使者が首里に来て、冊封使が七月の半ば頃に来るだろうと伝えた。冊封使一行は二隻の船に乗り、総勢五百人位になるとの事だった。
 サハチはその数を聞いて驚いた。『天使館』は三百人が収容できるようになっていた。船に残る者もいるだろうから残りの百人余りは宿屋に分宿する事になる。今の時期はヤマトゥンチュがいないので何とかなりそうだ。しかし、五百人の唐人(とーんちゅ)が三、四か月も滞在するとなると消費する食料は莫大だった。米は勿論の事、豚(うゎー)の肉に山羊(ひーじゃー)の肉、魚や貝類、野菜に塩や味噌、酒も用意しなければならない。米は羽地(はにじ)から仕入れてある。豚は去年から飼育を始め、今年も旧港(ジゥガン)(パレンバン)とジャワから来る事になっている。山羊はファイチに言われて集めてある。名護按司からピトゥの肉も大量に買い入れた。南の島の人たちがザン(ジュゴン)の肉と海亀の肉を持って来てくれた。酒はウニタキの酒蔵にたっぷりとある。それで何とか足りると思うが、心配になってきた。
 かつて、久米村(くみむら)を仕切っていたアランポーは察度(さとぅ)の死を知らせず、冊封使を呼ばなかった。その気持ちがよくわかったような気がした。
 それから五日後、今帰仁(なきじん)に行っていたウニタキが帰って来た。サハチの顔を見るとニヤニヤして、「噂を聞いたぞ」と言った。
「お前の噂は今帰仁まで届いた」
「嘘を言うな」
「嘘ではない。勿論、城下には流れんが、『まるずや』では噂をしていたよ。とうとうばれたようだな。マチルギが鬼のような顔をしてやって来て、お前に斬りつけたそうだな」
「まいったよ」とサハチは苦笑した。
「玻名グスクヌルがミワを連れて来るなんて、思ってもいなかったよ。俺の顔を見た途端、ミワはお父様って呼んで駆け寄って来たんだ。会えたのは嬉しかったが、みんなが呆然とした顔をして俺たちを見ていたよ」
「ウニチルの時と一緒だな。突然、お父さんと呼ばれて、皆、唖然としていた」
「いつかはばれると思っていたが、突然、だったからな。マチルギがいつ現れるのか、その夜はろくに眠れなかったよ」
「寝首を掻かれると思ったのか」とウニタキは笑った。
「怒ると本当に恐ろしいからな」
 ウニタキはサハチの顔を見ながら笑い続けていた。
「お前だって気を付けろよ。リリーの事が突然、ばれるかもしれんぞ」
「リリーは今、今帰仁にいる」
「なに、娘を連れて今帰仁に行ったのか。『まるずや』にいるのか」
「いや、『まるずや』に置いたら、俺の顔を見て、お父さんて呼ぶから危険だろう。城下で暮らしているよ。ヤンバル生まれだから怪しまれる事はない。芭蕉(ばしゅう)の糸を紡いで、地道に暮らしているよ」
 サハチは笑って、「お前の別宅というわけか」と言った。
「俺だって、時にはくつろぎたいのさ」
「ところで、真喜屋之子(まぎゃーぬしぃ)の事で何か新しい事はわかったか」
「苦労して調べる事もなかった。イブキが詳しく知っていたんだ」
「イブキがどうして、真喜屋之子の事を調べたんだ?」
「あの事件が起こったのが、イブキたちが今帰仁に行った年だったんだよ。進貢船が帰って来て、今帰仁の城下はお祭り気分だった。その翌日、山北王(さんほくおう)の弟のサンルータの病死が知らされたようだ。前日にサンルータは『よろずや』に来て、扇子やら髪飾りやらを買って行ったそうだ。急に病死するなんておかしいと思って探ったようだ」
「そうだったのか」
「奴が首里にいると聞いて、イブキも驚いていたよ。そして、奴の家族の事を教えてくれた。兄貴は奴が事件を起こした時、今帰仁のサムレーで副大将を務めていたんだけど、奴のお陰で材木屋に回されたんだ」
「材木屋?」
「その頃、首里の城下造りのために大量の材木を浮島に運んでいたんだよ。奴は人足たちを指図していたのだろう。それでも、商才があったのか、今では材木屋の主人になっている」
「なに、奴の兄貴が材木屋の主人だったのか」
「俺も驚いたよ。材木屋と油屋は寝返らせなくてはならないと思っていたからな。親父が南部にいれば寝返らせやすくなった」
「材木屋の主人だったか。すると、宜野座(ぎぬざ)に材木屋の拠点を置いたのもそいつだったのか」
「そうだ。サムレーだった頃は仲尾之子(なかおぬしぃ)といっていたが、材木屋の主人になってからはタルーザと名乗っている。真喜屋之子には弟もいて、弟は親父の跡を継いで、勘定奉行(かんじょうぶぎょう)の役人をやっている。姉はリュウインの妻になっていて、妹は重臣の息子に嫁いでいたんだが、子供ができないと言って離縁されている。その後、嫁ぐ事もなく、父親の世話をするために島尻大里(しまじりうふざとぅ)の城下に住んでいる」
「その妹は知っている。ミーグスクにいた。夫は戦死したと言っていたが、離縁されたのか」
「真喜屋之子のせいで離縁されたのだろう」
「母親は今帰仁にいるのか」
「弟夫婦と一緒にいる。母親は国頭按司(くんじゃんあじ)の妹だ。鬼界島(ききゃじま)で戦死した鬼界按司の姉さんだよ」
「今回、鬼界按司になった根謝銘大主(いんじゃみうふぬし)も弟なのか」
「いや、兄貴だよ。鬼界島で思い出したが、湧川大主(わくがーうふぬし)は助っ人を依頼したようだ。奴の使者が小舟(さぶに)でやって来て、山北王は新たに二百人の兵を鬼界島に送った」
「苦戦しているのか」
「そのようだ。詳しい事はわからんがな。しかし、山北王は按司たちの反感を買っている。各按司から兵と兵糧を強引に徴収したからな」
 サハチは笑った。
「殺されたサンルータの事はわかったのか」
「湧川大主の下にンマムイの妻のマハニがいて、その下に徳之島按司に嫁いだ娘がいる。その下がサンルータだ。本部(むとぅぶ)で生まれて、六歳の時、今帰仁に移ってグスク内の御内原(うーちばる)で育ったんだ。山北王の側室たちに囲まれて育ったのが悪かったのかもしれんな。兄は何人も側室を持っている。自分も側室を持って当然だと思ったのだろう」
「サンルータは側室を持っていたのか」
「死んだのが二十一歳だったからな、公然とは持っていなかったが、隠れて囲っていた女がいたかもしれんな。人の妻に手を出したのも、それ程、罪の意識はなかったのかもしれん。奴が手を出した真喜屋之子の妻なんだが、永良部按司(いらぶあじ)の娘で美人(ちゅらー)だったようだ。母親はトゥイ様の姉さんだよ」
「なに、トゥイ様の姪が殺されたのか」
「トゥイ様も殺された事は知らないだろう。病死したと聞かされているはずだ。トゥイ様の姉さんは今、今帰仁グスクで暮らしていて、トゥイ様とも会ったようだ」
「グスク内にいるのか。今帰仁攻めの時、助け出さなければならんな」
 ウニタキはうなづいて、「山北王の妻はンマムイの妹だし、奥間から贈られた側室たちも助け出さなくてはならん」と言った。
「そうだ。親父の娘もいるんだったな」
「そんな先の事よりも、真喜屋之子は四度、明国に行っているんだが、名護按司が若按司だった頃、一緒に明国に行っているんだ。羽地按司(はにじあじ)の弟とも一緒に行っている」
「羽地按司の弟というのは奄美按司になって、奄美大島(あまみうふしま)攻めに失敗した奴か」
「そうだよ。その後、伊平屋島(いひゃじま)に来て、惨めな姿で帰って行った奴だよ」
「奴は今、何をしているんだ?」
奄美按司になる前は今帰仁のサムレーだったんだが、伊平屋島で失敗してからは今帰仁にいられず、羽地に帰ってサムレー大将をやっている」
「そうか」
「真喜屋之子は名護にも羽地にもつながりがあるから、二つを寝返らせるのに使えそうだ。それと、サンルータの妻だが、国頭按司の娘で、サンルータの娘を連れて国頭に帰っている。サンルータの妻が真喜屋之子の事をどう思っているのかはわからんが、会わせてみるのも面白いような気もする」
「使えそうだが、奴がうなづいてくれるかな」
「もう少し様子を見てから考えるよ」
 翌日は手登根のお祭りだった。三度目のお祭りだが、いつも、主人のクルーはいなかった。来年はヤマトゥ旅を休ませた方がいいかなと、クルーの子供たちを見ながらサハチは思った。
 お芝居はハルとシビーの新作『サスカサ』だった。取材のためにユリとハルとシビーはヒューガの船に乗ってキラマ(慶良間)の島に行っていた。ユリの娘のマキクは祖父の船に乗れて大喜びだったという。
 島添大里グスクが落城して、サスカサが久高島のフボーヌムイに籠もっている場面から始まった。サスカサを演じたカリーは神々しいヌルをうまく演じていた。若い頃はあんなだったのかもしれないとサハチは思った。
 久高島に東行法師(とうぎょうほうし)が来て、若者たちを鍛え始めて、島は賑やかになる。神様のお告げを聞いてウタキから出て来たサスカサは東行法師たちと一緒にキラマの無人島に行く。
 木を伐って小屋を造り、畑を作って野菜を育て、海に潜って魚や貝を捕り、武術に励む若者たちの喜怒哀楽を描いていた。サスカサも若者たちと一緒に働き、みんなのために山の上のウタキでお祈りを捧げる。台風が来て、すべての小屋が飛ばされてしまった時も、サスカサは皆を励まして小屋を建て直す。若者たちの悩みを聞いてやり、サスカサは若者たちの母親のように慕われる。
 血気盛んな若者が多く、喧嘩もすぐに始まった。強い娘がいて、その娘が出てくると必ず喧嘩が治まるのが面白かった。あの娘は誰なんだろうとサハチは考えた。もしかしたら、首里の女子サムレーのクムかなと思った。
 戦に行くぞと言って島を出て行く所でお芝居は終わった。よく考えたら、前回の『佐敷按司』の続編だった。サスカサを主役にした続編だった。
 旅芸人たちは『馬天ヌル』を演じた。登場するサスカサはカリーが演じていて、観客たちは喜んだ。
 お芝居のあと、安須森ヌルが横笛を吹いた。南の島を想像させる快い曲だった。皆、うっとりとして聴いていた。スサノオの神様が安須森ヌルの笛を聴いてミャーク(宮古島)に来たという。安須森ヌルの笛はまさに、神様が吹いているような神秘的な調べだった。
 ウニタキとミヨンが三弦(サンシェン)を弾いて歌を歌い、最後はみんなで踊ってお祭りは終わった。
 今回、念仏踊りはなかった。辰阿弥(しんあみ)はササと一緒にヤマトゥに行き、福寿坊(ふくじゅぼう)は交易船に乗ってヤマトゥに行っていた。福寿坊がいない事を知ったササは、辰阿弥が四国の生まれだという事を思い出し、山グスクにいた辰阿弥に会いに行った。話を聞くと八倉比売神社(やくらひめじんじゃ)に行った事があるという。ササは一緒に行く事を頼んで、辰阿弥は承諾した。
 七月になって、今帰仁に来ていた明国の海賊が帰って行ったと知らせが来た。そして、海賊が帰るのを待っていたかのように、山北王は沖の郡島(うーちぬくーいじま)(古宇利島)に行ったという。
 七月七日、今年で三度目になるヌルたちの安須森参詣が行なわれた。久し振りにヌルの格好をしている安須森ヌルを見て、サハチは驚いた。神々しくて、不思議な力に包まれているようで、まるで生き神様のようだと思った。
 南部のヌルたちが浮島の『那覇館(なーふぁかん)』に集まって、ヒューガの船に乗って北へと向かった。那覇館に滞在していた南の島のヌルたちも、アンアンたちも一緒に行った。いつもなら護衛役にヂャンサンフォンと右馬助(うまのすけ)が行ったのだが、今年はいないので、クマラパとガンジュー、アンアンたちと一緒に来たシンシンの兄弟子のシュヨンカに頼んだ。
 今年は久高島からは誰も参加しなかった。大里(うふざとぅ)ヌルが今にも赤ちゃんを産みそうだという。右馬助と結ばれて、跡継ぎを授かったのだった。

 

 

 

伊勢国司北畠氏の研究

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第二稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第二稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第二稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第二稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第二稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第二稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第二稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第二稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第二稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第二稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第二稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第二稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。
  165. ウムトゥ姫とマッサビ(第二稿)   ササたち、ノーラ姫とウムトゥ姫に会う。
  166. 神々の饗宴(第二稿)   於茂登岳の山頂で、神様たちと酒盛り。
  167. 化身(第二稿)   名蔵の白石御嶽と水瀬御嶽で神様と会う。
  168. ヤキー退治(第二稿)   ササたち屋良部岳に登り、山頂で雷雨に遭う。
  169. タキドゥン島(第二稿)   タキドゥンの話を聞いて驚くササたち。
  170. ユーツンの滝(第二稿)   クンダギに登って、イリウムトゥ姫と会う。
  171. ドゥナン島(第二稿)   ササたち、クン島からドゥナン島へ向かう。
  172. ユウナ姫(第二稿)   ウラブダギに登ったササたち、ドゥナン島の村を巡る。
  173. 苗代大親の肩の荷(第二稿)   尚巴志、苗代大親の隠し事を知って笑う。
  174. さらばヂャンサンフォン(第二稿)   会同館で三姉妹たちの送別の宴が開催。
  175. トゥイの旅立ち(第二稿)   前山南王妃、ナーサと一緒に奥間に行く。
  176. 今帰仁での再会(第二稿)   前山南王妃、今帰仁に行って姪と会う。
  177. アミーの娘(第二稿)   尚巴志、ウニタキからトゥイの事を聞く。
  178. 婿入り川(第二稿)   山北王の若按司が山南王の婿になる。
  179. クブラ村の南遊斎(第二稿)   ササたち、ダンヌ村からクブラ村に行く。
  180. 仕合わせ(第二稿)   ササと愛洲次郎、二人だけの時を過ごす。
  181. ターカウ(第二稿)   ササたち、黒潮を越えて台湾に行く。
  182. 伝説の女海賊(第二稿)   ササたち、高雄で女海賊の活躍を聞く。
  183. 龍と鳳凰(第二稿)   唐人町の宮殿にお世話になるササたち。
  184. トンド(第二稿)   ササたち、トンド王国に着く。
  185. 山北王の進貢(第二稿)  リュウイン、山北王の使者として明国に行く。
  186. 二つの婚礼(第二稿)   マグルーとマウミ、ウニタルとマチルーが結ばれる。
  187. 若夫婦たちの旅(第一稿)   ウニタル夫婦とマグルー夫婦、旅に出る。
  188. サハチの名は尚巴志(第一稿)   今帰仁のお祭りからウニタキが帰って来る。
  189. トンドの新春(第一稿)   ササたち、新年の祝宴で二日酔い。
  190. パティローマ(第一稿)   ササたち、波照間島に行く。
  191. キキャ姫の遊戯(第一稿)   湧川大主、喜界島を攻める。
  192. 尚巴志の進貢(第一稿)   サハチ、尚巴志の名前で進貢船を送る。
  193. ササの帰国(第一稿)   南の島の人たちを連れて、ササたち帰国する。
  194. 玉グスク(第一稿)   ササ、豊玉姫から瀬織津姫の事を聞く。
  195. サミガー大主の小刀(第一稿)   タキドゥン按司の話を聞いて驚く尚巴志
  196. 奥間のミワ(第一稿)   ササたち、愛洲次郎の船でヤマトゥに行く。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香楼』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣
波平大親      1366-    山南王の重臣
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司
チルカマ      1349-    クマラパの妹。先代の石原按司
阿嘉のトゥム    1365-    久米島からミャークに渡った兄弟の弟。伊良部島に住む。
スタタンのボウ   1360-    多良間島の女按司。クマラパの弟子。
ハリマ大殿     1359-    ボウの夫。ターカウの倭寇
平久保按司     1355-    石垣島按司。ターカウの倭寇
ブナシル      1360-    名蔵の女按司
ミッチェ      1387-    ブナシルの娘。父親は富崎按司
マッサビ      1369-    ウムトゥダギのフーツカサ。池間島出身。
サユイ       1391-    マッサビの娘。弓矢の名人。
阿嘉のグラー    1362-    マッサビの夫。久米島からミャークに渡った兄弟の兄。
ガンジュー     1386-    熊野の山伏、願成坊。
タキドゥン     1348-    島添大里按司の息子で、タキドゥン島の按司になる。
ユミ        1361-    ドゥナン島サンアイ村のツカサ。
ナーシル      1391-    ユミの娘。父は苗代大親

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。
クミ姫             久米島の神様。ビンダキ姫の三女。
ウパルズ            池間島の神様。ウムトゥ姫の長女。
赤名姫             ウパルズの孫。ユンヌ姫と行動を共にする。
ウムトゥ姫           石垣島於茂登岳の神様。ビンダキ姫の次女。
ノーラ姫            石垣島の名蔵の神様。ウムトゥ姫の次女。
ヤラブ姫            ノーラ姫の三女。
ビシュヌ            クバントゥオンの神様。シィサスオンの神様でもある。
ラクシュミ           ビシュヌの妻。ミズシオンの神様。
サラスワティ          ヤラブダギの神様。弁才天
イリウムトゥ姫         二代目ウムトゥ姫の次女。クン島の神様。
ユウナ姫            イリウムトゥ姫の次女。ドゥナン島の神様。

 

2-195.サミガー大主の小刀(第一稿)

 知念(ちにん)グスクに泊まったササたちは翌日、ヒューガに会うために浮島(那覇)に向かった。うまい具合にヒューガは水軍のサムレー屋敷にいた。与那覇勢頭(ゆなぱしず)とフシマ按司が来ていて、ヒューガは絵図を広げて南の島の事を聞いていた。
「お前、どこに行っていたんじゃ?」とヒューガはササの顔を見ると聞いた。
「ごめんなさい。急いで知りたい事があったので、お父さんに挨拶もしないで行っちゃった」
 そう言ってササが笑うと、
「まったく、相変わらずじゃのう」とヒューガも笑った。
「ササ殿はミャーク(宮古島)のヌルたちに尊敬されております。神様の事はわしらにはわかりませんが、ササ殿のお陰で、昔の事が色々とわかったとヌルたちが喜んでおりました」と与那覇勢頭が言った。
「ほう、ササが尊敬されておるのか」とヒューガは嬉しそうな顔をしてササを見た。
「幼い頃から不思議な力を持っていたからのう。きっと、母親に似たんじゃろう」
「ねえ、お父さん、お父さんのお母さんの事を話して」とササはヒューガに言った。
「なに、わしの母親の事じゃと? どうしたんじゃ、急にそんな事を聞いて」
「とても重要な事なのよ」と言って、ササはヒューガの隣りに腰を下ろした。
 ササの真剣な顔つきを見て、ヒューガはうなづいた。
「わしの母親は、わしが八歳の時に亡くなったんじゃよ。戦(いくさ)に巻き込まれて母親だけでなく、兄弟も皆、死んだ。戦に出掛けた親父も帰って来なかったんじゃ。わしだけが独り生き残ったんじゃよ」
 ヒューガはササを見て苦笑した。
「お前の母親はお前と同じ笹という名前で、八倉比売神社(やくらひめじんじゃ)の神官の娘だったんじゃ。そういえば、お前はだんだんとわしの母親に似てきたようじゃな。わしの記憶の中にいる母親は三十歳のままじゃ」
「神官の娘って、もしかして、お母さんは巫女(みこ)だったの?」
「いや。巫女じゃないよ。母さんのお姉さんは巫女だった。一度、会った事がある」
「矢倉姫様ってどんな神様なの?」
「阿波(あわ)(徳島県)の国を造った古い神様らしい」
「阿波津姫様の事?」
「阿波津姫? さあ、わからんのう」
 ササはヒューガが持っているヤマトゥの絵図を見せてもらって、八倉比売神社の場所を教えてもらった。四国の東の方にあるので、京都に行く途中に寄れると思った。
「行くつもりかね?」とヒューガが聞いた。
「行ってみたいわ」
「阿波の国は細川家が実権を握っている。昔は三好家が守護を務めていたんじゃが、今は細川家の被官になっているはずじゃ」
「お父さんの親戚の人はいるの?」
「わからんな。南北朝の戦の時、同族同士で争って来たからのう。わしの親父は本家の次男だったんじゃが、本家筋の者は皆、戦死したと聞いている。わしを知っている者はおらんじゃろう」
 四国の北に児島(こじま)があるので、
「四国にも熊野の山伏はいるの?」とササは聞いた。
「四国には険しい山が多いので山伏は大勢いる。三好の近くに高越山(こうつさん)という山があって、そこにも大勢の山伏がおった。わしも若い頃、山伏に憧れていたんじゃよ」
 福寿坊(ふくじゅぼう)を連れて行った方がいいなとササは思った。
 ヒューガと別れたササたちはジルーの船に行って、みんなに用意したお土産を下ろし、浮島にあるヒューガの屋敷に行って、お土産の整理をした。
 浮島のヒューガの屋敷は、三年前にヒューガが『宇久真(うくま)』の遊女(じゅり)だったミフーを側室に迎えて建てた屋敷だった。ヒューガと馬天(ばてぃん)ヌルが結ばれてササが生まれ、馬天ヌルは跡継ぎを得たが、ヒューガには跡継ぎがいなかった。馬天ヌルの薦めで、ヒューガはミフーを迎え、翌年、息子を授かっていた。五十九歳で息子を授かったヒューガは、息子が一人前になるまでは死ぬわけにはいかんと張り切っていた。
 その夜、ササたちはヒューガと一緒に酒を酌み交わしながら旅の話をして、ササはジルーがマレビト神だった事を教えた。
「そうか。やはり、ジルーだったのか。よかったのう」とヒューガはジルーを見て喜んだ。
「わしは若い頃、慈恩禅師(じおんぜんじ)殿と一緒に五ヶ所浦に行った事があるんじゃよ」
「えっ、本当ですか」とジルーは驚いた。
「わしは熊野に行く途中、慈恩禅師殿と出会って、一緒に熊野参詣をしたんじゃ。新宮(しんぐう)から熊野水軍の船に乗って五ヶ所浦に行ったんじゃよ。その時、愛洲の水軍の大将は九州に行って戦をしておると言っておった」
「それは俺の祖父の愛洲隼人(あいすはやと)です。今回の南の島の旅で、俺は祖父の事を詳しく知る事ができました」
「なに、南の島に祖父を知っている者がいたのか」
「そうなんです。俺も驚きました。祖父の話を聞いて、祖父の気持ちを理解する事ができました。行ってきて本当によかったと思っています」
 ササがターカウ(台湾の高雄)のキクチ殿の事を話すと、ヒューガは驚きながら話を聞いていた。
 その日、クマラパはタマミガと妹のチルカマを連れて、サミガー大主(うふぬし)の小舟(さぶに)に乗って津堅島(ちきんじま)に渡っていた。五十四年振りに帰って来た津堅島は当時とあまり変わっていなかった。チルカマは当時の事を思い出して、自然に涙が溢れてきた。
 サミガー大主はナツの祖母が住む家に連れて行った。ナツの祖母はクマラパとチルカマを見て、五十年前の事がまるで昨日の事のように蘇り、夢でも見ているようだと再会を喜んでいた。
 二人を知っている年寄りたちが集まって来て、涙の再会をした。当時、幼かったナツの伯父、チキンジラーも二人を覚えていた。カマンタ(エイ)捕りを引退して島に戻っていたチキンジラーは島の人たちを集めて、クマラパ兄妹の里帰りを歓迎した。
 クマラパ兄妹を津堅島に連れて来た船乗りのカルーはナツの祖父だった。カルーは浮島に来ていた泉州の商人、程復(チォンフー)の船乗りになって何度も泉州に行っていた。クマラパ兄妹をミャークに連れて行った五年後、カルーは明国に行ったまま帰っては来なかった。嵐に遭って遭難したのか、倭寇(わこう)に襲われたのかわからない。クマラパ兄妹はその事を知って悲しんだ。
 フーキチ夫妻は首里(すい)の城下に住む奥間(うくま)の鍛冶屋(かんじゃー)と一緒に玻名(はな)グスクに行って、按司になったヤキチと再会した。
 グスクも立派だし、按司になったヤキチは自分の事など覚えていないだろうと心配していたフーキチだったが、グスクに入って驚いた。グスク内で奥間の若者たちが鍛冶屋の修行に励んでいた。そして、若者たちを指導していたのはヤキチだった。二十五年前と同じように鍛冶屋をやっているヤキチを見て、フーキチは嬉しくなった。ヤキチはフーキチを覚えていた。南の島に行ったササが、フーキチを連れて来てくれるような予感がしていたという。フーキチ夫妻はヤキチと奥間の者たちに大歓迎された。
 ナーシルは苗代大親(なーしるうふや)と一緒に首里の城下にある屋敷に行って、苗代大親の妻、タマと会った。タマは初めて見る娘を歓迎し、顔を出したマガーチ(苗代之子)とサンダー(慶良間之子)、クグルーの妻のナビーも初めて見る妹を歓迎した。
 パティローマ島(波照間島)のペプチとサンクルは首里のサングルミーの屋敷に滞在して、親子水入らずの時を楽しんでいた。屋敷で働いている女たちは、いつもシーンとしていた屋敷に、笑い声が絶えないので、よかったわねと喜んでいた。
 ミッチェとガンジュー、サユイ、クン島(西表島)のユーツンのツカサ、ドゥナン島(与那国島)のユナパとフーは、安須森(あしむい)ヌルと一緒に島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに行った。
 多良間島(たらま)のボウ、野城(ぬすく)の女按司(みどぅんあず)、池間島(いきゃま)のウプンマ、保良(ぶら)のウプンマ、ドゥナン島のアックとラッパは、馬天ヌルと一緒に首里グスクに滞在していた。
 ツキミガとインミガ、ボウの娘のイチは、ミーカナとアヤーと一緒に与那原(ゆなばる)グスクに行った。勿論、ゲンザとマグジも一緒に行った。 
 サハチはンマムイ(兼グスク按司)と一緒に慈恩寺(じおんじ)に行って真喜屋之子(まぎゃーぬしぃ)と会っていた。真喜屋之子はヤマトゥンチュに扮していて、三春羽之助(みはるはねのすけ)と名乗っていた。
首里に慈恩禅師殿のお寺ができたと聞いて、本当に慈恩禅師殿がいるのだろうかと出て来たのが失敗でした。まさか、兼(かに)グスク按司殿と会って、自分の正体がばれるなんて思ってもいませんでした」
 そう言って羽之助は苦笑した。
「お前の事は兼グスク按司から聞いた。若い頃、佐敷の武術道場で修行していたそうだな」
 羽之助はうなづいた。
「一年余りお世話になりました。あの頃の俺は自分が何をしたらいいのかわからなかったのです。俺の親父は山北王(さんほくおう)の重臣でした。兄貴が跡を継ぐだろうし、俺はサムレーになるしかないのかなと思っていました。俺が九歳の時、今帰仁(なきじん)の合戦があって、叔父が戦死しました。まだ十九の若さでした。叔父の戦死があったので、俺はサムレーになる事を嫌って旅に出たのです。馬天浜のサミガー大主殿の離れに滞在していた時、密貿易船に乗って来た唐人(とーんちゅ)と出会って、明国の話を聞いて、俺も明国に行きたくなりました。進貢船(しんくんしん)には護衛のサムレーも乗るので、進貢船のサムレーになろうと決心して今帰仁に帰ったのです。美里之子(んざとぅぬしぃ)殿の武術道場で修行したお陰で、俺は進貢船に乗る事ができました。そして、明国に行って驚きました。明国は思っていた以上に凄い国でした。明国のあらゆる事を学びたいと思って、俺は毎年、明国に行きました。でも、過ちを犯してしまい、明国で学んだ事を生かす事はできませんでした」
「明国で何を学んだんだ?」とンマムイが聞いた。
「色々と学びましたよ。まず始めに学んだのは言葉です。言葉がわからないと何も聞けませんからね。言葉を覚えてからは、興味がわいた事は何でも聞いて回りました。家の建て方とか、石畳の道の造り方とか、橋の架け方とか、陶器の作り方とか、井戸の掘り方とか、琉球にない物は皆、聞いて回りました」
「ほう、お前は頭がいいようだな」とサハチは感心した。
 羽之助は照れくさそうに笑った。
「俺は四回、明国に行きました。三十歳まで進貢船のサムレーをやって、そのあとは普請奉行(ふしんぶぎょう)になって、ヤンバルの道を整備しようと計画していたのです」
「妻の密通事件で、お前の夢は破れたか」とンマムイが言った。
 羽之助は昔を思い出したのか、顔を歪めた。
「お前の親父は島尻大里(しまじりうふざとぅ)にいるぞ。そろそろ会ってもいいんじゃないのか」とサハチは言った。
 羽之助は首を振った。
「俺は死んだ事になっています。それでいいのです」
「ずっと隠れて暮らすのか」
「生きている事がわかれば、湧川大主(わくがーうふぬし)は許さないでしょう。親父も兄貴も姉も弟も迷惑を被る事になります。俺の事は内緒にしておいて下さい」
 サハチはうなづいて、「慈恩禅師殿を助けてやってくれ」と言った。
「慈恩禅師殿の話は師匠から色々と聞いていて会ってみたいと思っていたのです。まさか、琉球で会えるなんて思ってもいませんでした。師匠と出会った頃を思い出して、修行をし直しているのです」
 サハチとンマムイは羽之助と別れて慈恩寺を出た。ンマムイはマサキが待っていると言って兼グスクに帰って行った。サハチは首里グスクの龍天閣(りゅうてぃんかく)に向かった。タキドゥン按司が待っているはずだった。
 龍天閣に行くと、思紹(ししょう)と馬天ヌルがタキドゥン按司と話をしていた。サハチの顔を見ると、
「お前、これを覚えているか」と思紹が聞いた。
 思紹は短刀を持っていた。鮫皮(さみがー)が巻かれた柄(つか)に見覚えがあった。思紹が短刀を鞘から抜いた。
「あっ!」とサハチは叫んだ。
 擦り減った刃が細くなっていて、祖父のサミガー大主が毎日、研いでいた姿が思い出された。
「お爺の小刀(くがたな)だ」とサハチは言った。
「そうじゃ。親父が人喰いフカ(鮫)を倒した小刀じゃ。親父は海でなくしたと言っていたが、タキドゥン按司殿に贈っていたんじゃよ」
 驚いた顔をして小刀を見ていたサハチは、タキドゥン按司を見ると、「祖父を知っていたのですか」と聞いた。
「わしの母親は馬天浜のウミンチュの娘なんじゃよ。若按司だった父に見初められて側室になったんじゃ。わしが二歳の時、祖父の島添大里按司浦添(うらしい)の極楽寺で戦死して、父は按司になったが、察度(さとぅ)に攻められて戦死してしまったんじゃ。わしは母親と一緒に城下に移って暮らす事になった。とは言っても、二歳だったわしはグスクにいた事など何も覚えていない。母は父親の事は教えてくれなかった。わしは幼い頃、母に連れられて馬天浜に行っては遊んでいたんじゃよ。わしが四歳の時、サミガー大主殿は馬天浜に来て、鮫皮作りを始めたんじゃよ。わしの祖父と叔父はカマンタ捕りをやっていた。赤ん坊だった王様(うしゅがなしめー)と馬天ヌル殿とも一緒に遊んだものじゃった」
「わしらが生まれた頃の事を知っていたとは驚いた」と思紹が言って笑った。
「十二歳の時に、父親の事を知らされてグスクに入ったそうじゃ。その後は水軍の大将として、ヤンバルに行って材木を伐り出していたそうじゃ」
「その頃、わしは与那原の屋敷で暮らしていて、馬天浜にもよく来ていたんじゃよ。親父を知らないわしにとって、サミガー大主殿は親父のような存在だったんじゃ。浜辺で一緒に酒を飲んで、語り合った事もあった。そなたが生まれた時、ヤマトゥンチュたちが来ていたが、わしも一緒にお祝いをしたんじゃよ」
「そうだったのですか」とサハチは驚いていた。
「タキドゥン殿の話を聞いて、わしは思い出したんじゃよ」と思紹が言った。
「母が大(うふ)グスク按司の娘だったので、親父の屋敷にはサムレーたちが出入りしていたんじゃ。ほとんどが大グスクのサムレーだったが、島添大里のサムレーもいた。そのサムレーがタキドゥン殿だったんじゃよ」
「わたしも思い出したわ」と馬天ヌルが言った。
「子供の頃、遊んだのはかすかに覚えているけど、わたしが馬天ヌルになった時、ヌルの屋敷を造るための材木を運んでくれたのが、あなただったのよ」
「おう、そういえば、そんな事があったのう。あれはわしが水軍の大将になった年じゃった。大将になって最初の取り引きだったんじゃ。ヤマトゥの刀を大量に手に入れて、按司の義兄(あにき)に褒められたんじゃよ。以後、サミガー大主殿との取り引きはわしが任されるようになったんじゃ」
「その小刀はいつ、お爺からもらったのですか」とサハチは聞いた。
琉球を去る前じゃよ。義兄が亡くなって、子供たちが家督争いを始めた。わしはどうしたらいいのかわからず、馬天浜の浜辺で海を眺めていたんじゃ。サミガー大主殿が来て、わしの話を聞いてくれた。そして、わしを見つめて笑うと、その小刀を腰からはずして、わしにくれたんじゃよ。わしが琉球から去ろうとしていた事を、サミガー大主殿は見抜いていたのかもしれん。わしは守り刀として大切にしてきた。無事に南の島に行けたのも、わしが南の島で按司になれたのも、その小刀のお陰かもしれん」
 タキドゥン按司は小刀を返すと言ったが、思紹は受け取らなかった。
「親父の遺品として持っていて下さい。そして、時々、サミガー大主の事を思い出してくれたら、親父も喜ぶでしょう」
 タキドゥン按司はうなづいて、「タキドゥン按司家の家宝にします」と言った。
「話は変わりますけど、運玉森(うんたまむい)にあった立派な屋敷はタキドゥン按司殿が建てたのですか」とサハチは聞いた。
「あれを建てたのは祖父じゃよ。奥間から美人の側室を送られて、祖父は大層、気に入ったようじゃ。立派な屋敷を建てたんじゃが、察度に攻められて、側室も子供も殺されたようじゃ。察度が島添大里グスクを攻めた時、その屋敷は本陣として使われ、父を倒したあと焼き払われたんじゃが、大雨が降ってきて火は消えたそうじゃ。その後、マジムン(化け物)が現れるという噂が立って、マジムン屋敷と呼ばれるようになったんじゃよ。まだ、マジムン屋敷はあるのかね?」
「マジムンを退治して、今は与那原グスクが建っています」
「なに、あそこにグスクが建っているのか。そうか、随分と変わったようじゃのう」
 サハチはタキドゥン按司を連れて島添大里グスクに帰った。
 二十五年振りに島添大里グスクに入ったタキドゥン按司はあまりの変わり様に驚いていた。
「石垣が高くなっているのは以前に来た時に知っていたんじゃが、二階建ての屋敷があるとは驚いた。前回に来た時、あの屋敷を建てている最中じゃった」
「えっ、前回に来た時、このグスクに入ったのですか」とサハチは驚いて聞いた。
「招待されたんじゃよ。勿論、わしは先代の按司の一族だった事は隠して会ったんじゃ」
「そうでしたか。一族を滅ぼした相手に会うなんて、辛かったでしょう」
「憎らしかったよ。だが、顔には出さずに話を聞いていたんじゃ。近いうちに明国に進貢船を送るので、珍しい物を手に入れたいと言っておった。わしは持ってきた海亀の甲羅とザン(ジュゴン)の塩漬けをヤマトゥの商品と取り引きしたんじゃよ」
「そうだったのですか」と言いながら、サハチは汪英紫(おーえーじ)が山南王(さんなんおう)の船を借りて進貢していたのを思い出した。
「奴は汪英紫という名前で進貢船を送っていました。そして、島尻大里グスクを奪い取って、山南王になったのです」
「なに、あの男が山南王になったのか」
 信じられないというようにタキドゥン按司は首を振った。
 サハチはタキドゥン按司を一の曲輪(くるわ)の屋敷の二階に案内して、昔の話を聞いた。
 島添大里グスクが八重瀬按司(えーじあじ)だった汪英紫に滅ぼされた時、サハチはまだ九歳だった。馬天浜から見上げていた島添大里グスクは、当時のサハチにとっては別世界で、島添大里按司の事なんて何も知らなかった。島添大里グスクが落城したあと、父が佐敷グスクを築いて按司になり、サハチは若按司となった。自分が今、島添大里グスクで暮らしているなんて、当時、考えた事もないほど、とんでもない事だった。
 琉球を旅立って南の島に行って、タキドゥン島(竹富島)に落ち着くまでの話をしてから、タキドゥン按司は急に思い出したかのように、「サスカサは生き延びたそうじゃのう」と言った。
「サスカサさんは久高島に逃げて、ずっとウタキに籠もっていました。わたしがこのグスクを攻め落とした時、ここに戻って来て、わたしの娘を指導して、娘にサスカサを譲ったのです。その後、運玉森ヌルを名乗って与那原にいましたが、去年、ヂャンサンフォン(張三豊)殿と一緒に南の国に旅立ちました」
「なに、南の国に行ったのか」
「ムラカ(マラッカ)に行くと行っておりました」
「ムラカか‥‥‥しかし、またどうして、そんな遠くの国に行ったのじゃ?」
「今年、明国から冊封使(さっぷーし)が来ます。明国の皇帝の永楽帝(えいらくてい)はヂャンサンフォン殿を探しています。琉球にいたら皇帝のもとに連れて行かれてしまうので、ヂャンサンフォン殿は逃げて行ったのです」
「ヂャンサンフォン殿は権力者が嫌いなんじゃな」と言ってタキドゥン按司は笑った。
「姪に会えると楽しみにして来たんじゃが、行き違いになってしまったか」
「ほとぼりが冷めたらヂャンサンフォン殿と一緒に琉球に戻って来るでしょう。そしたら、タキドゥン島まで行かせますよ」
「そうか。姪に会えるまで長生きせねばならんのう」
 賑やかな子供の声が聞こえてきた。
「あら、お帰りだったのですか」とナツが部屋を覗いて、サハチに言った。
「安須森ヌル様が南の島のお客様をお連れになって、南の島のお話を聞いていたのです」
「マシューが帰って来たか。ササたちも一緒か」
「いえ、ササたちはいません。マユちゃんは安須森ヌル様と一緒です」
「そうか。帰国祝いと歓迎の宴をしなくてはならんな。準備を頼むぞ」
 ナツはうなづいて、子供たちを連れて行った。
「義兄は玉グスクの息子で、島添大里に婿に入ったんじゃよ。父が亡くなった時、長男のわしは二歳じゃった。十三歳の姉が十五歳の婿を迎えて、婿が島添大里按司を継いだんじゃ。婿と一緒に玉グスクのサムレーたちが入って来て、義兄が亡くなったあとの家督争いが起こってしまったんじゃ。義兄が亡くなる時、あとの事は頼むと言われたが、わしにはどうする事もできなかったんじゃよ。玉グスク派と地元派が争い、そこに側室の兄、糸数按司(いちかじあじ)も加わり、八重瀬按司も首を突っ込んできた。わしは逃げ出した。タキドゥン島に行っても、ここの事は気になっていたんじゃ。サミガー大主殿の孫のそなたが、このグスクを奪い取ってくれたなんで、わしは夢でも見ているような気分じゃよ」
 そう言って、タキドゥン按司は楽しそうに笑った。
 その夜の宴で、サハチは安須森ヌルから『英祖(えいそ)の宝刀』の中の一つ、小太刀(くだち)がミャークにあったと聞かされた。
 英祖の宝刀は浦添按司(うらしいあじ)だった英祖がヤマトゥに使者を送り、鎌倉の将軍様から贈られた三つの刀だった。太刀と小太刀と短刀で、三つ揃って『千代金丸(ちゅーがにまる)』と呼ばれた。六年前に安須森ヌルが久高島の神様から探し出すようにと言われたのだった。
「やはり、ミャークにあったのか」とサハチは嬉しそうな顔をして安須森ヌルを見た。
「与那覇勢頭様が初めて琉球に来た時に、察度様から贈られたようだわ。今はミャークの首長になった目黒盛豊見親(みぐらむいとぅゆみゃー)様がお持ちです」
「目黒盛豊見親?」
「目黒盛というのがお名前で、豊見親というのは『世の主(ゆぬぬし)』というような意味らしいわ」
「ほう、鳴響(とぅゆ)む親(うや)というわけか。面白いな」
「目黒盛豊見親様に見せてもらったけど、名刀と呼ばれる見事な物だと思うわ。刃の長さは二尺(約六〇センチ)弱で、ミャークでは『ちがにまる』って呼ばれていました」
「『ちゅーがにまる』が『ちがにまる』に訛ったか。これで三つの刀のありかがわかったわけだな」
 安須森ヌルはうなづいた。
「太刀は今帰仁にあって、山北王の宝刀になっている。短刀は越来(ぐいく)ヌルのハマが大切にしているわ。そして、小太刀はミャークの守り刀になっているっていうわけよ」
「どこにあるかがわかっただけでも上出来だよ。ありがとう」
「久高島の神様に報告に行かなくちゃね」
「南の島のヌルたちを連れて行ってくるがいい。ところで、ササは何をやっているんだ?」
「ササはヤマトゥに行くつもりなのよ」
「なに、これからヤマトゥに行くのか」
「南の島で、瀬織津姫(せおりつひめ)様という凄い神様の事を知ってしまったのよ」
瀬織津姫様? 弁才天(びんざいてぃん)様の化身の神様の事か」
「えっ、お兄さん、知っているの?」と安須森ヌルは驚いた。
「今、親父が弁才天様を彫っているんだよ。報恩寺(ほうおんじ)の和尚から、瀬織津姫様の事を聞いたらしい。馬天ヌルに聞いても知らなかったと言っていた。ササなら知っているかもしれんと親父は言ったけど、まさか、ササが瀬織津姫様の事を調べているとは驚いた」
「お父さんはどうして、弁才天様を彫っているの?」
「馬天ヌルに頼まれて、ビンダキ(弁ヶ岳)に祀るために彫っているんだよ。昔、ビンダキには役行者(えんのぎょうじゃ)という山伏の元祖が祀った弁才天様があったそうだ」
「ビンダキに弁才天様が‥‥‥そうだったんだ」と安須森ヌルは納得したようにうなづいた。
「それで、瀬織津姫様というのはどんな神様なんだ?」
スサノオの神様の御先祖様なのよ。そして、琉球のお姫様なの。豊玉姫(とよたまひめ)様の御先祖様でもあるのよ。アマミキヨ様が琉球に来て、多分、垣花森(かきぬはなむい)に都があった頃、瀬織津姫様はヤマトゥに行ったんだと思うわ。その事を聞きにササはセーファウタキに行ったのよ」
「しかし、そんなに古い神様に会う事なんてできるのか」
瀬織津姫様のガーラダマ(勾玉)を手に入れれば会う事はできるわ。玉グスクにあるかもしれないわ」
「そのガーラダマを持ってヤマトゥに行くというのか」
「そういう事。あたしも行きたいけど、冊封使が来るから、あたしは残るわ」
「そうだよ。お前まで行ったら大変な事になる。ササはジルーの船でヤマトゥに行くのか」
「そうよ。帰りはシンゴの船に乗ってくればいいわ」
「ササも忙しい事だな」とサハチは笑った。

 

 

 

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