長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-141.落城(第一稿)

 首里(すい)のお祭りから六日後の昼下がり、玻名(はな)グスクに一節切(ひとよぎり)の調べが流れていた。
 吹いているのは勿論、サハチである。高い櫓(やぐら)の上から海の方を見ながら吹いていた。
 戦(いくさ)を忘れさせる心地よい調べで、グスクを包囲している兵たちもグスク内にいる兵も避難民たちも皆、シーンとして聞き入っていた。
 正午(ひる)前、いつも炊き出しが行なわれる時刻に、サハチは櫓の上に登ってグスク内を見た。皆、疲れ切っていて動いている者はいなかった。炊き出しもなかった。籠城(ろうじょう)から二か月半が経って、兵糧(ひょうろう)も底を突いて来たようだった。
 総攻撃を掛ける時が来たとサハチは判断した。按司たちを本陣の屋敷に集めて作戦を伝えて、各自に準備をさせた。グスク内にいる鍛冶屋(かんじゃー)と木地屋(きじやー)に総攻撃を伝える合図は、サハチの一節切だった。サハチの一節切の調べが終わった時、鍛冶屋と木地屋が門番を倒して、大御門(うふうじょー)を内側から開ける手筈になっていた。
 サハチは二千年前に琉球に来たアマミキヨの神様の事を想いながら一節切を吹いていた。
 遙か遠いアマンの国から何艘もの小舟(さぶに)に乗ってやって来たに違いない。
 途中で嵐に遭って琉球まで来られなかった者もいたに違いない。
 小舟に乗って明国まで行くなんて、とても考えられない事だが、それと同じような危険を冒してやって来たのだろう。
 琉球に来たアマミキヨの一族は垣花(かきぬはな)に都を造って、タカラガイヤコウガイを小舟に積んで、奄美の島々に寄りながらヤマトゥまで行って交易をした。
 琉球は二千年も前から交易で栄えてきた島だった。そう思うとアマミキヨの子孫である血が騒ぎ、サハチは見知らぬ南の島へと行きたくなってきた。同族同士で戦をやるなんて馬鹿げている。早く琉球を統一して、新しい船出に出なければならないと思った。
 そんなサハチの想いは一節切の調べとなって、聴いている者たちを過去へと誘(いざな)い、忘れてしまっていた懐かしい記憶を蘇らせて、人々を感動させていた。
 サハチの一節切の曲が終わった。
 シーンと静まり返っていた。誰もが涙を拭っていた。
 突然、グスク内で悲鳴が聞こえたかと思うと、大御門が大きく開いた。待機していた慶良間之子(きらまぬしぃ)が率いる兵たちがグスク内に突入した。
 三の曲輪(くるわ)内は混乱状態に陥っていた。逃げ惑う避難民たちの中を刀を振りかざした兵が敵を探し回っていた。
 サハチは櫓の上からグスク内を眺めていた。佐敷大親(さしきうふや)が予定通りに避難民たちを誘導して南御門(ふぇーぬうじょう)から外に出していた。避難民たちは疲れ切っていて歩くのもやっとのようだった。
 突然、石垣の上に味方の兵が現れて、敵の守備兵を倒しながら一の曲輪の方に向かって行った。誰だろうとよく見るとマウシのようだった。先頭を行くマウシは刀を抜かずに、敵兵を倒しては次々に石垣の下に落としていた。
 石垣を行けとは指示していなかった。マウシが判断したのだろうがいい考えだった。
 マウシが率いる兵は北側の石垣の上を通って一の曲輪まで行き、次々に消えていった。それを見ていた味方の兵たちが、そのあとに続いて一の曲輪に向かった。
 避難民たちが出て行った三の曲輪内でも戦闘は続いていて、敵の兵は次々に倒されていった。
 二の曲輪と三の曲輪をつないでいる御門(うじょう)が開いた。二の曲輪に避難していた家臣たちの家族が二の曲輪の南御門から続々と出て来た。
 グスクから出て来た避難民たちは外で待機していた大(うふ)グスク按司と糸数按司(いちかじあじ)の兵に囲まれた中で、用意された炊き出しが配られた。
 一の曲輪内でも戦闘が行なわれているようだが、ここからはよく見えなかった。
「お父様!」と声がしてサハチが下を見るとサスカサと安須森(あしむい)ヌル(前佐敷ヌル)と若ヌルのマユが来ていた。リナーが率いる女子(いなぐ)サムレー十人と辰阿弥(しんあみ)とその弟子二人も一緒だった。
 三の曲輪と二の曲輪の戦が終わったようなので、サハチは櫓から降りた。
「お祭りの準備の最中に呼び出して悪かったな」とサハチは二人に謝った。
「もう、あたしがいなくても大丈夫よ」と安須森ヌルは言った。
「それに、小渡(うる)ヌルが娘と一緒に島添大里(しましいうふざとぅ)にいて、手伝ってくれるので助かっているわ」
「小渡ヌルが来ているのか」
首里のお祭りに来ていてね、そのあと一緒に島添大里まで行って、ずっといるのよ。米須(くみし)でも戦が始まったから帰ったら危険だって引き留めたの。マナビーも喜んでいるし、ずっといてくれたらいいのにと思っているのよ」
「そうか。海に潜れる陽気になるまで、島添大里にいたらいい」
 サハチはリナーに、「頼むぞ」と言った。
「任せて下さい。無精庵(ぶしょうあん)様から怪我の治療法を習いましたから、皆、張り切っています」
 サハチはうなづきながら女子サムレーたちを見て、「敵の無残な死体を見て倒れるなよ」と言った。
「大丈夫ですよ」と女子サムレーたちは笑った。
「仏様の供養をお願いします」とサハチは辰阿弥に頼んだ。
 辰阿弥は両手を合わせて念仏を唱えて、「皆、阿弥陀如来様のもとへと送り届けます」と言った。
 サハチの護衛にと慶良間之子が付けてくれた五人の兵と一緒に、サハチはヌルたちを連れてグスク内に入った。三の曲輪内には敵兵の死体がいくつも倒れていて、石垣の上には知念若按司(ちにんわかあじ)の兵たちが守備に就いていた。
 辰阿弥は二人の弟子を連れて、死体の側に行って念仏を唱え、『南無阿弥陀仏』と書かれた木の札(ふだ)を死体の上に置いた。
「思っていたよりも広いグスクなのね」と安須森ヌルが周りを見回しながら言った。
「俺も驚いたよ。玻名グスクがこんな立派なグスクだとは知らなかった」
「お清めも大変そうね」とサスカサが言った。
「玻名グスクヌルにも手伝ってもらうわ」と安須森ヌルは言った。
 去年の夏、安須森参詣をした時、玻名グスクヌルも参加していた。あまり話はしていないが、何となく気になる存在だった。父親は島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクにいて、兄は戦死して、生まれ育った玻名グスクは奪われたが、何とか立ち直ってほしいと安須森ヌルは思っていた。
 二の曲輪に入ると二の曲輪には敵兵の死体だけでなく、負傷した味方の兵たちが何人もいた。奥の方では捕虜になった敵兵が固まっていて、平田大親(ひらたうふや)と玉グスク按司の兵が見張っていた。
「あたしたちの出番ね。行くわよ」とリナーが言って、女子サムレーたちを連れて負傷兵の所に行った。
 サハチたちは一の曲輪に入った。瓦葺(かわらぶ)きの立派な屋敷が建っていた。あちこちに高価な壺(つぼ)が飾ってある屋敷の中は死体だらけだった。血まみれの死体を間近で見たマユが悲鳴を上げた。
「よく見ておきなさい。これが戦というものなのよ」と安須森ヌルが娘に言った。
 マユは母親を見てうなづいた。
 慶良間之子が来て、「作戦完了です」とサハチに報告した。
按司と若按司は討ったのか」とサハチは聞いた。
按司も若按司もマウシが倒しました」
「やはり、マウシがやったか」とサハチは笑った。
「二人のサムレー大将はシラーとウハが倒しました。三人とも随分と腕を上げているので驚きました」
「マウシも頼もしいサムレー大将になったわね」と安須森ヌルがサハチに言って、「玻名グスクヌルはどこにいるかしら?」と慶良間之子に聞いた。
「御内原(うーちばる)にいます」と言って、慶良間之子が安須森ヌルたちを案内して行った。
 サハチは屋敷の中を一回りしてみたが、マウシもシラーもウハもいなかった。
 玻名グスク按司は一刀のもとに斬られていた。鎧(よろい)は付けていない。武装する間もなく、マウシたちが来てしまったのだろう。右手に持っている刀の刃には血の汚れはなかった。
 玻名グスク按司は若按司だった頃、チューマチの婚礼に来てくれた。丁度、二年前の今日だった。まさか、こんな事になるなんて、あの時、思ってもいなかった。サハチは冥福(めいふく)を祈って両手を合わせた。
 按司の死体から少し離れた所に若按司が倒れていた。若按司はまだ十二歳くらいの子供で、按司と同じように一刀のもとに斬られていた。あどけない顔で目を大きく見開いたまま亡くなっていた。
 サハチは目を閉じてやり両手を合わせた。
按司様(あじぬめー)、やりましたよ」とマウシの声がした。
 振り返るとマウシとシラーとテハがいた。
「見事だったぞ」とサハチは三人に言った。
 サハチに褒められて三人は照れていた。
 マウシは若按司の死体を見て、
「俺が按司を斬ったあと、若按司は俺に掛かってきました。他にも敵がいたので斬るしかなかったのです」と言った。
「若按司を名乗っているからには倒さなくてはならない相手だ」とサハチは言った。
 そう言いながらも、サハチには若按司は斬れなかったかもしれないと思った。
「それにしても、石垣の上を行くなんて、よく気が付いたな」
「シラーの考えです。うまく行きました」
「なに、シラーの考えか」とサハチはシラーを見て、よくやったと言うようにうなづいた。
 サハチは三人を連れて屋敷から出ると、兵たちを三の曲輪に集めて、勝ち鬨(どき)を上げて戦勝を祝った。
 敵は戦死者が五十二人で負傷者が二十三人、味方は戦死者が三人で、負傷者は十八人だった。負傷兵は味方も敵も女子サムレーが治療をした。重傷で手に負えない兵もいて、女子サムレーたちは自分たちの未熟さを嘆いていた。無精庵がいたら何とかなりそうだが、無精庵は山グスクの中にいた。
 死体を片付けて、捕虜となった兵たちを三の曲輪に集めて見張り、炊き出しの雑炊(じゅーしー)を配っていたら、八重瀬(えーじ)グスクから祝い酒が届いた。酒を皆に配って、ささやかに戦勝を祝った。
 戦後処理は大変だった。捕虜となった敵兵が百五十人もいた。八年前の戦の時、捕虜たちは首里の城下造りの人足(にんそく)として送ったが、今は人足は必要ない。かといって、すべての兵を玻名グスクの兵として抱えるわけにもいかない。按司の敵討ちだと反乱を起こす危険性が大きかった。サハチは本陣となっている八重瀬グスクに行って思紹(ししょう)と相談した。
 サハチが戦(いくさ)の状況を説明したら、
「ほう、マウシが大活躍したか」と思紹は喜んだ。
「サムレー大将にしておいてよかったな」
「シラーはなかなかの軍師です。他の按司たちが避難民たちがいっぱいいる三の曲輪に入って、敵兵を捜し回っている時、マウシたちは石垣の上に登って、石垣の上を通って一の曲輪まで行ったのです。シラーが考えたそうです」
「ほう、あのシラーがな。大したもんじゃ。将来、ファイチのようになってくれたら頼もしいのう。ファイチはわしらの軍師じゃからのう」
「わたしが軍師ですか」とファイチは驚いた顔をして思紹を見た。
「ファイチが中山王の軍師だという事は誰もが認めているよ」とサハチはファイチに言った。
 サハチが捕虜の事を聞くと、「寺院造りの人足に使ったらどうじゃ?」と思紹は言った。
「使うとしても二、三十人もいれば充分でしょう」とサハチは答えた。
鳥島に送って硫黄(いおう)を掘らせましょう」とファイチが言った。
永楽帝(えいらくてい)は順天府(じゅんてんふ)(北京)に行って蒙古(もうこ)と戦をしています。硫黄は益々重要な商品となるはずです。永楽帝がヤマトゥと交易をしたかったのも硫黄を手に入れるためです。ヤマトゥとの交易が駄目になったので、琉球が今以上に硫黄を運ばなくてはならなくなるでしょう」
鳥島か」と思紹は言って、「それじゃな」とうなづいた。
「百五十人も送るとなると警備兵も増やさなくてはなりませんね」とサハチは言った。
「あの島に古くからいて、真面目に仕事に励んでいた者は故郷(うまりじま)に帰してやればいい」
「わかりました。ヒューガ殿と相談してみます。そして、誰を玻名グスク按司にするつもりなのですか」
「一番の活躍はマウシたちと言うよりも、鍛冶屋と木地屋だろう。長い籠城に耐えて、約束通りに御門を開けてくれたんじゃからな」
「確かに、そうですね。すると奥間大親(うくまうふや)が玻名グスク按司ですか」
 話を聞いていた奥間大親が驚いた顔をして、
「冗談はやめてくだされ。わしなんぞに按司など務まるわけがない」と慌てて言った。
「ヤキチがサハチに仕えてから、何年になる?」と思紹が奥間大親に聞いた。
「三十二の時に来ましたから、もう二十六年になります」
「二十六年も仕えてきた御褒美じゃよ」と思紹は言った。
「そんな、冗談ではありません」と言って奥間大親は必死になって手を振った。
「そなたのためだけではないんじゃ。奥間の者たちの拠点にしてほしいんじゃよ」と思紹は言った。
「細長い丘の上に具志頭(ぐしちゃん)グスクと玻名グスクがある。はっきり言って玻名グスクは必要ないんじゃ。しかし、あれだけのグスクを潰すのはもったいない。鍛冶屋の拠点として使ってほしいんじゃよ」
「鍛冶屋の拠点ですか」
「そうじゃ。あのグスクの中で鍛冶屋をやるんじゃよ。鍛冶屋に必要な炭も奥間から玻名グスクに運んで、各地にいる鍛冶屋に分けてやればいい」
「成程。炭を奥間からあそこに運べば、南部にいる鍛冶屋たちは助かります」
木地屋が使う木もあそこに運べばいい。あそこを南部の奥間にするんじゃよ。奥間の者たちには今後も活躍してもらわなければならんからのう」
「タタラ吹き(製鉄)もして、農具やトゥジャ(モリ)を作ればいい」とサハチが言った。
「草刈り用の鎌を作ってください」とファイチが言った。
「久米村(くみむら)でまとめて買いますよ」
「ヤマトゥの鎌はよく切れるが高価じゃ。安い鎌を作れば、庶民たちも助かるじゃろう」
「わかりました」と奥間大親はうなづいた。
「グスクを守るために兵もいるだろうから人が足らないようなら言ってくれ」と思紹が言った。
「いえ、奥間の若い衆を連れてくれば何とかなります」
「大変じゃろうが玻名グスクを頼む」
「わかりました。ありがとうございます」
 思紹は満足そうにうなづいた。
 サハチは奥間大親と一緒に玻名グスクに戻った。
 捕虜たちは平田大親と玉グスク按司の兵に見張られて首里へと向かった。
 安須森ヌルとサスカサによるグスクのお清めも終わって、東方(あがりかた)の按司たちも引き上げて行った。
 中山王の重臣、奥間大親が玻名グスク按司になる事を告げると東方の按司たちは驚いた。奥間大親の事をよく知らない按司たちも、今回、一番の手柄はマウシだと心得ているので、マウシと何かつながりがあるのだろうと思って何も言わなかった。今回の報酬として、次回の進貢船(しんくんしん)の従者たちの商品を以前の倍にすると言ったら、皆、喜んで、納得して帰って行った。
 マウシたちも今回の戦に勝てたのは、鍛冶屋たちのお陰だと思っているので、奥間大親が玻名グスク按司になる事に納得していた。サハチはマウシ、シラー、ウハの三人には御褒美にヤマトゥの名刀を贈る事にした。
 捕虜たちもいなくなり、東方の按司たちもいなくなって、グスク内は閑散としていた。残っているのは慶良間之子、佐敷大親、手登根大親(てぃりくんうふや)、ミーグスク大親、マウシたちが率いて来た兵、三百人足らずになっていた。
 御内原にいた按司の奥方は、真壁(まかび)グスクを攻めている波平大主(はんじゃうふぬし)の陣地に送られた。奥方は真壁按司の妹で子供はいなかった。玻名グスクが落城して、按司が戦死して、奥方が人質になったと知れば、真壁按司も降伏するだろう。玻名グスク按司の側室は二人いて、一人は若按司と二人の娘の母親で、もう一人は奥間から贈られた側室だった。
 若按司の母親の父親は、山南王(さんなんおう)の使者を務めたシラーの長男で明国で病死していた。兄は山南王に仕えていて交易担当の役人だった。交易担当の役人なら殺される事もないだろうと思い、娘と一緒に島尻大里グスクを攻めている他魯毎(たるむい)の本陣に送った。奥間の側室は奥間大親に任せた。
 玻名グスクヌルは行く場所がないと言って泣いていた。母親が中座グスクにいるはずだと言うので、マウシたちが兵を率いて行ったが、すでにグスクはもぬけの空で誰もいなかった。屋敷はあるが石垣は未完成で、守る事はできないと逃げて行ったようだった。
 安須森ヌルは一緒に島添大里グスクに行きましょうと誘ったが、父の敵(かたき)の世話にはなりたくないと言って安須森ヌルを睨んだ。
「あなたの叔母さんが八重瀬にいるわ」と安須森ヌルは言った。
 父と八重瀬按司(タブチ)が仲がよかったので、母と八重瀬の叔母も仲良しだった。八重瀬の叔母も夫と息子を亡くして悲しんでいるに違いない。もしかしたら、母も叔母を頼って八重瀬に行ったのかもしれない。玻名グスクヌルは八重瀬に行こうと決心して、住み慣れた玻名グスクに別れを告げて、安須森ヌルたちと一緒に八重瀬グスクに向かった。
 夕方にサタルーがやって来た。
「ヤキチが按司になったって本当ですか」と息を切らせながらサハチに聞いた。
「グスクが落ちたのは鍛冶屋のお陰だからな」とサハチは言った。
 サタルーはサハチを見つめて、「信じられない」と首を振った。
「今の中山王は鮫皮(さみがー)作りの職人の息子だ。鍛冶屋が按司になってもおかしくはない」
 サハチがそう言うとサタルーは笑った。
「山グスクはどうだ?」とサハチは聞いた。
「あのグスクは崖の上と下に曲輪があるので、完全に包囲できません。夜になると数人の敵がどこからか出て来て奇襲して来ます。出て来た敵は倒していますが、味方の負傷兵も増えています」
「そうか、苦戦をしているか。兵力を増やした方がいいかもしれんな」
 サハチはサタルーと奥間大親と一緒に物見櫓に登って海を眺めた。
「俺がまだ若按司だった頃、サタルーが奥間で生まれて、ヤキチが佐敷にやって来た」とサハチは言った。
「まだマチルギが嫁いで来る前だった。あの頃はウニタキもまだいなくて、ヤキチからの情報は大いに助かった。親父が隠居して、俺が佐敷按司だった時、毎年、梅雨が明けるとマチルギと一緒に旅に出た。ヤキチは陰ながら付いて来て、俺たちを守ってくれた。長年、仕えてくれた奥間の者たちへの感謝の印だ。ここを拠点にして、これからもよろしく頼む」
「ここが奥間の拠点?」と言ってサタルーは振り返ってグスク内を見た。
「広いですね。ここが奥間の拠点か‥‥‥」
 サタルーは嬉しそうな顔をしてサハチを見て、お礼を言った。
「お前がここに入ってもいいぞ」とサハチが言うと、
「まだ、北(にし)でやる事がありますので、ここはヤキチに任せます」とサタルーは笑った。
 次の日、具志頭グスクを守っていた島添大里の兵百人がやって来た。具志頭グスクにキラマの島から百人の若い者たちが来たという。
 サハチは平田大親、手登根大親、ミーグスク大親、マウシたちを本拠地に返した。
 それから五日後、奥間から若者たちが百人来た。島添大里の兵は残して、サハチは八重瀬グスクに向かった。

 

 

 

尺八 (しゃくはち) 玉山銘 真竹 都山流 1尺8寸 高級管 Gyokuzan Shakuhachi Tozan-ryu 1shaku8sun(D)

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第二稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー、奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第一稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第一稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第一稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第一稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第一稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第一稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第一稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第一稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第一稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫。
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は察度の三男の越来按司。母は山北王珉の妹。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。

 

2-140.愛洲のジルー(第一稿)

 シンゴとマグサの船が馬天浜(ばてぃんはま)にやって来た。
 知らせを聞いたサハチは玻名(はな)グスクから馬天浜に向かった。
 すでに、『対馬館』で歓迎の宴が始まっていた。マチルギと安須森(あしむい)ヌルになった佐敷ヌルが来ていて、みんなを出迎えたようだった。四隻の船で来たらしく、対馬館は一杯で、浜辺のあちこちで酒盛りをやっていた。
 サミガー大主(うふぬし)(ウミンター)の長男、ハチルーの妻のアキと次男、シタルーの妻のマジニがウミンチュのおかみさんたちを指図して忙しそうに働いていた。マチルギと安須森ヌルと若ヌル、佐敷の女子(いなぐ)サムレーたちも手伝っていた。
「ルクルジルー(六郎次郎)様が来たのよ」とマチルギがサハチに言った。
「なに、ルクルジルーが来たのか。無事に明国から帰って来たんだな。よかった」
「かなりの損害があったようだけど、それ以上の収穫があったらしいわ。ササたちと一緒に浜辺の方にいるわよ」
 サハチが浜辺の方に行こうとしたら、マチルギがサハチの手を引いて、「ササなんだけど、おかしいのよ」と言った。
「あたしたちが来るより先にここに来ていて、シンゴさんが連れて来たお客様と会ったんだけど、急に女らしくなって、言葉もいつもと全然違うのよ」
「何だと?」
「以前に、シラーと出会った時も、ササはそんな感じだったんでしょ。もしかしたら、ササのマレビト神なのかしら」
「何者なんだ。お客様というのは?」
「伊勢の国の水軍大将の倅みたい。年の頃はササと同じくらいだと思うわ。愛洲次郎(あいすじるー)という名前で、次郎のお爺さんはサンルーザ殿と一緒に南朝(なんちょう)方の水軍として活躍していたらしいわ」
「ほう、水軍の大将の倅か。どんな奴だか見て来よう」
「ササにお似合いよ」とマチルギは笑った。
 ササ、シンシン、ナツ、四人のササの弟子たちと一緒に、ルクルジルー、サイムンジルー(左衛門次郎)、クサンルー(小三郎)の三人がいて、見知らぬ三人の男がいた。
 サハチを見ると、「お久し振りです」とルクルジルーが挨拶をして、サイムンジルーとクサンルーが頭を下げた。三人と会うのは五年振りだった。明国に行って危険を乗り越えてきたせいか、三人とも頼もしくなっていた。
「とうとう琉球にやって参りました」とルクルジルーはさわやかに笑った。
「俺が琉球に行くと言ったら、ミナミが一緒に行くって駄々をこねましたよ。琉球のお爺に会いに行くってね」
 サハチは嬉しそうに笑って、「ミナミも大きくなっただろうな」と言った。
「十一歳になって、ユキから剣術を習い始めました」
「そうか、ミナミが剣術を始めたか‥‥‥弟ができたんだってな。おめでとう」
「まだ三歳ですが、お爺ちゃんによく似ているとみんなから言われています」
「サイムンタルー(左衛門太郎)殿が喜んでいるだろう」
「孫の顔を見るために、ちょくちょく船越までやって来ています」
「そうか」とサハチはサイムンタルーが孫の三郎を抱いている姿を想像して笑った。
按司様(あじぬめー)、紹介いたしますわ」とササが言って、愛洲次郎とその家臣の寺田源三郎と河合孫次郎を紹介した。
 三人とも同じ年頃の若者で、日に焼けた顔と潮焼けした髪が、一年中、船の上にいる事を物語っていた。
「お世話になります」と挨拶した愛洲次郎は、若いのに大将という風格が感じられた。水軍の大将になるように育てられ、子供の頃から家臣たちの子供を引き連れて遊んでいたのだろう。
「去年の春、京都に行った時に、琉球の噂を聞きました。琉球の人たちはいつも等持寺(とうじじ)に滞在していますが、お姫様は将軍様の御台所(みだいどころ)様と仲良しで、将軍様の御所に滞在なされる。琉球のお姫様は龍宮(りゅうぐう)の乙姫(おとひめ)様のように美しいお方で、御台所様と一緒に伊勢参詣や熊野参詣もなさっておられる。以前、京都に大きな台風が来た時には、避難した者たちを助けておられた。琉球の女子(おなご)は刀を腰に差して勇ましいけど、心の優しい女子たちばかりだと噂されておりました。わしはお姫様を一目見たくて琉球までやって参りました。そしたら、なんとお姫様が出迎えてくれました。わしは今、夢を見ているような心地です」
「お姫様って、わたしの事なんですのよ」とササは嬉しそうな顔をしてサハチに言って、うっとりするような目をして愛洲次郎を見ていた。
 マチルギが言うように、愛洲次郎はササとお似合いだが、気まぐれなササの事だから、やっぱり違ったわと言い出しかねない。二人の仲がうまくいってくれればいいとサハチは願った。
 ササたちはいつものように女子サムレーの格好だが、ササはいつものようにあぐらをかいていなかった。きちんと正座をしている。シンシンとナナはあぐらをかいていて、弟子たちは師匠を見習って正座をしていた。
 ササは御台所様たちと一緒に伊勢の神宮に行った時の話をしていた。しゃべり方も笑い方も手の仕草もおかしかった。京都の高橋殿の屋敷に仕えている侍女たちのような話し方だ。そんなササをシンシンもナナも四人の弟子たちも怪訝(けげん)な顔して見ているが、ササはお構いなしに女らしさを精一杯表現しているようだった。
 ササたちの隣りでは、シンゴとマグサがユリ、ハル、シビーと一緒にいた。ユリたちは安須森ヌルと一緒に首里(すい)でお祭りの準備をしていて、マチルギと一緒に来たのだった。
 サハチは隣りに移動して、シンゴにルクルジルーと愛洲次郎を連れて来てくれたお礼を言って、倭寇(わこう)として明国に行ったサイムンタルーの事を聞いた。
「無事に帰って来て、よかったんだが、帰らなかった者たちも多いんだよ」とシンゴは苦しそうな顔をして言った。
「わしの親戚の者も帰って来ませんでした」とマグサが言った。
「そうだったのか。明国も警戒が厳重になっているんだな」
「それでも、衛所(えいしょ)という役所を襲撃して大量の穀物や食糧を奪って来たんだ。みんな、喜んでいるけど、また来年も行かなければならないかもしれないと兄貴は心配していたよ」
「サイムンタルー殿も大変だな」と言ってから、「永楽帝(えいらくてい)のヤマトゥ攻めはどうなったんだ?」とサハチは聞いた。
永楽帝は順天府(じゅんてんふ)(北京)に行っているし、鄭和(ジェンフォ)の大船団も予定通りに旅に出たようだから大丈夫じゃないのか」
「なに、鄭和は旅に出たか」とサハチは安心した。
「ところで、マツとトラはどうしている?」
「なぜか、琉球から帰ったら、あの二人は以前よりも真面目になって、兄貴と一緒に対馬を統一しようと頑張っているよ」
「あいつらが真面目になったか」とサハチは笑って、「旅芸人の踊り子がトラの息子を産んだよ」と言った。
「なに、フクがトラの息子をか」とシンゴは驚いた。
「名前はグマトゥラ(小寅)だ」
「グマトゥラか‥‥‥トラが知ったら飛んで来るだろう」とシンゴは楽しそうに笑った。
 サハチは振り返ってササを見て、「愛洲次郎というのは何者だ?」とシンゴに聞いた。
「ササ、おかしいわ」とユリが笑った。
「あれが普通で、いつものササ姉(ねえ)がおかしいのよ」とシビーが言った。
 そういう見方もあるなとサハチは思った。
伊勢の神宮の南に五ヶ所浦という港があるんだ。そこを本拠地にしているのが愛洲一族なんだよ。そこは伊勢参詣をした者たちが船に乗って熊野参詣に向かう港で、結構、参詣客で賑わっているようだ。南北朝で争っていた頃は熊野水軍と一緒に、愛洲水軍は南朝方として活躍したんだよ。次郎の祖父は九州まで来て、懐良親王(かねよししんのう)様に仕えていたようだ。次郎は京都に行って、琉球の事を知って、明国の商品を手に入れたいと言ってやって来たんだよ」
「そうか。取り引きに来たのなら大歓迎だ」とサハチは笑った。
 安須森ヌルが酒と料理を持ってやって来た。
「ササのマレビト神がやって来たみたいね」と安須森ヌルはササを見て笑った。
「本当にマレビト神なのか」とサハチは安須森ヌルに聞いた。
「ササは見たのよ。誰だかわからないけど、マレビト神が来る場面をね。それで、知らせが来る前にここに来て、船が着くのを待っていたのよ」
「なに、ササは知らせが来る前に、ここに来ていたのか」とサハチは驚いた。
「ササがやって来たので、ウミンター叔父さんも慌てて、みんなを迎える準備を始めたのよ。いつもより大勢の人が来たから、ササのお陰で間に合ったって喜んでいたわ」
「そうだったのか。それならマレビト神に違いないな。ササにもようやく幸せがやって来たか」
「ササも頑張っているから、幸せになってほしいわ」と安須森ヌルは言ってから、「山南王妃が島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに来たわよ」と言った。
「えっ、どうして、王妃が来たんだ?」
「ウミトゥクと一緒にユーナに会いに来たのよ」
 ユーナはキラマの島から戻って来ていた。ウニタキがシタルーの死を知らせて、もう大丈夫だと連れて来たのだった。ニシンジニーが与那原(ゆなばる)に行ってしまって、一人足らなくなったので丁度よかった。ユーナは皆に歓迎されて、女子サムレーに戻っていた。
 ユーナは王妃と一緒に豊見(とぅゆみ)グスクに行って、父の中程大親(なかふどぅうふや)と六年振りに会った。父は娘が死んだものと思っていたので、涙を流して再会を喜んだという。
 サハチがササたちの所に戻ると四人の弟子たちの姿はなかった。お酒が飲めない四人をナツの妹のアキが、おいしいお菓子があると言って連れて行ったという。
 日が暮れる前に宴はお開きになって、対馬館に収まりきらない者たちを佐敷の新里(しんざとぅ)の空き家に分散させた。ルクルジルーたちと愛洲次郎たちには島添大里城下のお客用の屋敷を使ってもらうつもりだったが、ササが与那原に連れて行くと言った。ルクルジルーたちもヂャンサンフォンの弟子なので、師匠に会いたいと言った。今、出陣中のサハチは、ルクルジルーたちと愛洲次郎たちはササに任せる事にした。
 今から玻名グスクの陣地に戻っても仕方がないと思い、サハチも与那原に行って、宴の続きをして、翌日、本陣となっている八重瀬(えーじ)グスクに向かった。
 八重瀬グスクは厳重に守りを固めていた。焼け落ちた一の曲輪(くるわ)の屋敷は綺麗に片付けられてあった。主役の屋敷がないと、何となく間の抜けたグスクに見えた。思紹(ししょう)たちは二の曲輪にある八重瀬ヌルの屋敷にいた。ウニタキが来ていて、絵地図を見ながら今の状況を説明していた。
「ルクルジルーが来たそうじゃな」とサハチの顔を見ると思紹が言った。
「ササが与那原に連れて行きました」
「なに、与那原に行ったのか」
 サハチはうなづいた。
「お客さんの事はササに任せましょう。何かをさせておかないと、鎧(よろい)を着て戦をしに来ますからね」
 思紹は笑ってから、「イシムイが戦線から離脱したそうじゃ」と言った。
「えっ、賀数(かかじ)グスクを奪い取って、賀数按司になったイシムイが逃げたのですか」
「昨日の早朝、奴は包囲陣を突破して、東(あがり)の方に逃げて行ったんだ」とウニタキが言った。
「東の方というと今、造っているグスクに行ったのか」
「いや、さらに東だ。稲嶺(いなんみ)(東風平(くちんだ))の辺りまで来て森の中に隠れて、農民の格好に着替えて、北(にし)の方に散って行った。多分、本拠地に帰ったのだろう。配下の者に追わせた。今後のために居場所だけは知っておかないとな」
「イシムイは叔父を見捨てて帰ったのか」
「瀬長按司(しながあじ)もンマムイも動かなかったから、叔父の巻き添えを食らって殺されたらかなわんと思ったのだろう」
 ウニタキはそう言ってから、絵地図を見て、誰がどこを攻めているかを教えてくれた。
 島尻大里(しまじりうふざとぅ)グスクを包囲しているのは他魯毎(たるむい)の兵、保栄茂按司(ぶいむあじ)の兵、山北王(さんほくおう)の兵で、およそ八百人。保栄茂按司は賀数大親(かかじうふや)と一緒に賀数グスクを攻めていたが、イシムイが逃げたので島尻大里グスク攻めに加わっていた。
 賀数グスクには戦死した次男の妻のマニーがいて、侍女と一緒に捕まり、真栄里(めーざとぅ)グスクを攻めている照屋大親(てぃらうふや)の陣地に連れて行かれた。真栄里グスクは照屋大親、兼(かに)グスク大親、糸満大親(いちまんうふや)、国吉大親(くにしうふや)と重臣たちの兵二百人が攻めていた。照屋大親は降伏しないと、娘のマニーを殺すと言って真栄里按司を脅した。
 大(うふ)グスクは長嶺按司(ながんみあじ)と瀬長按司の二百人が攻め、与座(ゆざ)グスクは兼グスク按司(ジャナムイ)と小禄按司(うるくあじ)の二百人が攻め、真壁(まかび)グスクは波平大主(はんじゃうふぬし)の兵百人が攻めている。
 李仲按司(りーぢょんあじ)は李仲グスクを奪い返していた。李仲グスクにも抜け穴があって、その抜け穴を利用して、まだ夜の明けきらぬ早朝に総攻撃を掛けて攻め落とした。摩文仁按司(まぶいあじ)は半数余りの兵を失い、妻や子も残したまま、妹婿の伊敷按司(いしきあじ)を頼って伊敷グスクに逃げて行った。摩文仁按司の妻は小禄按司の妹なので子供たちと一緒に助けられた。李仲按司は李仲グスクを若按司に守らせて、今は伊敷グスクを攻めている。
 ナーグスクは様子を見に行った李仲按司が開城した。ナーグスクにいたのは伊敷ヌルで、三十人の兵が守っていた。李仲按司が声を掛けると伊敷ヌルは二人の子供を連れて出て来て、子供の父親は他魯毎だと言った。李仲按司には信じられなかったが、伊敷ヌルは他魯毎からもらったという短刀を見せた。
 その短刀には見覚えがあった。他魯毎が豊見グスク按司になった時、シタルーからもらった物だった。他魯毎は常に身に付けていたが、ある時期から見なくなった。どうしたのかと聞いたら、大切にしまってあると言った。
「この子が生まれた時に、守り刀にしろと言っていただきました」と伊敷ヌルは言った。
 李仲按司は子供を見た。六歳くらいの女の子と四歳くらいの男の子だった。娘は母親に似て可愛い顔して、大きな目で李仲按司を見ていた。男の子は恥ずかしそうに母親の後ろに隠れていたが、その仕草が子供の頃の他魯毎とよく似ていた。
「戦が終わるまで、このグスクを守っていてくれ」と李仲按司は伊敷ヌルに頼んだ。
 新垣(あらかき)グスクは誰も攻めていなかった。グスクを包囲して、新垣按司が動けないようにしたいのだが、兵力が足らなかった。
「新垣グスクですが、中山王(ちゅうさんおう)が攻めると他魯毎に言ったらどうですか」とサハチは思紹に言った。
「それは無理でしょう」とファイチが言った。
「新垣グスクは島尻大里グスクに近すぎます。新垣グスクが中山王のものとなってしまえば、他魯毎は山南王になって島尻大里グスクに入っても、新垣グスクが気になって夜も眠れないでしょう」
 確かにファイチの言う通りだった。新垣グスクは島尻大里グスクを守る出城の一つだった。他魯毎が思紹の娘婿だとしても、出城を渡すわけがなかった。
「新垣按司はタブチの幼馴染みで、シタルーの重臣だった」とウニタキが言った。
「タブチと他魯毎が争った時、シタルーの息子より幼馴染みのタブチを選んだ。タブチが抜けて、成り行きから摩文仁(まぶい)に付いたが、他魯毎を恨んでいるわけではない。島尻大里グスクから出て、頭を冷やしてよく考えてみたら他魯毎に付くべきだと考え直したのかもしれない。奴はグスクに籠もったまま攻撃に出る気配はない」
「降参したとしても命は助かるまい。摩文仁の大将として戦っていたからのう」と思紹は言った。
「自分は助からなくても若按司を助けようと思っているのかもしれません。若按司の妻は照屋大親の娘です」
「すると、倅のために降伏するかもしれんな」
「真栄里按司の方はどうだ?」とサハチは聞いた。
「真栄里按司には三人の倅がいます。長男と次男が妻を迎える時、真栄里按司は豊見グスクにいたシタルーの重臣でした。その頃の重臣の娘を妻に迎えたと思いますが誰だかわかりません。三男が妻を迎える時は、山南王になったシタルーの重臣になっていたので、糸満按司の娘を迎えています」
「真栄里按司は三男に跡を継がせようと考えるかもしれんな」
「イシムイが抜けたので、皆、保身の道を探るかもしれません。そうなると、あまり抵抗はせずに降伏するかもしれません」とファイチが言った。
「周りの者たちが降伏しても、摩文仁は降伏せんじゃろう。島尻大里グスクをどうやって落とすかが問題じゃな」と思紹は腕を組んだ。
「こっちの状況はどうなんだ? 降伏しそうなグスクはあるのか」とサハチはウニタキに聞いた。
「ないな」とウニタキはあっさりと言った。
「米須按司(くみしあじ)は摩文仁の倅だから降伏しないだろう。玻名グスク、山グスクも降伏しそうもない。波平グスクも波平按司が島尻大里グスク内にいるから降伏はしないだろう」
「戦はまだまだ終わりそうもないのう」と思紹が言った
 サハチは玻名グスクの陣地に帰った。ウニタキは山グスクに向かった。米須グスクも波平グスクもグスク内に味方の者を入れるのに成功したが、山グスクだけは入れられなかった。何とか潜入する手立てを考えなくてはならないと言っていた。

 


 シンゴたちの船が来たのが正月の二十日で、その日の早朝、イシムイが逃げて行った。
 二十二日、娘を人質に取られていた真栄里按司が降伏した。娘を殺してまでも、摩文仁に義理立てする筋はないと判断したようだ。真栄里按司と若按司は捕まり、糸満大親の娘婿の三男が父親の跡を継いで、真栄里大親になった。
 タブチは重臣たちに按司を名乗らせたが、他魯毎は以前のごとく大親を名乗らせた。
「お前の活躍次第では、父親と兄の命を助けられるかもしれない」と照屋大親に言われた三男は兵を率いて、照屋大親たちと一緒に新垣グスク攻めに加わった。
 真栄里按司の次男は父と兄が捕まり、弟が跡を継いだ事など知らずに、島尻大里のサムレーとして島尻大里グスクを守っていた。
 二十三日、新垣グスクは他魯毎の重臣たちの兵に囲まれた。照屋大親から真栄里按司が降伏した事を知らされた新垣按司は、照屋大親の娘婿の若按司に跡を継がせてくれたら降伏すると言った。
 その事は王妃から許しを得ていた照屋大親だったが、警戒して、すぐには返事をせずに、グスク内にいる石屋のテハの妻と子を引き取った。テハの妻から新垣按司が戦の準備をしている様子はない事を知ると翌日、条件を呑んだ。新垣按司はグスクを開城した。按司は捕まって豊見グスクに送られ、若按司が跡を継いで新垣大親を名乗のり、重臣たちと一緒に真壁グスク攻めに加わった。
 その後は膠着(こうちゃく)状態となって、正月も終わり、二月に入った。二月九日、首里グスクでお祭りが行なわれた。お芝居は安須森ヌルの新作『豊玉姫(とよたまひめ)』が演じられて大喝采を浴びたという。旅芸人たちは『察度(さとぅ)』を演じて、こちらも観客たちに喜ばれた。南部で戦をしているので、どさくさに紛れて曲者(くせもの)が紛れ込む可能性があった。いつも以上に厳重な警戒の中でのお祭りだった。
 無事にお祭りも終わって、ササたちはルクルジルーたち、愛洲次郎たちを連れて琉球一周の旅に出た。ササたちはウタキ巡りも兼ねていた。豊玉姫の神様に言われたように、忘れ去られてしまったウタキを探し出して、復活させなければならなかった。ヂャンサンフォンと運玉森(うんたまむい)ヌルが一緒に行き、福寿坊(ふくじゅぼう)と二階堂右馬助(にかいどううまのすけ)も加わった。
 右馬助は前回、ヌルたちと一緒にヤンバルに行った時、何かを感じたらしく、もう一度、ヤンバルに行ってみたいと言って付いて来た。琉球に来てから修行三昧(ざんまい)の右馬助がどれほど強いのか誰にもわからなかったが、一緒に行ってくれれば心強いとサハチは思った。

 

 

 

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