長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部は山北王の攀安知を倒すまでの活躍です。お楽しみください。

目次 第二部

尚巴志伝 第二部 豊玉姫

f:id:suwiun:20150517202854j:plain
このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第二稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第二稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第二稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第二稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第二稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第二稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第二稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第二稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第二稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第二稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第二稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第二稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。
  165. ウムトゥ姫とマッサビ(第二稿)   ササたち、ノーラ姫とウムトゥ姫に会う。
  166. 神々の饗宴(第二稿)   於茂登岳の山頂で、神様たちと酒盛り。
  167. 化身(第二稿)   名蔵の白石御嶽と水瀬御嶽で神様と会う。
  168. ヤキー退治(第二稿)   ササたち屋良部岳に登り、山頂で雷雨に遭う。
  169. タキドゥン島(第二稿)   タキドゥンの話を聞いて驚くササたち。
  170. ユーツンの滝(第二稿)   クンダギに登って、イリウムトゥ姫と会う。
  171. ドゥナン島(第二稿)   ササたち、クン島からドゥナン島へ向かう。
  172. ユウナ姫(第二稿)   ウラブダギに登ったササたち、ドゥナン島の村を巡る。
  173. 苗代大親の肩の荷(第二稿)   尚巴志、苗代大親の隠し事を知って笑う。
  174. さらばヂャンサンフォン(第二稿)   会同館で三姉妹たちの送別の宴が開催。
  175. トゥイの旅立ち(第二稿)   前山南王妃、ナーサと一緒に奥間に行く。
  176. 今帰仁での再会(第二稿)   前山南王妃、今帰仁に行って姪と会う。
  177. アミーの娘(第二稿)   尚巴志、ウニタキからトゥイの事を聞く。
  178. 婿入り川(第二稿)   山北王の若按司が山南王の婿になる。
  179. クブラ村の南遊斎(第二稿)   ササたち、ダンヌ村からクブラ村に行く。
  180. 仕合わせ(第二稿)   ササと愛洲次郎、二人だけの時を過ごす。
  181. ターカウ(第二稿)   ササたち、黒潮を越えて台湾に行く。
  182. 伝説の女海賊(第二稿)   ササたち、高雄で女海賊の活躍を聞く。
  183. 龍と鳳凰(第二稿)   唐人町の宮殿にお世話になるササたち。
  184. トンド(第二稿)   ササたち、トンド王国に着く。
  185. 山北王の進貢(第二稿)  リュウイン、山北王の使者として明国に行く。
  186. 二つの婚礼(第二稿)   マグルーとマウミ、ウニタルとマチルーが結ばれる。
  187. 若夫婦たちの旅(第二稿)   ウニタル夫婦とマグルー夫婦、旅に出る。
  188. サハチの名は尚巴志(第二稿)   今帰仁のお祭りからウニタキが帰って来る。
  189. トンドの新春(第二稿)   ササたち、新年の祝宴で二日酔い。
  190. パティローマ(第二稿)   ササたち、波照間島に行く。
  191. キキャ姫の遊戯(第二稿)   湧川大主、喜界島を攻める。
  192. 尚巴志の進貢(第二稿)   サハチ、尚巴志の名前で進貢船を送る。
  193. ササの帰国(第二稿)   南の島の人たちを連れて、ササたち帰国する。
  194. 玉グスク(第二稿)   ササ、豊玉姫から瀬織津姫の事を聞く。
  195. サミガー大主の小刀(第二稿)   タキドゥン按司の話を聞いて驚く尚巴志
  196. 奥間のミワ(第二稿)   ササたち、愛洲次郎の船でヤマトゥに行く。
  197. リーポー姫(第二稿)   他魯毎冊封するための冊封使琉球に来る。
  198. 他魯毎の冊封(第二稿)   諭祭の儀式と冊封の儀式が無事に終わる。
  199. 満月(第二稿)   ササたち、阿蘇山に登り、那智から天川の弁才天社に行く。
  200. 瀬織津姫(第二稿)   富士山麓の湖畔で、神様たちと酒盛り。
  201. 真名井御前(第二稿)   六甲山で武庫津姫、真名井御前の声を聞く。
  202. 八倉姫と大冝津姫(第二稿)   阿波に渡り、八倉比売神社と大粟神社に行く。
  203. 大物主(第二稿)   ササたち、三輪山に行き、サルヒコ、豊姫と会う。
  204. 重陽の宴(第二稿)   平田のお祭りが終わって、ミャークの船が帰国する。
  205. 王女たちの旅の空(第二稿)   リーポー姫たち、今帰仁に行き山北王と会う。
  206. 天罰(第二稿)   湧川大主、援軍を迎えて鬼界島を攻める。
  207. 大三島の伊予津姫(第二稿)   ササたち、大三島の入日の滝で伊予津姫と会う。
  208. 国頭御殿(第二稿)   リーポー姫たち、国頭グスクに行く。
  209. 南蛮船の帰国(第二稿)   馬天浜の張三豊を偲ぶお祭りに弟子たちが集まる。
  210. 大義名分(第二稿)   リーポー姫と冊封使が帰国して、進貢船が船出する。
  211. ナコータルー(第二稿)   尚巴志、山北王の材木屋の親方と会う。
  212. 志慶真のウトゥタル(第二稿)  ハルとシビーとユラ、ヤンバルに行く。
  213. 湧川大主の憂鬱(第二稿)   湧川大主、鬼界島攻めから帰って来る。
  214. ファイテとジルーク(第二稿)   五年間の留学から帰って来た二人。
  215. それぞれの新年(第二稿)   新年の儀式も無事に済んで龍天閣で作戦会議。
  216. 奥間ヌルの決断(第二稿)   油屋のユラ、お祭りの準備のため今帰仁に帰る。
  217. 奥間炎上(第二稿)   諸喜田大主、奥間を攻める。
  218. 李芸と再会(第二稿)   李芸と早田五郎左衛門が琉球に来る。
  219. 須久名森(第二稿)   タミー、須久名森の古いウタキを見つける。
  220. 被慮人探し(第二稿)   李芸、遊女屋「松風楼」の女将と会う。
  221. シネリキヨ(第二稿)   ササたち、沢岻に行き、浜比嘉島に行く。
  222. 東松田の若ヌル(第二稿)   ササたち、喜名に行き、宇座の牧場に行く。
  223. 大禅寺(第二稿)   ササたち、キーヌウチから沢岻に行く。
  224. 長老たちの首里見物(第二稿)   首里のお祭りでお芝居「千代松」を上演。
  225. 祝い酒(第二稿)   尚巴志、真喜屋之子の手柄話を聞く。
  226. 見果てぬ夢(第二稿)   李芸、今帰仁で被慮人を見つける。
  227. 悪者退治(第二稿)   ササたち、シジマを連れてヤンバルに行く。
  228. 志慶真ヌル(第二稿)   シジマ、志慶真ヌルになる。
  229. 今帰仁のお祭り(第二稿)   ユラのお芝居「志慶真のウトゥタル」は大成功。
  230. 混乱の今帰仁(第二稿)   今帰仁城下に中山王が攻めて来るとの噂が流れる。
  231. 逃亡(第二稿)   湧川大主、武装船の鉄炮をはずして今帰仁に運ばせる。
  232. 出陣(第二稿)   尚巴志、兵を率いて山北王攻めに出陣する。
  233. 戦闘開始(第一稿)   尚巴志今帰仁グスクを攻める。
  234. 志慶真曲輪(第一稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、志慶真曲輪を攻める。
  235. 三の曲輪の激戦(第一稿)   尚巴志、勝連按司と越来按司の死を悲しむ。
  236. クーイの若ヌル(第一稿)   マナビダル鉄炮の玉の恐怖に襲われる。
  237. 奇跡の復活(第一稿)   攀安知、マナビダルを抱いて泣き続ける。
  238. 今帰仁グスクに雪が降る(第一稿)   尚巴志とマチルギ、一緒に雪を眺める。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

f:id:suwiun:20150517202854j:plain

このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

2-238.今帰仁グスクに雪が降る(第一稿)

 三の曲輪(くるわ)の本陣の仮小屋で、サハチとファイチと苗代大親(なーしるうふや)が今後の作戦を練っていた時、突然、不気味な音が鳴り響いたかと思うと大雨が降って来て、稲光と共に雷が鳴り響いた。
 今帰仁(なきじん)グスクの絵図を見ていたサハチたちは、驚いて外を見た。
「凄いな」と苗代大親が言った。
 土砂降りに打たれて、一休みしていた兵たちはびしょ濡れになって立ち尽くしていた。大将たちは仮小屋にいても、兵たちが雨宿りをする場所はなかった。鉄炮(てっぽう)(大砲)に破壊されてボロボロになった屋敷はあるが、二の曲輪に近いので、そこに逃げ込むのは危険だった。
 本陣の仮小屋のそばにいたサハチの護衛兵が、
「雷が二の曲輪に落ちたようです」と言った。
「凄い稲妻でした」と別の護衛兵が言った。
「お前たちも入れ」とサハチは言って、二の曲輪を見上げた。
 大雨でよく見えないが石垣の上に敵兵たちの姿が見えないような気がした。
 ンマムイ(兼グスク按司)が走って来た。
「師兄(シージォン)、石垣の上の敵兵が消えました。今、攻めるべきかと思います」
「敵は雨宿りしているのかもしれんな」と苗代大親が言った。
「やりましょう」とファイチがうなづいた。
 サハチは総攻撃を命じた。敵に気づかれるので法螺貝は吹かず、旗を振って合図を送った。
 大雨の中、梯子(はしご)を持った兵たちが石垣に取り付いた。敵の攻撃はなかった。兵たちは次々に二の曲輪に侵入した。
 サハチ、ファイチ、苗代大親も行こうとした時、大きな雷が鳴ったかと思うと地が揺れた。
地震(ねー)か」と苗代大親が言った。
 地震は一回だけだった。
 空を見上げると黒い雲が勢いよく流れて行き、雨がやんだ。
 サハチたちは梯子を登って、二の曲輪に入った。そこは御内原(うーちばる)だった。すでに御内原は制圧されていて、あちこちに敵兵の死体が転がっていた。
テーラーだ!」と苗代大親が言った。
 テーラーは首を斬られて死んでいた。大雨で血は流され、傷口がぽっかりと開いていた。
テーラーを倒すとは、相当な腕の奴だな。ンマムイにやられたか」とサハチは言った。
 テーラーのそばに大将らしい遺体も転がっていたが誰だかわからなかった。
 サハチたちが二の曲輪に行こうとした時、ウタキの前にいるヌルたちに気づいた。安須森(あしむい)ヌルとサスカサがいた。フカマヌルと久高ヌル、奥間(うくま)ヌルもいた。
 サハチは驚いて足を止めた。
「お前たち、こんな所で何をしているんだ?」
「お母さんがアキシノ様を助けたのよ」とサスカサが言った。
「お母さん?」とサハチはウタキの前にいるヌルを見た。
 ヌルが振り返った。マチルギだった。
「お前がどうして‥‥‥」
 サハチは驚きのあまり言葉を失った。
 マチルギは立ち上がると、「ササの代わりに来たのよ」と言った。
「お前がアキシノ様を助けたのか」と言って、サハチは霊石を見た。
 霊石は割れてはいなかった。
 ファイチと苗代大親が先に行った。
「お前たちは志慶真曲輪(しじまくるわ)から来たのか」
「お母さんが先頭になって、お兄さんたちを引き連れて攻め込んだのよ」とサスカサが言った。
「何だって?」
「お母さん、凄かったわ」
「何という事を‥‥‥」と言って、サハチはマチルギを見て、ヌルたちを見た。
「みんな、怪我はしていないんだな」
「大丈夫よ。神様が守ってくれたわ」と安須森ヌルが言った。
「山北王(さんほくおう)が霊石を斬る前でよかった」とサハチが言うと、
「違うわ。霊石は真っ二つに斬られたのよ」とサスカサが言った。
「なに?」
 サハチはもう一度、霊石をよく見た。中央に傷のようなものが見えたが、どうみても斬られてはいなかった。
「奇跡が起こったのよ」とマチルギが言った。
「きっと、瀬織津姫(せおりつひめ)様のガーラダマ(勾玉)がアキシノ様を蘇らせてくれたのよ」
「なに、ササから瀬織津姫様のガーラダマを借りてきたのか」
 サハチがマチルギの胸を見ると大きなガーラダマがあった。
 ウニタキが側室のフミを連れて来た。フミはウニタキの配下で、中山王(ちゅうざんおう)と山北王が同盟を結んだ四年前に山北王の側室になっていた。
「フミがすべてを見ていた」とウニタキが言った。
「山北王が霊石を斬るのを見ていたのか」とサハチは聞いた。
 フミはうなづいて話し始めた。
 戦(いくさ)が中断された巳(み)の刻(午前十時)頃、フミはウタキでお祈りを続けている勢理客(じっちゃく)ヌルが心配になって見に来た。その時、山北王がやって来て、何かをわめいて勢理客ヌルを斬った。そのあと山北王とテーラーが斬り合いを始めた。テーラーが倒れると山北王はウタキの前に来た。
 山北王は太刀を振り上げて、気合いと共に霊石を真っ二つに斬ってしまった。すると、大雨が降って来て、山北王が振り上げた太刀に雷が落ちて、山北王は飛ばされた。テーラーが呆然として倒れた山北王を見ていると、兼次大主(かにしうふぬし)がやって来て、テーラーと斬り合いを始めて、テーラーは倒れた。その時、中山王の兵たちが志慶真川の崖を登って、石垣から侵入して来て乱戦となった。
 乱戦の最中にヌルたちがやって来て、お祈りを始めた。霊石に雷が落ちて地が揺れると、真っ二つになっていた霊石がくっついた。驚いて立ち尽くしていたら、ウニタキたちが来たという。
「マウシたちが先に潜入したんだな?」とサハチは聞いた。
「そうだ」とウニタキが言った。
「大雨が降って来て雷が落ちた時、マウシは総攻撃を命じたんだ。俺たちもマウシたちに続いて潜入した」
「志慶真曲輪からの御門(うじょう)を開けてくれたのもマウシの兵だと思うわ」とマチルギが言った。
「山グスクの訓練が役に立ったな」とサハチは満足そうに言った。
 ウタキの近くに転がっていた勢理客ヌルの死体をサハチは確認した。背中を一刀のもとに斬られていた。うつぶしていたので、顔は泥だらけだった。浦添(うらしい)ヌルのカナが勢理客ヌルの顔を拭いた。
「間違いないわ。勢理客ヌルです」と志慶真ヌルが言った。
「山北王はどうして、勢理客ヌルを斬ったのだろう?」とサハチは言って、フミを見た。
「ここに駈け込んで来た時、山北王の顔は正気とは思えませんでした。『邪魔だ、どけ!』と言って、勢理客ヌルが返事をする前に斬ってしまいました」とフミが言った。
「クーイの若ヌルが亡くなったので、気が狂ったのかしら」と志慶真ヌルが言った。
「クーイの若ヌルが死んだのか」
「まだ確認はしていませんが、亡くなったと思います」
 テーラーのそばに倒れていた大将が山北王だった。赤い鉢巻きをして、泥にまみれた顔で、目が異様に飛び出していた。刀傷は見当たらず、雷に打たれて亡くなったようだ。振り上げたという太刀は持っていなかった。英祖(えいそ)の宝刀『千代金丸(ちゅーがにまる)』の太刀に違いないが、辺りを探してみても見つからなかった。
テーラーは味方の大将に斬られたのか」とサハチはテーラーの無念そうな死に顔を見ながらフミに聞いた。
「一の曲輪を守っていた兼次大主です。テーラーが裏切って山北王を殺したと思って、斬り掛かって行ったようです」
 今晩、マウシを潜入させ、テーラーを寝返らせて、二の曲輪の御門を開けさせる予定だったが、予想外な事が起きてしまった。テーラーを死なせてしまったのは残念だったとサハチは思った。
 兼次大主の死体も近くにあった。左腕と首を斬られていた。研ぎ師のミヌキチの娘婿なので助けてやりたかったが、山北王の側近を務めていたので難しかった。
 サハチは山北王、テーラー、兼次大主、勢理客ヌルの遺体を丁重に三の曲輪に運ぶように命じて、二の曲輪に向かった。
 御庭(うなー)には兵たちの死体があちこちに転がっていた。御庭を挟んで両側に屋敷があり、正面の石垣の上に一の曲輪の屋敷があった。どの屋敷も鉄炮に破壊されてボロボロになっていた。一の曲輪の屋敷は屋根が半分なくなっていた。
 フミによって、浦崎大主(うらさきうふぬし)、具志堅大主(ぐしきんうふぬし)、伊江按司(いーあじ)の戦死が確認された。浦崎大主はサラの父親だった。降参すれば助けるつもりだったが、サムレーたちの総大将を務めていたので降参はできなかったようだ。百名大親(ひゃくなうふや)が倒れていたが死んではいなかった。サハチは兵たちに命じて、百名大親を奥間大親のもとに運ばせた。
 サハチたちは石段を登って一の曲輪に上がった。一の曲輪の庭も死体だらけだった。ファイチと苗代大親がいて、
「戦は終わった」と苗代大親が厳しい顔付きで言った。
琉球は統一されました」とファイチが言った。
琉球の統一か‥‥‥」とサハチはつぶやいた。
 夢がかなったのに、あまりにも多くの死体を目の前にして、喜びは湧き上がって来なかった。
 フミによって備瀬大主(びしうふぬし)の戦死が確認された。
「師兄、ちょっと来て下さい」とンマムイが来て言った。
「何だ?」とサハチはンマムイを見た。
 ウニタキと一緒にンマムイのあとをついて屋敷の裏に行くと立派な蔵があった。蔵の前にサグルーとジルムイがいて、蔵の中には山北王が溜め込んだ財宝が詰まっていた。明国の高価な陶器や壺、ヤマトゥの豪華な屏風(びょうぶ)や刀もあった。ウニタキが興味深そうに調べ始めた。
 サハチは山北王の屋敷に入った。屋敷の中も死体だらけだった。一階の大広間には侍女や城女(ぐすくんちゅ)たちの遺体が並んでいたが、鉄炮にやられて、手足が飛び散っている悲惨な遺体もあった。半ば壊れた階段を上って二階に行くと、サタルーとマウシがいた。二階は大雨に濡れて水浸しだった。
「山北王の奴が見当たりません」とマウシが言った。
「山北王は雷に打たれて死んだ。御内原にいた」とサハチは教えた。
「雷に打たれたのですか」とマウシもサタルーも驚いていた。
「霊石を斬ったバチが当たったのだろう」
「雷で死ぬなんて‥‥‥俺が敵を討ちたかった」とマウシが悔しそうに言った。
 二階には部屋がいくつもあった。どの部屋もひどい有様だったが死体はなかった。崩れた屋根から落ちた瓦が山のようになっている部屋の中に、志慶真ヌル、シンシン、ナナ、東松田(あがりまちだ)の若ヌル(タマ)がいた。四人はクーイの若ヌルの遺体を囲んでお祈りをしていた。サハチは近づいて、クーイの若ヌルの顔を見た。血だらけだが、安らかな死に顔のように見えた。
 廊下から外を見ると、グスク内が一望できた。二の曲輪の屋敷も上から見ると大きな穴がいくつも開いていた。御内原の屋敷だけがまともに建っていた。
 四月七日に総攻撃が始まって、今日は十一日だった。わずか五日で攻め落としたのは上出来といえるが、被害は予想外に大きかった。
 マチルギと安須森ヌルと奥間ヌルが来た。
「ここからグスクを見下ろす日が来るなんて、夢をみているようだわ」とマチルギが言った。
「城下は焼け落ちて、屋敷はボロボロになって、すべてを再建しなくてはならないがな」とサハチは言った。
「大丈夫よ。十年経てば、新しい城下も、新しいグスクもできているわ」
 サハチは笑った。
「今度の十年の計(けい)は今帰仁の再建か」
「もう敵はいなくなったんだし、十年も掛からないでしょう」
「そうだな」とサハチは言ってから、「マナビーの母さんには会ったか」と聞いた。
 マチルギは首を振った。
 サハチたちはフミを連れて御内原に戻った。
 御内原の屋敷は鉄炮の標的にはしていなかったが、それでも何発か当たっていた。一階の大広間に負傷した侍女たちがいた。二階には山北王妃と側室たちの部屋があった。
 王妃は無事だった。娘のウトゥタルと一緒にいて、サハチたちが来たのを知るとサハチたちを睨んだ。
「わたしを殺しに来たのですか」と王妃は言った。
「あなたは殺さないわ。マナビーと約束したの」とマチルギが言った。
「マナビー‥‥‥」と言って、王妃は急に力が抜けたかのように泣き崩れた。
 王妃の事はマチルギに任せて、サハチは隣りの部屋を覗いた。側室が横になっていて、若ヌルが一緒にいた。
朝鮮人(こーれーんちゅ)のパクです。パクの部屋に鉄炮の玉が落ちてきて、足に怪我をしました」とフミが言った。
 パクの事は李芸(イイエ)から聞いていてサハチも知っていた。朝鮮に帰っても身内はいないから帰らないと李芸に言ったようだが、娘がヌルになってしまい、娘を置いては帰れないと思ったのかもしれないとパクと若ヌルを見ながらサハチは思っていた。
「出血がひどくて危なかったのですが、勢理客ヌル様の手当で危険は乗り越えました」
「勢理客ヌルは医術の心得もあったのか」
リュウイン様から教わったようです。負傷した兵たちの治療もしていました」
「そうだったのか。惜しい人を亡くしてしまったな」
「中山王の世子(せいし)様ですか」と声を掛けられて、サハチは振り返った。
 側室らしいが、誰だかわからなかった。フミが唐人(とーんちゅ)のタンタンだと教えてくれた。
「世子様、お願いです。わたしの頼みを聞いて下さい」
 タンタンの後ろに十歳くらいの女の子がいて、心配そうな顔をして母親を見ていた。
「わたしは永楽帝(えいらくてい)に頼まれて、ある物を探すために山北王の側室になりました」とタンタンは言った。
永楽帝?」とサハチは驚いた。
永楽帝が順天府(じゅんてんふ)(北京)から応天府(おうてんふ)(南京)に攻めた時、先帝は宮殿を焼き払いました。その時、家宝だった『洪武帝(こうぶてい)の宝剣』が何者かに盗まれました。その後、行方はわかりませんでしたが、琉球の山北王が持っている事がわかって、わたしが派遣されたのです。山北王は一度だけ、わたしに見せてくれました。明国の海賊から贈られたと言っていましたが、それが『洪武帝の宝剣』とは知りませんでした。わたしは敢えて教えませんでした。山北王が知ったら厳重に仕舞い込んでしまうと思ったからです。わたしは何とかして宝剣を手に入れようとしましたができませんでした。どうか、お願いです。『洪武帝の宝剣』をお返し下さい。永楽帝にとって父親の思い出の剣です。お返しいただければ、永楽帝はとても感謝すると思います」
 そんな宝剣があるのなら、永楽帝に返すべきだとサハチは思い、タンタンを連れて一の曲輪の蔵に向かった。
 蔵は兵によって守られていた。サハチはタンタンに宝剣を探させたが見つからなかった。
「ほかにも蔵があるはずです」とタンタンは言った。
「ここには金や銀、銭(じに)がありません」
「なに、山北王は金や銀も持っているのか」
「明国の海賊から手に入れているはずです」
 サハチは辺りを見回した。ほかに蔵らしい建物はなかった。財宝を隠すとすれば、屋敷の中に違いないと思い、サハチが屋敷に入ろうとしたら、サタルーと出会った。
「親父、凄い物を見つけた」とサタルーは言った。
 サタルーのあとを付いて行くと一階のはずれに隠し部屋があって、そこから地下へと行く階段があった。
 地下の部屋にウニタキとウニタキの配下のタキチがいた。蝋燭(ろうそく)がいくつも灯された部屋の中に、砂金や銀、銭が入った木箱がいくつも積んであった。壁には珍しい形をした明国の武器がいくつも飾られてあり、その中の一つを指差してタンタンが、「あれです」と言った。
 サハチは壁から宝剣を取って眺めた。柄(つか)に宝石が埋め込んであって高価な物のようだった。鞘(さや)を抜いてみると両刃の剣だった。サハチは剣を使った事はないが、持った感じはなかなかよかった。剣を鞘に収めて壁に戻すと、
「すべてを調べてからお前に返そう」と言った。
 タンタンはサハチを見つめてうなづいた。サハチはタンタンを兵に命じて御内原に送らせた。
「その剣がどうかしたのか」とウニタキが聞いた。
 サハチはタンタンから聞いた話をウニタキに説明した。
「信じられんな」とウニタキは言った。
「タンタンはリンジェンフォン(林剣峰)から贈られた側室なんだ。リンジェンフォンが永楽帝の命令を受けた女を連れて来るなんておかしい。タンタンはリンジェンフォンの配下に違いない。だが、リンジェンフォンは亡くなってしまったし、倅のリンジョンシェン(林正賢)も戦死した。タンタンは宝剣を持ち帰って、リンジェンフォンの一味を集めようとたくらんでいるのかもしれない」
「そうか。嘘をついたか」
「リンジェンフォンの配下だったソンウェイ(松尾)なら何かを知っているかもしれない」
「そうだな。タンタンの事はメイユーたちに任せよう」
 ファイチが来たので、サハチは宝剣を見せた。
「『洪武帝の宝剣』だというが本当なのか」
「えっ、洪武帝の宝剣? 噂は聞いた事がありますが、どうして、ここに?」
「海賊が持って来たらしい」
 ファイチは宝剣を手に取って眺めた。
「本物かもしれませんね。永楽帝に返したら喜ばれるでしょう」
 サハチはうなづいて、木箱の中の舟のような形をした銀を手に取って眺めた。
「銀錠(インディン)です」とファイチが言った。
「元(げん)の時代に造られた銀貨で、今も使われています。庶民たちには縁のない物ですが、交易には使われています」
「それにしても溜め込んだものだな。これを使えば城下の再建もできるだろう」
「海賊が持って来た物ですから進貢船(しんくんしん)に乗せて明国に持って行くわけにはいきません。ヤマトゥに持って行けば喜ばれるでしょう」
将軍様に贈るか」とサハチは言った。
 銀錠を見ていたウニタキは、銀錠を木箱に戻すとサハチの顔を見て、
「山北王の次男、フニムイが消えた」と言った。
「なに、フニムイが‥‥‥」
「御内原にいなかったんで、どこかに隠れているに違いないと探させたんだ。それで、ここを見つける事ができた。だが、フニムイはどこにもいない。そして、平敷大主(ぴしーちうふぬし)も消えた。平敷大主は二の曲輪を守っていたんだが死体はない。フニムイの母親は平敷大主の娘のシジなんだ。平敷大主が孫のフニムイを連れて逃げたようだ」
「逃げるっていったって、どうやって逃げたんだ?」
「それはわからんが、どこにもいない事は確かだ」
「フニムイは十歳だったな。そんな子供を連れて、乱戦の中を逃げるなんて信じられん。シジはいるんだな?」
「いる。フニムイはどこだって聞いたら、さっきまでいたのにどこに行ったのだろうってとぼけていた。まだ遠くには行っていないだろう。配下の者たちに追わせた」
「そうか。ほかに逃げた子供はいるのか」
「三男はミサが産んだんだが、四歳で亡くなった。四男と五男はフミが産んで、フミと一緒にいる。子供ではないが、愛宕之子(あたぐぬしぃ)も見当たらない」
「山北王の義弟だったな。フニムイと一緒に逃げたのかもしれんな」
「必ず見つけ出す」とウニタキは言った。
 武器を見ていたファイチは、「山北王は武器を集めるのが好きだったようですね」と言った。
「詳しくはわかりませんが、皆、いわれのある見事な物ばかりです。中山王のお宝にするべきです」
首里(すい)グスクにも地下蔵を造らなければならんな」とサハチは笑った。

 


 一の曲輪と二の曲輪の遺体を片付け、敵兵の遺体は山北王も含め、皆、抜け穴のガマ(洞窟)の中に埋葬して入り口を塞いだ。今帰仁ヌルと勢理客ヌルとクーイの若ヌルの遺体はヌルたちによってクボーヌムイに運ばれて埋葬された。山北王が持っていた英祖の宝刀の太刀は、雷に打たれた時、どこかに飛ばされてしまったのか見つからなかった。
 二の曲輪と一の曲輪の乱戦で、敵兵百五十人が戦死して、味方の兵五十人が戦死した。
 五日間の戦いで、勝連按司(かちりんあじ)(サム)、越来按司(ぐいくあじ)を初めとして三百人近くが戦死して、負傷兵も三百人近くいた。今回、犠牲になった兵たちのためにも、今後、戦のない琉球にしなければならなかった。
 御内原のウタキの前では、ヌルたちがお清めの儀式をして、御内原を再び男子禁制の聖地とした。御内原にはアキシノ様の霊石があるウタキと、それよりも古いシネリキヨのウタキがあった。シネリキヨの神様の声が聞こえるのはタマだけなので、タマのお祈りによって、シネリキヨの神様たちも、琉球が統一されて、戦のない平和な国になる事を喜んでくれた。
 マチルギ、志慶真ヌル、屋嘉比(やはび)ヌル、タマの四人がマジムン(悪霊)退治をして、かつて、滅ぼされてマジムンとなって彷徨(さまよ)っている歴代の今帰仁按司の一族たちを封印した。
 戦で流れた多くの血を洗い流すかのように大雨が降ってきた。稲妻が走り、雷鳴が鳴り響いた。風も強くなり、石垣の上に並んでいる三つ巴の旗が大きくはためいた。ようやく雨がやんだかと思うと、静かに雪が降ってきた。
 惨めに破壊された屋敷を隠すかのように雪が降り積もった。焼け跡の城下も真っ白になった。
 マジムン退治が終わったあとも雪は静かに降り続いていた。
 サハチはマチルギと一緒に一の曲輪の屋敷の二階に上がって雪景色を眺めた。
「伊波(いーふぁ)でお前と出会った時、俺は今帰仁グスクを攻め落とすと誓った。あれから何年が経ったのだろう」
「わたしが十五の時だったから、もう三十年近くも前よ」
「三十年か‥‥‥長かったようで、短かったような気もする」
「色々な事があったわね」
 祖父の敵討ちの事しか考えていなかったマチルギの前に、突然、サハチが現れた。サハチと出会ってマチルギの運命が変わった。ヤマトゥ旅に出たサハチの留守に、勝連按司の息子のウニタキに求婚された。断るために試合をしたが、ウニタキは思っていたよりも強く、ウニタキに勝つために佐敷に行った。苗代大親に師事して剣術の修行に励んだが、試合の当日、ウニタキは現れなかった。
 マチルギの影響で佐敷の娘たちが剣術を学びたいと言い出して、マチルギは娘たちに剣術を教える事になった。サハチがヤマトゥから帰って来て、マチルギはサハチに嫁ぎ、マチルギの弟子たちから女子(いなぐ)サムレーが生まれた。今では二百人以上の女子サムレーがいた。
「お前が今帰仁攻めに行かないと言った時、マナビーのためには仕方がないと思ったが、寂しくもあった。今帰仁グスクを攻め落とした、その時をお前と一緒に味わいたかったんだ。でも、お前はやって来た。お前が来てくれて、本当によかったと思っている」
「わたしも来たかったわ。子供の頃からの念願だったもの。でも、わたしまでが山北王を攻めたら、マナビーが傷ついてしまう。わたしは諦めたのよ。今帰仁で戦をしていると思うと首里でじっとしていられなくて、わたしはマナビーに会いに行ったの。マナビーは食事も取らずに部屋に籠もっていたわ。誰にも会わないって言っていたけど、わたしを部屋に入れてくれた。マナビーは父親との思い出話を話してくれたわ。そして、一緒に弓矢のお稽古をしたのよ。マナビーは泣きながら弓矢を射っていたわ。食事も取ったので、もう大丈夫だろうって思って、島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに行ったら、シンシンとナナがいたので驚いたわ。アキシノ様を助けるために、ササは今帰仁に行くって言ったのよ。わたしは駄目だって止めたわ。そしたら、ササがわたしに行ってくれって言って、瀬織津姫様のガーラダマを託したのよ。今帰仁に来てクボーヌムイでお祈りをしたら、アキシノ様の悲鳴が聞こえたの。アキシノ様を助けなければならないって、もう必死だったわ。ヌルたちを連れて二の曲輪に攻め込んで、真っ二つに割れた霊石の前でお祈りをしたわ。神様の声が聞こえて、わたしは言われた通りに祝詞(ぬるとぅ)を唱えたわ。奇跡が起こって、霊石は元に戻って、アキシノ様は蘇った。シンシンとナナに聞いたら、豊玉姫(とよたまひめ)様の声だったって言ったわ」
「なに、豊玉姫様が助けてくれたのか」とサハチは驚いた。
豊玉姫様の力と瀬織津姫様のガーラダマの力で、奇跡が起こったんだと思うわ」
「そうだったのか」とサハチは言って、「南方(ふぇーぬかた)はどっちだ?」と聞いた。
 マチルギは首を傾げたが、「志慶真曲輪の方だ」とサハチは言って、反対側に行って外を眺め、両手を合わせた。
 マチルギも両手を合わせて、豊玉姫様にお礼を言った。
「来てよかったわ」とマチルギが言った。
「アキシノ様を助けられたし、ここに来なければ、この悲惨な状況はわからなかったわ。チューマチとマナビーがここに来るんでしょ。わたしはこのまま、ここに残ろうと思っているの」
「えっ、ここに残る?」
 サハチはマチルギの横顔を見た。
今帰仁を再建させるわ」
 サハチには駄目だとは言えなかった。アキシノ様の子孫であり、千代松(ちゅーまち)の曾孫(ひまご)であるマチルギが、この惨めな有様を見て黙っていられるはずはなかった。
「わかった。見事な城下を造ってくれ」とサハチは言った。
「しかし、今帰仁は遠すぎる。お前がいないと寂しくなるな」
「何を言っているの。若い側室ができたんでしょ」
「えっ?」
「マシュー(安須森ヌル)から話は聞いたわよ」
「まだ側室にするなんて‥‥‥」
「タマは必要だわ。側室に迎えなさい」
 サハチはマチルギを見たが何も言えなかった。
「マジムン退治が終わったのに雪はやまないな」とサハチは言った。
「きっと、サム兄さんが降らせているのよ。戦に出る前、勝連グスクに降った雪の事を言っていたわ。今帰仁グスクでもマジムン退治をしたら雪が降るのかな。今帰仁グスクに降る雪を見てみたいってね」
「サムがそんな事を言ったのか‥‥‥」
「亡くなるには早すぎるわ」とマチルギは涙声で言った。
 サハチはマチルギの肩を抱き寄せた。
 琉球の統一を成し遂げたサハチは、サムが降らせている雪をマチルギと一緒に見つめていた。

 

 

第二部、完



 

中国武術 龍泉長風製 花梨木厚銅武術剣 長拳 太極拳用 (74) 中国 剣 太極剣

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香楼』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣
波平大親      1366-    山南王の重臣
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司
チルカマ      1349-    クマラパの妹。先代の石原按司
阿嘉のトゥム    1365-    久米島からミャークに渡った兄弟の弟。伊良部島に住む。
スタタンのボウ   1360-    多良間島の女按司。クマラパの弟子。
ハリマ大殿     1359-    ボウの夫。ターカウの倭寇
平久保按司     1355-    石垣島按司。ターカウの倭寇
ブナシル      1360-    名蔵の女按司
ミッチェ      1387-    ブナシルの娘。父親は富崎按司
マッサビ      1369-    ウムトゥダギのフーツカサ。池間島出身。
サユイ       1391-    マッサビの娘。弓矢の名人。
阿嘉のグラー    1362-    マッサビの夫。久米島からミャークに渡った兄弟の兄。
ガンジュー     1386-    熊野の山伏、願成坊。
タキドゥン     1348-    島添大里按司の息子で、タキドゥン島の按司になる。
ユミ        1361-    ドゥナン島サンアイ村のツカサ。
ナーシル      1391-    ユミの娘。父は苗代大親

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。
クミ姫             久米島の神様。ビンダキ姫の三女。
ウパルズ            池間島の神様。ウムトゥ姫の長女。
赤名姫             ウパルズの孫。ユンヌ姫と行動を共にする。
ウムトゥ姫           石垣島於茂登岳の神様。ビンダキ姫の次女。
ノーラ姫            石垣島の名蔵の神様。ウムトゥ姫の次女。
ヤラブ姫            ノーラ姫の三女。
ビシュヌ            クバントゥオンの神様。シィサスオンの神様でもある。
ラクシュミ           ビシュヌの妻。ミズシオンの神様。
サラスワティ          ヤラブダギの神様。弁才天
イリウムトゥ姫         二代目ウムトゥ姫の次女。クン島の神様。
ユウナ姫            イリウムトゥ姫の次女。ドゥナン島の神様。

 

2-237.奇跡の復活(第一稿)

 アキシノ様を助けるために、ササがいる島添大里(しましいうふざとぅ)グスクに向かったタマ(東松田の若ヌル)、シンシン、ナナは、サグルーたちが志慶真曲輪(しじまくるわ)を攻め落とした四月八日の夜、名護(なぐ)の木地屋(きじやー)の親方、ユシチのお世話になっていた。
 翌朝早くに出発して、日が暮れる前には島添大里グスクに着いた。東曲輪(あがりくるわ)では娘たちの剣術の稽古が始まっていて、鎧姿(よろいすがた)の三人のヌルが馬に乗って駈け込んで来たので、皆が驚いた。ササも若ヌルたちと一緒に娘たちの指導をしていた。
 馬から下りた三人の顔を見て、ただ事ではないと悟ったササは、三人を連れて安須森(あしむい)ヌルの屋敷に入って話を聞いた。
 山北王(さんほくおう)が今帰仁(なきじん)グスクのウタキにある霊石を斬ってしまうと聞いて、ササは驚いた。刀で石が斬れるのかと信じられなかったが、タマは霊石が真っ二つに割れるのを確かに見たという。
「それはいつ起こるの?」とササはタマに聞いた。
「はっきりとはわからないけど、あと二、三日のうちだと思います」
「あたしたちが出て来る時、外曲輪(ふかくるわ)と志慶真曲輪は攻め取ったの。でも、そこからが大変だわ」とナナが言った。
「その霊石はアキシノ様の御神体なのね?」
「アキシノ様から聞いたんだけど、厳島(いつくしま)の弥山(みせん)の石らしいわ」
「えっ、あそこから運んだの?」とササは驚いた。
「アキシノ様のお孫さんが運んだみたい」
 ササたちが厳島の弥山に行ったのは四年前だった。弥山でシンシンがアキシノ様の声を聞いたのが、アキシノ様との出会いの始まりだった。南の島を探しに行った時には一緒に付いて来てくれて、色々と助けてもらった。瀬織津姫(せおりつひめ)様を探しにヤマトゥに行った時も一緒に行ってくれた。今後の琉球のためにも、何としてでも、アキシノ様を助けなければならなかった。
「霊石を守るには、山北王が霊石を斬るのを止めなければならないわ」とササは言った。
「今の状況で、山北王に近づくなんて無理よ」とシンシンが言った。
「山北王が霊石を斬るという事は、山北王は負けを認めたという事なのね?」
「そうだと思います」とタマが言った。
「でも、どうして、グスクの守り神である霊石を斬るのかしら?」
「戦に負けたのは神様のせいだと思ったんじゃないの?」とナナが言った。
「役立たずの神様だって、腹を立てたのね。山北王ってそんなに信心深かったの。以前、母から聞いたけど、山北王は神様なんて信じていなくて、ヌルたちもあまり重要視していないようだって言っていたわ」
「クーイの若ヌルと仲良くなって、変わったのかしら」とナナが言った。
「クーイの若ヌルはグスクにいるの?」
「お祭りを見に来たまま島に帰らずに、グスクの中にいるわ。戦が始まるまで、シジマ(志慶真ヌル)から剣術を習っていたのよ」
「クーイの若ヌルが剣術を?」
「お芝居を観て、強くなりたいって思ったらしいわ。会った事はないけど、シジマが言うには、素直で可愛い娘らしいわ。若ヌルのお祖母(ばあ)さんがマジムンになって取り憑いていたので、マジムン退治をしてやったのよ」
「若ヌルのお祖母さんて、今帰仁の若ヌルだった人でしょ。クーイの若ヌルに敵討(かたきう)ちをさせるために取り憑いたの?」
「多分、そうだと思うわ」
「でも、若ヌルは山北王を殺してはいないわ。殺すつもりなら殺せたはずよ」
「そうよね。何をさせようとしていたのかしら?」
「山北王一人だけを殺しても、殺された人たちの恨みは晴れないと思ったんじゃないかしら」とシンシンが言った。
「あたしの父は山賊に殺されて、母はさらわれてしまったわ。あたしは敵を討たなければならないって思って武芸を始めたの。その時のあたしは山賊のお頭一人を倒そうとは思わなかったわ。山賊全員を殺してやるって思っていたのよ。きっと、クーイの若ヌルのお祖母さんも、裏切った者たち全員を殺そうと思ったんじゃないかしら」
「すると、中山王(ちゅうざんおう)に攻めて来てもらおうって考えたのかしら」とナナが言った。
「そうかもしれないわね」とササが言った。
「お祖母さんが若ヌルに奥間(うくま)を焼けって山北王に言わせたのかもしれないわね。でも、お祖母さんのマジムンはいなくなった。今頃、クーイの若ヌルは記憶を失っているかもしれないわね」
「山北王の事も覚えていないのかしら?」と言ってシンシンが笑った。
「戦が終わったら、クーイの若ヌルをここに連れてきて。会ってみたいわ」
「また弟子にするの?」とシンシンが聞いた。
 ササは笑った。
「会ってみてからよ。ところで、シンシン、さらわれたお母さんが瀬織津姫様の子孫だったのね?」
「えっ?」とシンシンは驚いた。
 瀬織津姫様の曾孫(ひまご)で行方不明になった吉備津姫(きびつひめ)様が自分の御先祖様に違いないとは聞いたが、母の事を考えた事はなかった。当時、十歳だったので、母の出自はわからない。でも、没落した名家の娘だと聞いた覚えがあった。母は気品があって美しい人だった。
「メイユーさんが来たら、帰る時にそのお船に乗って、シンシンの事を調べに行きましょう」とササは楽しそうに言った。
「ササ、生まれた子供はどうするの?」とナナがササの大きなお腹を見ながら言った。
「勿論、一緒に連れて行くわ」
「大丈夫かしら?」
「父親は水軍大将の息子よ。お船がおうちのようなものよ」
 ササはタマを見ると、「按司様(あじぬめー)は喜名(きなー)に滞在したようだけど、うまく行ったの?」と聞いた。
 タマは恥ずかしそうな顔をして、「それが、よく覚えていないのです」と俯いた。
 ササは笑って、「うまく行ったのね」とタマの肩をたたいて、「あなたも一緒に明国に行きましょう」と言った。
「えっ、あたしも一緒に行けるんですか」
「あなたのお陰でマジムンになったアビー様を退治できたんだから、その御褒美よ」
 タマは嬉しそうな顔をして、シンシンとナナを見た。
 シンシンとナナも笑って、「よかったわね」とうなづいた。
「ところで、アキシノ様はどうやって助けるの?」とナナが話を戻した。
「ここであれこれ言っていても始まらないわ」
「ササ、今帰仁に行くつもりなの?」とシンシンが心配した。
「まだ大丈夫よ」とササは笑ったが、
按司様が絶対にササ姉(ねえ)を連れて来ちゃ駄目だって言いました」とタマが強い口調で言った。
 娘たちの稽古が終わって、玻名(はな)グスクヌルと若ヌルたち、女子(いなぐ)サムレーたちが戻って来た。女子サムレーたちと一緒にマチルギがいた。
「奥方様(うなぢゃら)、どうしたんですか」とササが驚いて聞いた。
「マナビーの事が心配になって、ちょっと見に来たのよ」
「マナビーは大丈夫でした?」
「泣きながら弓矢のお稽古をしているわ」
「そう‥‥‥」
「あんたたち、どうして戻って来たの?」とマチルギはシンシンとナナに聞いた。
 ササがアキシノ様の霊石の事を説明して、タマをマチルギに紹介した。
「以前、会った事があったわね」とマチルギがタマを見たので、
「はい。首里(すい)グスクでお会いしました」とタマは言って頭を下げた。
 マチルギは何もかも知っているわという顔でタマを見つめていたが、何も言わなかった。
「それで、どうするつもりなの?」とマチルギはササに聞いた。
「ササが今帰仁に行くって言うんです」とシンシンがマチルギに言った。
「駄目よ。そんなお腹で馬に乗るのは危険だわ。あなた一人の体じゃないのよ。あなたのお腹の中にいる子はきっと、わたしたちの次の世代の琉球を背負っていくヌルになると思うわ。流産させるわけにはいかないのよ」
 ササはマチルギを見つめてうなづいた。
「奥方様に任せるわ」と言って、ササは首から瀬織津姫様のガーラダマ(勾玉)をはずした。
「このガーラダマがアキシノ様を救ってくれると思うわ」
「わたしに瀬織津姫様のガーラダマを持って行けって言うの?」
「それしか方法はないわ」
「でも、わたしにそれが身に付けられるの?」
 シンシン、ナナ、タマは、志慶真の若ヌルの首にガーラダマの紐が食い込んで苦しんでいた姿を思い出した。瀬織津姫様のガーラダマはそれ以上の威力があるに違いない。首に掛けた途端に、マチルギが死んでしまうのではないかと恐れた。
「大丈夫よ。奥方様はアキシノ様の子孫だもの」
 ササはそう言ったが、ササにもどうなるのかわからなかった。
 マチルギはササから大きなガーラダマを受け取ると胸の前に捧げて、『瀬織津姫様、ガーラダマをお貸し下さい』と心の中でお願いした。
『アキシノ様、お守り下さい』と祈りながら、マチルギは恐る恐るガーラダマの紐を頭に通して、首から下げた。
 ササたちは異変が起こったら、すぐに対処しようと構えていたが、何も起こらなかった。
「奥方様、大丈夫?」とササが聞いた。
 マチルギはガーラダマを見つめながらうなづいた。
「ガーラダマを身に付けたのは、首里でマジムン退治をした時以来だわ。あの時はあなたのお母さんに言われたままにやっていて、ヌルでもないわたしがこんな事をしていいのかしらって思っていたわ。今、このガーラダマを身に着けたら、以前、久高島のフボーヌムイで見た夢を思い出したわ。夢の中で、わたしはガーラダマを身に付けて戦っていたような気がするわ」
「奥方様の御先祖様は武芸が得意だった勢理客(じっちゃく)ヌル様なのよ。きっと、夢の中で、勢理客ヌルを継いで悪者退治をしていたんだわ」とササが言った。
「ガーラダマは身に着けられたけど、わたしはヌルの修行をしていないから、儀式の事もしきたりとかも何も知らないわ」
「大丈夫です。儀式の細かい決まりとか、しきたりとかは神様の声が聞こえないヌルたちが、それらしく見せるために決められた事なのです。奥方様は神様の声が聞こえるんだから、神様の言う通りにすれば、それでいいのです」
 そう言われて自信を持ったマチルギだったが、兄の勝連按司(かちりんあじ)が戦死したと聞いて、信じられないと言って悲しんだ。サムの娘の勝連若ヌルは、そんなの嘘よと言って大声で泣いた。ササは勝連按司と越来按司(ぐいくあじ)を弔うためにお酒を用意して、みんなでお酒を飲みながら二人を偲んだ。
 翌朝、マチルギはササのために用意してあった白い鎧を身に着けて、シンシン、ナナ、タマと一緒に今帰仁に向かった。

 


 その日の朝、抜け穴を利用して三の曲輪を攻め落としたサハチは、二の曲輪と中曲輪からの敵の弓矢に気を付けながら、戦死した兵たちの遺体と負傷兵たちを回収した。敵兵の遺体は抜け穴のガマ(洞窟)の中に埋葬し、負傷兵は敵も味方も奥間大親(うくまうふや)のもとへと送った。味方の戦死者が三十八人、敵の戦死者は百五十人もいた。
 サハチは兵を二つに分けて、三の曲輪と外曲輪を守らせた。中御門(なかうじょう)がまだ敵の手の中にあるので、三の曲輪から外曲輪への移動は石垣に立てかけた梯子(はしご)を頼るしかなく、負傷者の移動も大変だった。
 負傷者の移動をしている最中、リュウインの六人の弟子たちが外曲輪に攻めて来て、暴れ回ったあげくに全員が壮絶な討ち死にをした。味方の被害も大きく、羽地(はにじ)のサムレー大将の饒平名大主(ゆぴなうふぬし)と名護のサムレー大将の安和大主(あーうふぬし)が戦死した。
 三の曲輪内を片付け終わった午後、総攻撃を開始した。本陣はそのままで、サハチは外曲輪の物見櫓(ものみやぐら)から指揮を執った。三の曲輪の右側に物見櫓があって、そこは指揮を執るのに最適だったが、中曲輪からの攻撃が激しく、近づく事はできなかった。
 三の曲輪の石垣と、三の曲輪と中曲輪を仕切っている石垣はつながっているので、石垣の上から攻め寄せて、石垣の上にいる敵兵を倒して中曲輪に潜入した。中御門の上にある櫓は火矢を撃って焼き払い、中御門を中から開けて、外曲輪の兵たちが攻め込んだ。中曲輪の敵兵は坂道を登って二の曲輪へと逃げて行った。
 中曲輪を手に入れた事で、外曲輪と中御門の移動が楽になった。中曲輪にある客殿は鉄炮(てっぽう)(大砲)で破壊されて惨めな姿になっていた。客殿にいた侍女と城女(ぐすくんちゅ)を保護して、負傷兵たちは奥間大親のもとに送った。二の曲輪のすぐ下にある客殿には重臣たちの家族が避難しているというが、二の曲輪からの攻撃が激しく、近づく事はできなかった。
 翌日の十一日、抜け穴のために運んだ鉄炮の玉が余っていたので、鉄炮攻撃から二の曲輪攻めが始まった。サハチは本陣を三の曲輪の物見櫓の下に移し、物見櫓の上から指揮を執った。ここからだとグスク全体が見渡せたが、やはり、高い石垣に邪魔されて、二の曲輪の中までは見えなかった。
 敵も必死になって反撃してくるので、二の曲輪の石垣に取り付く事もできず、一時(いっとき)(二時間)ほどで攻撃を中断した。

 


 御内原(うーちばる)で指揮を執っていた攀安知(はんあんち)は、戦が中断されると、マナビダル(クーイの若ヌル)が心配になって一の曲輪の屋敷に行った。鉄炮に撃たれて見る影もなくボロボロになった屋敷の二階に上がると、天井から太い柱が落ちていて、マナビダルはその下敷きになっていた。
 攀安知はマナビダルの名を叫びながら、マナビダルに近づいた。頭から顔まで血だらけになったマナビダルに息はなかった。
 攀安知は大声でわけのわからない事を叫び、子供のように大声で泣いた。
「どうして、お前が死ななくてはならないんだ‥‥‥」
 太い柱を何とかしてどけて、マナビダルを抱きしめながら攀安知は泣き続けた。
「お前の敵は必ず討つ」と言って立ち上がると、攀安知はフラフラした足取りで御内原に戻った。
 ウタキの前で勢理客ヌルがお祈りを捧げていた。マナビダルが勢理客ヌルに怒られていたのを思い出した攀安知は、勢理客ヌルがマナビダルの死を願っていたに違いないと思った。攀安知は太刀を抜くと叔母の勢理客ヌルを斬り捨てた。背中を斬られた勢理客ヌルは悲鳴を上げる事もなく倒れた。
 それを見ていたテーラーが、「ハーン、気でも違ったか」と走って来た。
「うるさい!」と言って、攀安知テーラーに斬り掛かった。
 攀安知の目付きは異様だった。正気とは思えなかった。止めようと思っても止められない。仕方なく、テーラーも太刀を抜いて相手をした。
 斬り合いを始めた攀安知テーラーを、兵たちは敵に対する見張りも忘れて、あっけにとられた顔で見ていた。
 攀安知は本気になって斬り掛かってくる。テーラー攀安知を斬るわけにはいかないと防戦するしかなかった。左腕を斬られたテーラーがつまづいて倒れた。
 攀安知は倒れたテーラーを放っておいて、ウタキに近づいて行った。ウタキの前に倒れている勢理客ヌルを蹴飛ばしてどかすと、霊石の前に仁王立ちした。
「マナビダルを見殺しにしたお前は守護神ではない!」
 そう叫ぶと攀安知は太刀を振り上げ、気合いと共に霊石を目掛けて打ち下ろした。
 地が割れるような大きな音が響き渡って、霊石が真っ二つに割れた。
 攀安知は太刀を振り上げて奇声を上げた。
 霊石を斬った攀安知を見ていた兵たちは呆然としていた。
 テーラーも斬られた腕を押さえながら、呆然と立ち尽くしていた。目の前で起こった事を信じる事はできなかった。夢でも見ているに違いないと思いたかった。
 空が急に暗くなって大雨が降って来た。
 稲光と共に大きな雷鳴が鳴り響いた。
 攀安知が振り上げていた太刀に雷が落ちた。太刀が光って、攀安知の体が弾き飛ばされたように飛んだ。テーラーの足下に攀安知が落ちてきた。攀安知の目は飛び出し、口から泡を吹いていた。
 騒ぎを聞いて駈け込んで来た兼次大主(かにしうふぬし)は、立ち尽くしているテーラーとその足下に倒れている攀安知を見て、テーラー攀安知を斬り殺したと勘違いした。
「この裏切り者め!」と兼次大主は太刀を抜いてテーラーに斬り掛かった。
 大雨の降る中、テーラーと兼次大主の斬り合いが始まった。
「俺は裏切ってなどいない」とテーラーが言っても、兼次大主は聞かなかった。
「黙れ! 王様(うしゅがなしめー)を殺して、敵を誘導したに違いない」
「違う。王様は雷に打たれたんだ」
 誰かが、「敵だ!」と叫んだ。
 テーラーがその声に振り向いた所を兼次大主の太刀がテーラーの首を斬り裂いた。
 テーラーは首から血を噴き出しながら倒れた。
 マウシが率いる山グスクの兵が次々に石垣から侵入して来た。
 雨が勢いよく降る中、乱戦となり、兼次大主はマウシに斬られた。山グスクの兵によって、中曲輪側の御門(うじょう)も志慶真曲輪側の御門も開けられ、中山王の兵が二の曲輪になだれ込んだ。

 


 マチルギたちが今帰仁に着いたのは、攀安知が亡くなったマナビダルを抱いて泣いている頃だった。アキシノ様の無事を確かめるために、サハチに会う事もなく、クボーヌムイに向かった。
 クボーヌムイのウタキに志慶真ヌルがいて、マチルギが来たので驚いた。
「ササの代わりに来たのよ」と言ってマチルギは笑った。
「アキシノ様の事ですね」と志慶真ヌルは言って、「まだ、何事も起きてはいません」と言った。
 志慶真ヌルはシンシン、ナナ、タマを見て、
「クーイの若ヌルが亡くなってしまったようだわ」と言った。
「えっ!」と三人は驚いた。
「どうして亡くなったのですか」
「わからないわ。グスクの中は予想以上に悲惨な状況になっているのかもしれないわ。ついさっき、クーイの若ヌルの声が聞こえたの。『お師匠、ありがとう』って言ったわ。マジムンを取ってあげたのに、残念な事になってしまったわ」
「ササが会いたいって言っていたのに‥‥‥」
 マチルギはお祈りをして、アキシノ様に挨拶をした。
「マチルギは来ないと思っていたけど、やっぱり来たのね」とアキシノ様は笑ってから、「瀬織津姫様のガーラダマを身に着けているの?」と驚いた。
「アキシノ様を守るために、ササから借りてきました」
「そのガーラダマは凄い力を持っているわ。それがあれば何が起こっても安心だわね。それにしても、鎧を着てガーラダマを下げた姿は娘の勢理客ヌルにそっくりよ」
「勢理客ヌル様のウタキは勢理客村にあるのですか」
「あるわ。今の勢理客ヌルはわたしの娘の声は聞こえないけど、あなたなら聞こえるはずよ。帰りに会っていけばいいわ」
 マチルギが返事をしようとしたら、アキシノ様の悲鳴が聞こえて、その後、アキシノ様の声が聞こえなくなった。
「霊石が斬られたんだわ」とタマが叫んだ。
 急に大雨が降って来て、大きな雷の音が鳴り響いた。
 クボーヌムイから出たマチルギたちは大雨の降る中、志慶真村に行った。
 志慶真ヌルの屋敷に行き、「アキシノ様を助けるのよ」とマチルギはヌルたちに叫んだ。
 マチルギがいる事にヌルたちは驚いた。
「まさか、お姉さんが来るなんて思わなかったわ」と安須森ヌルが言った。
「お母さんがどうして来たの?」とサスカサが聞いた。
「やっぱり来たのね」と姉の伊波(いーふぁ)ヌルが言った。
「説明はあとよ。アキシノ様が大変なの」
「もしかして、今の雷の音?」と安須森ヌルが聞いて、
「そうだと思うわ」とマチルギはうなづいた。
 武芸の心得のあるヌルたちがマチルギに従って志慶真曲輪に向かい、他のヌルたちはアキシノ様の無事を祈るためにクボーヌムイに向かった。シンシン、ナナ、タマ、志慶真ヌルと安須森ヌル、サスカサ、フカマヌル、久高ヌル、奥間ヌル、浦添(うらしい)ヌル、越来(ぐいく)ヌルが刀を持ってマチルギに従った。
 雨が勢いよく降る中、マチルギがヌルたちを従えて志慶真曲輪に来たので、志慶真御門(しじまうじょう)の櫓にいたサグルーとジルムイが母の姿を見て驚いた。
「攻め上るわよ」とマチルギは門を見上げて二人の息子に言った。
 御門を抜けて志慶真曲輪に入ると、マチルギたちは二の曲輪へと続く坂道に進んだ。
「母さん、危険だ!」と櫓から下りて来たジルムイが叫んだ。
 マチルギは早く来なさいというように手で合図をして、ヌルたちを従えて二の曲輪に向かった。
「戦闘開始だ!」とサグルーが叫んで、兵たちを引き連れて母のあとを追った。
 法螺貝が鳴り響いた。
 マチルギたちは飛んで来る敵の弓矢を刀で弾き飛ばしながら進んで行き、二の曲輪の御門まで来た。
 石垣の上をジルムイが兵を率いて進み、敵兵を弓矢で倒していた。
 体当たりして御門を壊そうとしたら、中から御門が開いて、味方の兵が顔を出した。
 マチルギたちは二の曲輪内に入った。二の曲輪内では乱戦が始まっていた。マウシが率いている山グスクの兵たちだった。サグルーとジルムイの兵も二の曲輪内になだれ込んだ。
 マチルギたちは敵兵を倒しながら、御内原のウタキを目指した。御内原の屋敷の先にウタキはあった。
 霊石は真っ二つに割れていた。ウタキの前に倒れている勢理客ヌルの遺体をシンシンとナナがどけた。
 マチルギが割れた霊石の前でお祈りを始めた。誰だかわからないが神様の声が聞こえた。
 マチルギは神様の言われた通りに祝詞(ぬるとぅ)を唱え、マチルギの後ろにいる志慶真ヌル、シンシン、ナナ、タマの四人がマチルギが言った祝詞を復唱した。安須森ヌル、サスカサ、フカマヌル、久高ヌル、奥間ヌル、浦添ヌル、越来ヌルは刀を構えて、マチルギたちを守っていた。
 稲光が光った。雷が霊石に落ち、霊石が光に包まれたように見えた。大きな地震が起きて地が揺れた。物凄い音がしたかと思うと、割れていた霊石がピタリと合わさってくっついた。
 黒い雲が流れて行った。雨がやんで、日が差してきた。霊石に背中を向けていたヌルたちが、振り返って霊石を見て驚いた。
「アキシノ様は無事なのね?」と安須森ヌルが言った。
「マチルギ、ありがとう」というアキシノ様の声が聞こえた。
「御無事だったのですね。よかった」とマチルギは言って、目を開けて霊石を見た。
 真っ二つに割れていた霊石がくっついていた。奇跡が起こったようだった。
 目を閉じてお祈りをしていたのでわからないが、ガーラダマが光っていたような気がしていた。
 マチルギは瀬織津姫様のガーラダマを両掌(りょうてのひら)に載せて、瀬織津姫様にお礼を言った。

 

 

 

theory xyz 糸魚川翡翠 勾玉 置物 91mm 純国産 翡翠勾玉 特大 甲府製 秋光作 極上級 ひすい