長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-188.サハチの名は尚巴志(第一稿)

 島添大里(しましいうふざとぅ)グスクのお祭りの前日の夕方、マグルー夫婦、ウニタル夫婦、シングルー夫婦、サングルー、福寿坊(ふくじゅぼう)、カシマは無事に旅から帰って来た。婚礼の翌日、十六日に旅立って、十二日間の旅だった。
 玻名(はな)グスクの残党の襲撃事件はウニタキの配下のアカーから聞いていて、サハチは知っていたが、その後は誰からも知らせはなかった。皆の顔を見て、何事もなくてよかったとサハチは胸を撫で下ろした。
「ヤンバルで敵の襲撃はなかったんだな?」とサハチは聞いた。
「はい。警戒していたんですけど、敵の襲撃はありませんでした。奥間(うくま)まで行って、サタルー兄さんに会ってきました」とマグルーが言った。
「サタルーさんと一緒に今帰仁(なきじん)に行ったんです」とウニタルは言った。
今帰仁には大勢のヤマトゥンチュ(日本人)がいて賑やかでした。俺たちの事をいちいち気にするような人はいませんでした」とシングルーが言った。
「山北王(さんほくおう)に会って来たのか」とサハチが聞くと、
「伯父さんは歓迎してくれました」とマウミが言った。
「なに、みんなして山北王に会ったのか」とサハチは驚いた顔で皆を見た。
「そのつもりだったのですが、ウニタキさんに危険だと言われて、俺とマウミだけが『まるずや』の主人と一緒にグスクの中に入りました」とマグルーが答えた。
「そうか。お前たちが山北王と会ったか‥‥‥」
 サハチは山北王に会った事はなかった。察度(さとぅ)の葬儀の時、浮島(那覇)に来た山北王を一目見ようとウニタキと一緒に出掛けたが、警備が厳重で浮島に近づく事もできなかった。マチルギの祖父の敵(かたき)だった山北王は初代の山北王で、今の山北王の祖父だった。琉球を統一するためとはいえ、会った事もない男を倒さなければならないのかと気持ちが少しぐらついた。
「山北王はどんな男だった?」とサハチはマグルーに聞いた。
「色が白くて、ヤマトゥンチュのようでした。御先祖様が平家の美男子だったというのもうなづけました」
「ほう、山北王は美男子だったか」とサハチは笑った。
「チューマチの兄貴とマナビー姉さんをどうして連れて来なかったんだと聞かれて、娘が生まれたので来られなかったと言ったら、山北王は目を細めて喜んでいましたよ」
 マグルーは懐(ふところ)から書状を出すとサハチに渡した。
「何だ?」と言いながらサハチは書状を受け取った。
 書状には山北王の印(いん)が押してあり、中山王(ちゅうざんおう)に宛てた物だった。次の進貢船にまた使者を乗せてくれと書いてあるのだろうとサハチは思った。
「山北王の頼みが書いてあります。山北王はヤマトゥの商人たちと取り引きをする商品が足らなくて困っているようです。『まるずや』と『よろずや』に頼んだようですが、それでも足りなくて、中山王に頼みたいと言っていました」
「頼むのはいいが、今の時期、今帰仁には運べんぞ」
「陸路で運ぶそうです。中山王の了解を得たら商品と人足(にんそく)を送ると言っていました。そして、書状の返事は首里(すい)の『油屋』に渡してくれと言っていました」
「そうか、わかった」とサハチはマグルー夫婦を見て笑い、「御苦労だった」と言った。
 サハチは皆の顔を見回した。
「皆、一回り大きくなったようだな。無駄な旅ではなかったようだ。明日はお祭りだ。シングルー夫婦とサングルーは泊まっていけ。福寿坊殿とカシマ殿、若夫婦たちに付き合ってくれてありがとう。お祭りを楽しんでからお帰り下さい」
 サハチは侍女に頼んで、福寿坊たちを城下のお客用の屋敷に案内させた。若夫婦たちがいなくなると、ウニタキが現れた。
「子供たちの護衛、ありがとう」とサハチはお礼を言った。
「玻名グスクの残党が出て来たのは予想外だったが、あとは何も起こらなかった」とウニタキは言った。
「マグルーが山北王に会ったらしいな」
「あの時は俺も迷ったよ。マウミは会いたいと言うし、マウミ一人を行かせるわけにもいかない。マグルーも行かせる事にして、もしもの事があったら、グスクに忍び込んで助け出そうと思ったんだ」
「忍び込めるのか」
「非常時ではないからな。守りもそれほど厳重ではない。『まるずや』の連中がグスクの周辺を色々と調べていて、潜入できそうな場所はわかっているんだ。助け出すのは難しいだろうがやらなければならないと覚悟を決めたんだよ。幸いに、マグルーは山北王から書状を頼まれて、グスク内に泊まる事もなく帰って来た。二人の顔を見て、ホッとしたよ」
「そうか、心配を掛けたな」
「明国の海賊が来なくなったお陰で助かったんだ。そうでなければ、マグルー夫婦はグスク内に軟禁されたかもしれない」
「マグルー夫婦が人質になったと言うのか」
「その可能性は充分にあった。山北王の娘は島添大里にいるが、中山王の子供は今帰仁にいないからな。婚約した娘が今帰仁に来るまで、マグルーたちは今帰仁で暮らす事になったかもしれん」
「婚約した娘か。マタルーの次女のカナはまだ八歳だ。今帰仁に送るのは早すぎる」
「山北王としても明国から海船が下賜(かし)されるまでは強気には出られないだろう。次に出す進貢船(しんくんしん)にも使者を乗せてくれと頼むかもしれんぞ」
「次の進貢船か。まだ、いつ送るか決めていないが五月頃になるだろう。次の進貢船には按司たちの従者を乗せなければならんからな、できれば断りたいものだ」
「断るのも面白いかもしれんぞ。山北王は怒ると何をしでかすかわからん。自分の首を絞めるような事をするかもしれんな。話は変わるが、二、三日したら俺は旅芸人たちと一緒に旅に出る。来月の二十四日、今帰仁のお祭りがあって、旅芸人たちのお芝居をやってくれって頼まれているんだ」
「なに、今帰仁でもお祭りを始めたのか」
「いや、お祭りは古くからやっているようだ。三月二十四日は壇ノ浦の合戦があった日で、御先祖様の冥福(めいふく)を祈ってきた日だそうだ。最近になって、外曲輪(ほかくるわ)を開放して庶民たちにもお祭りを楽しんでもらっているらしい。そのお祭りが終わったら、湧川大主(わくがーうふぬし)は鬼界島(ききゃじま)(喜界島)に向かうようだ。奴を見送ったら帰って来る。それまで、ウニタルの事なんだが、マグルーと一緒に政務の事を教えてやってくれ」
「旅から帰ってきたら、ウニタルを仕込むのか」
「奴の顔つきが変わった。跡を継ぐ覚悟を決めたようだ」
 サハチはうなづいて、「ウニタルならできるさ」と言った。
 お祭りは例年通り、大勢の人たちが集まって来た。マウミはまだ帰って来ないのかと心配顔でやって来たンマムイ夫婦は、マウミがいるのを見て、無事を喜んでいた。ファイチ夫婦とミヨンもファイリンの心配をしてやって来て、ファイリンから旅の話を聞いていた。マチルギもマグルーとマチルーの心配をしてやって来た。マチルギが島添大里のお祭りに顔を出すのは久し振りで、城下の人たちから喜ばれていた。
 佐敷大親(さしきうふや)夫婦も平田大親夫婦も子供たちを心配してやって来た。山南王(さんなんおう)夫婦は来なかったが、トゥイ様(前山南王妃)と島尻大里(しまじりうふざとぅ)ヌルがやって来た。前もって約束していたのか、マガーチ(苗代之子)もやって来て、島尻大里ヌルを連れてどこかに行った。手登根大親(てぃりくんうふや)の妻、ウミトゥクが子供たちを連れて来て、母親のトゥイがいるのに驚いた。
 婚礼の準備で忙しかったので、お芝居の稽古をする暇もなく、お芝居は去年と同じ『ウナジャラ』だった。マチルギの反応が怖くもあったが、マチルギは楽しそうに自分が主役のお芝居を子供たちと一緒に楽しんでいた。旅芸人たちもやって来て、『かぐや姫』を演じた。
「島尻大里グスクでもお祭りをする事に決めたのですよ」とトゥイがサハチに言った。
「そのために、ここのお祭りを見に来たのに、マナビー(島尻大里ヌル)ったらどこに行ったのかしら。まったく困ったものね」
「いつ、やるのですか」とサハチは聞いた。
「五月ですよ。五月の十二日。義父(汪英紫)が山南王になった日なの。シタルーは豊見(とぅゆみ)グスクで『ハーリー』を始めたけど、島尻大里ではお祭りをしなかったわ。父親に厳しく躾(しつけ)られたから庶民たちと一緒に騒ぐ事はできなかったの。今、『ハーリー』の時、豊見グスクの三の曲輪(くるわ)を開放しているけど、あれを始めたのは他魯毎(たるむい)なの。マチルーからここのお祭りの事を聞いて、庶民たちに開放したのよ。他魯毎もマチルーも去年の戦(いくさ)で城下の人たちに迷惑を掛けた事を気にしていて、お詫びのしるしとしてお祭りをする事に決めたのですよ」
「それはいい。城下の人たちも喜ぶでしょう。五月十二日でしたね。佐敷のお祭りが四月二十一日にあります。それが終わったら、ユリたちを助っ人として送りますよ」
「そうしてもらえると助かるわ。それとお芝居の台本を借りられるかしら。マアサが女子(いなぐ)サムレーたちにお芝居をさせるって張り切っているわ」
「大丈夫でしょう。あとでユリと相談して下さい」
 島尻大里ヌルは昼過ぎに戻って来て、トゥイと一緒にユリたちにお祭りの事を話した。ハルとシビーは喜んで手伝うと言って、ユリも引き受けた。
 サハチは山北王の書状をマチルギに渡して、マチルギは夕方、帰って行った。
 三月になって、ウニタキは旅芸人たちと一緒に旅立った。三日には恒例の久高島参詣が行なわれた。中山王のお輿(こし)にはいつもヂャンサンフォンが乗っていたが、今年は無精庵(ぶしょうあん)が乗っていた。サスカサが大里(うふざとぅ)ヌルに会いたいと言って、与那原(ゆなばる)で合流して一緒に行った。
 中山王が久高島に行っている留守に、山北王の船が浮島にやって来た。マチルギに呼ばれて、サハチは浮島に行って、山北王との取り引きを手伝った。翌日、荷物を背負った人足たちが、ぞろぞろと今帰仁へと向かって行った。高い所から見たら、大きな蛇が北に向かっているように見えた。
 六日にはマウシの長男、トゥクが首里の苗代大親(なーしるうふや)の屋敷で生まれた。知らせを受けて山グスクから飛んできたマウシは、三人目にやっと生まれた男の子に感激していた。
 十日には山南王の弟、シルムイ(阿波根按司)が糸数按司(いちかじあじ)の娘、マクミを妻に迎えた。二人は従兄妹(いとこ)で、婚礼は先代の山南王(シタルー)が決めたのだったが、シタルーの死とその後の戦のために遅れていた。糸数按司は中山王に属しているので、東方(あがりかた)の代表として八重瀬按司(えーじあじ)(マタルー)が婚礼に出席した。
 二十日には恒例の丸太引きのお祭りが行なわれ、安須森(あしむい)ヌルもササたちもいなかったが、ユリとハルとシビーの三人がうまくやって無事に終わった。
 ササの代わりは女子サムレーのクニが務めた。クニはササの従姉で、ササの代わりは、わたししかいないと稽古に励んで選ばれた。
 シンシンの代わりはファイリンだった。ファイリンは佐敷に嫁いでいるので久米村(くみむら)とは関係ないのだが、シンシンに代わる者が見つからず、ファイチが頼まれたのだった。ファイチはその事を告げるために佐敷に行って、ファイリンが旅に出た事を知って驚いた。ウニタキが陰ながら守っていると聞いて安心したが、それでも心配した。
 無事に旅から帰って来たファイリンに告げて、シングルーもやってみろと言ったので、ファイリンは引き受けた。佐敷には経験者の佐敷ヌルがいるので、佐敷ヌルから丸太に乗るコツを教わって何とかお祭りに間に合った。ファイチの娘が丸太に乗ったので、久米村の者たちも張り切って頑張り、見事に優勝した。ファイリンは一躍、有名になっていた。
 四月になって、旅芸人たちは帰って来て、浦添(うらしい)のお祭りでお芝居を上演をしたが、なぜか、ウニタキは帰って来なかった。ウニタキが帰って来たのは、浦添のお祭りから八日後だった。
 五月に送る進貢船の準備のため首里にいたサハチは、ウニタキに呼ばれて『まるずや』に行った。小雨が降っているし、夕方だったので『まるずや』には、お客はあまりいなかった。売り子に言われて、店の裏にある屋敷に行くと、ウニタキがトゥミと一緒に縁側にいた。その屋敷は『まるずや』の主人のトゥミが息子のルクと母親代わりのカマと一緒に住んでいる屋敷だった。
「トゥミがお前に話があるというので呼んだんだ。悪かったな」とウニタキがサハチに言った。
「そんな事は別にいい。随分と遅かったな。何かあったのか」とサハチが聞くと、ウニタキはニヤニヤと笑って、
「色々とあったぞ」と言った。
 サハチはウニタキの隣りに腰を下ろして、トゥミを見ると、「話とは何だ?」と聞いた。
「お頭に話したら、按司様(あじぬめー)に話した方がいいと言われて‥‥‥実はルクの事なんです」とトゥミは言った。
「ルクか‥‥‥大きくなっただろうな」
「はい、十五になりました」
「なに、もう十五になったのか」とサハチは驚いて、ウニタキを見た。
「速いもので、あれから十三年が経っているんだ」とウニタキは言った。
 先代の島添大里按司だったヤフスが殺されたのが十三年前だった。当時、ヤフスの側室になっていたトゥミはヤフスの息子のルクを産んだ。その翌年、島添大里グスクはサハチによって攻め滅ぼされた。ヤフスを殺したのはトゥミで、その事は絶対にルクに知られてはならない事実だった。二歳だったルクは十五歳になっていた。
「ルクには父親はサムレーで、あの時の戦で戦死したと言ってあります。戦で活躍した強いサムレーだったと‥‥‥」
「父親は佐敷のサムレーだった事になっているんだな」とサハチが言うと、トゥミはうなづいた。
「母(カマ)から読み書きを教わって、剣術の基本も身に付けています。できれば、武術道場に通わせたいのです」
 サムレーの息子は十五歳になれば、武術道場に通う事ができるが、商人の息子や農民の息子、ウミンチュの息子が武術道場に通う事はできなかった。才能のある子供は誰でも武術の修行ができるようにした方がいいなとサハチは思った。苗代大親と相談して、才能のある子供たちを集めようと考えた。
「わかった。ルクが武術道場に通えるように、何とか考えてみよう」とサハチはトゥミに言った。
 トゥミはお礼を言って、店の方に戻った。
「ルクを三星党(みちぶしとう)に入れなくていいのか」とサハチはウニタキに聞いた。
「ルクはまだ母親の正体を知らない。知った時に考えればいいさ」
「そうか。そうだな」とサハチは言って、
「湧川大主は鬼界島に行ったのか」と聞いた。
「行った。四月の十日だった。どうやら、浮島に来ていた鬼界島の船が帰るのを待っていたようだ。鬼界島の船のあとを追って行ったので、途中で襲うつもりなのかもしれんな。鉄炮(てっぽう)(大砲)を積んだ武装船と修理した進貢船、それにヤマトゥ船二隻が一緒に行った。連れて行った兵は二百人といった所だろう」
「途中の島で襲うつもりなのか」
「鬼界島の奴らも、与論島(ゆんぬじま)、永良部島(いらぶじま)、徳之島(とぅくぬしま)が山北王の支配下にある事は知っているだろう。島には寄るまい。沖に停泊している所を襲うのだろう。船を沈めてしまえば、敵の兵力は減るし、交易もできなくなる」
「船に積んである商品も海に沈めてしまうのか」
「欲を出したら味方も損害を受ける。鬼界島に行く前に、兵力を減らすような事を湧川大主はやるまい」
琉球からの船が帰って来なければ、ヤマトゥに行く船も出せないというわけだな」
「そういう事だ。湧川大主は鬼界島の船を皆、鉄炮で破壊して、奴らを島に閉じ込めて、全滅させるつもりだろう」
「そうか。今回は湧川大主が勝ちそうだな。来年の今帰仁攻めは延期になりそうだな」
「そうも行くまい」とウニタキは首を振った。
「鬼界島を手に入れた山北王の次の狙いはどこだ?」
「なに、次の狙い? トカラの宝島か」
「そういう事だ」
「宝島は絶対に守らなければならん」
「そのためには、やはり、来年、倒すしかない」
「士気が上がっている今帰仁を倒すのは難しいぞ」
「難しいがやらなくてはならんのだ」
 サハチは厳しい顔つきでうなづいた。
「湧川大主が船出したので帰ろうとしたら、御内原(うーちばる)で騒ぎが起こったんだ。湧川大主を送り出した山北王は、若ヌルに会いに沖の郡島(うーちぬくーいじま)(古宇利島)に出掛けた。王妃と側室たちが若ヌルを恨んで、今帰仁ヌルに頼んで、若ヌルを呪い殺そうとしたらしい。城下にいた勢理客(じっちゃく)ヌルがグスクに呼ばれて、何とか騒ぎが治まったようだ」
「どうやって呪い殺そうとしたんだ?」
「城下の噂では、藁(わら)で人形を作って、太い釘で木に打ち付けて、火を付けたらしい。その火が飛び火して小火(ぼや)になって騒ぎになったようだ。藁人形には若ヌルの髪の毛が三本入っていたと、まるで見てきたような事を言う奴もいたらしい」
「髪の毛が三本? クーイの若ヌルは今帰仁に来たのか」
「お祭りに来たんだよ。城下に若ヌルのための屋敷を用意して、山北王はお忍びで、そこに入り浸りだったようだ」
「王妃が怒るのも無理ないな」
「クーイの若ヌルのお陰で、王妃と側室のクンは仲良くなったらしい。クンは王妃が嫁いで来る前から恋仲だった女で、長女と長男を産んでいる。王妃はマナビーの母親だが男の子は産んでいない。側室たちは王妃派とクン派に分かれて、何かと対立していたらしい。若ヌルのお陰で、みんなが仲良くなったようだ。そして、次の日、名護按司(なぐあじ)が亡くなったんだ」
「えっ、名護按司が?」
 サハチは驚いた。亡くなるような年齢ではないはずだった。
「まだ五十五歳だった。その日は梅雨入り前のいい天気で、波も穏やかだった。名護按司は船を出して、釣りを楽しんでいたそうだ。突然、船の中で倒れて、浜に着いた時には、すでに亡くなっていたらしい」
「跡を継いだ若按司はいくつなんだ?」
「三十前後だろう。若按司の妻は羽地按司(はにじあじ)の妹だ」
「羽地按司も去年亡くなって、若按司が継いだんだったな」
「そうだ。羽地按司の妻は恩納按司(うんなあじ)と金武按司(きんあじ)の姉だ」
「すると、羽地、名護、恩納、金武は兄弟というわけだな」
「まあ、そうとも言える。四人の按司をまとめて寝返らせよう」
 サハチはうなづいて、「いい風向きになってきたようだ」と笑った。
「そこまではよかったんだが、予想外の奴がやって来たんだ」とウニタキは顔を曇らせた。
「何だ? 誰がやって来たんだ?」
「新しい海賊が運天泊(うんてぃんどぅまい)にやって来たんだよ。運天泊は大慌てだ。湧川大主はいないし、急遽、山北王を呼びに行ったんだ。若ヌルとお楽しみ中に迷惑だっただろうが、山北王はやって来て、海賊たちを歓迎した。湧川大主の側室で、ハビーという女がいるんだが、そのハビーがしっかり者で、海賊たちの接待を慣れた態度でやっていたそうだ」
「そのハビーというのは、お前の配下だろう」
「そうだ。ハビーから聞いたら、その海賊はリンジェンフォン(林剣峰)の配下だったらしい。配下と言っても直属ではなくて、リンジェンフォンに従っていた小さな海賊だったようだ。リンジェンフォンが亡くなって、倅のリンジョンシェン(林正賢)も明国の官軍にやられたあと、福州の海賊たちをまとめて、のし上がってきたようだ。リンジョンシェンと一緒に運天泊に来た事があって、冊封使(さっぷーし)が来る前に引き上げようと早々とやって来たようだ。二隻の船に商品をたっぷりと積んで来たので、山北王は大喜びしていたよ」
「新しい海賊が現れたか。山北王から何も言って来ないのでおかしいと思っていたんだ。山北王の進貢は一回だけで終わりそうだな」
リュウインがうまく海船を賜わる事ができれば一回で終わるだろうが、失敗したら、また送るかもしれんな。進貢はしなくても海船は欲しいだろう」
 サハチは笑って、「その海賊は何という奴なんだ?」と聞いた。
「ヂャオナン(趙楠)という名前らしい」
「ヂャオナンか。福州の海賊なら、メイユーたちが知っているかもしれんな」
「そうだな。明国の商品をたっぷりと手に入れた山北王は、中山王に頭を下げる必要はなくなった。これからは強気に出てくるかもしれんぞ」
 サハチはうなづいた。
「無理難題を言って来るかもしれんな。ところで、山北王の側室で思い出したんだが、側室の中に親父の娘がいるはずだな」
「ミサという側室だ。ただ、本人は中山王の娘だという事は知らない。父親は旅の坊さんだと聞いているようだ」
「知らないのか」
「危険だと思って、知らせていないのだろう」
「そうか。一応、俺の妹になるわけだ。どんな娘か知っているか」
「俺は見た事はないが、『まるずや』の者たちの話だと、高貴な顔立ちをした美人(ちゅらー)だと言っていた。男の子を産んだんだが、その子は二年前に四歳で亡くなってしまったようだ。今は子供がいないので、お祭りでは娘たちを指導して、お芝居を演じたんだよ」
「なに、今帰仁の娘たちがお芝居をしたのか」
「奥間の側室は芸を身に付けているからな。もう一人、ウクという奥間の側室がいるんだが、二人で踊りや笛の指導をしたようだ」
「お芝居の台本はどうしたんだ?」
「『油屋』の主人、ウクヌドー(奥堂)にユラという娘がいるんだが、お芝居が好きで、首里や佐敷のお祭りでお芝居を観ているんだよ」
今帰仁から首里まで来ていたのか」
「そうじゃない。ウクヌドーは首里の店ができた時、今帰仁の本店は長男に任せて、家族を連れて首里に移ったんだ。ユラは首里で育ったんだよ。首里グスクの娘たちの剣術の稽古にも通っていたようだ」
「『油屋』の娘が、マチルギの弟子だったとは驚いた」
「女子サムレーに憧れていたようだが、親が許さなかったようだ。お嫁に行く予定だったんだが、相手は去年の戦で戦死した。行商(ぎょうしょう)の最中、戦に巻き込まれて亡くなった事になっているが、危険な事をしていたんだろう。ユラは親が決めた相手と一緒にならなくてよかったと喜んで、その後はお嫁にも行かず、家業を手伝っていたようだ。山北王がユラのお祭り好きを知って今帰仁に呼ばれて、お芝居の台本を書いたんだよ。お芝居は『瓜太郎(ういたるー)』だったが、少し違っていた。それでも面白いお芝居で、子供たちは大喜びしていたよ」
「旅芸人たちは何を演じたんだ?」
「『かぐや姫』だ。『小松の中将様(くまちぬちゅうじょうさま)』は子供たちにはちょっと難しいからな」
「お前は三弦(サンシェン)を弾いたのか」
 ウニタキは苦笑した。
「ユラのお陰で弾くはめになっちまった。ユラは島添大里のお祭りにも来ていて、俺の歌を何度も聞いていたんだよ。最後は、みんなで踊って、お祭りは大成功に終わったよ」
「そうか、よかったな」とサハチは笑って、
「今度は俺の番だ」と言った。
 何だと言う顔をしてウニタキはサハチを見た。サハチは脇に置いてある箱の中から紙を出してウニタキに見せた。その紙には『尚巴志』と書いてあった。
「何だ、これは? ショウハシと読むのか」
「サハチだよ。俺の明国での名前だ。今度の進貢船は中山王ではなくて、世子(せいし)の俺が出す事になったんだ。それで、ファイチが俺の明国での名前を考えてくれたんだよ」
「ほう、これで、サハチか」
「お前が言ったように、『ショウハシ』と読んでもいいそうだ。『尚』という姓が明国にはあるらしい。琉球では今まで、誰も姓を持ってはいなかった。これからは『尚』を姓として、代々、尚何とかと名乗ればいいとファイチは言っていた」
「姓か。ヤマトゥンチュは姓を持っているな。『源氏』や『平氏』というのは姓だろう。ヒューガ殿は『三好』だし、ヤタルー師匠は『阿蘇』だ。中山王の姓は『尚』か。ファイチもうまい事を考えるな」
 サハチはもう一枚の紙をウニタキに見せた。紙には『尚覇志』と書いてあった。
「ファイチは最初、それに決めたそうだ。『覇』という字には、琉球を統一するという意味があるらしい。『志』はこころざすで、琉球統一を志すという意味だ」
「おう、そっちの方がいいんじゃないのか」とウニタキは言った。
「『覇』という字は、武力をもって統一するという意味があって、武力をもって統一した者は武力によって滅ぼされるという意味も隠されていると言うんだ。それで納得しなかったらしい。明国には『覇道』と『王道』という言葉があって、『王道』というのは、天に任命された者が政治を行なう事で、『覇道』は力のある者が、その力によって政治を行なうという。『覇道』よりも『王道』を目指すべきだとファイチは言うんだ。それで、『尚王志』にしようかと思ったけど、どうも気に入らない。そんな時、島添大里のお祭りに来たファイチは、グスクになびいている『三つ巴』の旗を見て、これだと思って、『覇』の代わりに『巴』を入れたんだよ。『三つ巴』はスサノオの神様の神紋(しんもん)だ。スサノオの神様の道を志すという意味なんだよ」
「よくわからんが、ファイチも色々と難しい事を考えるものだな。スサノオの神様の道を志して、琉球を統一するのか。凄い名前だな」
「ああ、ショウハシ‥‥‥俺の新しい名前だ」
 サハチとウニタキは『尚巴志』と書かれた紙をじっと見つめていた。

 

 

 

真壁型(翁長開鐘写)仲嶺盛文製作

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第二稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第二稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第二稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第二稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第二稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第二稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第二稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第二稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第二稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第二稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第二稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第二稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。
  165. ウムトゥ姫とマッサビ(第二稿)   ササたち、ノーラ姫とウムトゥ姫に会う。
  166. 神々の饗宴(第二稿)   於茂登岳の山頂で、神様たちと酒盛り。
  167. 化身(第二稿)   名蔵の白石御嶽と水瀬御嶽で神様と会う。
  168. ヤキー退治(第二稿)   ササたち屋良部岳に登り、山頂で雷雨に遭う。
  169. タキドゥン島(第二稿)   タキドゥンの話を聞いて驚くササたち。
  170. ユーツンの滝(第二稿)   クンダギに登って、イリウムトゥ姫と会う。
  171. ドゥナン島(第二稿)   ササたち、クン島からドゥナン島へ向かう。
  172. ユウナ姫(第二稿)   ウラブダギに登ったササたち、ドゥナン島の村を巡る。
  173. 苗代大親の肩の荷(第二稿)   尚巴志、苗代大親の隠し事を知って笑う。
  174. さらばヂャンサンフォン(第二稿)   会同館で三姉妹たちの送別の宴が開催。
  175. トゥイの旅立ち(第二稿)   前山南王妃、ナーサと一緒に奥間に行く。
  176. 今帰仁での再会(第二稿)   前山南王妃、今帰仁に行って姪と会う。
  177. アミーの娘(第二稿)   尚巴志、ウニタキからトゥイの事を聞く。
  178. 婿入り川(第一稿)   山北王の若按司が山南王の婿になる。
  179. クブラ村の南遊斎(第一稿)   ササたち、ダンヌ村からクブラ村に行く。
  180. 仕合わせ(第一稿)   ササと愛洲次郎、二人だけの時を過ごす。
  181. ターカウ(第一稿)   ササたち、黒潮を越えて台湾に行く。
  182. 伝説の女海賊(第一稿)   ササたち、高雄で女海賊の活躍を聞く。
  183. 龍と鳳凰(第一稿)   唐人町の宮殿にお世話になるササたち。
  184. トンド(第一稿)   ササたち、トンド王国に着く。
  185. 山北王の進貢(第一稿)  リュウイン、山北王の使者として明国に行く。
  186. 二つの婚礼(第一稿)   マグルーとマウミ、ウニタルとマチルーが結ばれる。
  187. 若夫婦たちの旅(第一稿)   ウニタル夫婦とマグルー夫婦、旅に出る。
  188. サハチの名は尚巴志(第一稿)   今帰仁のお祭りからウニタキが帰って来る。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香楼』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣
波平大親      1366-    山南王の重臣
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司
チルカマ      1349-    クマラパの妹。先代の石原按司
阿嘉のトゥム    1365-    久米島からミャークに渡った兄弟の弟。伊良部島に住む。
スタタンのボウ   1360-    多良間島の女按司。クマラパの弟子。
ハリマ大殿     1359-    ボウの夫。ターカウの倭寇
平久保按司     1355-    石垣島按司。ターカウの倭寇
ブナシル      1360-    名蔵の女按司
ミッチェ      1387-    ブナシルの娘。父親は富崎按司
マッサビ      1369-    ウムトゥダギのフーツカサ。池間島出身。
サユイ       1391-    マッサビの娘。弓矢の名人。
阿嘉のグラー    1362-    マッサビの夫。久米島からミャークに渡った兄弟の兄。
ガンジュー     1386-    熊野の山伏、願成坊。
タキドゥン     1348-    島添大里按司の息子で、タキドゥン島の按司になる。
ユミ        1361-    ドゥナン島サンアイ村のツカサ。
ナーシル      1391-    ユミの娘。父は苗代大親

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。
クミ姫             久米島の神様。ビンダキ姫の三女。
ウパルズ            池間島の神様。ウムトゥ姫の長女。
赤名姫             ウパルズの孫。ユンヌ姫と行動を共にする。
ウムトゥ姫           石垣島於茂登岳の神様。ビンダキ姫の次女。
ノーラ姫            石垣島の名蔵の神様。ウムトゥ姫の次女。
ヤラブ姫            ノーラ姫の三女。
ビシュヌ            クバントゥオンの神様。シィサスオンの神様でもある。
ラクシュミ           ビシュヌの妻。ミズシオンの神様。
サラスワティ          ヤラブダギの神様。弁財天。
イリウムトゥ姫         二代目ウムトゥ姫の次女。クン島の神様。
ユウナ姫            イリウムトゥ姫の次女。ドゥナン島の神様。

 

2-187.若夫婦たちの旅(第一稿)

 マグルーとマウミ、ウニタルとマチルーの婚礼も無事に終わって、サハチとウニタキとンマムイは親戚となり、今まで以上に固い絆(きずな)で結ばれた。
 マグルー夫婦は島添大里(しましいうふざとぅ)グスクの東曲輪(あがりくるわ)にある、以前にサグルー夫婦が住んでいた屋敷に入った。マウミは侍女を二人連れて来ていて、侍女たちはイハチが住んでいた屋敷に入った。侍女といっても、マウミと一緒に武芸の稽古に励んでいた仲良しの娘たちだった。
 ウニタル夫婦は城下の屋敷に入った。ウニタキの屋敷の近くで、サハチはマチルーのために古い屋敷を綺麗に改築していた。
 翌日、マグルー夫婦とウニタル夫婦はサハチに挨拶に来て、ウニタル夫婦はさっそく、『まるずや』巡りの旅に出ると言った。それを聞いていたマグルーは、
「俺たちも一緒に旅に出ます」とサハチに言った。
「なに、お前たちも一緒に行くというのか」とサハチは驚いて、マグルーとマウミを見た。
「ヤマトゥや明国は行って来ましたが、俺はまだ琉球の旅をしていません。親父は若い頃、お母さんと一緒に今帰仁(なきじん)まで旅をしたと聞いています。俺もマウミと一緒に旅がしたいのです」
「マウミも旅がしたいのか」とサハチが聞くと、マウミはうなづいた。
「十二歳の時に母の故郷の今帰仁に行きました。マグルーさんにも今帰仁の賑わいを見せてあげたいと思います」
 サハチはマウミが山北王(さんほくおう)の姪(めい)だった事を思い出した。山北王を滅ぼしたらマウミとその母のマハニが悲しむ事になる。チューマチの妻のマナビーも悲しむだろう。十年前と状況が変わっている事に改めて気づき、山北王を滅ぼしていいのだろうかと気持ちが少しぐらついた。
「お前たちの気持ちはわかった」とサハチはうなづいた。
 ウニタルが『三星党(みちぶしとう)』を継いだ時に、ウニタルとサグルーのつなぎ役が必要だった。マグルーにそのつなぎ役になってもらおうとサハチは思った。
「ウニタキと相談してみる。少し待っていてくれ」
 若夫婦たちを安須森(あしむい)ヌルの屋敷で待たせ、サハチは侍女のマーミにウニタキを呼んでもらった。 ウニタキはすぐに来た。マグルー夫婦の事を告げると、「やはり、そうか」と笑った。
「そんなような気がしていたんだ。ウニタルとマチルーだけだったら配下の者に任せるつもりだったが、マグルーとマウミも行くとなると、俺も行って四人を守るよ」
「そうか。お前が行ってくれるか。そうしてもらえると俺も安心だ」
「庶民の格好をして行けば、怪しまれる事もあるまい。湧川大主(わくがーうふぬし)は今、鬼界島(ききゃじま)(喜界島)攻めの準備で忙しいようだからな」
「今年は行くのか」
「去年、行けなかったから今年こそは敵(かたき)を討ってやると張り切っている。四月には行くだろう」
「鬼界島の連中がヤマトゥに行く前を襲うつもりなんだな」
「そうだ。ヤマトゥに船を出されたら、一昨年(おととし)の二の舞になるからな」
「今年はうまく行きそうか」
「わからんな。鬼界島でも待ち構えているはずだ。鬼界島を攻め取る事に成功したら、今帰仁の士気は上がる。来年の今帰仁攻めは延期した方がいいかもしれん」
「失敗したらどうなる?」
按司たちの反感を買うだろう。特に国頭按司(くんじゃんあじ)は大損害を受ける。一昨年、鬼界按司(ききゃあじ)に任命された一名代大主(てぃんなすうふぬし)が戦死して、率いて行った兵たちも戦死した。新たに任命された鬼界按司は一名代大主の兄の根謝銘大主(いんじゃみうふぬし)だ。二人とも国頭按司の弟で、二人の弟を失えば、国頭按司は山北王を恨むだろう。鬼界島攻めの兵糧(ひょうろう)も各按司から集めている。失敗に終われば、それらは返っては来ない」
「失敗に終われば、来年の今帰仁攻めは予定通りだな」
「鬼界島の島人(しまんちゅ)たちに頑張ってもらうしかない」
「そうだな」と言いながら、サハチは鬼界島の神様、キキャ姫がユンヌ姫の娘だという事を思い出した。ユンヌ姫がいたら、キキャ姫に湧川大主が攻める事を教えられるのにと残念に思った。
 庶民の格好に着替えたマグルー夫婦とウニタル夫婦は山伏姿の福寿坊(ふくじゅぼう)に連れられて、正午(ひる)過ぎに旅立った。福寿坊はササたち、ヂャンサンフォン、愛洲次郎たちと一緒に琉球一周の旅をしているので安心だった。
 ウニタルは三弦(サンシェン)を背負っていて、マグルーは横笛を腰に差し、四人とも五尺ほどの棒を杖(つえ)代わりに突いていた。陰ながらウニタキが配下を引き連れて守っていた。
 島添大里の城下にある『まるずや』に行って、女主人のサチルーに挨拶をして、『まるずや』巡りの旅は始まった。島添大里の『まるずや』は最初にできた店だった。先代の島添大里按司(ヤフス)のために働いていた『よろずや』が浦添(うらしい)に逃げて行き、空き家となっていた店の看板を『よろずや』から『まるずや』に直してできた古着を売る店だった。『よろずや』もウニタキが開いた店なのだが、ウニタルは知らない。『よろずや』は島尻大里(しまじりうふざとぅ)にあるのが本店で、先々代の山南王(さんなんおう)(汪英紫)が始めた店だと父から聞いていた。
「あら、まあ。新婚の御夫婦が揃って旅に出るのですか」とサチルーは驚いた。
「親父の跡を継ぐには、各地の事を知らなくてはなりません。各地にある『まるずや』さんのお世話になって、旅をして参ります」とウニタルは言った。
「あなたたちは御両親を見倣って旅に出るのね?」とサチルーはマグルー夫婦に言った。
 二人はうなづいて、
今帰仁に行って、マウミの伯父さんに挨拶してきます」とマグルーは言った。
「マウミちゃんの伯父さんて、もしかしたら、山北王の事?」
「そうです。前回、里帰りした時、マウミは山北王に気に入られて、お嫁に行ったら、必ず、相手を連れて来いって言われたみたいです」
「あら、まあ。同盟しているとはいえ、充分に気を付けて行って来るのよ」
 サチルーに見送られて、一行は馬天浜(ばてぃんはま)に下り、佐敷グスクに行って、叔父のマサンルー(佐敷大親)に挨拶をした。東曲輪に行って若按司のシングルーにも挨拶をした。
 シングルーとウニタルは一緒にヤマトゥ旅をした仲だった。奥間(うくま)のサタルーと一緒に熊野にも行っていた。旅支度で現れた四人を見て、羨ましそうに、
「俺たちも一緒に行きたいな」とシングルーは妻のファイリンに言った。
 ファイリンはうなづいて、
「楽しいでしょうね」と言った。
「よし、行くぞ」とファイリンに言って、「親父の許しを得てくるから待っていろ」とシングルーは東曲輪から出て行った。
 息子から旅に出たいと聞いて、マサンルーは驚いた。親父も若い頃に旅をしたと聞いている。俺も世間を見なければならないと言われ、だめだとは言えなかった。倅だけならいいが、ファイリンも一緒に連れて行くのが問題だった。ファイリンに、もしもの事があったら大変な事になる。自分だけでは決められなかった。兄貴と相談してくるから東曲輪で待っていろと言って、マサンルーは馬に乗って島添大里に向かった。途中でウニタキと出会った。
「俺が陰ながら守っているから心配するな」とウニタキは言った。
 マサンルーはウニタキを見つめて、
「お願いします」と頼んだ。
「一緒に旅をすれば絆が深まる。奴らは俺たちの次の世代を担っていく。サハチも許すだろう。サハチには俺の配下の者が知らせる。俺の事は子供たちには内緒にしてくれ」
 マサンルーは馬を返して佐敷グスクに戻って、シングルー夫婦に旅に出る事を許した。すでに旅支度をしていたシングルーとファイリンは喜んで一向に加わった。
 中山王(ちゅうざんおう)の発祥の地なのに、佐敷には『まるずや』はなかった。『まるずや』は父が地図を作るために各地を歩き、その拠点として開いたので、地元にないのは当然だが、佐敷の人たちのためにも作るべきだとウニタルは思った。
 福寿坊と三組の若夫婦たちは楽しそうに笑いながら手登根(てぃりくん)グスクに向かった。叔父のクルー(手登根大親)に挨拶をして、平田に向かおうとした時、馬に乗ったサムレーがやって来た。
「カシマじゃない。どうしたの?」とマウミが驚いた顔をしてサムレーに聞いた。
「マウミ様が旅に出たと聞いて、お屋形様が驚いて、わしに一緒に行けと命じたのです」
「お父様ったら、心配ないのに」とマウミは言ったが、
「わしも心配じゃ。一緒に行くぞ」と言って、カシマは馬から下りた。
 マウミはカシマを皆に紹介した。
「ヤマトゥのサムレーで、わたしの剣術のお師匠でもあります」
「今更、帰れないでしょう。一緒に行きましょう」と福寿坊が言った。
「若い者たちとはどうも話が合わない。話し相手が欲しいと思っていたのです」
「そうか。そなたはどこの山伏じゃ?」
備前(びぜん)の国、児島(こじま)の行者(ぎょうじゃ)です」
「なに、児島か。行った事があるぞ。わしは常陸(ひたち)の国、鹿島神宮の神官の倅じゃ」
鹿島神宮には行った事がありますよ」と福寿坊が笑うと、カシマも笑って、お互いにヤマトゥ言葉で話し始めた。
 カシマは馬をクルーに預けて、一緒に旅立った。
 平田グスクに着いて、叔父のヤグルー(平田大親)に挨拶をして、若按司のサングルーと会った。サングルーはマグルーと同い年で、一緒にヤマトゥ旅にも行っていた。サングルーはまだ独り者で、仲良くやって来た三組の夫婦を羨ましそうに見て、「俺も頑張らなければならんな」と笑った。
「例の娘はどうなったんだ?」とマグルーが聞いた。
 サングルーはニヤニヤしながら、
「うまくいっているよ。俺は五月に明国に行くんだけど、帰って来たら婚礼さ」と言った。
「どこの娘なんだ?」とシングルーが聞いた。
「垣花按司(かきぬはなあじ)の娘なんだ」
「垣花按司の娘? 一体、どこで出会ったんだ?」
「ここだよ。お祭りに来たんだよ。知念(ちにん)のマカマドゥ叔母さんが、娘のマカミーと一緒に連れてきたんだ」
「こいつは一目惚れしたんだよ」とマグルーがシングルーとウニタルに言った。
 サングルーも一緒に行くと言って付いて来た。九人に増えた一行は知念グスクに行って、叔父の知念按司に歓迎されて、その日は知念グスクに泊まった。
 二日目は垣花グスクに行って、サングルーの婚約者のマフイと会った。マフイは突然、サングルーがやって来たので驚いた。若夫婦たちを紹介されて、わたしも早く、みんなの仲間に入りたいと思った。これから玉グスクに行くというので、マフイも一緒に行った。マフイは玉グスクのウミタルから剣術を習っていた。
 ウミタルは武寧(ぶねい)の息子のイシムイに嫁いだが、浦添グスクが炎上した時、ウニタキに助け出されて、二人の娘を連れて玉グスクに戻って来た。玉グスクにも女子(いなぐ)サムレーを作ろうと考えて剣術の修行を始め、ヂャンサンフォンの弟子にもなっていた。今では三十人の女子サムレーを率いる総隊長として、玉グスクを守り、近在の娘たちにも剣術の指導をしていた。
 玉グスクの城下で『まるずや』の女主人、ハマドゥに挨拶をして、叔父の玉グスク按司に挨拶をした。ぞろぞろと若者たちがやって来たので玉グスク按司も妻のマナミーも驚いたが歓迎してくれた。ウミタルも喜んで、女子サムレーたちを鍛えてくれと言った。ファイリン、マチルー、マウミは女子サムレーたちを鍛えた。三人の強さに皆が驚いた。
 玉グスクをあとにした一行は具志頭(ぐしちゃん)グスクに行って、マグルーとマチルーの兄、イハチ(具志頭按司)に歓迎された。ファイリンとマチルーとマウミは師匠のチミーに弓矢の上達ぶりを披露した。
 具志頭グスクから玻名(はな)グスクに行って、玻名グスク按司のヤキチに歓迎された。ヤキチはシングルー夫婦の祖父だった。
 玻名グスクで昼食を御馳走になって、鼻歌を歌いながら米須(くみし)に向かっていた時、何者かの襲撃を受けた。敵は十人だった。五人づつが前後に現れて、一行は囲まれた。お頭らしい男が刀を抜いて、
「命が惜しかったら荷物を置いて、さっさと行け」と言った。
 カシマはニヤニヤと笑って、
「お前ら馬鹿か」と言った。
「わしらに勝てると思っているのか」
「命知らずの奴だ」とお頭は笑って、配下の者たちに、「やれ!」と命じた。
 刀を持っているのは福寿坊とカシマだけだったので、敵も油断したようだ。十人の敵はあっという間に倒された。死んだ者はいない。皆、急所を打たれて気絶していた。
「こんな所に山賊がいるとは驚いた」と福寿坊が言った。
「去年の戦(いくさ)の残党かもしれんな」とカシマが言った。
「それにしても弱すぎる」と言ってウニタルが笑った。
「こいつら、どうするんです?」とマグルーが福寿坊に聞いた。
「そうだな。玻名グスク按司に知らせて片付けてもらうか」
「俺が知らせて来ますよ」とシングルーが言った。
「わたしも行くわ」とファイリンが言って、玻名グスクに戻ろうとした時、前方から大勢の人が近づいて来た。
「こいつらの仲間が来たようだ」とカシマが言った。
 敵は二、三十人はいるようだった。若夫婦たちは棒を構えて待ち構えた。道の両側の森の中から別の一団が出てきて、近づいて来る敵と戦いが始まった。
「近づくな!」と誰かが叫んだ。
「親父だ!」とウニタルが言って、敵を斬りまくっているウニタキを見つめた。
「ウニタキさんを助けなくちゃ」とマグルーが言った。
「待て!」と福寿坊が言って、後ろを振り返った。
 後ろでも斬り合いが始まっていた。
「飛び道具があるかもしれん。気をつけろ!」とカシマが言って、道の両側の森を見た。
 一行は輪になって周囲を警戒した。
 ウニタルは父の素早い動きを見守っていた。父が強いのは知っていたが、実際に戦っているのを見るのは初めてだった。まったく無駄のない動きで、次から次へと敵を倒していた。父の味方の者たちは十数人いるようだった。
 どれだけの時が経ったのかわからなかった。あっという間の出来事のような気もするし、長い時間が経ったような気もした。すべての敵を倒して、父が近づいて来た時、ウニタルは構えていた棒から手を離そうとしたが、強く握りしめていたため、なかなか棒から離れなかった
「みんな、無事だな」とウニタキは皆を見た。
 ウニタキの着物には返り血が飛んでいた。
「あいつらは何者です?」とウニタルが父に聞いた。
「玻名グスクの残党だ。摩文仁(まぶい)の残党も混ざっている。奴らの事は知っていたんだが、どこかに隠れていて見つける事ができなかったんだ。最初に出てきたのも奴らの一味だ。そいつらがやられたので他の奴らが現れたようだ」
「もしかしたら、親父は俺たちを守っていたのですか」
 ウニタキはうなづいた。
「最後まで、隠れて守るつもりだったんだが、思惑がはずれちまったな」
「もしかしたら、ウニタキさんの仕事は、親父を守る事なのではありませんか」とマグルーが聞いた。
 ウニタキは笑った。
「みんなも聞いてくれ。中山王には『三星党(みちぶしとう)』という裏の組織がある。中山王のために敵の情報を集めたり、敵が放った刺客(しかく)を殺したりもする。『三星党』ができたのは、島添大里按司が佐敷按司だった頃だ。佐敷按司を守るために若い者たちを鍛えて結成したんだ。今では、三星党の者たちは各地にいる。勿論、敵地にもいる。『まるずや』で働いている者たちは勿論の事、敵のグスクに側室や侍女として入っている。地図を作っている三星大親(みちぶしうふや)というのは表の顔で、三星党の頭領が俺なんだよ。この事を知っているのは数人だけだ。お前たちも胸の中にしまっておいてくれ」
 そう言うとウニタキは森の中に消えて行った。ウニタキが話をしている時、ウニタキの配下の者たちが気絶している十人を森の中に連れ去っていた。
「凄かったな」とマグルーがウニタルに言った。
「お前は『三星党』の事を知っていたのか」とウニタルはマグルーに聞いた。
 マグルーは首を振った。
 ウニタルがシングルーを見るとシングルーも首を振った。サングルーも首を振った。
「わたし、ウニタキさんに助けられた事を思い出したわ」とマウミが言った。
「初めての里帰りで今帰仁に行って、帰る時だった。山の中で何者かに襲われて、ウニタキさんに助けられたの。あの時はあまり深く考えないで、父の知り合いの人が助けてくれたと思っただけだったけど、今、思えば、ウニタキさんはずっと、わたしたちを守っていてくれたのね。母から聞いたんだけど、父には亡くなった姉がいて、その姉の夫がウニタキさんだったらしいわ」
「何だって?」とマグルーが驚いた。
「ウニタキさんが兼(かに)グスク按司殿の義兄だったのか」
「詳しい事はわからないけど、そうらしいわ」
 ウニタキの妻はマグルーの祖母の妹のチルー大叔母さんだった。大叔母と出会う前に、兼グスク按司の姉と一緒になっていたのだろうか。マグルーにもマチルーにもよくわからなかった。
 ウニタルの頭も混乱していた。兼グスク按司の姉と父が一緒になっていたなんて信じられない事だった。
「凄い剣術使いじゃのう」とカシマが唸った。
「消えているわ」とファイリンが言った。
 前方を見ても後方を見ても、倒れていた敵の姿は一人も見えなかった。五十人もの死体が転がっているはずなのに、何もなかったかのようにひっそりとしていた。
 ウニタルが前方に走って行った。皆もあとを追った。血の跡があちこちに残っているが、森の中を見ても死体は見当たらなかった。
「ウニタキさんの配下の者たちが片付けたのね」とマチルーが言った。
「ウニタキさんじゃなくて、親父だよ」とウニタルがマチルーに言うと、
「お父さんね」とマチルーは笑って、「凄いお父さんだわ」と言った。
 襲撃事件のあと、皆の顔つきは変わっていた。物見遊山(ものみゆさん)の気楽な旅だったが、『三星党』の存在を知った事で、自分たちもやらなければならない事があるはずだと考え始めた。今回の旅を決して、無駄な旅にしてはならないと誰もが思っていた。
 米須の城下に行って『まるずや』の女主人のチャサに挨拶をした。女主人を見る目も変わっていた。今までは古着屋の女主人に過ぎないと気にも止めなかったが、よく観察すると、動きに隙がなく、武芸を身につけている事がわかった。売り子たちもそうだった。愛想よく客たちの接待をしているが、皆、かなりの使い手だった。
 『まるずや』の者たちが皆、親父の配下として働いていると思うと、ウニタルは改めて、親父は凄い人だったんだと思い、親父を見る目がすっかり変わっていた。
 米須から八重瀬(えーじ)に行った。八重瀬にも『まるずや』があった。ここの主人は男だった。主人の話によると四年前に島尻大里に店を出したが、去年の戦の時、八重瀬に避難して、そのまま、八重瀬にいるという。どうして、島尻大里に戻らないのかと聞いたら、島尻大里には古くから『よろずや』があって、『よろずや』にはかなわないので八重瀬に移ったと言った。
「商売敵(がたき)だな」とシングルーが笑った。
 その日は叔父のマタルー(八重瀬按司)のお世話になって、八重瀬グスクに泊まった。
 ウニタルが『三星党』の事をマタルーに聞いたら、急に険しい顔になって、
「誰に聞いた?」と聞いた。
「父から聞きました」と言って、襲撃事件の事を話すと、
「そうか」とマタルーはうなづいた。
「『三星党』は裏の組織だ。敵に絶対に知られてはならんのだ。敵に知られたら『まるずや』の者たちは皆殺しにされるだろう。『まるずや』を巡るのもいいが、ただの古着屋だと思って、気楽な顔をして行く事だな。何も知らんという顔で旅をしないと怪しまれるぞ。『三星党』の事は二度と口に出すな」
 ウニタルたちは神妙な顔をしてうなづいた。
 三日目は八重瀬から山南王の本拠地、島尻大里の城下に行った。商売敵の『よろずや』は繁盛していた。たとえ、商売で負けたとしても山南王の本拠地には『まるずや』は置くべきだとウニタルは思った。
 山南王は叔父だったが、島尻大里グスクには寄らなかった。叔母のマチルーが豊見(とぅゆみ)グスクに嫁いだのは、マグルーとマチルーが幼い頃で、その後もあまり里帰りはしていないので、馴染みが薄かった。訪ねて行けば歓迎してくれるだろうが、庶民の格好で山南王に会うのははばかられた。
 糸満(いちまん)の港を見て、以前、マウミが住んでいた阿波根(あーぐん)グスクを見て、保栄茂(ぶいむ)グスク、テーラーグスク(平良グスク)を見て、豊見グスクの城下にある『まるずや』に行った。マタルーに言われたように、何も知らないといった顔で古着を見ただけで、いちいち主人を呼んで挨拶はしなかった。
 豊見グスクから兼グスクに行ってンマムイに挨拶をしたら、今晩は泊まって行けと言われて、マウミは早々と里帰りを楽しんだ。
 その夜、お酒を御馳走になりながら、ウニタルたちはンマムイからウニタキの事を聞いた。
「ウニタキ師兄(シージォン)は勝連按司(かちりんあじ)の息子だったんだ」とンマムイが言うと、皆が「えっ!」と驚いた。
「今の勝連按司じゃないぞ。二十年も前の勝連按司だ。お前たちも知っているだろう。その頃は俺のお爺、察度(さとぅ)が中山王だったんだ。俺のお姉(ねえ)のウニョンは勝連按司の息子だったウニタキ師兄に嫁いだんだ。そのあと、今帰仁合戦があって、ウニタキ師兄は大活躍した。師兄には二人の兄がいて、その兄たちが師兄の活躍をうらやんで、殺そうとしたんだ」
「兄たちが弟を殺す?」と信じられない顔でマグルーが聞いた。
「勝連には『望月党(もちづきとう)』という裏の組織があって、そいつらが高麗(こーれー)の山賊に扮して、師兄を襲ったんだ。姉のウニョンと娘は殺されたけど、師兄は何とか生き延びた。そして、佐敷に逃げて行って、サハチ師兄を頼ったんだ。その後はお前たちも知っているように、サハチ師兄のために各地の情報を集めているというわけだ」
「父上はどうして、勝連の裏の組織の事まで知っているのですか」とマグルーが聞いた。
「父上か‥‥‥」と言って、ンマムイがマグルーを見て笑った。
「俺もそんな事は全然知らなかったんだよ。ウニタキ師兄はウニョンと娘の敵(かたき)を討つために『望月党』と戦っていたんだ。見事に敵を討って、『望月党』は壊滅したそうだ」
 父が勝連按司の息子で、殺された妻と娘の敵を討っていたなんて、ウニタルのまったく知らない事だった。
「父が敵を討ったのはいつの事ですか」とウニタルはンマムイに聞いた。
「さあ、そこまでは知らんな。親父に聞いてみろ」
 妻と娘を殺されて佐敷に逃げて来た父は佐敷に落ち着いて、母と一緒になった。ウニタルが生まれたのは佐敷グスクの裏山にある屋敷だった。六歳の時、島添大里の城下に移ったので、当時の事はあまり覚えていない。姉と一緒に山の中を走り回っていたのを覚えているくらいだった。あの頃の父は猟師の格好をしていて、自分は猟師の倅だと思っていた。あの頃、敵を討ったのだろうか。
 島添大里に移ってからは父は地図を作るために旅に出ていて、滅多に家には帰って来なかった。各地を回って情報を集めていたに違いない。『三星党』の事なんて知らなかったし、頭領である父の跡を継ぐのは、並大抵の事ではないとウニタルは悟り、俺に務まるのだろうかと自問していた。
「自分でも不思議に思っているけど、親父の敵として命を狙っていたサハチ師兄と、こうして親戚になったなんて、世の中というのはまったく面白いもんだ。先の事なんて神のみぞ知るだな」
 そう言って、ンマムイは楽しそうに笑っていた。

 

 

 

鹿島神宮