長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-145.他魯毎(第一稿)

 島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクが落城した翌日、大(うふ)グスク、与座(ゆざ)グスク、真壁(まかび)グスクが降伏して開城した。
 長嶺按司(ながんみあじ)と瀬長按司(しながあじ)の兵に包囲されていた大グスクは、サムレー大将の真壁之子(まかびぬしぃ)が捕まり、他の兵たちは許されて、そのまま大グスクの警固に当たった。
 兼(かに)グスク按司(ジャナムイ)と小禄按司(うるくあじ)に包囲されていた与座グスクは、タブチの娘婿の与座按司は捕まって、他魯毎(たるむい)の妹と婚約していた若按司が跡を継いだ。
 真壁グスクは他魯毎のサムレー大将、波平大主(はんじゃうふぬし)が包囲していたが、兼グスク按司と長嶺按司の兵が加わった。真壁按司は投降して、他魯毎の妹婿の若按司が跡を継ぐ事に決まった。
 中山王(ちゅうさんおう)の兵が包囲していた波平グスクは、波平大親(はんじゃうふや)が裏切っていなかった事がわかって、思紹(ししょう)は兵の撤収を命じた。波平大親は久し振りに妻や子と再会して、長い戦が終わった事を喜んだ。
 李仲按司(りーぢょんあじ)が包囲していた伊敷(いしき)グスクは、島尻大里グスクが落城したあと、他魯毎の重臣たちの兵が合流して、真壁グスクが落城したあと、兼グスク按司と長嶺按司も加わった。伊敷グスクには摩文仁(まぶい)の娘婿の伊敷按司摩文仁の次男の摩文仁按司がいて、その日のうちに投降する事はなかったが、翌日には覚悟を決めて投降した。
 伊敷按司は捕まり、妻は米須按司(くみしあじ)の妹なので、若按司と一緒に米須グスクを包囲している中グスク按司の陣地に送られた。摩文仁按司も捕まった。ナーグスクにいる伊敷ヌルが産んだ他魯毎の息子、タルマサが伊敷按司を継ぐ事に決まったが、タルマサはまだ六歳だった。成人するまで母と一緒にナーグスクで暮らし、伊敷グスクは李仲按司が管理する事になった。
 残るは山グスクだけとなった。サハチは馬天(ばてぃん)ヌルと安須森(あしむい)ヌルを連れて山グスクに行き、山グスクにいる真壁ヌルと名嘉真(なかま)ヌルと交渉させた。山グスク按司は隠居して、若按司が跡を継げばいい。中座按司(なかざあじ)もいるようだが同じように隠居して、息子に継がせればいいと言ったが、いい返事は得られなかった。
 妹の真壁ヌルと伯母の名嘉真ヌルから降伏の条件を聞いて、山グスク按司には信じられなかった。隠居して済む問題ではなかった。山北王が来る前の総攻撃では敵も味方も多くの犠牲者を出していた。敵も味方も半年前は、共に山南王の兵だった。敵の中に知っている顔も多かった。
 弟の東江之子(あがりーぬしぃ)は他魯毎の幼馴染みで、豊見(とぅゆみ)グスクのサムレー大将だった。今まで仲よくやって来たのに、敵味方に分かれて戦っている。弟と戦うのは避けてきたが、戦死した知人も多かった。摩文仁を山南王にするために、そんな敵を倒して来たのだった。
 思い返せば、親兄弟が敵味方に分かれて戦うのは今に始まった事ではなかった。山グスク按司が島尻大里のサムレーになったばかりの頃、初代の山南王が亡くなり、跡を継いだ二代目の山南王は大叔父の島添大里按司(しましいうふざとぅあじ)(汪英紫)に攻められた。その時も家臣たちは敵味方に分かれて戦い、島添大里按司が三代目の山南王になった。
 三代目の山南王が亡くなった時も、八重瀬按司(えーじあじ)のタブチと豊見グスク按司のシタルーの家督争いがあり、家臣たちは二つに分かれた。豊見グスクにいた弟はシタルー側となり、山グスク按司と父の真壁按司はタブチ側になった。シタルーが勝利して山南王になり、島尻大里のサムレーだった山グスク按司はシタルーに仕えた。その後も父はタブチ側として、シタルーに敵対していたが、タブチが中山王の船に乗って明国に行っている留守に寝返って、シタルーに仕える事になった。ようやく、親子が一つになれたと安心したのに、それもつかの間、父は隠居して、タブチと一緒に中山王の船に乗って明国に行った。
 そして、今回の戦だった。父は戦死して、兄の真壁按司は捕まり、甥の若按司が真壁按司になった。長男の妻は波平大主の娘なので、他魯毎に仕える事も可能だろう。弟がうまくやってくれるに違いない。弟や息子のためにも裏切り者として生きて行くわけにはいかなかった。山南王を夢見て敗れたタブチのように壮絶な死に方をして幕を引きたかった。
 中座按司と相談すると、ふざけるなと吐き捨てた。
「玻名グスクを奪われ、親父と兄貴は戦死した。おめおめと隠居などできるか」
「そうだ」と山グスク按司は力強くうなづいた。
「俺が造ったこのグスクで、立派な最期を飾ってやる」
「山グスク殿、お供しますぞ。見事な死に花を咲かせましょう」
 山グスク按司と中座按司が死の覚悟を決めた翌日、島尻大里グスクの北の御殿(にしぬうどぅん)の重臣の執務室で、他魯毎、照屋大親(てぃらうふや)、李仲按司、本部(むとぅぶ)のテーラー、諸喜田大主(しくーじゃうふぬし)が、捕まっている与座按司、真壁按司摩文仁按司、伊敷按司、新垣大親(あらかきうふや)、真栄里大親(めーざとぅうふや)、真壁之子、新垣之子(あらかきぬしぃ)の処罰を考えていた。
「今後の事を考えたら、全員、打ち首にするべきだろう」とテーラーは言った。
 犠牲者を出さずに降伏した新垣之子は助けたいと他魯毎は思ったが、敵対してきたサムレー大将を許すわけにはいかなかった。テーラーに異議を唱える者もなく、全員が打ち首と決まった。
 諸喜田大主が引き連れて来た山北王の兵は夏になるまで、伊敷グスクに滞在する事に決まり、伊敷の兵はナーグスクに移動する事になった。
 翌朝、島尻大里グスクの西曲輪(いりくるわ)で、与座按司、真壁按司摩文仁按司、伊敷按司、新垣大親、真栄里大親、真壁之子、新垣之子の八人が処刑された。
 グスク内で戦死した兵たちの遺体は抜け穴のガマ(洞窟)の中に葬られ、処刑された八人もガマの中に葬って、抜け穴の入り口は塞がれた。豊見グスクヌル、座波(ざーわ)ヌル、大村渠(うふんだかり)ヌルによって死者たちの冥福が祈られ、グスク内のお清めがされた。
 島尻大里ヌルになっていた米須ヌルと慶留(ぎる)ヌルは、豊見グスクヌルによって許された。馬天ヌルが叔母のウミカナを許した事を知っている豊見グスクヌルは馬天ヌルに倣って許し、二人が立ち直ってくれる事を願った。
 父と二人の弟を失った米須ヌルは生きる気力も失い、甥のマルクを頼って米須グスクに向かった。マレビト神だった真壁按司を失った慶留ヌルは、悲しみに打ちひしがれながらも、子供たちを迎えに名嘉真ヌルに会いに行った。名嘉真ヌルも子供たちもいなかった。近所の人に聞くと山グスクに行ったまま戻って来ないという。慶留ヌルは子供たちの無事を祈りながら山グスクに向かった。
 摩文仁の妻、山グスク大主の妻、中座大主の妻も許された。摩文仁の妻は夫と二人の息子を失って、米須グスクに帰った。中座大主の妻は実家の具志頭(ぐしちゃん)グスクも嫁ぎ先の玻名(はな)グスクも奪われて帰る場所がなかった。姉の山グスク大主の妻と一緒に真壁グスクに向かった。

 


 山グスクに行った慶留ヌルはンマムイの兵に捕まった。サハチがいた東の本陣に連れて来られ、サハチと一緒に上のグスクまで行って、名嘉真ヌルと会った。
 サハチは慶留ヌルに、島尻大里グスクで主犯者たちが処刑された事を知らせて投降するように頼んだが、慶留ヌルは名嘉真ヌルと一緒に山グスクに入ってしまった。
 その夜、無精庵(ぶしょうあん)とクレーが苗代大親(なーしるうふや)の配下のサムレーと一緒に東の本陣に現れた。本陣にいたサハチ、苗代大親、ウニタキ、ンマムイ、勝連若按司(かちりんわかあじ)、北谷按司(ちゃたんあじ)は驚いて、無精庵とクレーを見た。
「どうしたのです?」とサハチは無精庵に聞いた。
「ようやく、出してもらえました」と無精庵は笑った。
 二人の話によると、下のグスクに抜け穴があって、グスク内にいた女子供たちと一緒に抜け穴から外に出たという。
「なに、抜け穴があったのか」と苗代大親は驚いた顔をして、サハチを見た。
 サハチもウニタキも驚いていた。
「ここより二丁(約二百メートル)ほど先に出口があります。自然にできたガマ(洞窟)です」とクレーは言った。
「何人、外に出たんじゃ?」と苗代大親が聞いた。
按司の妻と子供、家臣たちの妻や子供、ヌルたちも出ました。妻や子を守るために三十人ほどの兵も一緒に出ています。百人余りが外に出ました」
「妻や子たちはどこに行ったんじゃ?」
「俺たちは米須に行くと行って途中で別れたのですが、逆の方に向かったので、ナーグスクではないかと思われます。山グスクの妻は伊敷按司の娘ですから、伊敷ヌルを頼ったものと思われます」
「ナーグスクか」と苗代大親はつぶやいた。
「女子供をグスクから出して、決戦を挑むつもりですかね」とサハチが苗代大親に聞いた。
「そうかもしれんのう」
「山グスク按司と中座按司は死ぬ覚悟をしているようじゃ」と無精庵が言った。
「山グスク按司は若按司も逃がすつもりでしたが、若按司も裏切り者として他魯毎に仕える事はできないと言って残りました」とクレーが言った。
「敵兵は減ったが、明日の戦(いくさ)は厳しくなりそうだな」とウニタキが言った。
 翌朝、クレーの案内で、サハチとウニタキは抜け穴に入った。抜け穴が使えれば苦労して大岩をよじ登る必要はないが、思っていた通り、入り口は塞がれてあった。
「抜け穴を塞いだという事は、奴らは死ぬ気で掛かってくる」とウニタキは言ってサハチを見た。
 サハチはうなづいて、「このガマは修行に使えるな」と言った。
「修行?」とウニタキは怪訝な顔をしてサハチを見た。
「山グスクを落としたあと、山グスクを武術道場にしたらいいんじゃないかと思ったんだよ。今帰仁(なきじん)グスク攻めのために、山グスクで兵たちを鍛えるんだ。このガマは『胎内くぐり』に使える」
「ここを灯りもなしに歩かせるのか」
「そういう事だ」
「先代の山田按司今帰仁グスクの崖をよじ登ってグスクに潜入したようだからな。ここで岩登りの訓練をさせるのもいいかもしれんな」
 抜け穴から出たサハチたちが本陣に戻ると、キンタが連れて来た辰阿弥(しんあみ)と福寿坊(ふくじゅぼう)が待っていた。そこまでは予定通りだったが、ササたちも一緒に来ていた。
「何しに来た?」とサハチはササに聞いた。
「グスクを落としたあとのお清めに決まっているじゃない」とササは当たり前の事のように言った。
 グスクを落としてから安須森ヌルを呼ぶつもりでいたサハチは、ササを見て笑った。
「戦には参加するなよ」と釘を刺したが、ササが何かをしでかしはしないかとサハチは心配した。
「わかっているわ。若ヌルたちが一緒だから危険な事はしないわ」
「このグスクから南に行くと海に出る。凄い崖が続いているんだが、何となく古いウタキがあるような気がする。念仏踊りが始まる前に見て来たらいい」
「あら、ほんと?」とササは目を輝かせて、「行ってみるわ」と言った。
 サハチはササたちを見送ってから、辰阿弥と福寿坊に作戦を伝えて、戦の準備を始めた。

 


 その頃、島尻大里グスクでは、他魯毎の山南王、就任の儀式が行なわれていた。島尻御殿(しまじりうどぅん)の前に他魯毎と王妃になったマチルー、先代の王妃と世子(せいし)になった他魯毎の長男のシタルーが並んで座り、御庭(うなー)に按司や家臣たちが勢揃いした。
 集まった按司他魯毎の弟の兼グスク按司、保栄茂按司(ぶいむあじ)、義弟の長嶺按司、李仲按司、瀬長按司小禄按司、与座按司、真壁按司で、与座按司と真壁按司はまだ十八歳の若さだった。
 重臣たちは以前のごとく、照屋大親、糸満大親(いちまんうふや)、兼グスク大親、賀数大親(かかじうふや)、国吉大親(くにしうふや)、波平大親、新垣大親、真栄里大親の八人で、新垣大親と真栄里大親は、親が責任を取って処刑されたので、長男が跡を継いでいた。
 就任の儀式は喜屋武(きゃん)ヌルとなった先代の島尻大里ヌルと大村渠ヌルの指導で、島尻大里ヌルになった豊見グスクヌルと座波ヌルが中心になって執り行なわれた。豊見グスクヌルと座波ヌルは同い年だった。座波ヌルはシタルーの側室だったので、シタルーの生前はお互いに交流はなかった。シタルーの死後、二人は仲よくなって、座波ヌルは豊見グスクヌルの補佐役になっていた。
 配下の按司が集まったように、領内のヌルたちも勢揃いした。小禄ヌル、与座ヌル、瀬長ヌル、李仲ヌル、照屋ヌル、糸満ヌル、兼グスクヌル、賀数ヌル、国吉ヌル、真栄里ヌル、新垣ヌル、真栄平(めーでーら)ヌル、波平ヌル、伊敷ヌル、真壁ヌル、慶留ヌルが参加して、他魯毎を祝福した。真壁ヌルと慶留ヌルは前夜、山グスクから出たばかりだったがやって来ていた。
 伊敷ヌルと初めて会った他魯毎の妻のマチルーは嫉妬の念に駆られた。伊敷ヌルは背がすらっとしていて、マチルーが思っていた以上に美人だった。
 マチルーが他魯毎から伊敷ヌルの事を聞いたのは二か月前だった。山北王の兵がやって来て島尻大里グスク攻めに加わり、李仲按司がナーグスクを攻めた。そこにいたのが子供を連れた伊敷ヌルだった。ナーグスク大主とナーグスク按司は家族を連れて、どこかの島に逃げて行ったという。そして、伊敷ヌルの子供の父親が他魯毎だとわかり、李仲按司が自ら豊見グスクに来て王妃に告げた。他魯毎は出陣中だったが、王妃に呼ばれて伊敷ヌルの事を認めた。もはや、隠せる事ではないと悟った王妃はマチルーに告げた。
 マチルーは話を聞いて驚いた。他魯毎が浮気をしていたなんて、今まで考えた事もなかった。しかも、子供が二人もいるという。上の娘は三男のトゥユタと同い年で、下の息子は次女のマチと同い年だった。他魯毎に裏切られた怒りと伊敷ヌルに対する怒りで、大きな衝撃を受けていた。
 他魯毎は謝ったが許す事はできなかった。七年間も内緒にしていて、マチルーの知らない所で二人が会っていたと思うと、はらわたが煮えくり返るような思いがした。マチルーは我知らずに木剣を振り回して、他魯毎を追い掛けていた。
 他魯毎が島尻大里の陣地に戻ったあと、マチルーは王妃にたしなめられた。
「まだ、王妃だという自覚がないようね」と王妃は言った。
他魯毎が山南王になれば、あちこちから側室が贈られて来るのよ。贈られた側室を追い返すわけにはいかないの。あなたは他魯毎正室として毅然として、側室たちの面倒を見なければならないのよ」
 先代の山南王にも何人も側室がいた事をマチルーは思い出した。父も中山王になった時に何人もの側室を贈られていた。兄の島添大里按司も三人の側室がいた。
「そうは言っても、簡単に受け入れられないわね」と王妃は笑った。
「わたしも嫉妬したわ。でも、王妃として自信と誇りを持って、生きて行くしかないのよ。領内の者たちすべての母親になったつもりで、大きな心を持ちなさい。伊敷ヌルが他魯毎の心の一部を奪ったとしても側室にすぎないの。あなたは伊敷ヌルを許して、伊敷ヌルを味方に付けなければならないのよ。先代の山南王が座波ヌルを側室にした時、わたしも嫉妬したのよ。わたしは座波ヌルに会いに行ったわ。会って話をして、許す事ができたわ。戦が終わったら、あなたも伊敷ヌルと会って、ちゃんと話をしなさい」
 王妃からそう言われて、自分でも納得していたが、実際に会ってみるとまた怒りが込み上げて来た。伊敷ヌルは二人の子供を連れていた。上の女の子がルル、下の男の子がタルマサだと紹介した。二人の子供は行儀よくマチルーに挨拶をした。二人とも可愛い子供だった。マチルーは無理に笑顔を作って、子供たちに挨拶を返した。侍女に連れられて子供たちが去ったあと、伊敷ヌルはマチルーに謝った。そして、伊敷ヌルは他魯毎との出会いをマチルーに話した。
 マチルーは黙って聞いていた。伊敷ヌルが言った『運命の出会い』という言葉にカチンときたが顔には出さずに、必死に堪(こら)えた。マチルーが他魯毎に嫁いだのは、兄とシタルーが同盟した時の政略結婚だった。伊敷ヌルが言う『運命の出会い』なんて経験した事がなかった。でも、他魯毎と一緒になって幸せだった。『運命の出会い』ではなかったが、他魯毎と一緒になったのは『運命の結び付き』だと思っていた。
 王妃に言われたように毅然とした気持ちで伊敷ヌルの話を聞いていたが、心の中は悔しさで泣いていた。他魯毎に嫁いだ時から、王妃になる覚悟はしていたつもりだが、実際に王妃になるのは大変な事だと実感した。義母のような立派な王妃にならなくてはならないと思いながら、感情を抑えて、「他魯毎のために尽くしてください」とマチルーは伊敷ヌルに言った。
 伊敷ヌルは目に涙を溜めて、マチルーを見つめてうなづいた。
 大勢のヌルたちによって、山南王の就任の儀式が華麗に執り行なわれ、他魯毎は山南王に、マチルーは山南王妃に就任した。

 


 山グスクでは鉦(かね)と太鼓の音が響き渡って、賑やかに念仏踊りが行なわれていた。下のグスクを包囲している兵は苗代大親と勝連若按司の兵に、ンマムイと北谷按司の兵が加わって四百人になっていた。ンマムイの兵たちが鉦と太鼓を持って、辰阿弥と福寿坊と一緒に踊り、他の兵たちは所定の位置で守りを固めたまま、交替で念仏踊りに参加していた。
 鉦と太鼓の音に合わせて鉄の杭を岩に打ち込み、大岩の北にある二つの岩をウニタキの配下の者が攻略して、敵の見張りを倒した。ウニタキの配下の者は敵兵に成りすまして、念仏踊りを見物していて、大岩の上の見張り兵も気づかなかった。
 『赤丸党』の三人が鉄の杭を打ちながら大岩の北側を登って行った。鉦と太鼓の音がやかましくて、杭を打つ音はまったく聞こえない。海岸の崖で稽古を積んだお陰で、三人は見る見るうちに大岩の上にたどり着いた。三人が作った足場に、他の『赤丸党』の者たちが取り付いて三人のあとを追った。お頭のサンルーとサタルーも岩に取り付いていた。足場を作った三人は顔を見合わせて、同時に岩の上に飛び出して、敵兵を倒した。大岩の上には四人の敵兵がいたが簡単に倒された。
 大岩の敵兵が倒された事は東側にある岩の上にいた敵兵に見つかり、弓矢を撃って来た。サンルーの配下のクジルーが大岩にあった弓矢を使って、東側の敵兵二人を見事に倒した。その岩の南側の岩の上にも二人の敵兵がいて、弓矢を撃って来た。サタルーが弓矢で、その二人を倒した。
 グスク内では大岩が奪われたと大騒ぎしていて、弓矢を撃ってくるが、下から狙った屋は大岩を超えて飛んで行った。サタルーとクジルーと二人の者が弓矢で下にいる敵兵を狙い撃ちにした。鉄兵は次々に倒れて逃げ散った。サンルーたちが縄梯子を使って下に降りて行った。サタルーたちはサンルーたちが弓矢で狙われないように援護した。グスク内の中程にある岩の上にも敵兵が二人いて、弓矢でサンルーたちを狙っていた。サタルーとクジルーはその二人も倒した。
 サンルーたちが無事に下に降りた。二手に分かれて、敵を倒しながら東と西にある御門(うじょう)に向かった。御門が開いて、味方の兵がグスク内になだれ込んで来た。六人の敵兵が刃向かって来て壮絶な戦死をとげたが、他に敵兵はいなかった。
 サハチはウニタキと苗代大親と一緒に東の御門からグスク内に入った。味方の兵が御門の前の岩に登って、敵兵の死体を降ろしていた。
 グスク内は味方の兵で溢れていた。二の曲輪(くるわ)から一の曲輪に入り、奥にある屋敷に入った。サムレーたちの屋敷のようだった。家臣たちの家族が避難していたようだが、今は誰もいなかった。屋敷から出て、裏の崖を見上げた。この上に上のグスクがあった。
 戦死した敵兵が西の御門の前に集められた。グスクの外の五つの岩の上に二人づつで十人、大岩の上に四人、グスク内に十六人で、締めて三十人の敵兵が戦死した。味方の損害は、『赤丸党』の三人が軽傷を負っただけで済んでいた。
 ンマムイの兵たちが念仏踊りを踊りながらグスク内に入って来た。ンマムイも陽気に踊っていて、そのまま戦勝祝いの念仏踊りとなった。
 サハチが大岩の上を見上げたら、ササたちの姿があった。大岩の上で念仏踊りを踊っていた。
「まったく‥‥‥」とサハチは呟いて、大岩の方に向かった。
 縄梯子を登って、大岩の上に顔を出すと、
按司様(あじぬめー)、ミャークって何だっけ?」とササが聞いた。
「ミャーク? ミャーク(宮古島)とは南にある島の事じゃないのか」
「あっ、そうか。どこかで聞いた事があると思っていたんだけど、マシュー姉(ねえ)(安須森ヌル)から聞いたんだわ」
「ミャークがどうかしたのか」
「そんなに古くないウタキがあってね。神様の声が聞こえたんだけど、何を言っているのかわからないの。アマンの言葉かなって思ったんだけど、ミャーク、ミャークって何度も言っていて、気になっていたのよ。もしかしたら、ミャークから来た神様だったのかしら」
「あそこは琉球の最南端だから、ミャークから来た人のお墓だったのかもしれんぞ。二十年程前にミャークからやって来た者たちが、泊(とぅまい)に滞在していたはずだぞ。それと、安須森ヌルが探していた英祖(えいそ)様の宝刀を、察度(さとぅ)がミャークの者に贈ったって安須森ヌルが言っていた」
「英祖様の宝刀が南の島に行ったって聞いたけど、それがミャークだったのね」
 サハチはうなづいて、四人の若ヌルたちを見て、
「お前たちもここに登ったのか」と聞いた。
「恐ろしかったわ」とミミが言った。
「下を見たら足が震えたわ」とマサキが言って、
「でも、降りる事もできないし、必死になって登ったのよ」とウミが言った。
 その時、弓矢が飛んで来る音が聞こえた。
 ナナが刀で弓矢を弾き落とした。
「あそこだわ」とシンシンが指差した。
 上のグスクの西側の崖の上に敵兵が見えた。
 サハチは弓を手に取ると敵兵を狙って矢を撃った。見事に敵兵に当たって、敵兵は倒れた。倒れる前に敵兵が撃った矢が飛んで来たが、かなりそれて大岩の横を飛んで行った。
「凄い!」と言って若ヌルたちが手をたたいた。
「マグルーに負けてはおれんからな」とサハチは笑った。

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第二稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー、奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第一稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第一稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第一稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第一稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第一稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第一稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第一稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第一稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第一稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第一稿)   他魯毎、山南王に就任する。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は察度の三男の越来按司。母は山北王珉の妹。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。

 

2-144.無残、島尻大里(第一稿)

 三月十日の早朝、他魯毎(たるむい)の兵と山北王(さんほくおう)の兵によって島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクの総攻撃が行なわれた。
 本部(むとぅぶ)のテーラー率いる兵二百人が大御門(うふうじょー)(正門)の前に陣を敷いて、他魯毎が率いる兵二百人が東曲輪(あがりくるわ)の御門(うじょう)の前に陣を敷き、諸喜田大主(しくーじゃうふぬし)が率いる兵二百人が西曲輪(いりくるわ)の御門の前に陣を敷いた。裏門のある北側は他魯毎の重臣たちの兵三百人が、敵が逃げ出して来ないように見張っていた。
 グスク内に避難民たちがいないので、炊き出しの様子は見られないが、石垣の上を守っている兵たちは疲れ切っているようだった。すでに兵糧(ひょうろう)は尽きたものと判断した他魯毎とテーラーは総攻撃に踏み切った。
 テーラーは新兵器を用意していた。頑丈な荷車に太い丸太を乗せて固定して、敵の弓矢を防ぐために鉄板を張った屋根を付け、その荷車の中に八人の兵が入って荷車を動かすのだった。新兵器は二台あって、大御門と西曲輪の御門の前に置かれた。
 それを見た他魯毎の兵たちは驚いた。あれで御門に突っ込めば御門は壊れるに違いないと誰もが思った。他魯毎は山北王がこんな新兵器を隠し持っていた事に驚いたが、山北王に負けてなるものかと身を引き締めて、兵たちに活を入れた。
 法螺貝(ほらがい)の響きと同時に総攻撃が始まった。新兵器の丸太車が御門を目掛けて突っ込んで行った。御門の上の櫓(やぐら)から弓矢が雨のように飛んで来たが、鉄の屋根に当たってはじかれた。一度目の突撃では御門は壊れなかった。丸太車を援護するため、楯(たて)を持って兵が進み出て櫓と石垣の上の兵を弓矢で狙った。丸太車に気を取られている敵兵は次々に倒れていった。
 二度目の突撃でも御門は壊れなかったが、三度目の突撃で西曲輪の御門が壊れて、丸太車はそのままグスク内に入って行った。諸喜田大主率いる兵が喊声(かんせい)を上げながら西曲輪に突入して行った。
 大御門も四度目の突撃で壊れた。テーラー率いる兵がグスク内になだれ込んで行った。
 他魯毎の兵たちはグスク内に攻め込む山北王の兵たちを横目で見ながら、敵の弓矢を楯で防ぎながら攻撃を続けていた。突然、敵の攻撃がやんだ。御門の上の櫓の上の敵も石垣の上の敵も姿を消した。
「突撃!」と他魯毎は叫んだ。
 梯子(はしご)を持った兵が飛び出して石垣に取り付いた。敵の攻撃はなかった。兵たちが梯子を上っていた時、御門が開いた。武器を捨てた敵兵が両手を上げて出て来た。
 他魯毎は出て来た敵兵を捕虜として確保するようにサムレー大将の我那覇大親(がなふぁうふや)に命じて、兵たちと一緒にグスク内に突入した。
 東曲輪内にいた兵たちはサムレー大将の新垣之子(あらかきぬしぃ)が率いていた兵たちで、皆、武器を捨てて投降した。成り行きから他魯毎に敵対する事になってしまったが、皆、他魯毎の父親に従っていた兵たちだった。すでに負け戦と決まった今、他魯毎に敵対する理由もなかった。新垣之子は新垣按司の甥だった。
 他魯毎は投降した者たちを一か所に集めた。百人近くの兵がいた。
 東曲輪には御内原(うーちばる)があり、侍女や城女(ぐすくんちゅ)たちの屋敷があった。他魯毎は女たちを保護した。御内原にいたのは摩文仁(まぶい)の妻と山グスク大主(うふぬし)の妻と中座大主の妻、摩文仁の娘の島尻大里ヌルと慶留(ぎる)ヌルだった。
「ここをどこと心得る。不届き者め、出て行け!」と摩文仁の妻はわめいた。
「ここはわたしの母の住まいだった。勝手に上がり込んで好き勝手な事をしておるのはどっちだ」
 摩文仁の妻たちは母が大事にしていた着物や髪飾りを身に付けていた。他魯毎は怒りが込み上げてくるのを必死に抑えて、「この者たちを捕まえろ」と兵たちに命じた。
 島尻大里ヌルと慶留ヌルは二の曲輪内にあるヌルの屋敷にいた。朝早くから法螺貝が鳴り響いて、御門に何かが当たる物凄い音がして、危険が迫ってきたのを察して御内原に逃げて来ていた。他魯毎は二人も捕まえた。
 東曲輪では戦う事なく制圧できたが、石垣を隔てた隣りの一の曲輪では地獄絵さながらの悲惨な状況に陥っていた。
 一の曲輪を守っていたのはサムレー大将の高良之子(たからぬしぃ)率いる百人の兵と、武術師範の真壁大主(まかびうふぬし)率いる五十人の兵だった。真壁大主が率いている兵は島尻御殿(しまじりうどぅん)や北の御殿(にしぬうどぅん)などの屋敷を警備していた。
 大御門から二の曲輪に突入したテーラー率いる山北王の兵は二の曲輪内の敵兵を倒して、一の曲輪の御門を破壊して一の曲輪に突入した。山北王の兵たちは刃向かって来る敵は勿論の事、逃げ回る敵も容赦なく殺し回った。グスクを守っていた高良之子率いる兵たちを倒した山北王の兵たちは、摩文仁がいる島尻御殿に突撃した。そこに立ちはだかったのは真壁大主だった。
 真壁大主の素早い太刀さばきによって、山北王の兵は次々に倒された。テーラーもかなわぬとみて、三人の兵に弓矢で狙わせた。同時に三か所から飛んで来る矢を真壁大主は見事に刀で払った。そして、懐(ふところ)から出した石つぶてを打って、弓を持った三人の兵を倒した。
 テーラーは十人の兵に弓矢で狙わせた。真壁大主は素早く石つぶてを投げて四人の兵を倒し、三本の矢を払ったが三本の矢は防げなかった。次々に撃たれる弓矢が真壁大主の体に刺さった。頭にも顔にも刺さり、弓矢だらけとなった真壁大主は立ったまま息絶えた。
 真壁大主がやられると、敵兵は戦意をなくして武器を捨てたが、山北王の兵は投降を許さず、斬り捨てた。
 島尻御殿の二階に武装した摩文仁と山グスク大主と中座大主がいた。三人の老将はよく戦ったが、次から次へと掛かってくる敵兵には勝てず、皆、討ち死にした。摩文仁を討ったのはテーラーの弟の辺名地之子(ひなじぬしぃ)だった。
 摩文仁は腰に察度(さとぅ)の御神刀(ぐしんとう)を差していたが、それは使わずに敵から奪い取った刀を持って死んでいた。不思議な事に摩文仁が御神刀を抜こうとした時、抜く事ができなかったのだった。
 テーラーたちが島尻御殿の中で、摩文仁たちを倒していた時、諸喜田大主が率いる兵は西曲輪にいた敵を倒して、客殿の中に侵入していた。客殿の中には『若夏楼(わかなちるー)』の遊女(じゅり)たちが避難していた。遊女たちは悲鳴を上げて大騒ぎした。諸喜田大主は、女子(いなぐ)には手を出すなと命じて、客殿から出て、一の曲輪に攻め込んだ。御庭(うなー)に入って、テーラーが島尻御殿を攻めているのを見て、北の御殿に突入した。
 北の御殿には新年の行事に参加していた役人たちがいた。グスクに閉じ込められてしまったため、ここで寝泊まりしながら仕事をしていた。役人たちは武装もしてなく、抵抗もしなかったが、すべての者が無残に斬られた。
 一の曲輪の南の御殿(ふぇーぬうどぅん)の大広間には正月半ばの合戦で負傷した兵たちがいたが、諸喜田大主も負傷兵を殺す事はなかった。
 東曲輪から他魯毎が兵を率いて一の曲輪に入った時、すでに戦は終わっていた。他魯毎は島尻御殿の裏側にある書斎の横から一の曲輪に入って行った。あちこちに敵兵の死体が悲惨な姿で転がっていた。島尻御殿の北側を通って御庭に出ると、島尻御殿の前に弓矢だらけの真壁大主が倒れていた。
「お師匠!」と叫んで数人の兵が真壁大主に近寄って、壮絶な死に様に涙した。
 島尻御殿の中は死体だらけだった。他魯毎は呆然として死体を眺めた。敵には違いないが、皆、父に使えていた兵たちだった。
 テーラーが二階から降りて来た。
「偽者は倒したぞ」とテーラーは言った。
 他魯毎はうなづいて、二階に上がった。
 二階には玉座(ぎょくざ)があって、山南王が重臣たちに重要な命令を伝える時に使われた。その玉座の近くに摩文仁は倒れていた。首から斜めに斬られていて、辺りは血だらけだった。摩文仁の周りに十人近くの死体が転がっていた。皆、とどめを刺されたとみえて、うめいている者はいなかった。山グスク大主と中座大主の死体もあった。二人とも何か所も斬られて死んでいた。
 他魯毎はふと摩文仁が腰に差している刀に気づいた。父が大事にしていた祖父の刀だった。どうして、摩文仁が差しているのかわからなかったが、他魯毎摩文仁の腰から刀をはずして、鞘(さや)から抜いてみた。刃は綺麗だった。摩文仁を見ると別の刀を持っていた。どうして、この刀を使わなかったのかわからないが、刃が汚れていなくてよかったと安心した。他魯毎は山南王の執務室に行き、刀掛けにある刀をはずして、祖父の刀を元に位置に戻した。執務室には死体はなく、荒らされてもいなかった。
 他魯毎が御庭に戻ると、山南王の兵たちが整列していて勝ち鬨(どき)を上げていた。テーラーが近づいて来て、書庫の床下に三人の死体があったと伝えた。
米蔵に火を掛けた三人ではないのか」とテーラーは言った。
 他魯毎はテーラーと一緒に見に行った。書庫の脇に三人の死体はあった。一人の顔に見覚えがあった。李仲按司(りーぢょんあじ)の配下のサムレーだった。やせ細っていて餓死(がし)したようだった。他魯毎は三人に両手を合わせて冥福(めいふく)を祈った。
 テーラーが御庭に戻ったあと、サムレー大将の東江之子(あがりーぬしぃ)が来て、「北の御殿が大変です」と告げた。
「そう言えば、波平大親(はんじゃうふや)の姿がなかったな」と他魯毎は言った。
「北の御殿にいるかもしれません。ただ、役人たちは皆、殺されています」
「何だと!」
「武器を持っていない役人たちを山北王の奴らは殺したのです」
「何という事だ‥‥‥」
 他魯毎は島尻御殿の裏を通って、北の御殿に行った。見るに堪えないひどい有り様だった。戦とは関係なく働いていた者たちなのに、皆殺しにされていた。重臣たちの執務室を覗くと、ここまで逃げて来て殺されたのか、五人の死体が転がっていた。
「波平大親を探せ!」と他魯毎は東江之子に命じた。
 東江之子が転がっている死体を調べて執務室から出て行こうとしていた時、波平大親が現れた。
「おお、無事だったか」と他魯毎は波平大親に駆け寄った。
 波平大親は力なく笑って、「テハが使っていた隠し部屋に隠れていて助かりました」と言った。
「そうか。無事で本当によかった」
「しかし、ここで働いていた者たちを助けられなかった。山北王はひどい事をする。他魯毎殿が山南王になっても、勢力が弱まるように役人たちを皆殺しにしろと命じたようです」
「何だって?」
「ここに攻め込んだのは今帰仁(なきじん)から来たサムレー大将で、テーラーと言い争いをしていました。テーラーが兵以外の者は殺すなと言ったら、そのサムレー大将は山北王から命じられたと言ったのです」
「ひどい奴だ」と他魯毎は死体を見ながら首を振った。
 他魯毎は顔を上げて、波平大親を見ると、
「長い間、御苦労様でした」とねぎらった。
「蔵を守るのがわたしの仕事ですから」と波平大親は苦笑した。
 波平按司はシタルーが大(うふ)グスク按司になった時からシタルーに仕えて、シタルーが山南王になった時に財政を管理する重臣になった。山南王の財政を管理していたので、タブチや摩文仁に従ったというよりも、山南王の財産を守るために島尻大里グスクから離れる事はできなかった。山南王妃もその事を理解していて、他魯毎に波平按司は必ず、助け出せと命じていた。

 


 島尻大里グスクが落城した翌日、山グスクにいたサハチは八重瀬(えーじ)グスクの本陣に呼ばれた。サハチはウニタキと苗代大親(なーしるうふや)と一緒に八重瀬に向かった。
 サハチたちは奥間大親(うくまうふや)から島尻大里グスクが落城して、摩文仁が戦死した事を聞いた。
「テーラーが内緒で作っていた新兵器が活躍したようじゃ」と思紹(ししょう)が言った。
「その兵器は話に聞いた事があります。かなり昔に使われた兵器です」とファイチが言った。
「山北王の軍師にリューインという唐人(とーんちゅ)がいる。そいつが考えたのかもしれんな」とウニタキがファイチを見た。
「その新兵器、今帰仁グスク攻めに使えるかもしれん。よく調べておいてくれ」と思紹がウニタキに言った。
「わかりました」とウニタキはうなづいた。
 奥間大親がグスク内にいた遊女から聞いた話だと、グスク内にいた男たちは皆殺しにされ、隠れていた波平大親だけが助かったという。重臣のくせに役人たちを見殺しにして隠れていたなんて情けない。生き延びても、他魯毎に殺されるだろうと言っていたという。
「先に投降した新垣大親(あらかきうふや)と真栄里大親(めーざとぅうふや)は波平大親に誘われて仕方なく、摩文仁に従ったと言っていますから、波平大親も処罰されるでしょう」
他魯毎が山南王になっても、人材不足になりそうじゃのう」と思紹が心配した。
「山北王が重臣を送り込むかもしれません」とファイチが言った。
「なに、山北王が重臣を島尻大里グスクに入れるというのか」とサハチが驚いた。
「島尻大里グスクが落とせたのは山北王の新兵器のお陰ですから、そのくらいの事はやるでしょう。改めて同盟を結ぶと言って、他魯毎の長男に嫁を送って来るかもしれません」
他魯毎の長男のシタルーと俺の娘のマカトゥダルの婚約はすでに決まっているぞ」とサハチが言った。
「強引な事を言ってくるかもしれません」
「シタルーの娘で、山北王の長男と婚約した娘がいなかったか」と思紹が聞いた。
「奥間の側室が産んだ娘で、今帰仁グスク内に新しい屋敷を建てて、母親と一緒に暮らしています。まだ十三歳ですから婚礼は三、四年後になるでしょう」とウニタキが答えた。
「山北王の世子(せいし)は他魯毎の義弟となるわけじゃな。まあ、どっちにしろ、山北王の命はあと二年余りじゃ。好きな事を言わせておけ」
「そうだった」とサハチが笑った。
「強引な事を言ってきたとしても、山北王がいなくなれば、すべてが解決する」
 絵地図を眺めていた苗代大親が、「あとは波平グスク、真壁グスク、伊敷(いしき)グスク、山グスク、大(うふ)グスク、与座(ゆざ)グスクじゃな」と言った。
「島尻大里グスクが落ちて、摩文仁は戦死した。他のグスクも降伏するじゃろう。抵抗する理由はないからのう」
「石屋のテサンは戦死したのですか」とウニタキが奥間大親に聞いた。
「テサンは北の御殿にいたようですから戦死したはずです」
 ウニタキはうなづいて、「當銘蔵(てぃみぐら)グスクに行ってくる」とサハチに言った。
「頼むぞ。みんなを首里(すい)に連れて行ってくれ」
 ウニタキが出て行くのと入れ替わるように、浦添(うらしい)の若按司が波平大親を連れて来た。
 サハチたちは驚いた。捕まっているはずの波平大親が、どうしてここに来られたのかわけがわからなかった。
 波平大親の顔を見て、サハチは思い出した。十年近く前に、島尻大里グスクの婚礼に行った時、何かと世話を焼いてくれた男だった。あの時、かなり、シタルーに信頼されている重臣だと思ったが、波平大親だったとは知らなかった。
 波平大親は頭を下げて名乗ったあと、
「わたしが島尻大里グスクに残ったのは、八重瀬殿(タブチ)のためでも、摩文仁殿のためでもありません。王妃様(うふぃー)のためだったのです。わたしは必ず戻って来るから、それまで蔵を守っていてくれと言われました。わたしは王妃様に言われた通り、蔵を守り通しました」と言った。
「もしかして、王妃様を逃がしたのは、そなただったのか」と思紹が聞いた。
 波平大親はうなづいた。
「重臣たちが八重瀬殿を山南王にしようとしている事を知って、王妃様に知らせ、サムレー大将を務めている弟にも知らせて逃がしました。わたしが王妃様に会ったあと、照屋大親(てぃらうふや)殿も会いに行ったようです。王妃様が島尻大里グスクから出て行った時、照屋大親殿が裏切り者がいると言いました。重臣たちはわたしを疑っているようでしたが、兼(かに)グスク大親殿と賀数大親(かかじうふや)殿が出て行ったあと、波平グスクにいる妻や子を守るために残ると言ったら納得してくれました。照屋大親殿が裏切った事で、すべてが照屋大親殿の仕業に違いないと思ったようです」
「最初から残るつもりだったのですか」とサハチは聞いた。
「弟に頼んで王妃様を逃がしたあと、隙を見て、わたしも逃げるつもりでした。でも、王妃様から蔵を守れと言われて、残る覚悟を決めました」
「王妃様に恩でもあるのですか」とファイチが波平大親に聞いた。
 波平大親はファイチを見るとうなづいた。
「わたしの父はサムレー大将でした。東方(あがりかた)の大グスク攻めの戦で戦死しました。その戦のあと、わたしはシタルー殿に仕えるようになりました。父の跡を継いでサムレー大将にならなければならないと思いましたが、わたしは武芸は苦手なのです。どんなに稽古をしても強くはなりません。落ち込んでいたわたしを豊見(とぅゆみ)グスクの普請奉行(ふしんぶぎょう)の補佐役に任じてくれたのは王妃様だったのです。普請のための資材を集めたり、その手配をするのが楽しくて、わたしは新しい生き方を見つける事ができました。わたしが財政の管理を任されるようになれたのも王妃様のお陰なのです」
「王妃様は人の才能を見抜く目も持っていたようじゃな」と思紹は笑って、「他魯毎のために、これからもよろしくお願いする」と波平大親に言った。
「かしこまりました」と波平大親は頭を下げた。
 思紹は浦添按司に波平グスクから撤収して、山グスクに行って、苗代大親と合流するように命じた。
 波平大親と浦添按司が苗代大親と一緒に帰ったあと、
「波平大親が王妃のために残っていたとは驚いたのう」と思紹が言った。
「もし、波平大親がいなかったら、グスク内の財宝は皆、摩文仁に奪われていたかもしれませんね」とサハチが言った。
「照屋大親にしろ、波平大親にしろ、お芝居のうまい役者が揃っていますね」とファイチが言って、皆を笑わせた。
「確かにのう」と思紹がうなづいた。
「しかし、一番の主役は山南王妃じゃろうな。今まで、表に出て来なかったのが不思議なくらい立派な女子(いなぐ)じゃよ。王妃の手本と言えるじゃろう」
「次のお芝居は『山南王妃』ですね。糸満(いちまん)の港で演じたら、ウミンチュたちが大喜びしますよ」
「そいつは面白い。シビーとハルに台本を書かせよう」とサハチは笑いながら言った。
「山南王妃もお芝居は好きなようじゃから喜ぶじゃろう」と思紹は楽しそうに笑った。

 

 

 

三山とグスク―グスクの興亡と三山時代