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長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-76.百浦添御殿の唐破風(第一稿)

尚巴志伝 第二部

 八重瀬按司(えーじあじ)のタブチが帰ったあと、側室としてのメイユーの歓迎の宴が開かれた。主立った重臣たち、サグルー夫婦とサスカサ、女子(いなぐ)サムレーと侍女たちも呼んで、与那原(ゆなばる)にお祭りの準備に行っている佐敷ヌルとユリも呼び戻した。
 佐敷ヌルとサスカサによって、略式の婚礼の儀式が行なわれ、メイユーは感動して涙を流しながらサハチを見て、「あたし、一番、幸せです」と言った。
 メイユーのために佐敷ヌルとユリが横笛を吹き、サハチも一節切(ひとよぎり)を吹いた。遅れてやって来たウニタキも三弦(サンシェン)を弾いて歌い、女子サムレーたちが踊った。子供たちもメイユーのために笛を吹き、メイユーは嬉しくて泣いてばかりいた。みんながメイユーを歓迎してくれるのを見ながらサハチも嬉しくて、つい飲み過ぎてしまった。
 翌朝、目が覚めるとメイユーはいなかった。朝早くから側室としての仕事に励んでいるのかなと思ってナツに聞くと、メイユーは与那原に行ったという。
「与那原?」
「お祭りの準備が間に合わないって、佐敷ヌルさんから言われて、お手伝いに行きました」
「すると、しばらく帰って来ないのか」
「そうかもしれません」
「そうか」と言って、サハチは外を眺めた。
 日差しが強く、今日も暑くなりそうだった。
 与那原グスクのお祭りは八月八日だった。あと二十日余りしかなかった。初めてのお祭りなので、佐敷ヌルも張り切っているのだろう。側室になったと思ったら、お祭りの準備に行ってしまうなんて‥‥‥サハチは溜め息を漏らした。
 七月二十三日、ンマムイ(兼グスク按司)が山南王(さんなんおう)の書状を持って再び、今帰仁(なきじん)に向かった。前回と同じように、ウニタキとキンタがンマムイを守るためにあとを追った。メイリンが娘と一緒に来ているのにヤンバルまで行かなくてはならないなんて‥‥‥とウニタキはぼやいていた。
 サハチは首里(すい)グスクで、十月に送る進貢船(しんくんしん)の準備に忙しかった。正使はサングルミーとすんなり決まったが、副使がなかなか決まらず、結局、タブチに頼む事になった。サングルミーとも二度、一緒に行っていて、サングルミーもタブチなら充分に副使が務められると言った。
 サハチはタブチを首里グスクに呼んだ。話を聞いたタブチは驚いていた。
「わしが副使?」
「サングルミーの推薦です。お願いします」
「中山王の家臣でもないわしが副使を務めても大丈夫なのか」
「重臣たちも八重瀬殿が適任だと言いました。文句を言う者は誰もいませんよ」
 タブチは感激して帰って行った。
 ンマムイのために築くグスクは宮平川(なーでーらかー)が国場川(くくばかー)に合流する地点の内側にある小高い山の上に築く事に決まり、棚原大親(たなばるうふや)を普請奉行(ふしんぶぎょう)に任命した。棚原大親はシタルー(山南王)と一緒に首里グスクの普請奉行を務めていたので、適任者だった。すでに、現地に行って縄張りを始めていた。
 ンマムイは旅立ってから十日後に戻って来た。妻子は今帰仁に残したままで、刺客(しかく)の襲撃もなかったという。ンマムイだけを殺しても、山北王(さんほくおう)を動かす事はできないので、シタルーも諦めたようだった。
「随分と早いな。お前がせかせたんじゃないのか」と報告に来たウニタキに言うと、
「俺は一度も奴とは会っていない。馬で行ったから早いのだろう」
「お前たちも馬で行ったのか」
「俺とキンタは馬で行ったが、配下の者たちは走らせた」
 サハチは笑って、「御苦労だったな。それで、同盟はまとまりそうか」と聞くとウニタキはうなづいた。
「奴の顔付きからして、うまく行ったようだ。今頃、シタルーと会っているだろう。その足で島添大里(しましいうふざとぅ)に行くはずだ」
 サハチはウニタキと一緒に島添大里に向かった。
 サハチとウニタキがお茶を飲みながら、明国に行った思紹(ししょう)とヂャンサンフォンの話をしていると、ンマムイがやって来た。
「お役目、無事に終了しました」とンマムイはホッとしたような顔付きで、山南王と山北王の同盟が決まった事を告げた。
 十月の二十日、山南王の三男、グルムイに山北王の長女、マサキが嫁ぎ、山北王の若按司、ミンと婚約した山南王の八女、ママチーが母親と一緒に今帰仁に行くという。
「八女?」とサハチは驚き、「シタルーは何人の子がいるんだ」とウニタキに聞いた。
「十四、五人はいるんじゃないのか。シタルーも山南王になったあと、あちこちから側室を贈られているからな」
「そうか。その八女というのはいくつなんだ」
「その娘も山北王の若按司も九歳です」とンマムイが答えた。
「九歳か。婚礼はまだ先の話だな。とりあえずは人質というところか。十月の婚礼という事は花嫁は船で来るんだな」
「油屋の船に乗って来ます。俺の妻と子も一緒に来る事になっています」
「そうか、一緒に来るのか。シタルーの娘は陸路で今帰仁まで行くのか」
「いえ、今月中に船で行きます」
「ほう、娘を先に送るのか。母親も一緒だと言っていたな。勿論、側室なんだろう」
「奥間(うくま)から贈られた側室だから、ヤンバルに返してやると言っていました」
「なに、奥間の側室を今帰仁に送るのか」
「美人なので勿体ないが、仕方がないと言っていました。それとは別に、山北王に側室を贈るようです」
「成程、側室を贈ってグスク内の様子を探らせるつもりだな。しかし、つなぎの者はいるのか」とサハチはウニタキを見た。
「石屋がいる」とウニタキは言った。
今帰仁の石屋もシタルーの石屋とつながっているのか」
「つながっている。よくわからんが、何代か前の今帰仁按司が高麗(こーれー)から石屋を呼んでグスクに石垣を築き、その石屋が浦添(うらしい)グスクの石垣を築いたんじゃないのかな。そして、あちこちに石垣が広まって行った。石屋の頭領は今帰仁にいるのかもしれんな」
「石屋か‥‥‥何としてでも味方に付けなければならんな」とサハチは言ってから、ンマムイを見て、「シタルーは、中山王を挟み撃ちにする前に、南部をまとめろという条件を呑んだのだな」と聞いた。
「呑みました」
「シタルーは東方(あがりかた)を味方に付けない限り、首里を攻める事はできない。しかし、東方の按司たちは皆、タブチとつながっている。南部を統一するのは難しいな」
「今度はタブチが狙われそうだな」とウニタキが言った。
「刺客か‥‥‥タブチがいなくなれば、糸数(いちかじ)が寝返るかもしれんな。しかし、玉グスクと知念(ちにん)は寝返らないだろう。だが、タブチがいなくなると困る。シタルーを抑えておくのにタブチは絶対に必要だ」
「タブチの事はそれとなく見守ってはいるが、人数を増やした方がよさそうだな。そのタブチなんだが、新(あら)グスクにいた次男に喜屋武(きゃん)岬の近くにグスクを築かせているそうだ」
「喜屋武岬? どこだ」
「最南端と言ってもいい所だ。お前が南風原(ふぇーばる)にグスクを築くと聞いて、タブチも海の近くにグスクを築こうと考えたのだろう」
「タブチは船を持つつもりなのか」
「船を持って、ヤマトゥまで行く気かもしれんな。もしかしたら、タブチの隠居グスクかもしれんぞ。海の近くならシタルーに襲われても、海に逃げられるからな」
「タブチも身の危険を感じているのかな」
「さあな。ところで、山南王の婚礼にお前も呼ばれるのか」
「さて、どうなる事やら。シタルーと島添大里按司の同盟はまだ生きているようだし、シタルーは招待状を送ってくるかもしれんな」
「出るのか」
「前回の婚礼の時はサグルーに行かせたが、今回はどうしたものだろうな」
「ンマムイも呼ばれるんじゃないのか」とウニタキがンマムイを見た。
「俺は出なければならないでしょう。婚礼が終わったら、はっきりと寝返りますよ」
「それがいい」とウニタキはンマムイの肩をたたいた。
 八月八日、与那原グスクで初めてのお祭りが行なわれた。与那原グスクは運玉森(うんたまむい)のマジムン屋敷の跡地に建てられ、一の曲輪内に按司の屋敷があり、二の曲輪に古いウタキと運玉森ヌルの屋敷があり、三の曲輪が一番広く、サムレー屋敷や厩(うまや)があった。三つの曲輪は石垣に囲まれていて、お祭りは三の曲輪を開放して行なわれた。
 サハチは見に行く事はできなかったが、暑い中、山の上にあるグスクに大勢の人が集まって大盛況だったという。舞台では、奇想天外なお芝居『運玉森のマジムン屋敷』が演じられた。
 ミユシという旅のサムレーがマジムン屋敷にやって来て一夜を過ごす。夜中にマジムンが次々に現れてミユシに襲い掛かってくる。ミユシはマジムンたちを退治する。マジムンたちがいなくなると立派な屋敷も消えてしまう。夢でも見ていたのかとミユシは首を傾げながら山を下りて行く。出て来るマジムンは角の生えた赤鬼、気味の悪い老婆、牛のお化けに魚のお化け、手が六本もある美女、背丈が一丈(三メートル)もある怪物などで、ミユシとマジムンの戦いを子供たちが大喜びして見ていたという。
 与那原のお祭りが終わって、佐敷ヌルとメイユーが島添大里に帰って来た。
「来月は平田のお祭りがあるから、また手伝ってね」と佐敷ヌルはメイユーに言い、「勿論よ」とメイユーは笑って答えていた。
 また会えなくなるのかと思うと切なくなって、サハチはメイユーを連れて、馬に乗ってグスクから飛び出した。別に行く当てもなかったが、馬天浜に来ていた。
 馬から下りて二人が海を眺めていると、ウミンチュたちが集まって来た。ウミンチュたちはメイユーが側室になったお祝いをやろうと言って、浜辺で酒盛りが始まった。ウミンチュたちは二年前、台風からの復興を手伝ってくれたメイユーに感謝していた。
 叔父のサミガー大主(うふぬし)も長男のハチルー夫婦と次男のシタルー夫婦を連れて来て、宴に加わった。叔母のマチルーも子供たちを連れて来て加わった。
「この娘(こ)、女子サムレーになりたいんですって。お願いするわね」とマチルーは娘を見ながらサハチに言った。
 娘のシビーは十六歳で、佐敷グスクに通って剣術を習っているという。
「お嫁に行かなくてもいいのか」とサハチが聞くと、「クニちゃんみたいになりたいの」と言った。
 首里の女子サムレーのクニはシビーの従姉(いとこ)で、今、ヤマトゥ旅に出ていた。
「お前もヤマトゥに行きたいのか」
 シビーはうなづいた。
「ササさんから博多のお話や京都のお話も聞いたのよ。あたしも行ってみたいわ」
「そうか。女子サムレーになるには強くならないと駄目だぞ」
「あたし、強くなります」
 真剣な顔をして言うシビーを見ながら、「頑張ってね」とメイユーが言った。
「メイユーさんも強いんでしょ。あたしに教えて下さい」
「いいわよ」とメイユーは笑った。
 シビーは嬉しそうな顔をして帰って行った。と思ったら二本の木剣を持って戻って来た。
「お願いします」とメイユーに頭を下げて、シビーは木剣を渡した。
 それを見ていたウミンチュたちがはやし立て、指笛が飛んだ。
 シビーとメイユーはウミンチュたちに囲まれ、サハチが立ち会って試合をした。勿論、メイユーにはかなわないが、その剣さばきはサハチが思っていた以上に素晴らしかった。
 試合のあと、悔しそうな顔をしているシビーを見ながら、「素質はあるわ」とメイユーはサハチに言った。
 サハチはうなづいた。若い頃のマチルギに似ていると思っていた。
「あたしの弟子にしてもいいかしら」とメイユーは言った。
「えっ!」とシビーは驚いた顔でメイユーを見た。
「あなたを必ず、女子サムレーにしてあげるわ」
 叔母のマチルーの許可を得て、シビーを島添大里で預かる事に決まった。
 八月の半ば、百浦添御殿(むむうらしいうどぅん)の唐破風(からはふ)が完成した。以前よりもずっと豪華で立派に見えた。屋根の中央には口を開けた龍がいて、屋根の下にも龍の彫り物があった。新助が彫った龍は迫力があって、今にも動き出しそうだった。
 馬天ヌル、佐敷ヌル、サスカサによって完成の儀式が執り行われた。儀式が終わると普請に携わった職人たちをナーサの遊女屋(じゅりぬやー)『宇久真(うくま)』に呼んで、完成祝いの宴を盛大に行なった。
 一徹平郎(いってつへいろう)も源五郎も新助も栄泉坊(えいせんぼう)も、宇久真の屋敷の立派さに驚き、ぞろぞろと出てくる遊女(じゅり)たちの美しさにも驚いた。
「さすがは琉球の都じゃのう。噂には聞いていたが、こんなにも美女が揃っているとは驚いた」
 一徹平郎が嬉しそうな顔をしながら源五郎に言った。
「向かい側にある『喜羅摩(きらま)』には行った事があるが、やはり格が違うのう。ここにはしかるべき者の紹介がないと入れんと言っていた。まさか、ここに入れるとは思わなかったわ」と源五郎は鼻の下を伸ばして美女たちを眺めていた。
 サハチがみんなをねぎらう挨拶をして、宴は始まった。遊女たちが男たちの前に座り、お酌をして乾杯をした。
「お久し振り」とサハチの前に来たマユミがニコッと笑った。
「それ程、お久し振りでもないだろう」
「そうか。二か月前に会同館で会ったわね。奥間に帰ったからかしら。随分と長い事、按司様(あじぬめー)に会わなかったような気がするわ」
「あのあと、奥間に行ったのか」
「そう。進貢船(しんくんしん)が早く帰って来てくれたんで、次の進貢船が帰って来る前に行って来ようってなったのよ」
「そうか。ンマムイに会ったそうだな」
「何度か、女将(おかみ)さんを訪ねて、ここに来た事があったんだけど、奥間で会うなんて驚いたわ」
「俺も奴が奥間まで行くとは思わなかった。そして、そこでナーサと出会うなんて不思議な縁だと思ったよ」
「ウニタキさんがンマムイの亡くなったお姉さんの旦那さんだったんですってね。ンマムイは驚いていたわ。ンマムイから若様の父親は誰だって聞かれたのよ」
「教えたのか」
 マユミは首を振った。
「でも、気づいたんじゃないかしら。若様の長男はサハチで、長女はマチルギだもの」
「えっ、俺とマチルギの名を付けたのか」
「若様は奥方様(うなじゃら)を本当のお母さんのように思っているのよ」
「そうか。マチルギが喜ぶだろう」
「ンマムイは無事に帰って来たの」とマユミは聞いた。
「ンマムイが危険だと思ったのか」
「女将さんが心配していたわ」
「そうか。ンマムイは無事だよ」
「ねえ、聞いたわよ。唐人(とーんちゅ)の女を側室に迎えたそうね。二人目の側室だわ」
「明国に行った時、メイユーにはお世話になったんだよ」
「羨ましいわ。ねえ、今度、あたしを島添大里グスクに呼んでよ。按司様の側室に会いたいわ」
「会ってどうするんだ」
「どうもしないわ。ただ、お話がしたいだけ」
「そうか。何か祝い事があったら呼ぼう」
「本当よ。約束してね」
 サハチはうなづいて酒を飲んだ。
 一徹平郎も源五郎も新助も栄泉坊も遊女たちと楽しそうにやっていた。坊主頭だった栄泉坊の髪はすっかり伸びて、琉球風にカタカシラを結っていた。今回の仕事が終わったら、栄泉坊はイーカチの配下になる事になっていた。
 イーカチは図画所(ずがしょ)の所長となり、配下の栄泉坊と一緒に王府のために絵を描く事になる。助手として三人の若者と五人の娘が入る事に決まっていた。図画所はグスクの南側の城下に作られ、今、イーカチは龍天閣(りゅうてぃんかく)に飾るサミガー大主の肖像画を描いていた。
 佐敷ヌルはメイユーとユリを連れて平田に泊まり込み、お祭りの準備を進めていた。メイユーは弟子にしたシビーも連れて行った。サハチは進貢船の準備に追われて忙しかった。
 そんな頃、糸満(いちまん)の港から『油屋』の船に乗って、山北王の若按司と婚約した山南王の娘とその母親、山北王に側室として贈る娘が、数人の侍女を連れて今帰仁に向かって行った。
 ウニタキはメイリンとその娘のスーヨンを連れて、あちこちに行っていたが、ミヨンとファイテの事で悩んでいた。
 ミヨンはファイテが明国に行く前に一緒になりたいと言いだし、ウニタキは三年後に帰って来てからでいいと反対した。ミヨンは三年も待てない。ファイテのお嫁さんになって、夫の帰りを待っていると聞かなかった。妻のチルーもミヨンに賛成して、身内だけで婚礼をやりましょうと言っている。ウニタキはどうしようかと迷っていた。
 ンマムイはシタルーに襲撃された事などすっかり忘れたかのように、相変わらずフラフラしていた。島尻大里(しまじりうふざとぅ)に行ってシタルーを訪ねたかと思えば、八重瀬に行ってタブチと会い、母親とも会っていた。島添大里にも度々顔を出し、サハチが留守の時はナツと会ったり、女子サムレーたちと会ったりしていた。
 ナツから聞いた話だと、タブチの末っ子のチヌムイが阿波根(あーぐん)グスクに通って、武芸を習い始めたという。シタルーの娘のマアサも女子サムレーになると言って通っていた。チヌムイとマアサは従兄妹(いとこ)同士で、お互いに敵だとは思っていないのかもしれない。山南王が山北王と同盟したあと、南部で戦が起きない事をサハチは願った。
 平田のお祭りでは、『瓜太郎(ういたるー)』が演じられた。去年、佐敷のお祭りで演じられて大評判だった『瓜太郎』を是非見たいと平田大親の妻、ウミチルが言ったのだった。前回の時、ササが瓜太郎を演じ、シンシンがサシバを演じ、ナナが犬を演じ、リンチーが亀を演じて好評を得た。その四人に負けないように、平田の女子サムレーたちは必死になって稽古を重ねた。主役の座を勝ち取ったのはアヤで、始終飛び跳ねている難しいサシバの役はミユが勝ち取った。犬はナカウシ、亀はシティ、鬼はマチ、リー、ミグ、アイの四人が演じた。
 佐敷の『瓜太郎』に決して負けない出来映えで、見ていた観客は大喝采を送った。平田大親とウミチルは大喜びして、佐敷ヌルとユリは大成功に満足し、手伝っていたメイユーとシビーも感動していた。
 平田のお祭りの二日後、ファイテとミヨンの婚礼が密やかに行なわれた。ファイチの家族とウニタキの家族、それにサハチとマチルギが加わり、佐敷ヌルとサスカサによって婚礼の儀式が行なわれた。
 結局、ウニタキが娘の意志に押されて、旅立ち前の婚礼となった。三年後、ファイテが帰って来たら、帰国祝いと同時に盛大な婚礼をやる事にして、今回は身内だけの婚礼だった。ミヨンはファイテの妻となり、旅立ちまでの一か月余りを隣りのファイチの屋敷で過ごす事になった。

 

 

 

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目次 第二部

目次

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第二稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第一稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第一稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第一稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第一稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第一稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第一稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第一稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第一稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第一稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第一稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第一稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第一稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第一稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

目次

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。尚忠。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346-    中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    勝連按司の後見役。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
タルムイ(太郎思) 1385-1429  豊見グスク按司汪応祖の長男。妻は尚巴志の妹。
タブチ       1360-1414  八重瀬按司。シタルーの兄。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳の創始者。
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫。
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。

 

2-75.三か月の側室(第一稿)

尚巴志伝 第二部

 ンマムイたちが今帰仁(なきじん)を発ち、本部(むとぅぶ)の海辺で遊んでいた頃、浮島に三姉妹の船が今年も二隻やって来た。
 サハチは十月に明国(みんこく)に送る官生(かんしょう)を決める会議があって、メイユーを迎えには行けなかった。代わりにマチルギが迎えに行った。夕方、マチルギは戻って来て、「メイファンが子供を連れて来たわよ」と言った。
「なに、メイファンが来たのか」とサハチは驚いた。
「チョンチって名前の可愛い男の子よ。ねえ、ヂャンウェイ(ファイチの妻)はチョンチの事を知っているの」
「えっ!」とサハチはマチルギを見た。
「隠したって、ファイチの子供だってすぐにわかったわ」
「そうか‥‥‥ヂャンウェイは知らないだろう」
「まったく、もう。また、あたしが出て行かなくちゃならないのね」
 サハチは何も言えなかった。
「歓迎の宴が始まるわよ。ウニタキがいないんだから、あなたは行った方がいいわよ」
 サハチはうなづいた。あまりにも物わかりのいいマチルギが不気味だったが、マチルギの気が変わらないうちに浮島に向かった。
 メイファンの屋敷に行くと庭でメイユーが待っていて、サハチを見ると駆け寄ってきて抱き付いた。
「会いたかったわ」とメイユーは言ってサハチを見つめた。
「俺もさ」とサハチはメイユーを抱きしめた。
 二人が揃って屋敷の二階に行くと、酒盛りが始まっていて、明国に行った思紹(ししょう)とヂャンサンフォン(張三豊)の話をしていた。
「親父は杭州(ハンジョウ)の西湖(せいこ)の屋敷に行ったのか」とサハチは聞いた。
「行ったそうです」とファイチが答えた。
泉州まで行けずに温州(ウェンジョウ)に着いて、色々と問題があったようですが、半月後に何とか上陸する事ができて、王様(うしゅがなしめー)とヂャン師匠はみんなと別れて、杭州に向かったようです」
「突然、二人が現れたのでびっくりしました」とメイファンが言った。
「お久し振りです」とサハチはメイファンに挨拶をして、「二人が突然、お邪魔してすみませんでした」と謝った。
「いいえ。楽しかったわ」とメイファンは笑った。
 子供を産んだせいか、メイファンは以前よりも落ち着いているように見えた。
「ヂャン師匠は名前を隠していたんですが、たまたま、師匠を知っている者が訪ねて来て、大騒ぎになったようです。王様は東行道士(ドンハンダオシー)で、ヂャン師匠は西行道士(シーハンダオシー)と名乗っていたそうです」とファイチが言った。
「親父は道士になったのか」
「ジャン師匠の弟子になったようです。大騒ぎになったあと、二人は西湖を離れて、拠点となっている島に行ったそうです。その島に半月くらい滞在して、海賊たちに武芸の指導をしてから、武当山(ウーダンシャン)に向かったようです」
「今頃は武当山で修行しているのかな」
「王様が暗闇の洞窟を歩いているかもしれませんね」とファイチは笑った。
「あたしたちがヂャン師匠の孫に違いないって噂になって、ヂャン師匠の弟子や孫弟子だと名乗る者たちが大勢、押し掛けて来たらしいわ」とメイユーが言って笑った。
「その噂が応天府(おうてんふ)(南京)まで届いたらしくて、師匠たちが武当山に旅立ったあと、偉そうな役人までやって来たのよ」とメイリンが言った。
「あまりにしつこくあれこれと尋ねるんで、あたしたちがヂャン師匠の孫ですって言ってやったわ」とメイファンが言った。
「その役人に武当山に行った事を教えたのですか」とサハチがメイファンに聞いた。
「教えてやったわ。永楽帝(えいらくてい)がどうしてもヂャン師匠に会いたいって言うんでね。ファイチから聞いたけど、師匠は永楽帝から逃げていたんですってね。悪い事をしてしまったわ」
永楽帝はまだ、ヂャン師匠を探していたのですか。武当山で騒ぎにならなければいいが‥‥‥」とサハチは心配した。
「大丈夫ですよ」とファイチが言った。
武当山の者たちは皆、師匠の味方ですから、そう簡単に見つかりません」
「そうだな。無事を祈ろう」
 今回、琉球に来たのはメイファン、メイユー、メイリンの三姉妹とリェンリーで、ユンロンは来なかった。慶良間之子(きらまぬしぃ)との仲が父親のジォンダオウェンに知られ、琉球に行く事を禁止された。琉球に行けないなら、ヂャン師匠と一緒に旅に出ると言って、思紹とヂャンサンフォンに付いて行ったという。
「クルーの奴がユンロンに惚れなければいいが」とサハチはまた心配した。
 旧港(ジゥガン)(パレンバン)に行ったメイユーとリェンリーはヤマトゥから帰って来たシーハイイェン(施海燕)と会っていた。去年、いなかったので心配していたが、無事に帰って来て、本当によかったと喜んでいた。しかも、博多でサハチと出会い、一緒に琉球に行ったと聞いて驚いた。シーハイイェンはまた琉球に行きたいと言っていたという。
「俺も旧港に行ってみたいよ」とサハチが言うと、「一緒に行きましょ」とメイユーが嬉しそうな顔をして言った。
「ウニタキとファイチと、また三人で出掛けるか」
「ウニタキさんはどうしたの」とメイリンが聞いた。
「ちょっとした仕事で北の方に行っている。そろそろ戻って来るだろう」
 サハチはファイチの息子のファイテと浦添按司(うらしいあじ)の息子のジルークが官生に決まった事をファイチに知らせた。
「えっ、ファイテが国子監(こくしかん)に入るの」とメイファンが驚いてファイチを見た。
 ファイチはサハチにお礼を言って、嬉しそうに乾杯した。
「凄いわね」とメイユーは感心して、「でも、ファイチは科挙(クァジュ)に受かった秀才だったんでしょ。息子が国子監に入るのは当然よ」と言った。
「チョンチも科挙に合格するかしら」とメイファンが言うと、
「何を言っているの。チョンチはお役人にはならないわ。あたしたちのお頭になるのよ」とメイユーが言った。
「そうだったわね。あたしたちの跡を継いでもらわなくちゃね」
 その夜、サハチはメイユーと夜遅くまで語り合い、そして、一緒に眠った。翌日は、いつものように首里(すい)グスクの北の御殿(にしぬうどぅん)で政務を行ない、何となく、マチルギと顔を合わせるのが恐ろしかったので、島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに帰った。すると、島添大里グスクにマチルギがいた。
 マチルギは自分の部屋の片付けをしていた。不思議に思って、「何をしているんだ」とサハチが聞くと、「お引っ越しよ」とマチルギは言った。
「メイユーが来るわ。あたしのお部屋を空けて、メイユーを入れるの」
「メイユーがここに住むのか」
「側室になったんだから当然でしょ」
「お前の部屋がなくなったら、お前が帰って来た時、どうするんだ」
「メイユーがいるのは三か月だけよ。その三か月間はここの事はナツとメイユーに任せるわ」
「何もお前の部屋を空けなくても、会所(かいしょ)を使えばいいんじゃないのか」
「それじゃあお客さんみたいじゃない。三ヶ月間、側室気分を味わわせてやりたいのよ」
 サハチはそれ以上は言わなかった。何を言っても無駄だ。マチルギの考え通りにやらせるしかなかった。マチルギは部屋の中を片付け、メイユーのために必要と思われる物を用意して、首里に帰って行った。
 ナツが子供たちを連れて帰って来て、マチルギの部屋を見て驚いた。
「奥方様(うなじゃら)のお部屋、どうなっちゃったの」とナツがサハチに聞いた。
 子供たちも心配そうに部屋の中を見て、「お母さんの物がなくなっている」と騒いだ。
「メイユーが来るそうだ」とサハチは言った。
「えっ、奥方様のお部屋にメイユーが入るの」
「何を考えているんだか、俺にはさっぱりわからん」
 八歳のマシューと六歳のマカトゥダルが泣いていた。
 三日後、首里グスクにいたサハチをウニタキが訪ねて来た。ンマムイが今帰仁から帰って来たという。
「襲撃はあったのか」とサハチが聞くと、うなづいて、刺客(しかく)が持っていた暗号文を見せた。
「ンマムイが言うには、武寧(ぶねい)を殺したアミーが同じような物を持っていたと言った」
「なに、アミーか。アミーは今、何をしているんだ」
「わからん。島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクにはいない。多分、粟国島(あぐにじま)で若い者たちを鍛えているのだろう」
「それで、皆、無事だったんだな」
「大丈夫だ。敵は皆、眠ってもらった。結果をシタルー(山南王)に知らせる者はいないはずだ」
「そうか。無事でよかった。ンマムイたちは阿波根(あーぐん)グスクに帰ったのか」
「いや、今、城下の一徹平郎(いってつへいろう)の屋敷にいる。妻と子は今帰仁に置いてきたんだ」
「なに、ンマムイだけ戻って来たのか」
「ヤタルー師匠と二人だけだ。妻は恐ろしくて阿波根グスクには帰れないと言っていた」
「そうだろうな。無事に帰って来ても狙われる可能性は充分にある」
「ンマムイにはまだ言っていないんだが、奴を東方(あがりかた)に移したらどうだ」
「移すって、どこにだ」
南風原(ふぇーばる)辺りにグスクを築いて移せばいい。長嶺(ながんみ)グスクに対する守りを固めるには南風原にグスクを築いた方がいい」
「確かに、上間(うぃーま)だけでは守りは弱い。上間グスクと与那原(ゆなばる)グスクの中間辺りにグスクが必要だな」
「考えておいてくれ」
 サハチはうなづいて、「三姉妹が来たぞ」と言った。
「なに、来たのか。メイリンも来たんだな」
「ああ、可愛い娘を連れて来た」
「なに、スーヨンを連れて来たのか。可愛くなっただろうな。どうして、娘を連れて来たんだ」
「メイファンがチョンチを連れて来たので、遊び相手に連れて来たのだろう」
「なに、メイファンも来たのか」
 サハチの返事も待たずに、ウニタキは飛び出して行った。
 翌日の午後、ンマムイが首里グスクにサハチを訪ねて来た。グスク内にンマムイを入れる事なく、サハチが大御門(うふうじょー)の外に出た。
「師兄(シージォン)、俺をこのグスクに入れるのはうまくないのですか」とンマムイは乗って来た馬を引きながら聞いた。
首里グスク内は間者(かんじゃ)だらけだ。山南王(さんなんおう)が贈った側室がいるし、山北王(さんほくおう)が贈った側室もいる。側室に付いて来た侍女たちが、グスク内の様子を探って、それぞれの王に報告しているんだよ。お前を入れると、お前がここに来た事が、両方の王に筒抜けになる」
「成程」とンマムイはうなづき、「中山王が山北王に贈った側室が、運天泊(うんてぃんどぅまい)の湧川大主(わくがーうふぬし)の屋敷にいましたよ」と言った。
 二人は北曲輪(にしくるわ)の土塁に沿って、城下とは反対側の方に向かった。
「湧川大主とはどんな男だ」とサハチは歩きながらンマムイに聞いた。
「抜け目のない男です。交易を担当していて、海賊たちともかなり親しいです」
「今年も海賊たちは来たんだな」
「三隻の船でやって来ました。海賊たちが毎年来てくれるので、山北王は進貢船(しんくんしん)を出すのをやめてしまいました」
「そうか。海賊はリンジェンフォン(林剣峰)という奴だろう」
「さすがですね。リンジェンフォンの倅のリンジョンチェン(林正賢)が来ています。ソンウェイ(松尾)という松浦党(まつらとう)の男も一緒です」
「なに、ソンウェイも来ているのか」
「ソンウェイを知っているのですか」
「ああ、明国で会った事がある」
「そうでしたか」とンマムイはサハチを見ながら、明国の海賊の事まで詳しく知っているサハチがやけに大きく感じられた。
 サハチはンマムイを旅芸人たちの小屋に囲まれた広場に連れて行って、旅の話を聞いた。
 旅芸人たちは三か月間、島添大里グスクの佐敷ヌルの屋敷に泊まり込んで、歌や踊りの基本をしっかりと身に付け、ここに戻って来てからは思紹の側室たちの指導を受けていた。王様の側室として送り込まれただけあって、側室たちは皆、様々な芸を仕込まれていた。二人づつが交替で、ここまで通って教えていた。側室たちはいい気分転換になると言って喜んでいた。
 サハチがンマムイから奥間(うくま)でナーサに会った時の話を聞いているとウニタキが現れた。
「お前のあとを付けている奴は誰もいなかった」とウニタキはンマムイに言った。
「師兄、ありがとうございます。何となく、誰かに付けられているような気がしていたんです」
「大丈夫だ」とウニタキはうなづいた。
 ンマムイは話の続きをサハチに話した。ここに来る前、山南王と会って来た事まで話すと、「俺はこれからどうしたらいいのでしょう」と言って、サハチとウニタキを見た。
「お前の奥さんと子供はもう阿波根グスクには帰れないだろう。どうだ、この際、シタルーから離れて東方に入らないか」とサハチはンマムイに言った。
「お前が東方に入れば、俺がお前を殺す理由はなくなる。逆に、お前たちが殺されれば、シタルーが裏切り者を殺したと思われるだろう。シタルーがお前の奥さんを殺した事が山北王にばれれば、同盟がつぶれるだけでなく、山北王は中山王と同盟して、シタルーを倒す事になろう」
「阿波根グスクを捨てろと言うのですね」
「お前のために南風原にグスクを建てるつもりだ。まだ、場所までは決まっていないが、グスクが完成したら、そこに移ればいい。それまで、奥さんと子供は今帰仁に預かってもらった方がいい」
「わかりました。俺はもう一度、今帰仁に行く事になります。そして、帰って来たら、東方に移る事にします。師兄たち、よろしくお願いします」
「よし、決まった」とウニタキはンマムイの肩をたたくと、どこかに消えて行った。
「ここの芸人たちは、ウニタキ師兄が作ると言っていた旅芸人たちですか」
 サハチはうなづき、「ようやく、これほどの腕になったが、まだ旅には出られない。まだまだ稽古を積まなければならん」と言って笑った。
「踊りを教えている美人(ちゅらー)は誰なんです」
「中山王の側室だよ」
「えっ、どうして、王様の側室がこんな所で踊りを教えているんです」
「気晴らしさ」
 ンマムイは軽く笑って、踊りを教えている側室を見ながら、「何となく、姉のウニョンに似ているような気がします」と言った。
「あれは松浦夫人(まつらふじん)といって、松浦党から贈られた側室だ。朝鮮人(こーれーんちゅ)だよ」
朝鮮人でしたか‥‥‥ウニタキ師兄が義兄だった事を知り、今回、義兄に命を助けられて、俺も決心しました。中山王のために、いえ、サハチ師兄のために生きようと決心を固めました」
 サハチはンマムイの顔を見つめ、「お前が味方になってくれると大いに助かる」と言った。
「師兄‥‥‥」と言って、ンマムイはサハチにうなづいた。
「宇座の御隠居(うーじゃぬぐいんちゅ)、ナーサ、ヂャン師匠、ウニョンの夫だったウニタキ師兄、みんな、サハチ師兄につながっています。俺はサハチ師兄に会うために、それらの人たちに出会ったような気がしています」
「それは逆も言えるぞ。俺がそれらの人たちに出会ったのは、お前に会うためだったのかもしれない。本来なら敵(かたき)同士の俺たちが敵討ち以外で出会う事はない。それらの人たちのお陰で、こうして会っている。感謝しなければならんな」
 サハチはンマムイを連れて、旅芸人の小屋から離れた。
今帰仁に出掛ける時は知らせてくれ。また、ウニタキとキンタを付ける」
「わかりました」と言って、馬に跨がるとンマムイは帰って行った。
 翌日、サハチが島添大里グスクに帰ると、メイユーが来ていた。ナツと一緒にグスク内を歩き回って、側室としての仕事を教わっていた。メイユーが側室になったのは嬉しいが、ここで暮らすというのは、何となく違うような気がした。メイユーに侍女を付けて、城下の屋敷に入れた方がよかったのにとサハチは思っていた。
 女子(いなぐ)サムレーのシジマに聞くと、マチルギがメイユーを連れて来たのは昨日で、みんなにメイユーを按司様(あじぬめー)の側室だと紹介して、仲よくしてねと言ったという。
按司様とメイユーの噂は聞いていたけど、側室になるなんて驚きました」とシジマは言った。
「俺とメイユーの噂というのは何だ」
「一昨年(おととし)の台風の時、按司様はメイユーとずっと一緒にいたでしょ。それで、メイユーが按司様の新しい小奥方様(うなじゃらぐゎー)だって噂になったのです」
「その噂、マチルギも知っているのか」
「勿論、知っていますよ」
「そうか。去年、俺が留守の時、マチルギはメイユーとよく会っていたのか」
「メイユーさんは佐敷ヌルさんとよく出掛けていました。奥方様と会っていたかはわたしにはわかりません」
「そうか」とサハチは言って、東曲輪(あがりくるわ)に向かって行くナツとメイユーの姿を見下ろしていた。
 サハチが絵地図を広げて、ンマムイのグスクをどこに建てようか考えていると八重瀬按司(えーじあじ)のタブチが訪ねて来た。サハチは通すように命じた。タブチが訪ねて来るのは珍しかった。何かあったのだろうかとサハチは迎えに出た。
 タブチは辺りを見回しながらやって来た。屋敷に上がると、「ここに来たのは何年振りじゃろうか」と言った。
「しっかりした造りのいいグスクです」とサハチは言った。
「今、思えば、親父はグスク造りの名人じゃった。その血をシタルーが受け継いで、豊見(とぅゆみ)グスクや首里グスクを造ったんじゃな」
 サハチはタブチを二階の会所に案内した。
「何かあったのですか」とサハチは聞いた。
「おう、そうじゃ。昔に浸りすぎて、用件を忘れる所じゃった。実はのう、十月に出す進貢船に乗せて欲しいんじゃよ」
「えっ、十月に明国に行くのですか」
 タブチはうなづいた。
「親父が使者として明国に行ったのは十月じゃった。冬山を歩くのはきつかったと言っていたが、都の新年は楽しかったと言っておったんじゃ。わしも明国の都の新年が見たいんじゃよ」
「応天府の新年ですか」
 サハチも明国の新年を祝う行事は華やかだと聞いていた。そういう行事も見習わなければならないと思った。
「わかりました。まだ、従者たちを正式に決めてはいないので間に合うと思います」
「ありがたい。頼むぞ」
 サハチはうなづき、突然、ひらめいた事を聞いてみた。
「八重瀬殿、新(あら)グスクは今、どうなっているのです」
「新グスク? 新グスクは八重瀬グスクの出城じゃが、今は何の役にも立っていない。ただ、シタルーに奪われたら大変なんで、次男が新グスク大親を名乗って守っている。新グスクがどうかしたのか」
「できれば、貸してもらいたいのですが」
「どういう事じゃ」
「阿波根グスクにいる兼(かに)グスク按司を御存じでしょう」
「ああ、そなたと一緒に朝鮮(チョソン)に行ったと思ったら、今度はシタルーのために今帰仁まで行って来たようじゃな」
「その兼グスク按司がシタルーに命を狙われています」
「何じゃと? 山北王と同盟を結ぶための使者として今帰仁に行ったのではないのか」
「そうなのですが、その事をいちいちわたしに報告するので、シタルーとしても我慢ができないのでしょう。使者の務めが終わったら殺されます。わたしは南風原に新しいグスクを建てて、そこに兼グスク按司を入れるつもりですが、グスクが完成するまで、新グスクを貸してほしいのです」
「兼グスク按司が新グスクに入るのか」
「多分、一年以内には完成するでしょう。それまでの間です。兼グスク按司の家臣たちは百人近くはいるでしょう。それだけの人数を収容できる場所がなくて困っていたのです」
「兼グスク按司が東方に寝返るという事じゃな」
 サハチはうなづいた。
「シタルーの味方が減るというのは大歓迎じゃ。どうぞ新グスクを使って下され」
「助かります。ありがとうございます」
「兼グスク按司が寝返ったか‥‥‥敵である武寧の倅を寝返えらせるとは大したもんじゃのう」
 タブチはサハチを見て豪快に笑った。急に真顔になってサハチを見ると、「もしかしたら、米須按司(くみしあじ)と玻名(はな)グスク按司も寝返らせる事ができるかもしれん」と言った。
「玻名グスク按司はわしの義兄で、米須の若按司の妻はわしの娘じゃ。米須按司と玻名グスク按司は正月に明国に行くつもりでいたんじゃが、シタルーは進貢船を出せなかった。二人を明国に連れて行くと言ったら寝返るかもしれんぞ」
「米須按司と玻名グスク按司ですか‥‥‥玻名グスクは八重瀬よりも東(あがり)にあるから大丈夫でしょうが、米須は危険ですよ。裏切った事がばれたら、シタルーが攻めるかも知れません」
「なに、攻めて来たらその時考えればいい。米須按司は今までずっと、わしと一緒にシタルーと戦って来た。今更、シタルーを恐れはせんじゃろう」
「二人が東方に寝返るのだったら、明国に連れて行きましょう。お願いします」
 タブチは力強くうなづき、「面白くなってきたな」と笑った。
 メイユーがお茶を持って入って来た。サハチとタブチにお茶を渡すと、にっこり笑って去って行った。
「侍女か」とタブチは聞いた。
「側室です」とサハチは答えた。
 タブチは笑った。
「そなたも好きじゃのう。おっ、こいつはうまいお茶じゃ」
 タブチは満足そうにお茶を飲むと機嫌よく帰って行った。

 

 

 

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