長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-168.ヤキー退治(第一稿)

 ササ、安須森(あしむい)ヌル、シンシン、ナナ、クマラパとタマミガ、愛洲次郎(あいすじるー)と山伏のガンジュー、玻名(はな)グスクヌルと若ヌルたち、ミッチェとサユイ、ヤラブダギのツカサと崎枝(さきだ)のツカサ、総勢十八人がぞろぞろとヤラブダギ(屋良部岳)に向かっていた。
 ガンジューはしきりにナナに話し掛けていた。ナナに会いたくて琉球に行こうと思ったのかしらとササは思った。
 ササはミッチェと話をしながら歩いていた。
 ミッチェはブナシルの一人娘で、将来、名蔵按司(のーらあず)を継がなければならなかった。父親は富崎按司(ふさぎぃあず)のガバネーだった。ガバネーは唐人(とーんちゅ)で、四歳の時に両親と一緒にイシャナギ島(石垣島)に来た。父は元(げん)の国のサムレー大将だったという。
 ガバネーは一人息子で父の跡を継がなければならず、ブナシルも母親の跡を継がなければならなかったので、二人は一緒になる事はできなかった。ミッチェが生まれ、次に男の子が生まれたらガバネーの跡継ぎにしようと二人は考えていたが、二人の思うようにはならず、ガバネーは両親の強い要望で妻を迎える事になってしまった。
 登野城(とぅぬすく)の女按司(みどぅんあず)の姪(めい)を妻に迎えたガバネーは跡継ぎにも恵まれた。しかし、妻は四人目の出産に失敗して亡くなってしまう。ガバネーの妻が亡くなったあと、ミッチェは父親の事を母から知らされた。十二歳だったミッチェは父親に会いに行き、弓矢の名人だった父から弓矢を習ったという。
「わたしもそろそろ跡継ぎを産まなければならないんだけど、まだ、いい人に巡り会えないのよ」と少し寂しそうな顔をしてミッチェは言った。
「大丈夫ですよ。神様がきっと、いい人を見つけてくれますよ」とササは言った。
「そうね。焦っても仕方ないものね」
 海辺に沿った道を通って、半時(はんとき)(一時間)たらずで赤崎に着いた。赤崎の集落は家が数軒あるだけで寂れていた。
「昔、ここに住んでいた人たちは崎枝に移ったのです」と崎枝のツカサが言った。
「もしかして、赤崎は津波にやられたのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「そうなのです」と崎枝のツカサはうなづいた。
「三百年くらい前に大きな津波がやって来て、赤崎の人たちはほとんど亡くなってしまったそうです。生き残った人たちが海辺からヤラブダギの裾野に移って、崎枝の村(しま)ができたようです」
 五十年前にウプラタス按司が来ていたという浜辺に行った。ウプラタス按司の船が来た時、あちこちから小舟(さぶに)がやって来て、浜辺で取り引きをして賑わっていたのだろう。赤崎に住んでいた人たちも南の国から来て、ここから上陸したのかもしれなかった。
 名蔵湾に飛び出した赤崎を眺め、その先端まで行こうとしたら、道はないと崎枝のツカサに言われた。
「昔は道があったようですが、今は誰も行かないので道はなくなってしまいました」
「古いウタキはないのですか」
「あったようですが、津波にやられてしまって、どこだかわからなくなってしまったようです」
 ガンジューが道を探すと言ったが、ヤラブダギの山頂で待っているサラスワティの神様を待たせるわけにはいかないので、先にヤラブダギに登る事にした。
 崎枝の集落を抜けて山道に入った。途中から急な坂道になって、大きな岩がいくつも現れて来た。
 頂上の近くに眺めのいい岩場があったので、クマラパ、ジルー、ガンジュー、若ヌルたちは崎枝のツカサと一緒に、そこで待っていてもらい、ササ、安須森ヌル、シンシン、ナナ、玻名グスクヌル、タマミガ、ミッチェ、サユイの八人が、ヤラブダギのツカサと一緒に山頂に向かった。
 急な坂を登って行くと綺麗な音楽が聞こえてきた。サラスワティが弾いているヴィーナという弦楽器の調べだった。小鳥たちが喜んで、その曲に合わせてさえずっていた。
 山頂に平らな大きな岩があって、姿は見えないが、その上でサラスワティがヴィーナを弾いているようだった。
 ササたちはひざまづいて両手を合わせた。
「待っていたわよ」とサラスワティの美しい声が言った。
 一昨日(おととい)の夜は異国の言葉をしゃべっていたが、今は琉球の言葉だった。
「あなたたちが知りたいのは、赤崎に来た人たちと琉球に行ったアマミキヨの一族が同じかどうかって事でしょう?」
「そうなのです。アマミキヨ様がどこからいらしたのか調べるために、この島までやって参りました」とササは言った。
「同じ国の人たちよ」とサラスワティは言った。
 やっぱり、そうだったんだわとササたちは心の中で喜んだ。
「今から二千年くらい前、アマンの国の近くの島で、火山の噴火が起こったの。大きな地震が何度も来て、アマンの国は沈んでしまったのよ。島の人たちは舟に乗ってあちこちに逃げて行ったわ。その中の一つがこの島に来て、別の人たちがミャーク(宮古島)に行き、さらに琉球まで行ったのよ」
「アマンの国は沈んでしまったのですか」とササは驚いた顔をして、隣りにいる安須森ヌルを見た。
 安須森ヌルも驚いた顔をして、声のする辺りを見つめていた。
「ひどかったわ。大地震のあと、大津波もやって来たのよ。山の上に逃げて助かった人たちが安心する間もなく、島が少しづつ沈みだしたのよ。舟は津波で流されてしまったので、慌てて木を伐りだして、舟を作って逃げてきたのよ。わたしはアマンの国の守護神として国を守ってきたけど、あの時の大地震はどうする事もできなかった。この島よりも大きかった、あの島が沈んでしまうなんて予想もできなかったわ。大勢の人々が亡くなってしまった。それでも生き残った人たちはわたしを頼りにして、各地に散って行って、その地で、わたしを神様として祀ってくれたのよ」
「この島に来た人たちとミャークに行った人たちは言葉が違っていたようですけど、同じ国の人だったのですね?」とササが聞いた。
「古くから住んでいた人たちと後から来て住んだ人たちの違いよ。アマンの島は交易が盛んだったから、あちこちから人々が集まって来ていたのよ」
「その島はどこにあったのですか」
「どこって聞かれてもね‥‥‥」
「ジャワの近くですか」
「そうね。だいたいその辺りよ。アマンからジャワまで舟で十日くらいの距離だったわ」
 琉球からジャワまで二か月掛かるとスヒターから聞いている。アマミキヨ様たちはそんな長い舟旅をして来たのか。しかも、丸木舟に乗ってやって来たなんて信じられない事だった。
「サラスワティ様はアマンの国の神様なのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「いいえ、違うわよ。わたしが生まれた国は遙か昔になくなってしまったけど、サラスヴァティという国なのよ。サラスヴァティというのは川の名前で、大きな川だったのよ。わたしはサラスヴァティ川の神様なの。サラスヴァティ川の周辺に人々が集まって来て、豊かな国ができたのよ。今から三千年以上も前の事だわ。でもね、五百年くらいして、サラスヴァティ川はなくなってしまうの。青銅を作るために木を伐りすぎて川の周辺は砂漠になってしまって、サラスヴァティ川は地下を流れる川になってしまったのよ。サラスヴァティの人たちはガンガー(ガンジス川)の流域に移って行って、いくつもの新しい国を造ったわ。サラスヴァティ川はなくなってしまったけど、わたしは水の神様として残ったのよ」
「そして、交易によって、サラスワティ様はアマンの国の人たちにも知られて、アマンの国の神様になったのですね」とササは言った。
「そうなのよ。アマンの国に行ってからはサラスワティと呼ばれるようになったわ」
琉球に行ったアマミキヨ様もサラスワティ様を守護神として祀っていたのですか」
「勿論、祀っていたわよ。今も垣花樋川(かきぬはなひーじゃー)に祀られているはずよ。でも、わたしは最近、琉球まで行かないから、わたしの声は聞こえないわ。琉球には豊玉姫(とよたまひめ)がいるから、わたしが行く必要はないものね。ここもそうよ。ここにもウムトゥ姫がいるから、わたしがここに来たのも久し振りなのよ。あなたたちの笛が聞こえてやって来たの。あんな素晴らしい笛を聞いたのは久し振りだわ。笛の名手のヴィシュヌも感心していたわ」
「ありがとうございます。ヴィシュヌ様とは知り合いなのですか」
「ヴィシュヌはサラスヴァティの国が滅んだあとにできた新しい国で生まれた神様なのよ。元々は太陽の神様だったんだけど、今では万能の神様になってしまったわね。シヴァも新しい国で生まれたのよ。暴風雨の神様だったルドラが進化してシヴァになったの。シヴァは破壊の神様なんだけど、慈悲深さも持っていて、頼りにしている人たちも多いわ」
「ヴィシュヌ様とラクシュミ様はジャワに住んでいると言っていましたが、サラスワティ様もジャワに住んでいるのですか」
「いいえ。わたしはクメール王国に住んでいるのよ」
「えっ、クバントゥの人たちの国ですか」
「そうなのよ。そこには大きなお寺がいっぱいあるのよ。わたしたちはヒンドゥー教という教えの中の神様になっていて、クメール王国はヒンドゥー教を信じていたの。それでわたしたちを祀るお寺がいくつも建てられたのよ。その頃はヴィシュヌとラクシュミもクメール王国にいたのよ。でも、二百年位前に、ヒンドゥー教から仏教に変わってしまって、わたしたちを祀っていたお寺は仏教のお寺になってしまったの。幸いに、わたしは仏教では弁財天(べんざいてん)、夫のブラフマー梵天(ぼんてん)として祀られているので、そのまま残っているの。ヴィシュヌは化身(けしん)として、仏教を開いたブッダになったし、ラクシュミは吉祥天(きっしょうてん)として祀られているんだけど、吉祥天の夫がブッダではなくて、毘沙門天(びしゃもんてん)なのが気に入らないって言って、ジャワに行っちゃったのよ」
「シヴァ様はどこに住んでるのですか」
「サラスヴァティ川やガンガーの上流にはヒマラーヤと呼ばれる高い山々が連なっているの。その中に聖なる山と呼ばれるカイラーサという山があるのよ。シヴァの妻のパールヴァティはその山で生まれたの。パールヴァティがカイラーサに住んでいるので、シヴァもそこにいる事が多いわね。シヴァを祀る大寺院はあちこちにあって、妻もあちこちにいるんだけど、パールヴァティが怖いのね。今回は珍しく、一人でやって来たわ。きっと、ジャワ辺りにいたのかもしれないわね。シヴァはヒンドゥー教の英雄にされて、各地の女神たちを妻に迎える事になってしまったの。ヒンドゥー教を広めるために、ヒンドゥー教の偉い人たちが勝手に決めた事なんだけど、シヴァは優しいからみんなを受け入れているのよ。ガンガーの下流にカーリーという凶暴な女神がいて、その女神もシヴァの妻になったんだけど、シヴァは受け入れて、仲よくやっているみたい。メートゥリオン(宮鳥御嶽)のミナクシはガンガーの南方にあるマドゥライの女神なんだけど、彼女もシヴァの妻にされたのよ。でも、ミナクシにはスンダレという夫がいるから、シヴァも手を出してはいないわ」
 ササはスサノオがシヴァと意気投合して、どこかに行ったのを思いだした。
「シヴァ様とスサノオ様がどこに行ったのか御存じですか」
「あの二神はどこか似ているわね」とサラスワティは楽しそうに笑った。
「よからぬ事を考えているんじゃないの」
 突然、大きな雷が鳴り響いて、ササたちは悲鳴を上げた。空を見上げると南の方の空が真っ暗になっていて、稲光が光った。そして、物凄い音が響いた。
「シヴァが悪さをしているようね」とサラスワティは言って、どこかに消えたようだった。
 山頂にいたら危険なのでササたちは山を下りた。若ヌルたちの所に行くと皆、しゃがみ込んで耳を塞いでいた。
「近くにガマ(洞窟)があるわ」とヤラブダギのツカサが言って、ササたちはガマの中に避難した。ガマの中は霊気が漂っていた。
「ここは古いウタキだわ」とササが言った。
「アマンの人たちのお墓だったようです」とヤラブダギのツカサが答えた。
 ササたちはお祈りを捧げた。神様の声が聞こえた。アマンの言葉で何を言っているのかわからなかったが、何となく、みんなが喜んでいるように思えた。
「久し振りにサラスワティの神様がいらっしゃったので、喜んでいるのよ、きっと」と安須森ヌルが言った。
「シヴァ様が悪さをしているって言っていたけど、この雷はシヴァ様のせいなのかしら」とシンシンが言った。
「お祖父(じい)様(スサノオ)とシヴァの神様がヤキー(マラリア)を退治しているのよ」とユンヌ姫の声が聞こえた。
「えっ、スサノオの神様がヤキー退治をしているの?」とササは驚いて聞き返した。
「ウムトゥ姫がヤキーの事をお祖父様に相談したら、任せておけって引き受けたの。マッサビから詳しい事情を聞いて、大雨と雷で南蛮(なんばん)の蚊(がじゃん)を退治しているのよ。マッサビとブナシルたちは大雨が降る所の人たちを避難させているわ」
「どうして、わたしたちに内緒にしていたの?」
「ウムトゥ姫がササたちを巻き込んではならないって言ったのよ。ヤキーを琉球に持って行ったら大変な事になるわ。絶対にこの島からヤキーを出してはいけないって言ったのよ」
「わたしたちも手伝いたかったわ」とササが小声で言った。
「そう言うだろうと思っていたからマッサビも内緒にしていたのよ。お祖父様もね」
「ユンヌ姫様は手伝わないの?」
「そのつもりで付いて行ったんだけど、危険だから逃げろって言われたのよ」
 ガマに逃げ込んだあと、大雨が降ってきた。雷は南部に集中していたが、物凄い音は鳴り響いていた。
「今のうちに、お握りを食べましょう」とサユイがのんきな顔をして、風呂敷包みを広げた。
 不安な面持ちで外を眺めていた若ヌルたちも、お腹が減ったわと言って集まって来た。
 みんなでお握りを食べながら、ササたちは若ヌルたちにサラスワティの神様が言った事を話した。
 アマミキヨ様の一族が、この山に来たと聞いて、若ヌルたちも喜んだ。
「アマンの国から来た人たちが琉球の御先祖様だったのか」とガンジューがお握りをほおばりながらササに聞いた。
「そうなのよ。アマンの国から琉球に来た人たちの子孫に豊玉姫様が生まれるの。ヤマトゥからタカラガイを求めて琉球に来たスサノオ様と豊玉姫様が結ばれるのよ。二人は一緒に対馬に行って、そこで玉依姫(たまよりひめ)様が生まれるの。玉依姫様はヤマトゥの国の女王になって、ヒミコって呼ばれるようになるわ。玉依姫様の妹のアマン姫様は琉球に帰って、玉グスクの女按司になるのよ。わたしたちはアマン姫様の子孫なの。そして、アマン姫様の曽孫(ひまご)のウムトゥ姫様がこの島に来て、子孫を増やしたのよ。」
「ここに来たアマンの人たちはどうなったんだ?」
「ウムトゥ姫様の孫のヤラブ姫様が赤崎にやって来て、ここにいたアマンの人たちの子孫と結ばれるのよ」
琉球のアマンの子孫と、この島のアマンの子孫が、また一つになったんだな」
「そうなのよ。そういう事なのよ」とササは満足そうな顔をしてうなづいた。
「すると、スサノオ豊玉姫の子孫はヤマトゥにもいるという事だな?」
「ヤマトゥの天皇はアマテラスの子孫だって聞いたわ。アマテラスは玉依姫様の事だから、天皇スサノオ様と豊玉姫様の子孫じゃないの」
「何だって? アマテラス大御神(おおみかみ)が玉依姫だって? アマテラス大御神がヒミコだっていうのか」
「そうじゃないの? わたしはヤマトゥの古い歴史は知らないけど、そうだと思うわ。本来、太陽の神様はスサノオ様だったはずよ。伊勢の神宮を造った天皇が、スサノオ様の娘の玉依姫様をアマテラスにしてしまったのよ。元々、内宮(ないくう)の地に祀られていた玉依姫様の息子のホアカリは外宮(げくう)に移されて、外宮に祀られていた玉依姫様の娘のトヨウケヒメ様は小俣(おまた)神社に移されてしまったのよ」
「どうして、そんな事をしたんだ?」
「きっと、伊勢の神宮を造ったのは女の天皇に違いないわ。天皇の事はよくわからないけど、昔は天皇になるために争いを繰り返してきたんでしょ。その女の天皇は争いを繰り返さないために、アマテラスを太陽の神様にして、天皇の御先祖様にしたのよ。そして、天皇は自分の子孫たちがなるべきだって決めたんだわ」
「うーん」とガンジューは唸った。
「俺には難しい事はわからないけど、熊野の山中で修行していて、朝日が昇ってくると、それはまさしく神様に思えるんだよ。そして、その時、わしが両手を合わせる神様はスサノオだった。スサノオ以外は考えられなかったんだ。そうか、やはり、スサノオは太陽の神様だったんだな」
 ガンジューは一人で納得して、うなづいていた。
 雷は一時(いっとき)(二時間)近く続いた。
 雨もやんで、青空も顔を出した。
 ササたちはガマから出ると山頂へ向かった。山頂から南の方を見ると晴れ渡った空に大きな虹が出ていた。
 登って来た道とは反対側に下りて行って御神崎(うがんざき)に向かった。
 海に飛び出た御神崎は険しい崖に囲まれていて、奇妙な形をした岩がいくつもあった。神様が降りて来るのにふさわしい神々しさがあって、眺めも素晴らしかった。
 樹木に被われた山道から出て来たササたちは、その景色の美しさに思わず声を漏らしていた。
 御神崎と海を隔てて大きな岩があって、その岩の上に落ちそうで落ちない小さな岩が乗っていた。
「あの岩はブナリヌツブルイス(妹の頭石)って呼ばれています」とヤラブダギのツカサが言った。
 話を聞いていた若ヌルたちがキャーキャー騒いだ。
「いつの頃から、そう呼ばれているのかはわかりませんが、ハツガニに斬られたミズシの首が、ここまで飛んできて、あそこにあるというのです」
「えっ!」とササは驚いて、「どうして、そんな話になったの?」と聞いた。
「何代目かのツカサが、ツカサたちをここに呼ぶために、そんな作り話を作ったようです。その頃、ヤラブダギに登るツカサたちはいても、ここまで来るツカサがいなかったのかもしれません」
「今はここまで来るのですか」とササが聞くと、
「ツブルイスのお陰で、ヤラブダギに登ったツカサたちはここまで下りてきて、お祈りを捧げてくれます」と笑った。
 突然、サラスワティのヴィーナが聞こえてきた。
「ヤキーの退治はうまく行ったみたいよ」とサラスワティの声が聞こえた。
「わたしは帰るわ。楽しかったわ」
「色々とありがとうございました。いつか、琉球にいらしてください」とササは言った。
「そうね。あなたたちの笛が聞こえたら、行くかもしれないわ。言葉も覚えたしね」
 ササたちは両手を合わせて、サラスワティを見送った。
 御神崎の近くにあるヤラブダギのツカサの家で一休みして、ササたちはヤラブダギの北側を回って崎枝に戻り、名蔵へと帰った。
 名蔵のグスクに着いたのは夕方になっていた。
「何だか、疲れたわね」とササが言った。
「異国の神様とお話ししたからじゃないかしら」とシンシンが言った。
「一晩で言葉を覚えちゃうなんて、さすが、神様ね」とナナが言った。
 ササが笑ってうなづこうとした時、ササの脳裏に、ナルンガーラのガマの中で苦しんでいるスサノオの姿が見えた。
「大変だわ!」とササは叫んだ。
「どうしたの?」とシンシンとナナが同時に言って、ササを見た。
「ナルンガーラに行かなくちゃ」とササは安須森ヌルに言った。
 ササの顔を見て、ただ事ではないと気づいた安須森ヌルはうなづき、ブナシルから馬を借りて、ナルンガーラに向かった。ミッチェとサユイがついてきた。
 ナルンガーラに着くと、シンシンとナナにマッサビの屋敷で待ってもらい、ササ、安須森ヌル、ミッチェ、サユイはマッサビと一緒にナルンガーラのウタキに向かった。
 すでに日が暮れかかっていて、薄暗くなっていた。ウタキに着いた頃には星空が広がっていたが、不思議と足もとはよく見えた。
 滝の裏側にあるガマに行くと、中は明るくなっていて、その中心にスサノオが横たわっていた。そして、驚いた事に、スサノオを看病していたのは豊玉姫池間島(いきゃまじま)のウパルズだった。
 ササは豊玉姫の姿を見た事はなかったが、一目で豊玉姫だとわかった。目の前にいる女神様は、心に描いていた姿と少しも違っていなかった。
豊玉姫様、スサノオの神様は大丈夫でしょうか」とササは聞いた。
「さっきまで苦しんでいたけど、眠りについたわ。ゆっくり休めば大丈夫よ。必ず、もとに戻るわ」
「ヤキーを退治するために無理をしたのですか」
「そうみたいね。昔からそうなのよ。やらなければならない事は、自分を犠牲にしてでもやるのよ。だから、スサノオなのよ」
 ササたちはスサノオの無事を祈った。
 ウムトゥ姫がユンヌ姫、アキシノ、赤名姫と一緒に帰って来て、スサノオが倒れているのを見て驚き、さらに、豊玉姫とウパルズがいるのに驚いた。
「お祖母(ばあ)様、どうして、ここにいるの?」とユンヌ姫が豊玉姫に聞いた。
「最近、スサノオがやたらと琉球に来るので、何をしているのかと、密かにあとを追って来たのよ。そしたら、ミャークに来てしまったの。ウパルズと会って、色々と話を聞いていたのよ。スサノオがイシャナギ島に行ったというので、来て見たら、このありさまだったというわけよ」
 ウムトゥ姫は、豊玉姫と娘のウパルズと思わぬ再会ができて喜んでいた。
 豊玉姫に会うために神様たちが次々に現れた。狭いガマの中は神様だらけになった。
「お酒を持ってくればよかったわね」とササが安須森ヌルに言った。
「はい」と言って、ミッチェが瓢箪(ちぶる)を差し出した。
「シンシンさんから頼まれたのよ」
 ササは嬉しそうな顔をして瓢箪を受け取ると安須森ヌルに渡した。
 安須森ヌルは一口飲むと「おいしい」と笑ってササに返した。
 ササも飲んで、幸せそうな顔をした。
 ユンヌ姫がやってきて手を差し出した。ササは瓢箪を渡した。ユンヌ姫は瓢箪を持って行くと豊玉姫に渡した。豊玉姫はササたちを見て笑うと、おいしそうにお酒を飲んだ。
 その飲みっぷりから、豊玉姫もお酒が好きだったのかと驚いたが、ササたちがお酒が好きなのも、豊玉姫に似たのに違いないと納得した。

 

 

 

トレース・オブ・ユー   ライズ

 

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第二稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第二稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第二稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第二稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第二稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第二稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第二稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第一稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第一稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第一稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第一稿)   ササたち、平家の子孫と会う。
  161. 保良のマムヤ(第一稿)   ササと安須森ヌル、アラウスの古いウタキに入る。
  162. 伊良部島のトゥム(第一稿)   高腰グスクの熊野権現で神様たちと酒盛り。
  163. スタタンのボウ(第一稿)   ササたち、来間島に寄って多良間島に行く。
  164. 平久保按司(第一稿)   アホウドリに歓迎されたササたち、平久保按司と会う。
  165. ウムトゥ姫とマッサビ(第一稿)   ササたち、ノーラ姫とウムトゥ姫に会う。
  166. 神々の饗宴(第一稿)   於茂登岳の山頂で、神様たちと酒盛り。
  167. 化身(第一稿)   名蔵の白石御嶽と水瀬御嶽で神様と会う。
  168. ヤキー退治(第一稿)   ササたち屋良部岳に登り、山頂で雷雨に遭う。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司の重臣。船長としてトンド国に行く。
ムマニャーズ    1342-    上比屋の先代の女按司
ツキミガ      1390-    ムマニャーズの孫娘。
アラウスのウプンマ 1340-    戦死したアラウス按司の妹。
マムヤ       1339-    保良の女按司の末娘。先代の野城按司
チルカマ      1349-    クマラパの妹。先代の石原按司
阿嘉のトゥム    1365-    久米島からミャークに渡った兄弟の弟。伊良部島に住む。
スタタンのボウ   1360-    多良間島の女按司。クマラパの弟子。
ハリマ大殿     1359-    ボウの夫。ターカウの倭寇
平久保按司     1355-    石垣島按司。ターカウの倭寇
ブナシル      1360-    名蔵の女按司
マッサビ      1369-    ウムトゥダギのフーツカサ。池間島出身。
サユイ       1391-    マッサビの娘。弓矢の名人。
阿嘉のグラー    1362-    マッサビの夫。久米島からミャークに渡った兄弟の兄。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。

 

2-167.化身(第一稿)

 神様たちとの饗宴(きょうえん)の翌朝、疲れ切ってウムトゥダギ(於茂登岳)の山頂から下りて来たササたちは、ナルンガーラの屋敷に着くと倒れるように眠りに就いた。
 目を覚ましたササが縁側に出ると、すでに夕方になっていた。ササは縁側に座り込んで、静かに呼吸を整えた。
 昨夜(ゆうべ)、スサノオの神様に頼まれて笛を吹いたら、サラスワティの神様が演奏に加わってきた。演奏が終わったら、サラスワティの神様が現れて、異国の神様が次々に現れた。
 サラスワティの神様はきらびやかな異国の着物を着ていて、手が四本もあった。二本の手で三弦(サンシェン)を大きくしたような不思議な楽器を持っていて、残りの二本の手には数珠(じゅず)とお経のような物を持っていた。サラスワティの神様は常に楽器をつま弾いていて、心地よい曲が流れていた。
 踊り好きな肌の色が黒い神様もいた。鳥のような羽根を持って、鷲(わし)のような顔をした神様もいた。笛の名人の神様も来て、ササたちは一緒に笛を吹いた。スサノオの神様は異国の神様とお互いに違う言葉で話し合っていたが、お互いに意味が通じているようで、楽しそうに笑っていた。
 二度目に笛を吹くまでの事ははっきりと覚えているのに、それ以後の事は、まるで夢の中の出来事のようで、ぼんやりとしていた。
 安須森(あしむい)ヌルが起きてきたので、その事を聞いたら安須森ヌルもはっきりと覚えていなかった。
「あたしたち、夜が明けるまで飲んでいたの?」とササは聞いた。
「飲んでいたと思うわ。夜が明ける頃、スサノオの神様がシヴァの神様と意気投合してどこかに行ったので、宴(うたげ)はお開きになったのよ」
「シヴァの神様?」
「踊り好きな神様がいたでしょ」
 ササは思い出した。ササたちの笛に合わせて、奇妙な踊りを踊っていた神様だった。
「シヴァの神様ってどこの神様なの?」
 安須森ヌルは首を傾げた。
「あたしたちの笛を聴いて、どこかから来たんじゃないの」
「その神様と一緒に踊っていた女神様もいたわ」とササが言った。
「シヴァの神様の奥さんよ。名前は覚えていないわ」
「ねえ、マッサビ様のお屋敷にあるサラスワティ様の絵を見に行きましょう」
 ササがそう言って、二人は隣りの屋敷に向かった。縁側に愛洲次郎(あいすじるー)たちがいて、
「ようやく、お目覚めか」と笑った。
「マッサビ様はまだ眠っているようだ。俺たちも山頂まで行って来たんだ。風が強くて、あんな所によく一晩もいられたもんだと感心したよ」
「神様のお陰で、風はやんだのよ」とササは言って、マッサビの夫のグラーに頼んで、サラスワティの絵を見せてもらった。
 掛け軸になって壁に飾ってある絵は思っていたよりも小さくて、縦が一尺(約三〇センチ)ほどだった。細い墨の線に淡い色が施されていた。サラスワティは蓮(はす)の花の上に乗って楽器を弾いていて、足下に白鳥が控えていた。それを見て、サラスワティが白鳥に乗ってやって来たのをササは思い出した。それと同時に、クバントゥの神様のビシュヌとラクシュミが、大きな鳥の神様に乗って来たのも思い出した。
「やはり、手が四本もあるわね」と安須森ヌルが言って、「四本もあったら便利でしょうね」と笑った。
「四つの刀が持てるわ」とササは言ったが、「四つの刀を腰に差したら重すぎるわね」と笑った。
「この神様は弁財天(べんざいてん)様の元の姿じゃないかな」と二人の後ろでジルーが言った。
「弁財天様は熊野から吉野に行く奥駈道(おくがけみち)にある弥山(みせん)という行場(ぎょうば)に祀ってあるんだ。弥山の裾野の天川(てんかわ)に弁財天社があって、古くから水の神様として信仰されている。きっと、南の国の神様が仏教に取り入れられて、弁財天様になったんだよ」
 弁財天というのは聞いた事があった。アキシノがお仕えしていた厳島(いつくしま)神社の神様だった。それと、ササたちが奥間(うくま)のサタルーと一緒に京都から尾張(おわり)の瀬戸に行った時、琵琶湖にある竹生島(ちくぶしま)にも、弁財天が祀ってあると案内してくれた斯波(しば)家のサムレーが言っていた。
「この島の赤崎の神様がサラスワティ様なら、アマミキヨ様の神様もサラスワティ様なのかしら?」と安須森ヌルが言った。
「明日、赤崎まで行って調べましょ」とササと安須森ヌルがうなづき合うと、
「俺たちはまた留守番か」とジルーがつまらなそうな顔をして聞いた。
 ササは笑って、「みんなでぞろぞろと行きましょう」と言った。
「そいつは楽しみだ」とジルーは喜んで指を鳴らした。
「この絵を描いたのはテルヒコ様の子孫の石城按司(いしすかーず)でしょ。絵がうまいのね」と安須森ヌルが言った。
「イシャナギ島(石垣島)のイーカチ(絵画き)ね」とササが笑った。
「石城按司琉球に行っているから、琉球の絵も描いているかもしれないわ。あとで行って、見せてもらいましょ」
 シンシンとナナがやって来た。
「みんなはまだ眠っているわ」とナナが言った。
「神様たちとつき合ったから、身も心も疲れ切ってしまったのよ。マッサビ様でさえ、まだ眠っているもの」
「若ヌルたちはずっと眠っていたのに、よく眠れるわね」とシンシンが言った。
「眠っていても大勢の神様が近くにいたから疲れたんでしょう」と安須森ヌルが言った。
 ササたちはジルーたちと一緒に鍛冶屋(かんじゃー)のフーキチに会いに行った。
「ミーカナとアヤーはどうしたの?」とササが聞いたら、
「村の娘たちに剣術を教えているんだ」とゲンザが言った。
 フーキチの作業場は沢の下流にあった。作業場では若い者たちが大勢、仕事に励んでいた。なぜか、クマラパの姿もあった。フーキチはササたちに気づくと手を上げて、隣りの家で待っていてくれと言った。
 フーキチの奥さんは昨日、マッサビの屋敷で料理を作っていて、ササたちを隣りの屋敷に案内してくれた人だった。先代のフーツカサの姪(めい)で、先代が亡くなった時、十歳だった。フーツカサの跡を継げという話もあったが、池間島(いきゃまじま)からマッサビが来てくれたので助かった。わたしにはシジ(霊力)がないし、とても、フーツカサなんて務められないと言って笑った。フーキチと出会ったのは十五歳の時で、出会った時に、この人のお嫁さんになるってわかったらしい。今は四人の子供に恵まれて、フーキチもみんなから尊敬されているので幸せだという。
 縁側で奥さんと話をしていたら、フーキチが帰って来た。
「奥間の鍛冶屋がイシャナギ島にいたなんて驚きましたよ」とササが言うと、
「わしの方こそ、驚きました。琉球から女子(いなぐ)がこの島にやって来るとはのう。しかも、琉球の王様の娘だというではありませんか。王様の娘が腰に刀を差してやって来るなんて、まったく腰が抜けるほど驚きましたよ」とフーキチは笑った。
「父が王様になれたのも奥間の人たちのお陰なんですよ」と安須森ヌルが言うと、フーキチは何の事だかわからないという顔をした。
「フーキチさんが琉球を離れた時、中山王(ちゅうさんおう)は誰でした?」とササが聞いた。
「察度(さとぅ)殿でした。そなたたちは察度殿の跡継ぎのフニムイ(武寧)殿の娘さんなのでしょう」
 ササは首を振って、「フニムイを倒して、わたしの伯父が中山王になったのです」と言った。
「フニムイを倒した? 一体、誰がフニムイを倒して中山王になったのです? 中山王を倒すほどの兵力を持っていたのは山北王(さんほくおう)しかいないでしょう。まさか、山北王が中山王を倒したのですか」
「違います。フーキチさんは奥間から南部の佐敷に行ったヤキチさんを知っていますか」と安須森ヌルが聞いた。
「ヤキチさんか‥‥‥懐かしいな。勿論、知っていますよ。ヤキチさんはわしの師匠でした。わしの親父はわしが幼い頃に亡くなってしまって、わしと兄貴はヤキチさんから鍛冶屋の技を習ったのです」
「そのヤキチさんは今、玻名(はな)グスク按司になりました。玻名グスクは奥間の人たちの南部の拠点になったのです」
「ヤキチさんが玻名グスク按司?」
 フーキチはわけがわからないといった顔で安須森ヌルを見て、ササを見た。
「ヤキチさんはずっと佐敷按司を守っていました。佐敷按司は隠居していた父親と一緒に中山王のフニムイを倒して、隠居していた父親が中山王になったのです」
「ちょっと待ってくれ」とフーキチは昔を思い出していた。
「わしがこの島に来る三年前、奥間に佐敷から若按司が来ました。そして、若按司の息子が生まれると、神様のお告げがあったと奥間ヌル様が言って、その息子は長老が育てる事になったのです。そして、佐敷の若按司を守るためにヤキチさんは佐敷に行きました。あの若按司が中山王を倒したというのですか」
「そうです。その若按司はわたしの兄で、中山王の跡継ぎであり、島添大里按司(しましいうふざとぅあじ)でもあります」
「信じられん」とフーキチは首を振ってから、
「やはり、奥間ヌル様の言った事は正しかったんだな」と納得したようにうなづいた。
「わしはこの島に来る前、ヤキチさんにお別れの挨拶をするために佐敷に行ったんです。佐敷グスクは小さなグスクで、どうして、ヤキチさんが佐敷の若按司を守らなければならないのか、わしにはさっぱりわかりませんでした。ヤキチさんに聞いたら、笑いながら、あいつは面白い奴だ。何か大きな事をやるかもしれないと言ったんです。そうでしたか、あの若按司が中山王を倒したのですか。そして、ヤキチさんが玻名グスク按司か‥‥‥」
 フーキチは楽しそうに笑っていた。
「それで、佐敷の若按司の息子さんはどうしているのですか」
「長老殿の娘さんと一緒になって、長老殿の跡継ぎになっています」
「今の長老殿はヤザイム殿ですか」
「そうです」
「ヤザイム殿には、わしと同い年の息子で、ヤタルーというのがいましたが、どうなりました?」
「ヤタルーさんは鍛冶屋の親方を務めています」
「奥間のために身を引いたのですね。奴らしいな」とフーキチは笑った。
 この島に来て二十四年の月日が過ぎ、フーキチは百人以上の弟子を育てて、各地に送り出していた。この事を知ったら、奥間の長老殿は喜ぶでしょうと言ったら、「急に故郷に帰りたくなってしまいました。琉球に帰る時、わしを乗せて行ってください」と言った。
「ミャーク(宮古島)の目黒盛(みぐらむい)様が琉球に船を出すって約束してくれました。毎年は無理でも一年おきに琉球に行く船が出るようになるでしょう。すっかり変わった琉球を見に行ってください」
「楽しみができた」とフーキチは笑って、妻を見ると、「お前も一緒に行こう」と言った。
 奥さんは嬉しそうに笑っていた。
 日が暮れてきたので、ササたちはフーキチ夫婦と別れて屋敷に戻った。
 マッサビもツカサたちも起きていた。
「昨夜は疲れたから栄養を付けなくちゃあね」とマッサビが言って、猪(やましし)の肉を御馳走になった。
 翌朝、ササたちは名蔵(のーら)に向かった。女子サムレーのミーカナとアヤーは村の娘たちに剣術を教えていたので、ナルンガーラに残り、ゲンザとマグジも残った。
 ササたちはマッサビと別れて、ツカサたちと一緒に名蔵の女按司(みどぅんあず)、ブナシルの屋敷に向かった。マッサビの娘のサユイは一緒に赤崎に行くと行ってついて来た。
 ブナシルの屋敷は集落から少し離れた高台の上にあった。それほど高くない石垣に囲まれたグスクで、中は広く、お客様用の大きな屋敷があった。ウムトゥダギのお祭りの時、各地のツカサが集まって来るので、そのための宿泊施設だった。
 ブナシルは留守番をしていた娘のミッチェをササたちに紹介した。母親と同じように女子サムレーの格好をしていて、ナナと同じ位の年齢に見えた。
「わたしのお師匠です」とサユイが言った。
「お師匠は弓矢の名人なのです」
 玻名グスクヌルに若ヌルたちの稽古を頼んで、ササ、シンシン、ナナはミッチェとサユイの案内で、シィサスオン(白石御嶽)とミズシオン(水瀬御嶽)に向かった。
 シィサスオンはグスクと集落の中程にあった。こんもりとした森の中に、白く細長い石が祀ってあった。
「昔、ハツガニという神様を信じない人がいて、ウムトゥダギの神様に石にされてしまったようです。石になってからは強いシジ(霊力)を持つ神様になられて、重い病に罹った時やマジムン(悪霊)に取り憑かれた時、ここでお祈りをすると治ると言われています」とミッチェは説明した。
 ハツという名前に、いつしかカニ(金)という尊称がついたらしい。七尺(約二メートル)近くもありそうな石で、ハツガニは大男だったようだ。
 ササたちはお祈りをした。
琉球から来たそうじゃのう」と神様の声が聞こえた。
 クバントゥの言葉ではなく琉球の言葉だった。
琉球の言葉がわかるのですか」とササは聞いた。
「一昨日(おととい)の夜、覚えたんじゃよ」と神様は言った。
 ササたちには神様の言っている事が理解できなかった。
「一昨日の夜、一緒に笛を吹いたじゃろう。わしはビシュヌじゃ」
 ササたちは思い出して驚いた。色黒の目鼻立ちのくっきりしたいい男で、初めのうちは異国の言葉をしゃべっていて何を言っているのかさっぱりわからなかった。やがて、片言の琉球の言葉をしゃべるようになって、その後、すっかり言葉を覚えたようだが、クバントゥの神様のビシュヌがどうして、ここにいるのかわからなかった。
「わしの特技は化身(けしん)となって、人間界に現れる事なんじゃよ」
「もしかしたら、ビシュヌ様がハツになって、この島に現れたのですか」とササは聞いた。
「そうじゃ。弟のサラはガルーダの化身で、妹のミズシはラクシュミの化身じゃ」
「ラクシュミ様はお会いしましたが、ガルーダ様は知りません」
「何を言っておる。わしらが乗って来た鳥がガルーダじゃよ」
 鷲の顔をした鳥の神様だったのかとササは納得した。
「どうしてビシュヌ様が、神様を信じない者に化身したのですか」
「ウムトゥ姫は素晴らしい人間じゃった。バラバラだったこの島を見事に一つにまとめた。この島の神様として、ずっと、人間たちから敬われなければならないと思ったんじゃ。人間というのは愚かな生き物だから、昔の事など、すぐに忘れてしまう。ウムトゥ姫の神様としての力を何か形として残さなくてはならないと思ったんじゃ。そこで、ウムトゥ姫の命が残りわずかだと知ったわしは、ハツになって、この島に現れたんじゃよ。そして、ウムトゥ姫の孫のテルヒコと出会い、一緒に名蔵に来たというわけじゃ。ウムトゥダギの神様を信じないと石になってしまうぞと人間たちにわからせるために、石になったままのハツをここに祀っているんじゃよ」
「どうして、妹のミズシさんを殺したのですか」
「それは、テルヒコがミズシに惚れちまったからじゃ。ラクシュミはわしの妻じゃ。いつまでも人間界に置いておくわけにはいかんのじゃよ」
「サラさんはクバントゥ姫様と一緒になりましたけど、それでよかったのですか」
「ガルーダに聞いたら、ガルーダもクバントゥ姫に惚れたという。わしらにずっと仕えてきたから、ちょっと息抜きさせてやったんじゃよ。お陰で、ガルーダの子孫がこの島で増える事になった。奴は時々、この島にやって来て、子孫たちの様子を見るようになったんじゃ。今回も、ガルーダがウムトゥダギの神様たちの饗宴に気づいて、わしらを連れて来てくれたんじゃよ。いつもなら、わしはここにはおらんが、お前たちが来ると思って待っていたんじゃ。ミズシオンにも行くんじゃろう。ラクシュミが待っているよ」
「ガルーダ様のウタキはあるのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「サラとクバントゥ姫のウタキはクバントゥオン(小波本御嶽)の近くにあったんじゃが、いつしか忘れ去られてしまったようじゃ。それがあるから、わしはここに石を残したんじゃよ」
 クバントゥ姫が生きていたのは一千年も前の事だった。忘れ去られたウタキが、他にもいくつもあるような気がした。
 ビシュヌ様と別れて、ウタキを出たあと、
「シィサスオンの神様はいつもはいらっしゃらないのですか」とササはミッチェに聞いた。
「いらっしゃいません。時々、いらっしゃいますが、古い言葉を使うので理解できませんでした。神様が琉球の言葉を話すのを初めて聞きました。シィサスオンの神様も一昨日の夜、お山に行ったなんて驚きです。わたしも行けばよかったわ。ツカサたちも一緒に行くって聞いたので、わたしは遠慮したのです。ツカサたちはわたしの顔を見ると文句ばかり言うのです。武芸ばかりやっていて、ツカサとしてのお勤めをおろそかにしているってね。決して、おろそかにしているわけではないのですが、ツカサたちにはそう見えるようです」
琉球ではヌルは武芸を身に付けなければならないと思われています。わたしは若ヌルの頃、武芸とヌルとしてのお勤めを同時に母から教わりました。それが当然の事だと思っていたのです。でも、武芸をやる母が特別なヌルだったのです。母は最高のヌルとして、ヌルたちに慕われています。皆、母を見倣って武芸を身に付けています。当然、わたしの弟子の若ヌルたちは武芸に夢中になっています。ミッチェさんが新しいツカサの姿を作ればいいのです。そうすれば、皆、ミッチェさんを見倣って武芸を始めるでしょう」
「ありがとう。自信が湧いてきたわ」とミッチェは嬉しそうに笑った。
 名蔵の集落を抜けて、ノーラオン(名蔵御嶽)の森の左側にある森がミズシオンだった。こんなに近くなら、ノーラオンにお祈りした時に寄ればよかったと思ったが、きっと、あの時は神様はいらっしゃらなかったに違いなかった。
 ミズシオンには黒っぽい石が置いてあった。人がうずくまっているような形の石だった。ミズシさんも石になったのかしらとササが思っていると、
「違うわよ」と神様の声が聞こえた。
「この石はわたしとテルヒコさんが、いつも腰掛けてお話をしていた思い出の石なのよ」
「どうして、テルヒコ様と一緒に残らなかったのですか」とササは聞いた。
「残ってもよかったんだけど、テルヒコさんはあのあと、石城山(いしすくやま)のチャコと出会う事になっていたの。わたしが邪魔をしてはいけないと思って、去る事にしたのよ。それでよかったと思っているわ」
 ササは神様の声を聞いて、一昨日の夜のラクシュミ様を思い出した。真っ赤な着物を着ていて、物凄い美人だった。テルヒコが驚いて、ポカンと口を開けたままラクシュミを見つめていた。二人は再会を喜んで、親しそうに昔話に花を咲かせていた。
「クバントゥの人たちは、どこからこの島に来たのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「クバントゥの御先祖はタルファイとマルファイという兄妹で、大陸の南の方、今、チャンパ(ベトナム中部)という国がある辺りから来たのよ」
 チャンパという国はシーハイイェンから聞いた事があるが詳しい事はわからなかった。
「もしかしたら、クメーという国ではありませんか」とササは聞いた。
 何となく、久米島(くみじま)にお米を持って来たクメーの国の人とクバントゥの人がつながりがあるような気がした。
「そう、クメールという国よ。そんな昔の事をよく知っているわね」
「クメールですか」とササは呟いた。
 久米島にお米を持って行った人たちもクメールの人に違いないと思った。
「クメールは滅ぼされて、人々はあちこちに逃げて行ったの。タルファイとマルファイは一族を引き連れて、お米を持って、この島にやって来たのよ。でも、逃げないでじっと我慢をしている人たちもいたのよ。その人たちはやがて、新しいクメール王国を築くのよ。今もクメール王国はあるわ。わたしたちを祀った立派なお寺がいくつもあったんだけど、今は仏教のお寺になってしまったわ」
琉球の近くに久米島という島がありますが御存じですか」
「さあ、知らないわ」
久米島はクメールの国の人たちが来て、クメール島と名付けたのではないかと思ったのですが知りませんか。久米島で一番高い山にあるガマ(洞窟)に古い神様がいらっしゃって、言葉はわからないのですが、『クメー、クメー』と何度も言っていたのです」
「わたしにはわからないわ」とラクシュミは言ったが、
「シヴァから聞いた事があるぞ」とビシュヌの声が聞こえた。
久米島に行ったのはシヴァを祀っていたクメールの国の人たちじゃ。久米島にはリンガとヨーニがあるはずじゃ」
「リンガとヨーニって何ですか」
「リンガは男のアレで、ヨーニは女のアレじゃよ」
 確かに久米島には男子岩(いきがいわ)と女子岩(いなぐいわ)があった。
「同じ国なのに、違う神様を祀っていたのですか」
「どの神様を信じるかは人それぞれじゃからのう」
「ビシュヌ様とラクシュミ様は滅ぼされたクメールの国の神様だったのですか」
「わたしたちはもっと遠い南の国の神なのよ。その国も争いが絶えなくて、いくつもの国が建国されては滅んで行ったわ。今はヴィジャヤナガル王国(インド南部)というのが栄えているわ。タルファイとマルファイの頃はアーンドラ王国というのがあって、盛んに交易をしていたのよ。お陰で、わたしたちも各地に広まっていったの。シヴァもサラスワティもアーンドラ王国から各地に広まって行ったのよ。アーンドラ王国はクメールとも交易していて、タルファイ兄妹はわたしたちを守護神として祀っていたの。この島に来てからもわたしたちを頼りにしてくれていたのよ」
「今はどこに住んでいらっしゃるのですか」
マジャパイト王国にいる事が多いわね。あそこには大きなお寺がいっぱいあるし、わたしたちを頼りにしている人たちも多いのよ」
マジャパイト王国ってジャワの事ですよね。王女のスヒターを御存じですか」
「勿論、知っているわ。スヒターのお友達のラーマはわたしとお話ができるのよ。実はね、あなたの事はラーマから聞いていたの。一度、会ってみたいと思っていたのよ」
「ありがとうございます。ジャワにお帰りになったら、ラーマによろしくお伝えください」
 ラクシュミ様、ビシュヌ様と別れたササたちは、ノーラ姫に一昨日の夜のお礼を言うためにノーラオンに向かった。
「ラクシュミ様とビシュヌ様がジャワにいらっしゃるなんて驚いたわね」とシンシンが言った。
 ササはうなづき、目を輝かせて、「ジャワに行かなくちゃね」と言った。
久米島にお米を持って来た人たちもクメールの国の人だったのね」と安須森ヌルがササに言った。
「クバントゥの人たちと同じ国の人たちだったんだわ」とササはうなづいた。
 ミッチェとサユイは神様の言った事が衝撃だったらしく、この事をマッサビやブナシルに話した方がいいのか悩んでいた。
「あの二人には話した方がいいわ」と安須森ヌルが言った。
「ツカサたちに話すかどうかは、あの二人が決めるでしょう」
 ミッチェもサユイも佐敷ヌルを見て、うなづいた。
 ノーラオンでノーラ姫にお礼を言うと、
「わたしたちの方がお礼を言うべきだわ」と言った。
「あなたたちのお陰で異国の神様たちとお話ができたわ。母が亡くなったあと、テルヒコの友達が名蔵にやって来て、神様を信じなかったハツが石になってしまった事が、ずっと謎だったのよ。わたしは母がやったんだと思っていたけど、母は違うって言っていたの。ビシュヌ様のお話を聞いて、やっと、長年の謎が解けたのよ。母もビシュヌ様にお礼を言っていたわ。ありがとう。サラスワティ様がヤラブダギで待っているわ。サラスワティ様からお話を聞けば、赤崎の謎も解けるはずよ」
 ササたちはノーラ姫と別れて、グスクに戻った。熊野の山伏、ガンジューが待っていて、
「話があったのに、さっさと帰ってしまうなんてひどいですよ」とガンジューは言った。
「話って何ですか」とササが聞いたら、
「俺の事、覚えていないのですか」とガンジューは言った。
 ササも安須森ヌルも首を傾げたが、ナナが思い出して、
「あの時の山伏ですね」と言った。
「えっ、誰なの?」とササがナナに聞いた。
「熊野の本宮(ほんぐう)の宿坊(しゅくぼう)にいた人よ。あたしたちから琉球の話を聞いて、琉球に行ってみたいって言っていたわ」
 ガンジューは嬉しそうな顔をしてうなづいていた。
 ササも安須森ヌルもシンシンも思い出して、ガンジューを見て、「あの時の‥‥‥」と言って笑った。
「でも、どうして、この島にいるの?」とササは聞いた。
 ササたちが二度目に熊野に来て、帰って行く時、福寿坊(ふくじゅぼう)という山伏を琉球に連れて行くと言った。ガンジューも一緒に行きたかったが、まだ修行中の身で勝手な事はできなかった。それでも、日が経つにつれて、琉球に行きたいという気持ちを抑える事はできず、奧駈行(おくがけぎょう)をすると嘘をついて熊野を抜け出して博多に向かった。博多に琉球の船はまだ泊まっていた。しかし、近づく事はできず、ササたちとも出会えなかった。琉球の船は帰ってしまったが、ガンジューは諦めず、琉球に行く船を見つけて乗り込んだ。ところが、その船は琉球ではなくターカウ(台湾の高雄)に着いた。ターカウからミャークの船に乗って、この島に着いたのが、去年の夏で、それ以来、ずっとこの島にいるという。
「ミャークまで行っても琉球には行けないと聞いたので、この島にいる事にしたのです。ウムトゥダギに熊野権現もありますし。ところで、熊野の神様のスサノオがこの島に来たと聞きましたが本当なのですか」
「本当よ。でも、話をすると長くなるから後にしてね。これからヤラブダギに登らなければならないの」
「ヤラブダギなら登った事があるので、案内しますよ」
「それじゃあ、頼もうかしら」
「ねえ、どうして、ガンジュー(頑丈)って呼ばれているの」とナナが聞いた。
「俺の名前は願成坊(がんじょうぼう)なんですよ」
「成程」とササたちは笑った。

 

 

 

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