長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-156.南の島を探しに(第一稿)

 十五夜の宴(うたげ)の翌日、台風が来た。それほど大きな台風ではなかったが海は荒れて、大里(うふざとぅ)ヌルとフカマヌルは久高島(くだかじま)に帰れなかった。
 大里ヌルは二階堂右馬助(にかいどううまのすけ)と一緒にどこかに行ってしまい、二日後に島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに戻って来て、右馬助を連れて久高島に帰って行った。
「右馬助は大里ヌルに骨抜きにされるな」とウニタキはニヤニヤ笑ったあと、「羽地按司(はにじあじ)が亡くなった」と言った。
 羽地按司は体調を崩して二か月近く寝込んでいて、急に苦しみ出したと思ったら、そのまま亡くなってしまったらしい。六十一歳だった。湧川大主(わくがーうふぬし)の義弟の若按司が跡を継いだ。義弟といっても湧川大主の妻はすでに亡くなっているので、強いつながりがあるわけではない。若按司の妻は恩納按司(うんなあじ)と金武按司(きんあじ)の姉なので、二人を利用すれば寝返らせる事もできるかもしれなかった。
 八月の末、旅芸人たちがキラマ(慶良間)の島に行った。ササたち、シーハイイェンたち、スヒターたち、リェンリーたちも一緒に行った。もうすぐササたちは南の島を探しに行くので、シーハイイェンたちとのお別れの旅でもあった。
 キラマの島から帰って来たササから、アミーのお腹が大きくなっていると聞いてサハチは驚いた。相手は誰だと聞いても教えてくれなかったという。相手が修行者だったら放ってはおけないと思い、サハチはウニタキに相談した。
「修行者の男とそんな仲になるなんて、アミーを見損なったよ」とサハチが言うと、
「相手は修行者じゃない」とウニタキは言った。
 困ったような顔をしているウニタキを見て、
「まさか‥‥‥」とサハチは言った。
 ウニタキはうなづいて、「俺なんだ」と白状した。
「お前、アミーとそんな仲になっていたのか」
 ウニタキは首を振った。
「アミーは子供が欲しかったんだよ。自分の跡を継ぐ娘がな。たまたま、俺が選ばれてしまったんだ。正月にシタルーの死を知らせに行った時だ。俺は二人を連れて帰るつもりだった。ユーナは女子(いなぐ)サムレーに戻して、アミーは配下にしようと思っていたんだ。ユーナは喜んで帰ると言ったが、アミーは島に残ると言った。それでも俺は諦めずにアミーを口説いた。アミーを今帰仁(なきじん)の『まるずや』に入れて、山北王(さんほくおう)の離間策に使おうと思っていたんだ。アミーは俺を隠れ家に連れて行った。快適なガマ(洞窟)だったよ。そこで、酒を飲みながら『三星党(みちぶしとー)』に入ってくれって頼んだんだ。そしたら、アミーが子供が欲しいって言い出して、あとは成り行きで抱いてしまったんだよ」
「成り行きで抱いたのか」
「アミーはいい女だ。アミーから言い寄られたら、お前だって抱いただろう」
 確かに、ウニタキの言う通りだった。アミーに言い寄られて断る勇気はサハチにもなかった。
 サハチは溜め息をついて、
「これからどうするつもりなんだ」と聞いた。
「アミーのお腹の子供の父親が、修行者たちではないという事をはっきりさせておかなければならないだろう」
「父親は俺なんだが、島の者たちに知られたらうまくない。いつの日か、チルーの耳に入ってしまうだろう」
「お前、正月に島に行った時、一人だったのか」
「いや、配下の者を二人連れて行った。与論島(ゆんぬじま)に連れて行ったウクシラーとサティだ」
「二人のうちのどっちかを父親にしたらどうだ?」とサハチは言った。
「子供が生まれたあと、そいつを島に連れて行って、父親だと名乗らせるんだ」
「しかしなあ、俺の子だぞ。父親だと名乗れないのは辛い」
「それなら名乗り出ればいい」
 参ったなあといった顔をしてウニタキは首を振った。
 その翌日、具志頭按司(ぐしちゃんあじ)のイハチの妻、チミーが男の子を産んだ。イハチの長男はマハチと名付けられ、跡継ぎが生まれてよかったと具志頭の人たちに祝福された。
 九月になって、ササたちはビンダキ(弁ヶ岳)に行って、ビンダキ姫の神様にイシャナギ島(石垣島)のウムトゥ姫を呼んでほしいと頼んだ。母親のビンダキ姫は呼んでくれたが、ウムトゥ姫は来なかった。
「蚊(がじゃん)の退治で忙しいのかもしれないわね」とビンダキ姫は言った。
「蚊の退治?」とササは聞いた。
「イシャナギ島では蚊に刺されると熱病に罹って、大勢の島人(しまんちゅ)が亡くなったって、この前に来た時に言っていたわ」
 ウムトゥ姫が来てくれないので、ミャーク(宮古島)に行くサシバを頼りに行かなければならなかった。一緒に行ってくれるユンヌ姫とアキシヌに活躍してもらうしかなかった。
 ヤマトゥから帰って来たユンヌ姫はヤマトゥの様子をササたちに教えてくれた。
 御台所様(みだいどころさま)(将軍義持の妻、日野栄子)は去年の十月に女の子を無事に産んで、健やかに育っている。将軍様は二日前に伊勢参詣に出掛けたけど御台所様は行かなかった。高橋殿は行ったという。
「タミーはどうしているの?」とササは聞いた。
「お祖母(ばあ)様(豊玉姫)のお墓に行ったけど、伯母様(玉依姫)はいなかったわ。京都に着いて、船岡山に行ったけど、お祖父(じい)様(スサノオ)もいなかったの。次の日もハマと一緒に行ったけど、お祖父様はいなかったわ。それから毎日、タミーとハマは船岡山に通ったのよ。雨の日も休まずにね。一か月が経った頃、高橋殿が気の毒がって、等持寺(とうじじ)にいた二人を高橋殿の屋敷に移したのよ」
「タミーは一か月も船岡山に通ったの?」
「一か月どころじゃないわ。七月の初めに京都に着いて、お祖父様の声が聞こえたのは八月の半ば過ぎだったわ」
スサノオの神様はどこに行っていたの?」
「出雲(いづも)に帰っているんだと思って探したんだけどいなかったのよ。出雲の奥さんの稲田姫(いなだひめ)様に聞いたら六月に出掛けたきり、どこに行ったのか帰って来ないって言っていたわ。やっと帰って来たお祖父様に聞いたら、久米島(くみじま)にいたっていうから驚いたわ。サハチの一節切(ひとよぎり)を聞いて久米島に行って、それからずっと久米島にいたのよ」
「えっ!」とササは驚いて、「久米島で何をしていたの?」と聞いた。
「クミ姫とその三人の娘たちと一緒にお酒を飲んでいたんですって。お祖父様は言わなかったけど、もしかしたら、クイシヌも一緒にいたんじゃないかしら」
「まったく、何をやっているのよ」とササは言って、十五夜の宴の時、スサノオの神様の声を聞いたのを思い出した。あの時、帰って行ったんだわと思った。
スサノオの神様の声を聞いてから、タミーはどうしたの?」
「タミーがお祖父様の声を聞く事ができるってわかって、高橋殿はタミーとハマを御所に連れて行って、御台所様と会わせたの。二人は恐縮して顔も上げられなかったけど、御台所様は二人から琉球の話やササの事を聞いて喜んでいたわ。その後は高橋殿の屋敷に滞在して、京都見物を楽しんでいたわ。八月の末に、戦(いくさ)が起こるってタミーは高橋殿に言ったの。高橋殿は驚いて、タミーから話を聞いて、将軍様の伊勢参詣が決まったのよ。伊勢にいる北畠(きたばたけ)という武将が反乱を起こす気配があるので、それを偵察するために将軍様は兵を率いて出掛けたのよ。高橋殿もタミーとハマを連れて一緒に行ったわ」
「タミーが戦を予言したの?」
「そうよ。タミーは先に起こる事がわかるようね。それだけじゃなくて、面倒見もいいわ。お祖父様の声を聞くまでの一か月半、タミーは色々な神様に声を掛けられて、それに一々応えていたのよ。船岡山は流行り病(やまい)で亡くなった人たちが葬られていたから、そういう人たちがタミーに声を掛けてきたの。タミーは親身になって話を聞いてやっていたわ。あの山で殺された源氏の武将も出て来たようだけど、タミーは恐れることなく話を聞いていたわ。ハマもしぶとかったわね。神様の声が聞こえないのに、毎日、タミーにつき合ってお祈りを捧げていたのよ。一か月が過ぎた頃、ハマにも神様の声が聞こえるようになって、あたしの声も聞こえるようになったわ」
「ハマも神人(かみんちゅ)になれたのね」とササは喜んだ。
 美里之子(んざとぅぬしぃ)の娘だったハマはササより一つ年上で、父親が越来按司(ぐいくあじ)になった時、ヌルになるための修行を始めた。すでに十七歳になっていた。越来ヌルの指導のもと修行を積んでヌルになったが、神様の声を聞いた事はなかった。十九歳から修行を始めたタミーが神様の声を聞いたと聞いて、ハマはタミーと行動を共にして神人になれたのだった。
「ヤマトゥの戦は大きな戦なの?」
「今の所はまだ起きていないわ。でも、大きな戦になるかもしれないって高橋殿は警戒しているみたい」
「そう。無事に治まってくれるといいわね」
 九月八日の朝、ササたちを乗せた愛洲次郎(あいすじるー)の船はサシバを追って、ミャークを目指して浮島を船出した。ササと一緒に行ったのはシンシン、ナナ、ササの弟子のチチーとウミとミミとマサキ、安須森(あしむい)ヌルと若ヌルのマユ、玻名(はな)グスクヌル、与那原(ゆなばる)の女子サムレーのミーカナとアヤー、愛洲次郎とその家臣たち、そして、ユンヌ姫とアキシノだった。
 玻名グスクヌルはシヌクシヌルになる決心を固めていて、安須森ヌルと一緒に行った。南の島から帰ってきたら、セーファウタキで就任の儀式を行なう予定だった。
 ササたちを見送ったサハチは遭難しないかと心配していたが顔には出さず、ユンヌ姫に、「迷ったら無理をしないで戻って来てくれ」と頼んだ。
「任せてちょうだい」とユンヌ姫は調子よく言った。
「心配しないで下さい」と別の声が言った。
 アキシノの神様のようだった。
「必ず、無事に帰れるように見守っています」
 アキシノは山北王の御先祖様だった。山北王の御先祖様に守ってもらうのは気が引けたが、マチルギの御先祖様でもある事に気づいて、
「よろしくお願いします」とサハチはアキシノを頼った。
 サシバは南西へと飛んで行き、愛洲次郎の船は東風(くち)を受けながらサシバを追って行った。
 船は順調に進んで行ったが、正午(ひる)頃になると、どこを見回しても島影は見えなくなった。今、どの辺りにいるのかわからず、このまま進んでいいのだろうかと不安がよぎった。愛洲次郎が大丈夫だというので、ササは次郎を信じた。
「ジルー、伊勢の北畠って武将を知っている?」とササは次郎に聞いた。
「北畠殿は多気(たげ)の御所様と呼ばれていて、愛洲家も北畠殿に従っています」
「北畠殿が戦を始めるみたいよ」
「やはり、そうですか。南北朝の戦が終わった時、北朝天皇のあとは南朝天皇が即位するという約束だったのに、二年前、北朝天皇が続けて即位したのです。北畠殿が黙ってはいないだろうと思っていましたが、やはり、兵を挙げましたか」
「愛洲家も戦をするの?」
「愛洲家は伊勢の国の南端ですから、戦に巻き込まれないとは思いますが、援軍を送らなければなりません。それと、戦が始まると伊勢参りや熊野詣での人たちも減ってしまうので、稼げなくなってしまいます」
「あなたは帰らなくても大丈夫なの?」
「親父も兄貴も健在ですから大丈夫です。お土産をたんまりと積んで帰れば喜んでくれますよ」
「そう。あなたがいてくれて本当に助かったわ」
「見知らぬ島に行く事ができて、俺も心が弾んでいますよ」
 午後になって風が止まってしまった。ヤマトゥ船には艪(ろ)が付いているので漕ぐ事もできるが、旅に出たばかりで焦る事もないと酒盛りを始めた。旅に酒は付き物なので大量に積んで来ている。ほかにヤマトゥの商品、明国の商品、南蛮(なんばん)(東南アジア)の商品も積んでいて、南の島で交易もするつもりでいた。ミャークの人たちは壊れた鍋(なべ)や釜(かま)などの鉄屑(てつくず)も喜ぶと安謝大親(あじゃうふや)から聞いているので、それも積んでいる。ヤマトゥの刀はどこに持って行っても喜ばれるので、勿論、大量に積んであった。
 酒が飲めない若ヌルたちは笛の稽古に励んでいた。へたくそな笛がピーピー鳴っていたが、誰も文句は言わない。船乗りたちも笑いながら娘たちを見ていた。
 夕方に黒い雲が現れて、大雨が降ってきて雷も鳴り響いた。風も出て来て船は動いたが、波が高くなって船は大揺れした。船室に入った女たちは航海の神様に無事を祈った。若ヌルたちは真っ青な顔をして必死にお祈りを捧げた。
 半時(はんとき)(一時間)ほどで雨はやみ、波も静かになった。船室から出て空を見上げると、降るような星が出ていて、半月も浮かんでいた。
 星を見ていたマグジ(河合孫次郎)が、
「方角は大丈夫です」とササに言った。
「もう半分くらいは来たかしら?」
 マグジは首を振って、「まだ四分の一も来ていませんよ」と笑った。
「先は長いわね」とササは苦笑した。
 星を見ながら船は夜も走っていた。
 翌朝はいい天気だった。東から昇る朝日を眺めながら船が南西に向かっている事を確認した。
「夜の間、順調に進んだの?」とササがマグジに聞くと、マグジはうなづいた。
「もう半分は来ているはずです」
 ササは満足そうに笑って、
「御苦労様」とねぎらった。
 その日の船旅は快適だった。ピトゥ(イルカ)が現れて歓迎してくれた。船の周りを泳ぎ回っているピトゥを見ながら、若ヌルたちはキャーキャー騒いで喜んでいた。
 午後になって船の左側を飛んで行くサシバの群れが小さく見えた。船の進む方角が少しずれていると感じた次郎は方角を少し修正した。その日は暗くなったら船を泊めた。真っ直ぐ進めば夜のうちに着くだろうが、ミャークの周辺には珊瑚礁があるので危険だった。
 三日目の朝、ササはユンヌ姫とアキシノに、
「まだ島影は見えないかしら」と聞いた。
「ちょっと調べてくるわ」と二人は言って先に進んで行った。
 戻って来た二人の神様は、
「もうすぐよ。でも、南に進路を変えた方がいいわ。このまま進むと大きな珊瑚礁にぶつかって座礁しちゃうわ」と言った。
 首里グスクにあった記録にも、ミャークの北にはヤピシ(八重干瀬)という大きな珊瑚礁があるので危険だと書いてあった。
 ササは次郎に知らせて進路を変更させた。
 正午近くになって、小さな島が見えてきた。
「あの島の向こうに大きな島があるわ。きっと、ミャークよ」とユンヌ姫が言った。
「あの島とミャークの間にも珊瑚礁があるから気をつけてね」とアキシノが言った。
「あの島だけど、古い神様がいるわ」とユンヌ姫が言った。
「行かなければならないわね」とササは安須森ヌルに言った。
「久高島みたいな島かしら?」とどことなく神秘的に見える島を見つめながら安須森ヌルが言った。
 珊瑚礁に気をつけながら島の近くまで行って、小舟(さぶに)を下ろして、ササ、シンシン、ナナ、安須森ヌル、ゲンザ(寺田源三郎)の五人が、小島に向かった。
 島の周りには奇妙な形をした岩がいくつも点在していた。南側の砂浜から上陸すると、小さなウタキがあったので、ササたちはひざまづいて挨拶をした。神様の声は聞こえたが、何を言っているのかわからなかった。
 ウミンチュのおかみさんらしい女が近づいて来て声を掛けたが、やはり、意味がわからなかった。
 初めて琉球に来た与那覇勢頭(ゆなぱしず)は言葉が通じなくて、琉球の言葉を学んでから察度(さとぅ)に会ったと聞いていたが、こんなにも言葉が通じないとは思ってもいなかった。何を言ってもお互いに首を傾げるばかりだった。やがて、人々が集まって来て、誰かが何かを思い出したように何事かを言うと、皆が賛成して誰かを呼びに行った。
 連れて来た五十年配の男は琉球の言葉をしゃべった。ガーラという名前で、二十年近く前まで、与那覇勢頭と一緒に琉球に行っていたという。
「与那覇勢頭様はお元気ですか」とササが聞くと、
「今でも船に乗っていて、ターカウ(高雄)まで行っています」とガーラは言った。
「ターカウとはどこです?」
「明国の近くにある大きな島(台湾)です。明国の人は小琉球と呼んでいます」
 ササは絵地図を思い出して、
「ドゥナン(与那国島)の西(いり)にある島ですね」と聞いた。
「そうです」
「何をしにターカウに行くのです?」
「取り引きですよ。ターカウは密貿易の拠点になっていて、各地から海賊たちがやって来て、取り引きをしています。賑やかな所ですよ」
 そんな所があったのかとササは驚き、安須森ヌルと顔を見合わせた。
「この島は神様の島だと聞きましたが、ヌルはいるのですか」と安須森ヌルが聞いた。
 先ほど集まって来た人たちの中に、ウプンマ(大母)と呼ばれるこの島のヌルがいた。ガーラの通訳で、古いウタキでお祈りを捧げたいと言ったが、よそ者をウタキに入れるわけにはいかないと断られた。
 島の名前を聞くと、大神島(うがんじま)だという。古くから神様の島として信仰されているらしい。ウプンマは、刀を腰に差しているササたちを警戒しているようだった。仕方がないのでウタキに入るのは諦めようと思っていたら、ユンヌ姫の声が聞こえた。
「この島の神様は航海の神様で、狩俣(かずまた)から来たのよ」
「狩俣ってどこ?」とササは聞いた。
「ミャークよ。対岸にあるわ」
 ササたちは対岸に見えるミャークを見た。ほとんど平らな島だった。
「途中に珊瑚礁がいっぱいあるからジルーの船では行けないわ。小舟で行った方がいいわよ」
「ありがとう」とササはユンヌ姫にお礼を言ってから首を傾げて、
「ユンヌ姫様はミャークの言葉がわかるの?」と聞いた。
「昔はここも琉球も同じ言葉をしゃべっていたの。でも、長い間、交流がなくなったので、言葉が変化してしまったのよ。古い神様の言葉はササにもわかるはずよ」
「そうなんだ」とササは納得して、ガーラに狩俣に行く事を告げた。
「狩俣にはマズマラーという女按司(うなじゃら)がいます。マズマラーはヌルでもあって、狩俣の按司でもあります」とガーラが言った。
「狩俣はヌルが統治しているのね」
「そうです。この島もそうですが、古くはどこの村(しま)でもヌルが統治していました。戦世(いくさゆ)になってから男の按司が現れたのです。マズマラーの甥にマブクイという船頭(しんどぅー)がいて、わたしと一緒に琉球に行っていますので、琉球の言葉がしゃべれます」
「それは助かるわ」
 ササたちはガーラにお礼を言って、先ほど拝んだウタキで、無事にミャークに着いたお礼を告げた。
「ようこそ、いらっしゃいました」と神様の声が聞こえた。
 ササたちは驚いた。
「この島の神様なんですね?」とササは聞いた。
「そうです。琉球から神様を連れてやって来るなんて、あなたたちは何者なの?」
「ヌルです。琉球の南にミャークという島があると聞いてやって参りました」
「そういえば、琉球から来る人は久し振りね。三十年程前に兄弟がやって来て以来かしら」
「昔はもっと来ていたのですか」
「そうね。粗末な舟だったけど、今よりは往来はあったわね」
「そうだったのですか」
「あなたたちの目的は何なの?」
琉球の神様なんですけど、アマミキヨ様を御存じですか」
「名前は聞いているけど、随分と古い神様だわ」
アマミキヨ様がどこから来たのか調べているのです。ミャークにアマミキヨ様が来られた形跡はありませんか」
「あなたたち、そんな昔の事を調べるためにやって来たの?」
「そうです」とササが言ったら神様は笑った。
「ミャークを攻めるための偵察じゃないのね?」
「えっ?」とササは驚いた。
 そんな事を言われるなんて思ってもいなかった。
「ミャークを攻めるなんて、そんな事をするわけないじゃないですか。どんな人たちが暮らしているのか見に来ただけです。できれば、交易をしたいとは思っていますけど」
「三十年前、倭寇(わこう)がミャークにやって来て、多くの人が殺されたのよ。二度とあんな悲惨な事を起こしたくはないわ」
「三十年前というと、琉球から兄弟がやって来た頃ですね。その兄弟が倭寇と関係があったのですか」
「その兄弟は関係ないわ。ミャークで戦が起きたので伊良部島(いらうじま)に逃げて、今も無事でいるわ。兄はイシャナギ島に行ったわよ」
「イシャナギ島のウムトゥ姫様を御存じですか」
「勿論、知っているわ。ミャークに来た時はネノハ姫って呼ばれていたわ」
「ネノハ姫?」
「子(ね)(北)の方から来た姫よ。ネノハ姫はヤピシを見て喜んで、池間島(いきゃまじま)にしばらく住んでいたわ。ヤピシで採ったタカラガイ琉球に送っていたのよ」
「イシャナギ島に行ってからウムトゥ姫になったのですね」
「そうよ」
「イシャナギ島で熱病が流行っていると聞きましたが、本当なのですか」
「ヤキー(マラリア)という熱病よ。蚊に刺されるとヤキーになって、大勢の人が亡くなったらしいわ」
「そうでしたか。色々と教えていただいてありがとうございます」
「歓迎するわ」と神様は言って消えてしまった。
 ササたちがお祈りを済ませて立ち上がると、ウプンマが驚いた顔をしてササたちを見ていた。警戒している目付きから優しい眼差しに変わっていた。ウプンマはササたちに向かって両手を合わせて頭を下げた。ササたちも頭を下げて、小舟に乗ると狩俣に向かった。
 半時程で狩俣に着いたが、海岸は岩場が続いていて上陸できなかった。やっと砂浜に上陸して、森と森の間にあった小道を抜けると左側に狩俣の集落が見えた。
 驚いた事に集落は高い石垣で囲まれていた。
大神島の神様が三十年前に大きな戦があったって言っていたけど、今も戦があるのかしら?」と安須森ヌルが言った。
「村全体がグスクみたいね」とナナが言うと、
「明国の都はみんな高い石垣で囲まれているわ」とシンシンが言った。
「明国から来た人が作ったのかしら?」と言ってからササは、「あそこに御門(うじょう)があるわ」と指差した。
 門は閉ざされていて、たたいても何の返事もなかった。ササたちは諦めて石垣に沿って歩いた。しばらく行くと、先ほどよりも大きな御門が見え、門番が立っているのが見えた。
 ササたちが御門の方に行こうとしたら、ガジュマルの木陰にいた老人に声を掛けられた。白髪白髭の仙人のような老人がササたちを見ていた。
 腰に刀を差した女子(いなぐ)サムレーの格好は奇妙に見えるようだ。そして、一緒にいるゲンザは場違いなヤマトゥンチュのサムレーだった。
 声を掛けられても何を言っているのかわからず、ササは『琉球』と『マグクイ』を強調して言った。
琉球から来たのかね?」と老人は琉球の言葉をしゃべった。
 ササたちは驚いて、顔を見合わせた。
「あなたがマグクイ様ですか」とササが聞くと、老人は楽しそうに笑った。
「マグクイはこんな年寄りではないぞ」
「あなたも琉球に行った事があるのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「昔の事じゃ。もう五十年も前の事じゃよ」
「そうだったのですか」
「そなたたちは琉球から何をしにミャークに来たんじゃ?」
「二十年前まで、ミャークの人たちは琉球に来ていました。でも、来なくなってしまったので、様子を見に来たのです」とササが言った。
「ほう。琉球からの使者か。しかし、琉球は女子を送って来たのか」
「わたしたちはヌルです。誰も行った事がないミャークに行くには、わたしたちでなければ無理なのです」
「ヌルか。そう言えば津堅島(ちきんじま)にもヌルがいたのう」
津堅島にいたのですか」
「そうじゃ。津堅島でカマンタ(エイ)捕りをしておったんじゃよ」
「えっ!」とササと安須森ヌルは驚いた。
「もしかしたら、サミガー大主(うふぬし)を知っているのではありませんか」と安須森ヌルが聞いた。
「おう、懐かしいのう。確か、馬天浜(ばてぃんはま)じゃったのう。サミガー大主とは何度か、一緒に酒を飲んだ事がある」
「ええっ!」と安須森ヌルとササは腰を抜かさんばかりに驚いた。
「わたしとササはサミガー大主の孫です」
「何じゃと!」と老人は細い目を見開いて、安須森ヌルとササを見た。
「サミガー大主の孫娘がミャークにやって来たとは驚いた。サミガー大主は元気かね?」
「もう亡くなりました」
「そうか。そうじゃろうのう。あの頃、弓矢の稽古をしていた息子がいたが、その息子が跡を継いだんじゃな?」
「多分、それはわたしの父で、今は琉球の中山王(ちゅうさんおう)になっています」
「なに、サミガー大主の息子が中山王? 中山王は武寧(ぶねい)という察度の倅ではないのか」
「武寧を滅ぼして、父が中山王になったのです。武寧の頃よりも、今の琉球は栄えています。ミャークから使者が来れば大歓迎で迎えます」
「すると、中山王の娘が使者としてミャークに来たというわけか」
「娘と姪です」
 老人は改めて、安須森ヌルとササを見ると、
「よく来て下さった」と言って立ち上がった。
「そなたたちを歓迎する」
 老人は先に立って歩き、御門の所に行った。門番は老人に頭を下げると、どうぞというように両脇に寄った。ササたちは老人と一緒に石垣の中に入った。狭い通りを挟んだ両側に家々がびっしりと建ち並んでいたので、ササたちは驚いた。
「石垣を築いた三十年前は、畑もあったんじゃが、人が増え過ぎて、この有様じゃ。拡張しなければならんのかもしれんのう」と老人は言った。

  

 

 

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目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー、奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第一稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第一稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第一稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第一稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第一稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第一稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第一稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第一稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第一稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第一稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第一稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第一稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。

 

2-155.大里ヌルの十五夜(第一稿)

 ウニタキが山北王(さんほくおう)の軍師、リュウイン(劉瑛)を首里(すい)に連れて来た。
 一緒に来たのはリュウインの弟子の伊野波之子(ぬふぁぬしぃ)と東江之子(あがりーぬしぃ)だった。二人とも三十歳前後の年齢で、リュウインが今帰仁(なきじん)に来た時に弟子入りして、今では武術道場の師範を務めていた。
 島添大里(しましいうふざとぅ)にいたサハチも、久米村(くみむら)にいたファイチも呼ばれて、思紹(ししょう)と一緒に龍天閣(りゅうてぃんかく)でリュウインと会った。
 ファイチはリュウインを知らなかったが、リュウインはファイチを思い出していた。二十歳で科挙(かきょ)に合格したファイチとヂュヤンジンの名前は噂となってリュウインの耳にも入り、リュウインは密かにファイチを見ていたという。
「ヂュヤンジン殿は洪武帝(こうぶてい)が亡くなったあと、宮廷を去ったと聞いています。ファイチ殿もその後、いなくなったと聞きましたが、まさか、琉球にいたとは驚きました」とリュウインは言った。
永楽帝(えいらくてい)が挙兵したあと、幼い頃の永楽帝の師匠だった父が殺されました。わたしも身の危険を感じて琉球に逃げて来たのです」
「そうだったのですか。わたしが逃げて来たのは永楽帝の挙兵の前でした。仕えていた湘王(ジィァンワン)(永楽帝の弟)が殺されて、わたしも危険を感じて逃げて来たのです」
「ヂュヤンジンは武当山(ウーダンシャン)にいましたが、永楽帝が皇帝になったあと、宮廷に戻って来て、今も永楽帝に仕えています」
「そうでしたか。それはよかった。ファイチ殿は戻らないのですか」
 ファイチは笑って、「明国の宮廷は恐ろしい所ですからね。琉球の方がわたしに合っています」と言った。
 リュウインの話を聞いて、思紹は材木や米の代価として、明国の商品を先に送る事を承諾した。その夜、遊女屋(じゅりぬやー)『宇久真(うくま)』で歓迎の宴(うたげ)を開いて、浮島からジォンダオウェンとリュウジャジンを呼んだ。リュウインはジォンダオウェンとの再会を喜んだ。
「ヂャンルーチェン(三姉妹の父)が殺されたと聞いた時、あなたも殺されてしまったと思っていました。あのあと、ずっと浮島に来ていたなんて、まったく知りませんでした」とリュウインはジォンダオウェンに言った。
「明国に来られた按司様(あじぬめー)と出会って、中山王(ちゅうさんおう)と取り引きをするようになったのです」とジォンダオウェンは言って、サハチを見た。
リュウイン殿はヂャンルーチェン殿の知り合いだったのですか」とサハチは聞いた。
「直接に知っていたわけではありません。あの頃、湘王の兄弟たちが次々に捕まって、王という身分を剥奪されて監禁されていました。湘王も身の危険を感じて、兵力を強化するためにヤマトゥの刀を手に入れようと考えて、わたしを福州(ふくしゅう)に送ったのです。わたしが福州で武器商人と会っていた時、湘王は官軍に攻められて、城に火を放って自殺してしまいました。わたしも襲撃されて命を狙われました。武器商人を頼ったらヂャンルーチェン殿を紹介されたのです。ヂャンルーチェン殿は琉球に行く準備をしていました。わたしはその船に乗って琉球に来たのです」
「家族は連れて来なかったのですか」とファイチが聞いた。
「妻は前年に亡くなりました。娘が二人いましたが、二人とも嫁ぎました。姉の方は洪武帝に仕えていた役人に嫁いだために、洪武帝が亡くなったあと殺されました。妹の方は湘王に仕えていた武将に嫁いだので、やはり、殺されてしまったでしょう」
「思い出させてしまってすみませんでした」とファイチは謝った。
「いいえ」とリュウインは笑った。
 思紹が父親の事を聞くと、リュウインは父親の活躍の事はほとんど知らないと言った。
 リュウインの母親は後妻で、リュウインが生まれた年に父は朱元璋(ジュユェンジャン)(洪武帝)に呼ばれて、朱元璋の軍師になった。リュウインが父に初めて会ったのは、父が宮廷を去って帰郷した十三歳の時だった。その時、父を訪ねて来たのがヂャンサンフォンの弟子のフーシュ(胡旭)で、リュウインは弟子となって武芸の修行に励んだ。フーシュはすでに七十歳を過ぎていて、髪も髭も真っ白な仙人のような人だった。リュウインにとってフーシュの印象は強く心に焼き付いていて、ヂャンサンフォンもそのような人だろうと思い込んでいたのだった。
 フーシュから武芸を習うと共に父から様々な事を教わった。リュウインが十五歳の時、父は洪武帝に呼ばれて応天府(おうてんふ)(南京)に行き、半年後には帰って来たが、病に罹って一月後に亡くなってしまった。二十歳の時に腹違いの兄に呼ばれて、リュウインは応天府に行き、洪武帝に仕え、二十七歳の時に湘王に仕える事になって、湘王に従って荊州(けいしゅう)(湖北省)に赴いた。そして、十四年後、湘王が殺されて、琉球に来たのだった。
琉球に来てから、もう十五年が経ちました」とリュウインは言った。
「わたしは琉球に来た年に、油屋の船に乗って浮島に来ました。浮島に着いて、すぐに目についたのが首里の高台です。あの頃は樹木(きぎ)が鬱蒼(うっそう)と茂った山でしたが、そこがこのような立派な都になっていたなんて、噂には聞いていましたが、信じられない事です。首里のグスクも思っていた以上に立派だったので驚きました」
首里のグスクも都造りにもヤンバルの材木が使われています。山北王が材木を送ってくれたお陰です」と思紹は言った。
「これからも寺院造りが続きます。材木はいくらあっても大歓迎です」とサハチは言った。
「そろそろ、綺麗所を呼びましょうね」と女将(おかみ)のナーサが言って、着飾った遊女(じゅり)たちが現れた。明国の言葉がしゃべれる遊女がいるので、リュウインは驚き、明国の言葉で色々と聞いては笑っていた。
「お久し振り」とマユミがサハチの前に来て笑った。
 前回、ここに来たのは慈恩寺(じおんじ)が完成した時で、二か月前だった。その時は確かに久し振りだった。今回はそれほどでもないだろうと思ったが、サハチは何も言わずに笑った。
「先代の山南の王妃様(うふぃー)が来ましたわよ」とマユミは言った。
「なに、ここに来たのか」
「今月の初めに昼間、訪ねて来たの。女将と会って、懐かしそうに昔のお話をして帰って行ったわ」
「そうか。王妃様は女将から色々と教わったと言っていた。王妃様も喜んでいただろう」
「女将が奥間(うくま)の話をしたら行ってみたいって言い出して、今度、一緒に行く事になったのよ」
「王妃様が奥間にか」
「旅をして色々な景色を見たいんですって」
「そうか。それで、いつ行くんだ?」
「まだはっきりと決まっていないけど、来月は十五夜の宴があるし」
十五夜の宴? 首里グスクで行なう宴にお前たちも出るのか」
「それとは別に、安謝大親(あじゃうふや)様が旧港(ジゥガン)(パレンバン)とジャワの使者たちをここに招待して宴を開くのよ」
「明国にも十五夜があるのか」
「お月様を見ながら丸いお餅を食べるんですって。旧港とジャワの人たちがいるうちは何かと忙しいから、送別の宴が終わってからじゃないかしら」
「すると十月か。まだまだ先の話だな」
 サハチがリュウインを見るとジォンダオウェンと明国の言葉で何かを話していた。リュウジャジンは明国の言葉がしゃべれる遊女と楽しそうに話していた。ウニタキとファイチは馴染みの遊女と笑っていて、思紹は女将から山南王妃の事を聞いていた。
 次の日、サハチとウニタキはリュウインを連れて山グスクに行った。下のグスクで岩登りをしている兵たちを見せるわけにはいかないので、直接、上のグスクに連れて行って、ヂャンサンフォンと会わせた。
 ヂャンサンフォンは以前、無精庵(ぶしょうあん)が滞在していた屋敷で、山グスクヌルになった運玉森(うんたまむい)ヌルと一緒に暮らしていた。縁側に座って待っているとヂャンサンフォンがやって来た。リュウインはヂャンサンフォンを見ても何の反応を示さなかったので、サハチはヂャンサンフォン殿ですと教えてやった。
「えっ!」と言ってリュウインは立ち上がり、ヂャンサンフォンを見た時の顔は驚きを通り越して呆然としていた。どう見ても、自分と同年配の男にしか見えないと思っているようだった。
「わたしの師匠は老胡(ラオフー)と呼ばれていたフーシュ殿でした」とリュウインが言うと、
「フーシュ‥‥‥懐かしい名前じゃ」と言って、ヂャンサンフォンは目を細めた。
 サハチたちは屋敷に上がって、ヂャンサンフォンの話を聞いた。
「わしが武当山山麓の玉虚宮(ユーシュゴン)で、新しい拳術を考えている時じゃった。フーシュが弟子入りしたんじゃ。まだ二十歳の若者じゃった。わしはフーシュを稽古台にして武当拳(ウーダンけん)を編み出したんじゃよ。わしに打たれて傷だらけになりながらも、奴は逃げなかった。わしの最初の弟子がフーシュなんじゃよ。わしは十年後に武当山を離れるが、奴は残って、弟子たちに武当拳の指導をしていた。武当拳が広まったのも奴のお陰と言ってもいいじゃろう。ラオファン(リェンリーの父親)の師匠もフーシュなんじゃよ。白蓮教(びゃくれんきょう)の奴らが攻めて来た時、わしは弟子たちを説得して逃がした。フーシュも武当山から下りて旅に出たようじゃ。そして、そなたと出会って弟子にしたのじゃろう」
「わたしが師匠に出会ったのは十三歳の時でした、二十歳になった時、わたしは応天府に行きました。師匠も一緒に来てくれと頼んだのでしたが断られました。師匠は武当山に帰ると言っていました。その後、会ってはいません」
「フーシュは武当山に戻って来たよ。わしもその頃、武当山にいたんじゃ。若い者たちを鍛えておったが二年後に亡くなってしまったんじゃ」
「そうだったのですか。師匠からヂャンサンフォン殿の話はよく伺いました。神様のようなお方だと言っていました。亡くなる前にもう一度お会いしたいと言っていました。願いがかなったのですね」
わしが育てた弟子たちは皆、わしより先に亡くなってしまう。辛い事じゃよ」
 ヂャンサンフォンに会って感激したリュウインは浮島に行って、久米村の役人たちと進貢船の相談をして、二日後、明国の商品を山積みにした油屋の船に乗って帰って行った。
 リュウインを見送ったあと、
「ヂャンサンフォン殿に会えたのは嬉しいけど、困った事になったとリュウインは言っていました」とファイチがサハチに言った。
「山北王はいつの日か、中山王を倒すつもりでいるが、中山王がヂャンサンフォン殿の弟子なので、敵対する事ができなくなってしまった。その時は琉球を去らなくてはならないかもしれないと言っていました」
琉球を去らなくても、中山王に寝返ったらいいんじゃないのか」
「恩のある山北王を裏切る事はできないのでしょう」
「そうか。戦の間はどこかに避難していてもらおうか」とサハチが言うと、
「山北王もまた進貢船を送るようですから、使者として明国に行ってもらいますか」とファイチは言った。
「おう、それがいい。リュウインの留守中に山北王を倒してしまえばいい」とサハチは賛成した。
 その後、思紹は中山王の船に明国の商品を積んで今帰仁に送った。その船は冬になったら米を積んで帰って来る事になっていた。
 八月八日、与那原のお祭りが行なわれ、シビーとハルの新作のお芝居『武当山の仙人(ウーダンシャンぬしんにん)』が、ササたちと女子(いなぐ)サムレーたちによって演じられた。シーハイイェンたち、スヒターたち、リェンリーたちによる『瓜太郎(ういたるー)』も演じられた。
 ヂャンサンフォンが崑崙山(クンルンシャン)と呼ばれる険しい岩山の山頂に座り込んで修行をしている場面から『武当山の仙人』は始まった。ヂャンサンフォンを演じているのはササだった。西王母(シーワンムー)という仙女が出て来て、ヂャンサンフォンに、「何があっても座り続けなさい。立ち上がったら修行は終わり。山を下りて行きなさい」と言う。
 ヂャンサンフォンの修行を邪魔するために、妖艶な仙女たちが誘惑したり、鎧(よろい)を着た武将が出て来てヂャンサンフォンに斬りつけたりするが、ヂャンサンフォンは惑わされずに座り続ける。チャンオー(嫦娥)という美しい仙女が出て来て、夫が浮気をしたので、一緒に逃げてくれと言う。ヂャンサンフォンはチャンオーの涙に負けて立ち上がってしまう。
 チャンオーと一緒に山を下りるヂャンサンフォン。チャンオーの夫のフーイーが二人を追って来て、ヂャンサンフォンはフーイーの弓矢にやられてしまう。チャンオーは西王母からもらった不老長寿の薬である小さな桃を二つ持っていて、一つをヂャンサンフォンに飲ませて、もう一つは自分で飲む。
 桃を飲んだ途端、チャンオーの体は宙に上がって月に吸い込まれてしまう。チャンオーを追いかけて行くフーイー。しばらくして、ヂャンサンフォンは生き返る。チャンオーを探すがどこにもいない。ヂャンサンフォンは武当山に行って厳しい修行を積む。フーイーが武当山やって来て、決闘をしてヂャンサンフォンはフーイーを倒す。
 ヂャンサンフォンが満月を見上げていると、月からチャンオーが降りて来て、二人は再会を喜ぶ。ヂャンサンフォンの弟子たちが現れて、二人を祝福してお芝居は終わった。チャンオーを演じたのはシンシンで、フーイーを演じたのはナナだった。身の軽いシンシンは月に昇って行く場面も、月から下りて来る場面も見事に演じていた。月は高い櫓(やぐら)の上にあって、綱を伝わって、シンシンは上り下りしていた。
 一緒にお芝居を観ていたヂャンサンフォンに、「これは本当の話なのですか」とサハチが聞いたら、
「チャンオーとフーイーの話は、古くから伝わる伝説なんじゃよ。そこにわしを入れただけじゃ」と笑った。
「わしの長い人生をお芝居にした所で、面白くもないからのう」
 そんな事はないだろうと思ったが、サハチは何も言わずに笑った。
 シーハイイェンたちの『瓜太郎』は明国の言葉で演じられたが、充分に楽しく、子供たちが喜んでいた。
 与那原のお祭りの六日後、サスカサが久高島(くだかじま)から大里(うふざとぅ)ヌルを連れて来た。フカマヌルも若ヌルを連れてやって来た。
 大里ヌルを初めて見たサハチは、日に焼けた顔を見て驚いた。安須森(あしむい)ヌルから聞いた話では、透き通ったように真っ白な肌をしているはずだった。サハチの驚いている顔を見て、
「太陽が拝めるようになってから、嬉しくて、久高ヌルさんと一緒に小舟(さぶに)に乗って遊んでいたら、日に焼けてしまったらしいわ」とサスカサが笑った。
 大里ヌルとフカマヌルは安須森ヌルと会って、十五夜の儀式の準備を始めた。
 夕方、大里ヌルの歓迎の宴を開くというので、サハチが安須森ヌルの屋敷に顔を出すと、女たちが集まっていて賑やかだった。ササたちもシーハイイェンたちもスヒターたちもリェンリーたちも与那原のお祭りのあと、ここに来ていて十五夜の宴の準備をしていた。平田のお祭りの準備に行っていたユリ、ハル、シビーも戻っていた。
「与那原のお芝居に出ていたチャンオーは月の神様なのよ。唐人(とーんちゅ)は月にチャンオーが住んでいると信じているらしいわ」とササがサハチに言った。
「チャンオーは唐のかぐや姫というわけだな」
「そうなのよ。それで、明日の夜、ハルのかぐや姫とシンシンのチャンオーが共演するのよ。楽しみにしていてね」
「ほう、そいつは面白そうだな」
 大里ヌルはサスカサと一緒に楽しそうに酒を飲んでいた。
「大里ヌルは四年に一度、ここに来てウタキを拝んでいたのか」とサハチは大里ヌルを見ながらササに聞いた。
「そうなのよ。でも、このグスクが汪英紫(おーえーじ)に奪われてからは来られなくなってしまったのよ」
「その時、先代のサスカサが久高島のフボーヌムイに籠もったんだったな」
「そうよ。でも、その時はまだ、大里ヌルは生まれていなかったわ。あれから三十四年振りのお参りのなるのよ」
「三十四年振りか。俺が島添大里按司になったあとなら来ても大丈夫だったのにな」
「そうなのよ。でも、あたしは大里ヌルの事を知らなかったし、お母さんは先代の大里ヌルに会った事があるんだけど、ここのウタキ参りの事は聞かなかったのよ。フカマヌルも大里ヌルと一緒に儀式をする事はあっても、親しく話をした事はなかったみたい。太陽が拝めるようになってから大里ヌルはすっかり変わったってフカマヌルが言っていたわ。以前は必要な事以外はしゃべらなくて、暗い性格だったけど、すっかり明るい性格になったって。久高ヌルのお陰よ。大里ヌルとフカマヌルは年齢が離れすぎているので親しくなれなかったけど、久高ヌルは丁度、二人の中間の年齢だから、三人がうまくいっているみたい」
「そうか。今回、久高ヌルは留守番なのか」
「フカマヌルのお母さんが平田から帰って来ているから大丈夫よ」
「そうか。ヌルを引退したのか」
「そうみたい。根神(にーがん)様と呼ばれているらしいわ。根人(にっちゅ)を守るウナイ神よ。」
今帰仁攻めが終わったら、根人(マニウシ)も久高島に帰るだろう」
 翌日、日が暮れると厳かな儀式が始まった。去年と同じように二の曲輪(くるわ)を囲む石垣に赤い幕を垂らして、石垣の上に灯籠(ドンロン)を並べ、コの字形に茣蓙(ござ)を敷いた。サハチはナツとハルと一緒に西側の中央に座った。マチルギは今回も首里の宴に参加していた。佐敷大親(さしきうふや)夫婦、平田大親夫婦、手登根大親(てぃりくんうふや)の妻のウミトゥク、ミーグスク大親夫婦、ウニタキ夫婦とファイチの妻のヂャンウェイと嫁のミヨン、ンマムイ夫婦と娘のマウミが並んだ。ファイチも首里の宴に参加していた。今年もサングルミーがいないので、思紹はファイチのヘグム(奚琴)を楽しみにしているらしい。首里に移った慈恩禅師(じおんぜんじ)夫婦も首里の宴に参加していた。
 山グスクにいた愛洲次郎(あいすじるー)たちもやって来ていた。珍しく二階堂右馬助(にかいどううまのすけ)も一緒だった。ヂャンサンフォン夫婦は首里に行ったという。
「どうして、右馬助がいるんだ?」とウニタキが不思議そうな顔をしてサハチに聞いた。
「また壁にでもぶつかって、気分転換のつもりで来たんじゃないのか」とサハチは言った。
「奴はいくつの壁をぶち破れば気が済むんだ?」
「知らんよ。ヂャンサンフォン殿や慈恩禅師殿のように自分の剣術を作りたいんだろう」
「『二階堂流』か」と言ってウニタキは笑った。
 静かに笛の調べが流れて来た。一の曲輪内のウタキで儀式が始まったようだった。
 東の空に満月が顔を出した。サハチたちは月に向かって両手を合わせてお祈りを捧げた。
 ウタキでのお祈りは去年よりも長かった。大里ヌルが、ここに来れなかった三十四年分のお祈りをしているのだろう。大里ヌルの母親は若ヌルだった時に一度だけ来ている。今の大里ヌルは初めてここに来たのだった。三十四年間の思いを月の神様に告げているのかもしれなかった。
 神歌(かみうた)が聞こえてきた。ヌルたちが神歌を歌いながら二の曲輪に現れた。大里ヌルが中央に座って満月にお祈りを捧げ、その周りをヌルたちが回っていた。サスカサ、ササ、シンシン、ナナ、佐敷ヌル、平田ヌル、フカマヌルと若ヌル、安須森若ヌル、ササの四人の弟子たち、玻名(はな)グスクヌルもいた。
 玻名グスクヌルは安須森参詣から帰って来て変わった。個人的な敵討ちをやめて、琉球のために安須森ヌルを助けようと決めたようだった。
 笛の調べが変わり、ヌルたちが華麗に舞い始めた。若ヌルたちも頑張っていた。大里ヌルが立ち上がって舞い始めた。久高島で稽古を積んでいたのか見事な舞だった。
「麗(うるわ)しいのう」と声が聞こえた。
 サハチは驚いて空を見上げた。
 ササ、シンシン、ナナ、サスカサ、フカマヌル、玻名グスクヌルが一瞬、立ち止まって空を見上げた。
「続けてくれ」と声がして、ヌルたちはまた舞い始めた。
 スサノオの声だったが、笛の音を聞いてやって来たのだろうか。その後、声は聞こえなかった。
 儀式が終わって宴が始まった。笛を吹いていた安須森ヌルとユリ、ヌルたちも宴に加わった。
 子供たちの笛の合奏から始まって、リェンリー、ユンロン、スーヨン、ソンウェイの妻のリンシァによる明国の歌と舞、シーハイイェンとツァイシーヤオの旧港の舞、スヒター、シャニー、ラーマのジャワの舞が披露された。女子サムレーたちの笛と舞も披露された。
「おい、あれを見てみろ」とウニタキが言って、示す方を見ると大里ヌルと右馬助がいた。
 でれっとした顔の右馬助が大里ヌルが注いでくれた酒を嬉しそうに飲んでいる。大里ヌルも楽しそうだった。
「奴もやはり、男だったようだ」とウニタキは笑った。
「奴は大里ヌルに会いに来たのか」
「山グスクにいた奴が大里ヌルの事など知るまい。しかし、不思議な力に引かれて、ここに来たのかもしれんな」
 琉球に来てから女に見向きもしなかった右馬助が、大里ヌルに出会った途端にあんな姿になるなんて思ってもいない事だった。ササたちも気づいて、右馬助は大里ヌルのマレビト神だわと言っていた。
 ハルのかぐや姫とシンシンのチャンオーの共演が始まった。ヤマトゥの月の神様と唐の月の神様の共演だった。琉球の月の神様はどんな姿なんだろうと、ふとサハチは思った。
 安須森ヌルが吹く幻想的な調べに合わせて、かぐや姫とチャンオーは満月の下で優雅に舞っていた。

 

 

 

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