長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-164.平久保按司(第一稿)

 雨降りの天気が続いて、三日間、多良間島(たらまじま)に滞在したササたちは島人(しまんちゅ)たちに見送られて、イシャナギ島(石垣島)を目指した。ウムトゥダギ(於茂登岳)のあるイシャナギ島は多良間島から見る事ができ、ミャーク(宮古島)よりも近いような気がした。
 今日はいい天気で、海も荒れる事はなく、快適な船旅だった。正午(ひる)頃にはイシャナギ島の北に細長く飛び出した半島に着いた。半島の先端近くに平久保按司(ぺーくばーず)の屋敷があるというが、半島の周りは珊瑚礁に被われていて近づく事はできなかった。
 マカラーの指示で半島の北にあるフージパナリという小島の近くに船を泊めて、小舟(さぶに)に乗って上陸する事にした。小舟を下ろしている時、若ヌルたちがキャーキャー騒いでいるので何事かと見ると、小島に見た事もない大きな鳥がたくさんいた。
「毎年、秋になるとこの島にやって来て、子育てをしているらしい」とクマラパは言ったが、鳥の名前は知らなかった。
 いつものように、ササ、安須森(あしむい)ヌル、シンシン、ナナ、クマラパ、タマミガが小舟に乗って平久保(ぺーくぶ)に向かった。小島の正面に見える山の上に見張り台があるらしく、こちらを見ている人影が見えた。
「平久保按司はターカウ(台湾の高雄)のキクチ殿の家臣だったサムレーじゃ」とクマラパが言った。
「ターカウに来る明国の商人、商人と言っても海賊のような奴らじゃが、奴らから牛革が高く売れる事を知ったキクチ殿が、ヤマトゥから革作りの職人を連れて来て、平久保按司と一緒にここに送り込んだんじゃよ」
「という事は平久保按司は牛を飼っているのですね」と安須森ヌルが言って、半島を見たが牛の姿は見えなかった。
「ここからは見えんが、百頭余りの牛がいる。与那覇勢頭(ゆなぱしず)と一緒に琉球に行って、帰って来ると琉球を真似して、按司を名乗ったんじゃよ。先代のキクチ殿が生きていた頃は、牛革や牛肉はすべて、ターカウに持って行ったが、キクチ殿が亡くなると独立して、ターカウだけでなく、トンド(マニラ)に行く野崎按司(ぬざきあず)やイシャナギ島の按司たちとも取り引きをしている。気をつけなくてはならないのは、イシャナギ島の按司たちはミャークのように統一されていないという事じゃ。それぞれが勝手に動いている。琉球の王様の娘が来たと言っても、ミャークほどは歓迎されないじゃろう。逆に船に積んであるお宝を狙って来る奴がいるかもしれん。油断は禁物じゃ」
「平久保按司があたしたちを襲うかもしれないというのですか」とササが驚いた顔をして聞いた。
「平久保按司琉球に行ったが、ミャークの者たちのように驚いたりはしない。ヤマトゥンチュだからヤマトゥの都を知っているのじゃろう。琉球で手に入るのはヤマトゥの商品と明国の商品で、それらはターカウでも手に入るので、わざわざ、琉球まで行く必要はないと言って、一度だけでやめてしまったんじゃよ。平久保按司も佐田大人と同じ倭寇(わこう)だったという事を忘れずに気をつける事じゃ」
 ササかうなづき、安須森ヌル、シンシン、ナナ、タマミガも顔を引き締めてうなづいた。
 砂浜に弓矢を持ったサムレーが十一人、小舟が近づくのを見ていた。弓は構えていなかった。
 ササたちは警戒しながら小舟から降りた。
「クマラパーズ様、お久し振りです」と女の声がヤマトゥ言葉で言った。
 中央にいたサムレーは女だった。ここにも女子(いなぐ)サムレーがいたのかとササたちは驚いた。
按司の娘のサクラじゃ。サクラはスタタンのボウの弟子なんじゃよ」とクマラパは言った。
「えっ!」とササたちは驚いた。
「平久保按司琉球に行って、按司の娘はヌルになって神様にお仕えする事を知って、サクラをボウに預けて修行させたんじゃ。多良間島でヌルの修行と武芸の修行を積んで来たというわけじゃ」
 クマラパがササたちを紹介するとサクラは驚いて、「琉球から来たのですか」と小島のそばに泊まっているヤマトゥ船を見た。
 サクラの案内で按司の屋敷に行った。高台の上にある屋敷から牛がいっぱいいる牧場が見えた。
 それほど高くない石垣に囲まれたヤマトゥ風の屋敷の縁側で、平久保按司は刀の手入れをしていた。娘と一緒にいるクマラパを見ると驚いた顔をして、刀を鞘(さや)に納めた。
 白髪頭でぎょろっとした目をした体格のいい老人だった。
「クマラパーズ殿、お久し振りですのう。ターカウにでも行かれるのですかな」
 平久保按司はヤマトゥ言葉でそう言って、腰に刀を差しているササたちを怪訝な顔をして見ていた。
琉球から来たお客様をターカウに連れて行く途中なんじゃよ」
 クマラパがササたちを紹介すると平久保按司は大笑いした。
琉球にも多良間島のボウのような女子(おなご)がいるとは驚いた。琉球も随分と変わったようじゃのう」
 ササたちは歓迎されて、屋敷に上がって、明国のお茶を御馳走になった。
 平久保按司に聞かれて、ササたちは今の琉球の様子を話した。高い石垣で囲まれた浦添(うらしい)グスクが炎上して、王様が変わったと聞いて平久保按司は驚いていた。
「フニムイ(武寧)とかいう跡継ぎがいたが、そいつが滅ぼされたのか」
「そうです。今の王様はわたしの父の思紹(ししょう)です」と安須森ヌルは答えた。
「王様の娘が直々にやって来るとはのう。勇ましい事じゃな」
 ササはイシャナギ島で流行っているというヤキー(マラリア)の事を聞いた。
 平久保按司は顔をしかめて、「まったく困ったもんじゃよ」と言った。
「もう三十年近くも前の事なんじゃが、南部の大城(ふーすく)(大浜)でヤキーが流行って、大城按司(ふーすかーず)の娘が亡くなったんじゃよ。ヤキーの退治をするために、大城に行ったウムトゥダギのフーツカサというヌルも亡くなったらしい。大城按司も亡くなってしまい、大城の村は全滅してしまったんじゃ」
「村人たち全員がヤキーで亡くなったのですか」と安須森ヌルが驚いた顔をして聞いた。
「大城按司が亡くなったあと、村から逃げた者も多いはずじゃ。それだけでは治まらず、今度は新城(あらすく)でヤキーが流行って、新城按司(あらすかーず)も亡くなってしまったんじゃよ。ヤキーを怖がって誰も南部には行かなくなってしまった。今、どんな状況なのか、まったくわからんのじゃよ」
「蚊に刺されるとヤキーになると聞きましたが本当なのですか」とササが聞いた。
 平久保按司は大笑いをした。
「誰から聞いたのか知らんが、蚊に刺されてヤキーになるわけがなかろう。蚊ならここにもいるが、蚊に刺されてヤキーになった者などおらん。呪いじゃよ」
「呪い?」
「そうじゃ」と言って平久保按司はうなづいた。
「ヤキーが流行る前、大城の近くで座礁した南蛮(なんばん)(東南アジア)の船があったそうじゃ。お宝が満載してあって、そのお宝を大城按司が頂いたんじゃよ。浜に流れ着いた物を頂くのは当然の事なんじゃが、そのお宝の中に呪われた何かがあったらしいとの事じゃ。それに関係した者たちが皆、ヤキーに罹って亡くなってしまったんじゃよ」
「その何かというのは何なのですか」
「未だにわからんのじゃろう。大城だけでなく、新城までもやられたんじゃから、その何かは新城にも関係あるはずじゃ。大城の女按司(みどぅんあず)と新城の女按司は仲がよかったそうじゃから、その何かを新城の女按司に贈ったのかもしれんのう」
 座礁した南蛮の船の呪いがあったなんて知らなかった。蚊に刺されてヤキーになるという事にササも疑問を持っていたので、そうかもしれないと思った。
池間島(いきゃまじま)の按司の娘のマッサビが、この島に来ているはずですが御存じですか」とササは聞いた。
池間島按司の娘? さあ、知らんのう」と平久保按司は首を傾げた。
「ヤマトゥ船で来たようじゃが、倭寇の船で来たのかね。わしが琉球に行った時、松浦党(まつらとう)の者たちが琉球に来ていると聞いたぞ。今も来ているのかね」
松浦党対馬の早田(そうだ)水軍も薩摩(さつま)の商人も来ています。今回、一緒に来たのは愛洲水軍の者たちです」
「なに、愛洲水軍‥‥‥」と按司は驚いた顔をしてササを見た。
「愛洲隼人(はやと)殿が来ているのかね?」
「九州で活躍していた愛洲隼人様の孫のジルーです」
「なに、愛洲隼人殿の孫が来ているのか。わしは愛洲隼人殿に命を救われた事があるんじゃ。恩返しができぬまま別れた事を未だに悔やんでおる。こんな所で、隼人殿の孫に出会えるなんて、何という巡り合わせじゃろう」
 平久保按司はすぐに小舟を出して、ジルーを呼びに行かせた。
 やって来たジルーを見た平久保按司は、愛洲隼人の面影があると言って感激していた。ジルーのお陰で、急遽、歓迎の宴が開かれ、ササたちはおいしい牛肉を御馳走になった。
 平久保按司がジルーの祖父、愛洲隼人に助けられたのは十八歳の時だった。十六歳の時、初めて明国に行って初陣(ういじん)を飾り、三度目の出陣だった。正月の半ばに明国に向かい、杭州(こうしゅう)の入り口にある舟山島で明国の海賊と合流して南下し、温州(うんしゅう)を攻めた。
 まだ明国が建国したばかりの時で、洪武帝(こうぶてい)に滅ぼされた張士誠(ヂャンシーチォン)、陳友諒(チェンヨウリャン)、方国珍(ファングォジェン)の残党たちが海賊になって洪武帝に反抗していた。平久保按司は知らなかったが、三姉妹の父親、張汝謙(ジャンルーチェン)も舟山にいて、その時の戦に加わっていた。
 大小会わせて二百艘(そう)の船が温州沿岸を荒らし回って戦果を上げた。洪武帝の主力軍は北部に追いやった元(げん)の兵と戦をしていたので、向かう所、敵なしという状況だった。米蔵を守っていた役人たちは戦う事なく逃げてしまい、現地の者たちも一緒になって略奪をしていた。
 それぞれの船が奪い取った収穫を満載にして、舟島群島の島影に隠れて、風待ちをしている五月の初め、突然、明国の水軍が攻めて来た。
 敵の船は大きく、鉄炮(てっぽう)(大砲)も乗せていた。平久保按司が乗っていた船は小さな船だったので、逃げるしかなかった。敵の船は思っていたよりも多く、しつこく追い掛けて来た。平久保按司は総大将の赤松播磨(はりま)の船を必死に追い掛けていた。
 かなり沖に出た時、赤松播磨は船隊を整えて反撃に出た。平久保按司も海戦に加わりたかったが、邪魔になると思って見ている事にした。愛洲隼人とキクチ殿が鉄炮を恐れずに、敵の船を挟み撃ちにして、火矢を放ち、敵船に突撃した船もあって、敵の船は傾いて沈んでいった。
 平久保按司は喜んだが、別の敵船がやって来て、赤松播磨の船を攻撃してきた。播磨も火矢で応戦したが、鉄炮にはかなわず、播磨の船は焼けながら沈んでしまった。船が沈む前に船から飛び降りた兵たちが何人も海に浮かんでいた。平久保按司は泳いでいる者たちを助けようとしたが、敵の鉄炮が飛んできた。助けを求める者たちを見捨てて、平久保按司は逃げた。敵船は追ってきて、鉄炮を撃ち続けた。
 必死になって艪(ろ)を漕いで逃げたが敵の鉄炮にやられた。船の側面に穴が開いて海水が流れ込んできて、船は沈んでしまった。平久保按司は海に飛び込んだ。
 敵の船も去って行ったので安心したが、陸まで泳いで行ける場所ではなかった。平久保按司は海に顔を出している仲間たちと励まし合いながら海に浮かんでいた。船の破片の板きれが流れて来て、それにすがって浮かんでいたが、顔を出していた仲間の数は見る見る減って行った。
 俺も死ぬのかと思いながら、故郷にいる許婚(いいなずけ)の娘の事を思っていた。帰国したら祝言(しゅうげん)を挙げる予定だったのに、もう会う事もできなかった。
 死を覚悟して夕日を眺めていた時、船が近づいて来るのが見えた。敵か味方かわからなかった。たとえ、敵であったとしても、どうせ死ぬのだから同じ事だと思い、腰の刀を抜いて振り上げた。夕日が刀に反射して、船からわかるに違いないと思った。
 近づいて来た船は愛洲隼人の船だった。行方知れずになった仲間の船を探しに来て、平久保按司を助けたのだった。
「わしが今、ここにいるのは愛洲隼人殿のお陰なんじゃよ。それから二年後の十一月、わしはキクチ殿と一緒にターカウに向かった。その時、愛洲隼人殿は済州島(チェジュとう)に出陣していて、別れを告げる事もできなかったんじゃ。命の恩人に別れを告げる事もできなかった事が、今でも悔やまれていたんじゃよ。まさか、隼人殿の孫がこの島にやって来るなんて、夢でも見ているようじゃ。改めて、そなたにお礼を言うぞ」
「今、思い出しました」とジルーは言った。
「祖父は九州にいた頃の事はあまり話しませんでしたが、その時の海戦の話は聞いた事があります。菊池三郎殿と敵の船を挟み撃ちにして沈めたと言っていましたが、その菊池三郎殿というのが、ターカウにいたキクチ殿だったのですね。菊池三郎殿の事は懐かしそうに話していたのを思い出しました。そして、その海戦の時、若い奴を助けたと言っていましたが、それが平久保按司殿だったのですね」
「そうじゃ。わしじゃよ」と言いながら、平久保按司は泣いていた。
 ジルーが平久保按司と話をしている時、ササたちはサクラと話をしていた。サクラには九歳になる娘がいた。父親は川平(かびぃら)の仲間按司(なかまーず)の息子のムイトゥクで、一緒に暮らしているという。
「どこで出会ったのですか」とナナが聞いた。
多良間島よ。わたしがお師匠のもとでヌルになるための修行をしていた時、琉球に行くためにミャークに向かうムイトゥクと会ったのよ。その時は別に何も感じなかったわ。わたしは修行に夢中で、男なんて眼中になかったの。わたしがお師匠に初めて会ったのは五歳の時だったわ。その時は素敵なお姉さんだと思っていたけど、何度も会ううちに憧れに変わっていったわ。わたしもお師匠みたいになりたいと思ったの。父から習ってお馬のお稽古をしたり、弓矢のお稽古をしたわ。クマラパーズ様が来た時は拳術も習ったのよ。そして、父が琉球に行って、帰って来ると、ヌルになりなさいと言って、お師匠のもとで修行を始めたの。嬉しかったわ。多良間島にいた時は毎日が楽しくて、ムイトゥクの事なんか考えている暇なんてなかったの。琉球から帰ってきたムイトゥクはお土産だと言ってヤマトゥの刀をくれたわ。今まで刀なんて持っていなかったから、とても嬉しかったの。二年半、多良間島で修行を積んだわたしは平久保に帰って、ヌルになったの。それから二年後、わたしは弟と一緒にターカウに行く事になって、仲間に寄ったら、ムイトゥクも一緒に行くと言い出して、一緒にターカウまで行って来たわ。ターカウからの帰り、ムイトゥクは仲間に帰らずに平久保まで来て、一緒に暮らす事になったのよ。ムイトゥクは四男だから、平久保にいたら何かと便利だろうと仲間按司も許してくれたみたい」
「よかったわね」とササたちが言っていると、ムイトゥクが現れた。
 背の高い真面目そうな男だった。
 今までヤマトゥ言葉でしゃべっていたサクラはムイトゥクと琉球言葉でしゃべっていた。
「ムイトゥク様はヤマトゥ言葉はわからないのですか」とササが琉球言葉で聞いた。
「ムイトゥクの御先祖様はヤマトゥンチュなんだけど、この島に来たのが二百年も前の事だから、今は島の言葉しかしゃべれないのよ。初めて、多良間島で出会った時は言葉がまったく通じなかったの。その頃のわたしはヤマトゥ言葉しか話せなかったけど、お師匠から琉球の言葉を習ったのよ。神様とお話をするには琉球の言葉を知らなければならないって言われてね。琉球から帰ってきたムイトゥクも琉球の言葉をしゃべるようになって、お互いにお話ができるようになったのよ」
「ムイトゥク様の御先祖様って、もしかしたら平家ですか」と安須森ヌルが聞いた。
 ムイトゥクはうなづいた。
「二百年以上も前の事なので、詳しい事はわかりませんが、御先祖様は門脇(かどわき)の中納言(ちゅうなごん)様という人に仕えていた武将のようです。壇ノ浦の合戦のあと、南に逃げて、この島にたどりついたようです」
「門脇の中納言様って知っている?」とササが安須森ヌルに聞いた。
「京都の六波羅(ろくはら)の入り口の門の脇にお屋敷があったので、そう呼ばれたのよ。小松の中将様(平維盛)のお祖父(じい)様(平清盛)の弟(平教盛)だと思うわ」
「その人も壇ノ浦で戦死したの?」
 安須森ヌルはうなづいた。
「ヤマトゥの歴史に詳しいのですね」とムイトゥクが尊敬の眼差しで安須森ヌルを見た。
 安須森ヌルは謙遜して、「琉球にも平家の子孫がいるので、それで調べたのです。まだまだわからない事がいっぱいあります」
 ムイトゥクとサクラは琉球の平家の子孫に興味を持って、安須森ヌルから話を聞いた。
 ササはいつものように酒を飲んで、牛肉をたらふく食べていたが、シンシンとナナは平久保按司を警戒して酔う事はできなかった。ジルーに会えてよかったと感激していても、本心はわからなかった。平久保按司が用意してくれた屋敷に移り、ササと安須森ヌルは安心して眠ったが、二人は寝ずの番をした。何事もなく夜が明けて、シンシンとナナはホッと胸を撫で下ろした。
 平久保按司はお土産だと言って、たっぷりの牛肉の塩漬けをくれた。ササたちはお礼にヤマトゥの名刀を贈った。娘のサクラにも名刀を贈った。
 平久保按司と別れて、船はフージパナリの北側を抜けて、細長い半島の西側を南下して行った。寝不足のシンシンとナナは船に乗るとすぐに眠りにつき、ササはジルーにお礼を言った。
「ここにもお祖父さんを知っている人がいたなんて驚いたわね」とササが言うと、
「まったく信じられないよ。祖父が助けた人がこの島にいたなんて‥‥‥」とジルーは遠くの海を見つめていた。
「ジルーがいなかったら平久保按司に襲われたかもしれないわね」
 ジルーはうなづいて、「一癖ありそうな男だったな。でも、本心から祖父に感謝している事はわかったよ」と笑った。
 雨が降りそうな曇り空の下、船は半島に沿って南下して行った。その半島は思っていたよりもずっと細長く、ようやく半島の付け根辺りに着いたのは二時(にとき)(四時間)近く経った頃だった。船は島に沿って進路を西に変えた。島の北側に高い山並みが続いていた。
「あれがウムトゥダギ(於茂登岳)じゃよ」とクマラパが来て指差した。
八重山(やいま)で一番高い山じゃ。わしがあそこに登ったのはもう四十年も前の事じゃよ」
「えっ、登ったのですか」とササは驚いた。
「わしは道士(どうし)なんじゃよ。元の国にいた頃も険しい修行の山に登っていたんじゃ。あの山を初めて見たのはウプラタス按司と一緒にターカウに行った時じゃった。神々しい姿を見て登ってみたくなったんじゃ。翌年、ウプラタス按司は木を伐るために、この島に船を送った。わしはその船の乗って、この島に来て、五月に帰るまでの間、この島を散策したんじゃよ」
「どこから登るのですか」
「こっちからも登れん事はないが、見た通り、人が入った事がないような密林がずっと続いている。反対側から登った方がいいじゃろう。山の裾野の名蔵(のーら)という所に女按司がいて、古いウタキを守っている。そして、山の中腹のナルンガーラという所にも古いウタキがあって、ウムトゥダギの神様に仕えるフーツカサ(大司)がいるんじゃ。先代のフーツカサはヤキーで亡くなり、池間島のマッサビがフーツカサを継いだようじゃ。わしがウムトゥダギに登った時は、先々代のフーツカサに案内してもらったんじゃよ」
「今日の内に名蔵まで行けるかしら?」
 ササがそう聞いた時、「フィフィフィーフィー」と鳥が鳴いた。空を見上げると大きな鳥が気持ちよさそうに飛んでいた。
カンムリワシ(わしぬとぅい)が大丈夫じゃと言ったようじゃ」とクマラパは笑った。
「クマラパ様はこの島の按司の事も詳しいのですね?」
「詳しいと言っても四十年も前の話じゃからな。今はもう、按司たちも子や孫の代になっているじゃろう。ターカウやトンドに行く時に寄っていく平久保按司、仲間按司は何度も会っているが、ほかの按司たちは琉球に行っていた頃、ミャークで何度か会ったくらいじゃ。それも二十年の前の話じゃよ」
「仲間按司はこの先にいるんですよね?」とササは進行方向を指差した。
「ああ、川平という所の按司じゃ」
「平家の落ち武者なんでしょ?」
「そうじゃ。今の按司が九代目とか言っておったのう。会ってみるかね?」
 ササは首を振った。
「まず、マッサビ様に会ってウムトゥダギに登るのが先です。スサノオの神様がいらっしゃるうちに登らなくてはならないわ」
「山の上で、酒盛りをするのかね?」
「勿論ですよ。イシャナギ島の神様たちを集めて楽しい酒盛りをやります」とササはウムトゥダギを眺めながら笑った。
 ウムトゥダギの山並みを左手に眺めながら船は進んだ。正面に半島が現れた。その半島の中に仲間按司のグスクがあるという。
 半島の先にあるヒラパナリという小島を越えて、石崎(しゅざき)という岬を超えて南下した。また半島が飛び出していた。イシャナギ島は複雑な形をした島のようだ。
 クマラパがシンシンとナナと一緒にやって来て、
「あの山にも登ったぞ」と半島の中程にある山を指差した。
 ジルーはいなくなって、ササは安須森ヌルと一緒に景色を眺めていた。
「何という山ですか」と安須森ヌルが聞いた。
「ヤラブダギ(屋良部岳)じゃ。山頂に大きな平らな岩があって、神様が降りて来るような気がしたよ」
「古いウタキなのかしら?」とササが興味深そうに言ってヤラブダギを見つめた。
「フーツカサの話だとヤラブダギの裾野に南の島から来た人たちが住んでいたそうじゃ。その人たちがあの山を神様の山として拝んでいたらしい。あそこに飛び出た岬が見えるじゃろう。あそこは御神崎(うがんざき)といって、古いウタキだそうじゃ。航海の安全を祈っていたらしい」
「航海の安全という事は、あそこに住んでいた人たちは、どこかの国と交易をしていたのですか」
「福州辺りまで行っていたのかもしれんな」
 御神崎の周りは険しい崖が続いていて、奇妙な形をした岩がいくつもあった。
「神々しさが感じられるわね」と安須森ヌルが言った。
 ササはうなづきながら景色を眺め、アマミキヨ様はイシャナギ島にも来たのかしらと考えていた。
 御神崎を越えたら急に波が高くなって船が揺れだした。大きなカマンタ(エイ)がいると騒いでいた若ヌルたちは慌てて船室に入って行った。
 船の揺れはしばらく続き、半島の南端の大崎を越えると海は穏やかになった。そこは広々とした名蔵湾だった。珊瑚礁に気をつけながら湾内に入って行った。
 屋良部半島の付け根あたりに少し飛び出した所があって、クマラパがそこを指差して、「あそこは何だか知っているかね?」と聞いた。
「あそこも古いウタキですか」とササが聞いた。
「ウタキかどうかは知らんが、あそこは『赤崎』というんじゃよ」
「えっ!」とササは安須森ヌルと顔を見合わせた。
「ミャークの赤崎に行った時、ここの赤崎を思い出したんじゃよ。フーツカサからは何も聞いておらんが、もしかしたら、アマミキヨ様と関係あるのかもしれんぞ」
 ササは目を輝かせて、「絶対に行きましょう」と安須森ヌルに言った。
 安須森ヌルはうなづいて、「ヤラブダギと御神崎も行かなくちゃね」と笑った。
 赤崎から海岸に沿って南下して、名蔵川(のーらがーら)の河口近くに船を泊めて、小舟に乗って上陸しようと小舟を下ろしていたら、多くの小舟が近づいて来るのが見えた。
「名蔵の女按司のお迎えよ」とユンヌ姫の声が聞こえた。

 

 

 

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目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第一稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第一稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第一稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第一稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第一稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第一稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第一稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第一稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第一稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第一稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第一稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第一稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司の重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。

 

2-163.スタタンのボウ(第一稿)

 十日間、滞在したミャーク(宮古島)をあとにして、ササたちを乗せた愛洲次郎(あいすじるー)の船はイシャナギ島(石垣島)を目指していた。
 クマラパと娘のタマミガが一緒に来てくれた。さらに、何度もターカウ(台湾の高雄)に行っているムカラーいう船乗りが野崎(ぬざき)(久松)から来て、乗ってくれたので心強かった。ムカラーはヤマトゥの言葉がしゃべれて、二代目のキクチ殿とも親しいという。狩俣(かずまた)生まれで、クマラパの武芸の弟子だった。
 与那覇勢頭(ゆなぱしず)から二十年前に琉球に行った八重山(やいま)の首長たちの事も聞いていた。多良間島(たらまじま)からはスタタンのボウという女按司(みどぅんあず)が行き、イシャナギ島(石垣島)からは平久保按司(ぺーくばーず)、仲間按司(なかまーず)、名蔵(のーら)の女按司、石城按司(いしすかーず)、富崎按司(ふさぎゃーず)、登野城(とぅぬすく)の女按司、新城(あらすく)の女按司、七人も行ったという。タキドゥン島(竹富島)からはタキドゥン按司、クン島(西表島)からは古見按司(くんあず)が行った。ドナン島(与那国島)からは女按司のサンアン按司が行き、パティローマ島(波照間島)からはマシュク按司が行った。イシャナギ島の新城の女按司はすでに亡くなってしまったが、ほかの按司たちは琉球との交易が終わったあとも、ターカウやトンド(マニラ)にも行っているらしい。
 ササたちは多良間島に寄ってスタタンのボウと会い、イシャナギ島に行ってマッサビとウムトゥ姫に会い、タキドゥン島に行って琉球から来たというのタキドゥン按司と会い、クン島に寄って、ドナン島に行き、そこから黒潮を越えてターカウに行くという計画を立てた。できれば、トンドにも行ってみたいが、それはターカウまで行ってから決めるつもりだった。
 八重山では九月から二月まで北東の風が吹いているので焦る必要はなかった。帰りは南西の風が吹く四月まで、ターカウで待たなくてはならない。あまり早く行っても仕方がないので、気に入った場所で長期滞在するつもりだった。ミャークの人たちと仲よくなったので、もう少し滞在してもよかったのだが、早く知らない島を見てみたいと気がはやって、ミャークを船出したのだった。
 白浜(すすぅばま)から珊瑚礁(さんごしょう)に気をつけながら、船は南下して行った。白浜を過ぎると高く険しい崖がずっと続いていて、高台の上に建つ高腰(たかうす)グスクと野城(ぬすく)が見えた。少し飛び出た崖の上にあるアラウスのウタキとアマミキヨ様が上陸した砂浜も見えた。海から見るとその砂浜は神々しく感じられた。
 細長く飛び出した百名崎(ぴゃんなざき)(東平安名崎)とパナリ干瀬(びし)の間を抜けて、百名崎を越えて西に向かった。島の南側も高い崖が続いていて、その崖を乗り越えた大津波の凄まじさを改めて感じた。
 その日は赤崎ウタキと対岸にある来間島(くりまじま)の間に船を泊めた。
 来間島を眺めながら、「来間島のウプンマの娘、インミガに会いたいわ」とタマミガが言ったら、
「インミガはわたしの子孫です」と赤名姫の声が聞こえた。
「もしかして、赤名姫様の娘さんがあの島に行ったのですか」とササは赤名姫に聞いた。
「そうです。ミャークが見える高台の上に、娘の来間姫のウタキがあります」
 挨拶に行かなければならないとササ、シンシン、ナナ、安須森(あしむい)ヌル、クマラパの五人がタマミガと一緒に小舟(さぶに)に乗って来間島に上陸した。
 来間島のミャーク側は崖が続いていて岩場が多く、小さな砂浜から上陸した。細い道を登って崖の上に出ると集落が見えた。この辺りだけが高くなっていて、あとは平らな島だった。きっと、この島も大津波で全滅したに違いないとササたちは思った。
 坂道を下りて集落に入ってウプンマの家に行った。ウプンマは野崎に行っていて、娘のインミガが留守番をしていた。インミガはタマミガと同い年で、八年前に一緒に池間島(いきゃまじま)に行き、その時、仲よくなったという。インミガはタマミガの突然の来訪に驚いて喜び、ササたちが琉球から来たと聞いてさらに驚いた。
 琉球から王様の娘がミャークに来ているという噂はインミガも聞いていたが、まさか、来間島に来るとは思ってもいなかった。インミガは島人(しまんちゅ)たちを集めて、ササたちを大歓迎した。島人たちが小舟を出して、愛洲次郎たちや若ヌルたちも呼ばれて歓迎を受けた。
 インミガの案内で坂道を登って森の中にあるウタキに行き、ササたちは来間姫と会った。
 母親の赤名姫が一緒なので、来間姫は喜んで昔の事を話してくれた。
 一千年前の大津波の時、来間島は全滅して、兄と妹の二人だけがこの高台に逃げて助かったという。来間姫がこの島に来たのは、大津波から百五十年ほど経った頃で、兄妹の子孫たちが暮らしていた。来間姫は島の男と結ばれて子孫を増やしていった。
 三百年前の大津波の時も来間島は全滅したが、その時は高台に登って助かった者たちが十数人いた。来間姫の子孫のウプンマも助かった。来間島から野崎に養子に行っていた三兄弟が戻って来て、ウプンマを助けて島の再建をした。野崎も津波で全滅したが、三兄弟は大嶽(うぷたき)で木を伐っていたので助かった。野崎に帰ると家々は倒れ、住んでいた人たちは誰もいなかった。打ち上げられた小舟を見つけ、それに乗って故郷の来間島に帰って来たのだった。ウプンマは三兄弟の長兄と結ばれて、その子孫がインミガだった。
 来間姫は母親と一緒にスサノオの神様がいたので大声を上げて驚いていた。噂に聞いていた御先祖様が来間島に来るなんて信じられないと言っていた。来間姫がスサノオの神様に色々と聞き始めたので、ササたちはお祈りを終えてウタキを出た。
 ササたちは船から持って来たヤマトゥの酒を島人たちに振る舞い、島人たちは捕り立てのザン(ジュゴン)の肉の入った汁で持て成してくれた。干し肉とは全然違って、捕り立てのザンの肉はとてもおいしかった。焼いたサシバの肉も出てきたのでササたちは驚いた。恐る恐る食べてみるとわりとおいしかった。でも、サシバを捕まえて食べようとまでは思わなかった。
 翌日、来間島の島人たちと別れて、多良間島へと向かった。風に恵まれて船は気持ちよく走ったが、思っていたよりも波が高く、船は大揺れした。キャーキャー騒いでいた若ヌルたちは船室に籠もって、青白い顔でお祈りをしていた。
 島が近づくと波も穏やかになって、若ヌルたちも甲板に出て来て騒ぎ始めた。多良間島もミャークと同じように平らな島だった。
「あの島の女按司(みどぅんあず)、スタタンのボウはわしの弟子なんじゃよ」とクマラパが言った。
多良間島はミャークと八重山の中間にあるので、ミャークから八重山に行く船、八重山からミャークに行く船が必ず立ち寄る島なんじゃ。わしが初めてあの島に行ったのは、ウプラタス按司と一緒に明国の様子を見に行く時じゃった。ボウはまだ十歳の目の大きな可愛い娘じゃった。その時、天気が悪くて、十日ほど島に滞在したんじゃが、わしが若い者たちに棒術を教えるのを見ていて、習いたいと言い出した。わしは基本を教えてやったんじゃ。それから七年後、アコーダティ勢頭(しず)と一緒に、あの島に寄った。ボウは十七歳になっていて綺麗な娘になっていた。わしの事を覚えていて、一人で稽古を続けていたと言って棒術を見せてくれた。わしは驚いたよ。この娘は武芸の才能があると思った。トンドの国から帰って多良間島に寄ったら、ボウは弟子にしてくれと言って、ミャークまでついて来た。両親も娘を頼むと言って許してくれた。わしは野崎に帰って、ボウを鍛えたんじゃ。負けず嫌いな娘で厳しい修行にも耐えた。翌年の十月、わしはアコーダティ勢頭と一緒にターカウに行った。ボウも一緒に行ったんじゃ。ボウは武芸だけでなく、言葉を覚える才能もあった。ターカウに滞在中にヤマトゥ言葉を覚え、トンドに行って明国の言葉も覚えた。ボウは与那覇勢頭(ゆなぱしず)と一緒に琉球にも行ったが、琉球の言葉もすぐに覚えてしまったんじゃよ。娘も母親に似て、武芸もやるし、言葉も堪能じゃ」
「スタタンて何ですか」と安須森ヌルが聞いた。
「古い言葉で『治める』という意味らしい。按司という言葉が琉球から伝わる前は、島の首長はスタタン(認(したた)む)と呼ばれていたようじゃ」
「スタタンですか‥‥‥、今度、兄の事をスタタンて呼ぼうかしら」と安須森ヌルが言うと、
「スタタンのサハチね」とササが笑った。
「サハチ殿とはどんな男かね?」とクマラパが聞いた。
「選ばれた人かしら」とササが言った。
「サハチ兄(にい)は神様に守られているわ」
「ほう。神様に守られた男か。会ってみたいものじゃな」
「あたしたちが琉球に帰る時、一緒に来てください」と安須森ヌルが誘った。
「それがいいわ」とササも手を打った。
津堅島(ちきんじま)に里帰りしましょ」
津堅島か‥‥‥妹も連れて里帰りするか」とクマラパも乗り気になっていた。
 島の北側に船を泊めて、小舟に乗って多良間島に向かった。砂浜に弓矢を構えた兵が数人、待ち構えていた。ササたちは驚いて身構えたが、
「大丈夫じゃ」とクマラパが言って、立ち上がって手を振ると、中央にいた女が合図をして、皆、構えていた弓矢を下ろした。
「お師匠!」と叫んで、合図をした女が小舟に近づいて来た。
「スタタンのボウじゃよ」とクマラパがササたちに言った。
「お師匠、突然、どうしたのです?」と言いながらボウはササたちを見た。
 クマラパの説明を聞いたボウは驚き、ササたちを歓迎してくれた。見慣れぬヤマトゥ船が来たので、倭寇(わこう)かと警戒していたという。
 森の中から武装した男と女が出て来て、クマラパに挨拶をした。
「ボウの夫のハリマと娘のトンドじゃ」とクマラパが言った。
 トンドとタマミガは再会を喜んでいた。二人は五年前に一緒にトンドに行き、翌年にはターカウに行っていた。トンドという名は父と母がトンドで結ばれて、生まれたからだった。自分の名前にちなむトンドの国に行ったトンドは、何を見ても驚き、感激していた。今はウプンマとして母親を助け、トンドで出会った若者を連れて来て一緒になり、二人の子供にも恵まれていた。
 ハリマはターカウのキクチ殿の配下だったサムレーで、ターカウに来たボウに一目惚れして多良間島に来たのだった。ナナがヤマトゥンチュだと知ると目を丸くしてナナを見た。
「ヤマトゥの女子(おなご)がこんな南の島まで来るとは信じられん」とヤマトゥ言葉で言った。
「刀を差している所を見ると、かなりの腕のようじゃな。どこの生まれだね?」
「生まれたのは朝鮮(チョソン)の富山浦(プサンポ)ですが、父は対馬の早田(そうだ)氏です」
対馬の早田水軍の娘か。わしらと共に戦った仲間じゃな。わしの親父は播磨(はりま)の赤松じゃ。援軍として九州に行き、征西府(せいせいふ)の将軍宮(しょうぐんのみや)様(懐良親王(かねよししんのう))に従っていたんじゃよ」
 播磨の赤松というのはササも知っていた。ヤマトゥに行った交易船が瀬戸内海に入って、播磨の国を通った時、護衛してくれたのが赤松氏で、将軍様の側近にも赤松越後守(えちごのかみ)というサムレーがいた。
 ハリマは懐かしそうにナナとヤマトゥの事を話していた。
 小高い丘の上に按司の屋敷があって、その南側に集落があった。タマミガはウプンマと一緒にウプンマの屋敷に行った。ササたちは按司の屋敷に行って、お茶を御馳走になった。久し振りに飲んだお茶はおいしかった。
 ボウが子供の頃、まだミャークに移住していなかったウプラタス按司が福州からミャークへの行き帰りに多良間島に寄っていた。ウプラタス按司はいつも珍しいお土産を持って来た。お茶もその中の一つで、お茶を飲む習慣ができたという。
 ボウの父親はウプラタス按司の船に乗って何度も元(げん)の国に行ったミャークの若者だった。先代の女按司と結ばれてボウが生まれ、元の国の文化を多良間島に伝えた父は、島人から尊敬されて嶺間按司(ンニマーズ)と呼ばれるようになった。クマラパと同じように按司というのは尊称で、実際の按司はボウの母親だった。この島は古くから女が首長として島を守っていた。
 クマラパの弟子になって武芸を身に付けたボウは十八歳の時に野崎按司の船に乗ってターカウに行き、翌年にはアコーダティ勢頭の船に乗ってトンドに行った。その後も、ターカウとトンドに何度も行き、ターカウでハリマに見初められた。
「ボウは手ごわい相手じゃった」とハリマは笑った。
「三度口説いて、三度振られたんじゃ。わしは覚悟を決めて、この島に来た。そして、一緒にトンドに行って、ついにボウを落としたんじゃよ」
「どうやって落としたのですか」とナナが興味深そうに聞いた。
「トンドで見つけた笛を吹いたんじゃよ」
「笛ですか」とナナは驚いた顔をして、ササと安須森ヌルを見た。
「わしはヤマトゥにいた頃、母から教わった笛を吹いていたんじゃが、ターカウに行く途中、なくしてしまったんじゃ。多分、海がしけた時に落としてしまったんじゃろう。ターカウでは笛は手に入らなかったので、すっかり忘れていたんだが、トンドで竹の笛を見つけて、久し振りに吹いてみたんじゃ。そしたら、ボウがわしの笛を聞いて感激したんじゃ。武芸では勝てなかったが、笛で落とせたというわけじゃよ」
「あの時の笛の調べは本当に素晴らしかったわ。涙が出るほど感動したのよ」とボウは言った。
「でも、この島に帰ってきたら、あの時の調べが吹けないのよ」
「あの時はきっと、笛の神様が降りて来たんじゃろう」とハリマは楽しそうに笑った。
「あたしの兄も笛の名手です」と安須森ヌルが言った。
「あたしもサハチ兄に笛を教わったわ」とササが言った。
「兄も笛で女の人を口説いているのかしら?」
「まさか?」とササは笑ったが、急に真顔になって、「高橋殿を口説いたかもしれないわね」と言った。
 安須森ヌルは納得したようにうなづいた。
 ボウの案内で、ササたちは森の中にある古いウタキに行って、神様に挨拶をした。
 神様はササたちにお礼を言った。ユンヌ姫がスサノオの神様を連れて来てくれたという。
スサノオの神様はユンヌ姫様と一緒に曾祖母様(ひいあばあさま)(ウムトゥ姫)に会いにイシャナギ島にいらっしゃいました」
 多良間姫は二代目のウパルズ様の娘で、一千年前の大津波から百年余り経った頃、多良間島に来ていた。大津波多良間島に住んでいた人は全員が亡くなってしまい、以前、どんな人たちが住んでいたのかはまったくわからない。多良間姫が来た時、あちこちから来た五十人くらいの人たちがバラバラに暮らしていた。多良間姫はみんなを集めて、水納島(みんなじま)でタカラガイを採って池間島に送り、琉球の品々と交換して来た。タカラガイの交易が終わるとイシャナギ島からミャークへ送る丸太の中継地として多良間島は栄えた。野崎按司がトンドやターカウと交易を始めると、その中継地となって、今もそれなりに栄えているという。
「三百年前の大津波の時は大丈夫だったのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「ほとんどの人たちが亡くなってしまったのよ。でも、ウプンマはアカギにしがみついていて助かったわ。ウプンマと同じように助かった人たちが三十人くらいいたの。その人たちによって、何とか再建する事ができたのよ」
 ウタキから帰ると愛洲次郎たちと若ヌルたちも来ていて、村の広場に島人たちが集まって来て、ササたちを囲んで歓迎の宴が開かれた。大きな鍋で出されたのは海亀の煮込み料理で、思っていたよりもおいしかった。酒はターカウから仕入れたヤマトゥ酒だった。ササたちは琉球から持って来たピトゥ(イルカ)の塩漬け(すーちかー)を贈って、島人たちに喜ばれた。
「この島に佐田大人(さーたうふんど)も来たのでしょう?」とササがボウに聞いたら、
「この島は佐田大人の船に囲まれてしまったのよ。恐ろしかったわ」と言って、顔をしかめて首を振った。
「あの時は危機一髪じゃったのう」とハリマが言った。
「奴らがターカウに来たのは、わしがこの島に来る前の年の暮れじゃった。一千人も引き連れて来たので、キクチ殿も驚いていた。佐田大人は宇都宮(うつのみや)氏の一族で、南朝の水軍として活躍していたんじゃ。勿論、キクチ殿とも面識があって、お互いに再会を喜んでいた。キクチ殿の父親は将軍宮様の総大将として活躍した武将(菊池武光)だったから、佐田大人から見れば主筋に当たるわけじゃ。キクチ殿は父親の跡を継いだ兄貴(菊池武政)が亡くなって、十二歳だった兄貴の長男(菊池武朝)が跡を継いだ時に、自分の出番はもうないと諦めて、九州を離れてターカウに行ったんじゃ。佐田大人は将軍宮様がお亡くなりになって、もう南朝も終わりだと見切りをつけて九州を離れたんじゃよ。将軍宮様がお亡くなりになったと聞いてキクチ殿も悲しんでおられた。将軍宮様が太宰府(だざいふ)に征西府を開いてから十年間、九州は南朝の国じゃったと二人は懐かしそうに話していた。ターカウにいた時は佐田大人もおとなしくしていたんじゃよ。まさか、あんな凶暴な奴だとは知らなかった。あの時の話し振りではターカウに落ち着くものと思っていたのに、結局、出て来たようじゃ。やはり、キクチ殿と一緒にいては自分の思い通りにはならないと思ったんじゃろう。あの時、ボウたちもターカウに来ていて、わしは翌年の五月、ボウと一緒にこの島に来たんじゃ。奴らは七月にやってきた。この島は奴らの船で囲まれた。佐田大人の配下のサムレーが五人、小舟に乗ってやって来た。抵抗しても無駄だと悟ったボウの母親の女按司は武器を隠して、嶺間按司と一緒に手ぶらで迎えたんじゃ。二人はヤマトゥの言葉がわからない振りをした。言葉が通じないと思って、奴らは好き勝手な事を言っていたようじゃ。この島では一千人の者たちを食わす事ができないとか、若い娘をさらって行こうとか、皆殺しにしてから行こうという奴もいたらしい。女按司が空を見上げて、身振り手振りで嵐が来ると言った途端、真っ黒な雲が流れて来て雨が降って来たんじゃ。雷も鳴り出して、サムレーたちは慌てて小舟で船に戻って行った。島を囲んでいた船も東の方に去って行ってしまったんじゃよ」
「きっと、神様が助けてくれたのよ」とボウが言った。
「あとで聞いたんじゃが、この島に来る前にパティローマ島(波照間島)に寄って、島人たちを殺して、若い娘をさらっていたようじゃ。本当に神様のお陰で助かったんじゃよ」
 ササがハリマにジルーを紹介すると、驚いた顔をしてジルーを見て、「もしかして、愛洲隼人(あいすはやと)殿の倅か」と聞いた。
 ジルーがうなづくと、
「何という事じゃ。愛洲隼人殿の倅がこの島に来たとは驚いた。神様のお導きかもしれんのう」と言って、両手を合わせた。
「父を知っているのですか」とジルーは聞いた。
「わしの親父は水軍の大将で、愛洲隼人殿と一緒に明国まで出陣して行ったんじゃよ」
「ちょっと待って下さい。その隼人は父ではなくて、祖父だと思います。祖父は九州に行って南朝の水軍として働いていました」
「そうか。そなたの祖父か」とハリマはうなづいてジルーを見た。
「そうじゃろうのう。わしより十五も年上じゃった。そなたの祖父が九州に来て、将軍宮様にお仕えした時、親父は隼人殿を屋敷に呼んで歓迎の宴を開いたんじゃよ。わしは当時、まだ十歳じゃった。年が明けて正月に親父は明国を攻めるために出陣した。その時、隼人殿とキクチ殿も一緒に行ったんじゃよ。隼人殿とキクチ殿は同い年で、手柄を競い合って活躍した。そして、仲もよかった。そなたがターカウに行ったら大喜びして迎えたじゃろうが、残念ながら五年前に亡くなってしまった。そなたの祖父は健在なのか」
 ジルーは首を振った。
「九年前に亡くなりました。祖父は九州での活躍はあまり話してくれませんでした」
「そうじゃったか」とハリマはうなづいて、祖父の活躍をジルーに話してくれた。
 祖父は愛洲水軍を率いて、三度、明国に出陣していた。冬に北風に乗って南下して、夏に成果を上げて帰って来た。沿岸の村々を襲うだけでなく、時には馬に乗って内陸まで攻め込んだという。祖父たち水軍の者たちは活躍したが、将軍宮様は九州探題今川了俊(りょうしゅん)に敗れて、太宰府を追われて高良山(こうらさん)に移ってしまう。その年にハリマの父親は明国の水軍と戦って戦死した。翌年には将軍宮様の総大将だった菊池武光が病死して、その半年後には武光の跡を継いだ武政が戦(いくさ)の傷が悪化して亡くなった。武政の弟の三郎(キクチ殿)は配下の者たちを引き連れて九州から去ってしまう。祖父も熊野水軍の者たちと相談して、九州から撤収したのだった。
 ジルーは目を輝かせて、南朝のために働いていた勇敢な祖父の話を聞いていた。
「祖父と一緒に佐田大人も一緒にいたのですか」とジルーは聞いた。
「いや、奴は高麗(こうらい)を攻めていた。対馬の早田水軍と一緒にな。奴の親父は高麗で戦死したんじゃよ。立派な水軍大将じゃった。奴は親父の敵討ちだと言って、高麗で暴れていたんじゃ。高麗で何をしていたのか知らんが、ミャークでの戦を見ると、残虐な事をして来たんじゃろう」
 次の日はのんびりと過ごした。ササたちが知らないうちに、ゲンザ(寺田源三郎)とミーカナ、マグジ(河合孫次郎)とアヤーが仲よくなっていて、楽しそうに浜辺を散歩していた。
「ササも行った方がいいわ」とシンシンが言った。
「どこに?」と海を眺めていたササが聞いた。
「あそこよ」とシンシンが指差す先に、浜辺に一人で座り込んでいるジルーがいた。
「どうして、あたしがあそこに行くのよ」とササはジルーを見ながら言った。
「寂しそうだわ」とナナが言って、ササの背中を押した。
「わかったわよ」とササは二人を見て苦笑するとジルーの方に向かった。
 ササがジルーに声を掛けて、隣りに座るのを見るとシンシンとナナは顔を見合わせて笑った。
「何を考えていたの?」とササはジルーに聞いた。
「祖父の事だよ。祖父を知っている人がこんな所にいたなんて、まるで、夢を見ているみたいだった」
 ササは笑った。
「あたしだって、ミャークで最初に会ったクマラパ様が、祖父を知っていたなんて腰を抜かしてしまうくらいに驚いたわ」
「ハリマ殿が言っていたけど、神様のお導きなのかな」
「きっと、そうよ」
「京都で、ササの噂を聞いて琉球に行ったのも、この島に来るためだったのかもしれない。ハリマ殿から祖父の活躍を聞いて、昨夜(ゆうべ)は感激したけど、祖父の気持ちが少しわかったような気がするんだ。南朝の軍資金や兵糧(ひょうろう)を手に入れるために、祖父たちは明国の村々を荒らし回って略奪を繰り返していたんだ。南朝の水軍と言えば立派に聞こえるけど、やっている事は倭寇と同じだ。いや、倭寇そのものだ。佐田大人がミャークでやったのと同じ事を明国でやっていたのかもしれない。当時はそれが当然の事だと思っていた祖父も、のちになって、罪もない人たちを殺した事を後悔していたのかもしれないって、俺はやっと気づいたんだ。この島に来なければ、祖父の本当の気持ちはずっとわからないままだったに違いない」
 ササは海を見つめているジルーの横顔を眺めながら、なぜか、胸の中が熱くなっているのを感じていた。

 

 

 

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