長編歴史小説 尚巴志伝

第一部は尚巴志の誕生から中山王武寧を倒すまで。第二部はその後の尚巴志の活躍です。お楽しみください。

2-160.上比屋のムマニャーズ(第一稿)

 女按司(みどぅんあず)のマズマラーのお世話になって、村(しま)の人たちと一緒に楽しい酒盛りをして、狩俣(かずまた)で一泊したササたちは、翌日、クマラパとタマミガの案内で赤崎のウタキに向かった。
 途中、白浜(すすぅばま)に寄ったら浜辺に仮小屋がいくつも建っていて、船乗りたちがのんびりとくつろいでいた。炊き出しをしている島の女たちと身振り手振りで話をしながら楽しそうに笑っていた。
 ササたちに気づいて、みんなが集まって来たので、
「うまく行っているわ。取り引きもできそうよ。もう少し待っていて」と言って、空になった瓢箪(ちぶる)に酒を補給して、ササたちはまた馬にまたがった。
 大嶽(うぷたき)は大した山ではないので、グスクの跡地まで馬に乗って行けると思っていたのに、誰も登らないとみえて、かつての道は草に被われて、まったくわからなかった。仕方なく馬を下りて草をかき分けながら登った。
 崩れた石垣があって、大御門(うふうじょー)があったと思われる辺りから中に入ったが、一面、草茫々(くさぼうぼう)で屋敷らしい物は何も残っていなかった。
「与那覇(ゆなぱ)バラの兵に屋敷は皆、焼かれたんじゃよ」とクマラパが言った。
「与那覇バラ?」と安須森(あしむい)ヌルが聞いた。
「与那覇の奴らという意味じゃ。残酷な事をする佐田大人(さーたうふんど)の兵たちは憎しみを込めて、そう呼ばれていたんじゃよ」
「与那覇勢頭(ゆなぱしず)様のグスクも与那覇グスクでしたよね?」
 クマラパはうなづいた。
「与那覇は二つあるんじゃよ。盛加越(むいかぐす)の与那覇と下地(すむずぃ)の与那覇じゃ。盛加越の与那覇は与那覇グスクのある辺りで、下地の与那覇は丁度その反対側じゃ。赤崎のウタキの近くじゃよ」
「このグスクにウタキはありますか」とササは漲水(ぴゃるみず)のウプンマに聞いた。
 ウプンマは首を傾げた。
「ウタキはないじゃろう」とクマラパが言った。
「大嶽按司(うぷたきあず)はヤマトゥの商人だったんじゃ。交易のために元(げん)の国に向かう途中、嵐に遭ってミャーク(宮古島)まで流されて座礁(ざしょう)してしまったんじゃよ。船は壊れて使い物にならなくなったが、積み荷は無事じゃった。ヤマトゥの商品を上比屋按司(ういぴやーず)や保良按司(ぶらーず)に引き取ってもらって、それを元手に大嶽にグスクを築いて按司になったんじゃ。三人の息子はいたが、娘はいない。ヌルがいないからウタキもないじゃろう。ただ、按司が拝んでいたという霊石が山頂にある」
「霊石ですか」とササが首を傾げた。
「先代の上比屋の女按司が造って、山頂まで運んで、大嶽按司の守護神として祀(まつ)ったんじゃよ。上比屋按司も子供たちの事まで考えなかったようじゃな。大嶽按司が亡くなったら、佐田大人に滅ぼされてしまった」
 そう言って、クマラパは顔を歪めて首を振った。
 グスク跡から出て、ササたちは山頂に向かった。眺めのいい山頂のすぐ下に、その霊石はあった。高さ五尺(約一五〇センチ)足らずで、直径四尺(約一二〇センチ)くらいの円柱の石だった。
「大嶽按司の守護神はどんな神様なんですか」とササはクマラパに聞いた。
「八幡(はちまん)様じゃと言っていたのう。故郷に何とか八幡という神社があって、元の国に行く時には必ず八幡様に航海の無事を祈ったそうじゃ。元の国には行けなかったが、ミャークという美しい島に来られた。これも神様の思(おぼ)し召しなんじゃろうと言っておった。太っ腹な男じゃったが、野心もあった」
「八幡様ならスサノオの神様だわ」とササは言った。
対馬(つしま)の木坂の八幡様ね」とナナが言った。
 ササはうなづいて、「熊野権現(くまのごんげん)様を探さなくちゃ」と言った。
 みんなで草をかき分けて探し回った。
「これかしら?」とシンシンが見つけた。
 小さな石の祠(ほこら)で、熊野という字がかすかに残っていた。
「間違いないわ」とナナが嬉しそうに言った。
 祠の周りの草を刈って綺麗にして、ササたちは拝んだ。神様の声は聞こえなかった。
 霊石の前で拝んでいた漲水のウプンマも何も聞こえないと言った。
 ササは空を見上げてから、腰に差していた横笛を袋から出して、安須森ヌルを見た。安須森ヌルはうなづいた。
 ササは横笛を吹き始めた。
 さわやかな調べが流れた。ミャークに来た喜びが軽やかな調べに現れていた。去年の暮れ、浜川(はまがー)ウタキで、アマミキヨ様が南の島からいらっしゃったと神様から聞いた時、南の島に行かなければならないと思った。ミャークの事を色々と調べて、ようやく、やって来られたのだった。無事に来られて、ウムトゥ姫様の娘のウパルズ様に出会えた事を、ササは様々な神様に感謝していた。
 皆、シーンとしてササの笛の音に聞き入っていた。
 ササは吹き終わると空を見上げた。
「イシャナギ島(石垣島)まで聞こえたわよ」と声が聞こえた。
 ユンヌ姫の声だった。
「帰って来たの?」とササは聞いた。
「何かあったのですか」とアキシノの声もした。
熊野権現様を見つけたので、スサノオの神様を呼んでみたんだけど駄目だったみたい」
「イシャナギ島のウムトゥダギ(於茂登岳)にも熊野権現があったわ。あそこは高い山だから、あそこで笛を吹いたらお祖父(じい)様もやって来るわよ」とユンヌ姫は言った。
「ウムトゥダギにもあったのね」とササは喜んだ。
「マシュー姉(ねえ)(安須森ヌル)も吹いてみて」とササが言って、安須森ヌルはうなづくと横笛を吹いた。
 ササの曲とはまったく違った低音でゆっくりとした曲だった。安須森ヌルはミャークに来た喜びよりも、三十年前の戦(いくさ)で亡くなった大勢の人たちを慰めようとしていた。
 鎮魂(ちんこん)の曲だと気づいたササは、安須森ヌルに合わせて笛を吹き始めた。
 心に響き渡る荘厳(そうごん)な曲が流れ、聞いている者たちは皆、感動していた。
 曲が終わると、「素晴らしいわ」とアキシノが涙声で言った。
「これを聞いたらお祖父様は必ずやって来るわ」とユンヌ姫は力強く言ったが、スサノオの声は聞こえなかった。
「すごいのう」とクマラパが言った。
「笛の音を聴いて泣けてきたのは初めてじゃ」
 漲水のウプンマもタマミガも涙を拭きながら、尊敬の眼差しでササと安須森ヌルを見ていた。
「ありがとう」と神様の声が聞こえた。ヤマトゥ言葉だった。
「すまなかった」とクマラパが両手をついて謝った。
「なぜ、そなたが謝るんじゃ」
「佐田大人からこのグスクを守れなかった」
「そなたは狩俣にいたんじゃろう。たとえ、そなたが援軍を送ったとしても無駄死にしただけじゃ。奴らがミャークに来た時、わしは倅たちに充分に守りを固めさせた。もし、わしが生きていたとしても敗れてしまったじゃろう」
「大嶽按司様は博多の商人だったのですか」とササは聞いた。
 神様は微かに笑った。
「博多で有名な商人の倅だったんじゃよ。しかし、三男だったからのう、船頭(船長)になって元の国まで行っていたんじゃ。宇佐(うさ)の八幡様の荷物を積んで慶元(けいげん)(寧波)に向かう途中、嵐に襲われてミャークに着いたんじゃよ。八幡様の荷物を勝手に使ってしまい、申し訳なくて八幡様の霊石を建ててお詫びをしていたんじゃ。この山に熊野権現様が祀られていたとは知らなかった。もしかしたら、熊野権現様に呼ばれて、わしはこの島に来たのかのう」
 突然、大雨が降ってきた。空を見上げたら真っ黒な雲に被われていた。
 ササたちは神様と別れて、クマラパのあとに従って、近くにあったガマ(洞窟)の中に逃げ込んだ。
 ガマの中は白骨だらけだった。
「野ざらしになっていた亡くなった者たちを、このガマに葬ったんじゃよ」とクマラパは言った。
 ササたちは亡くなった人たちにお祈りを捧げた。名もなき神様たちのお礼の言葉があちこちから聞こえた。
 お祈りを済ませたあと、土砂降りの雨を眺めながら、
「神様が怒ったのかしら」とササが言った。
「神様も感激して泣いているんじゃろう」とクマラパが言った。
「最近、雨が降らなかったから恵(めぐ)みの雨じゃ。みんな、喜んでいるじゃろう」
「お二人の笛には本当に感動いたしました」と漲水のウプンマが言った。
「わたしにも笛を教えてください」とタマミガがササに頼んだ。
 ササはタマミガに笛を渡して、吹き方を教えた。
「大嶽按司様はミャークに来てからは、商売はしなかったのですか」と安須森ヌルがクマラパに聞いた。
「保良按司は野城按司(ぬすくあず)に滅ぼされたんじゃが、野城按司が亡くなると、大嶽按司はあとを継いだ若按司を滅ぼして、保良の船を手に入れたんじゃ。その船を使って、イシャナギ島に行って材木を運んで来たんじゃよ。それからは材木の商売を始めたんじゃ。小舟(さぶに)を造る丸太はウミンチュたちに喜ばれて、成功したんじゃよ。だが、倅たちは商売には興味を示さず、目黒盛(みぐらむい)を倒して、ミャークを我が物にしようとたくらんでいたんじゃ」
 雨は半時(はんとき)(一時間)程でやんだ。
 大嶽から下りて馬に乗って、佐田大人の船が座礁した与那覇湾に行き、港の近くにある赤名ウタキに寄った。
 赤名ウタキには赤崎姫の娘の赤名姫の神様がいた。赤名姫はササたちを歓迎してくれた。すでにユンヌ姫と会っていて、一緒にイシャナギ島まで行っていたらしい。
 佐田大人が来た時の様子を話していた時、急に赤名姫はウタキの外で待っていたクマラパを呼んだ。
「お祖母(ばあ)様(ウパルズ)には言っていないでしょうね?」と聞いて、クマラパが、「言っていない」と言うと、「絶対に内緒よ」と赤名姫は念を押した。
 お祈りを終えてウタキから出たあと、何の事ですかとクマラパに聞いたら、「何でもない」と言って教えてくれなかった。
「クマラパは佐田大人の船が与那覇湾で座礁したあとに台風が来た時、赤名姫の力を借りて、船を破壊したのよ」とユンヌ姫が教えてくれた。
 ササたちは驚いて、クマラパを見た。
「誰の声じゃ?」とクマラパが聞いた。
「ユンヌ姫様です。ウパルズ様のお母様の大叔母様にあたる神様です」
琉球から神様まで連れて来たのかね。恐れ入ったよ。あの時、佐田大人に大嶽按司を倒してほしかったんじゃ。佐田大人が来た時、大嶽按司は具合が悪くて寝込んでいたんじゃ。余命幾ばくもない事はわかっていた。大嶽按司が亡くなったら倅どもが目黒盛を攻めて来る事もわかっていたんじゃ」
「ウパルズ様にばれたら、また怒られますね」と漲水のウプンマが言った。
「赤名姫も追放されてしまうじゃろう。内緒にしておいてくれ」とクマラパは皆に頼んだ。
「ウパルズ様はきっと、その事もお見通しだと思うわ」と安須森ヌルが言った。
「きっと、そうね」とササも言った。
「本当?」と赤名姫の心配そうな声が聞こえた。
 佐田大人たちの本拠地だった与那覇村には生き残った家族たちが暮らしていた。皆殺しにしてしまえという声が多かったが、目黒盛は女子供に罪はないと言って許したという。
 赤崎のウタキは海に突き出た岩場の近くの森の中にあった。見るからに古いウタキで、霊気がみなぎっていた。
 近くの集落に赤崎のウプンマが住んでいて、一緒にウタキに入った。漲水のウプンマと赤崎のウプンマは同じ位の年齢で、同じ位の娘もいて、仲がいいようだった。
琉球からアマミキヨ様の事を調べるためにミャークまでやって来たなんて感心だわね」とウパルズ様の娘の赤崎姫の神様は言った。
アマミキヨ様はここからミャークに上陸したのですね?」とササは聞いた。
「残念ながらアマミキヨ様がミャークに来たかどうかはわからないわ。でも、アマミキヨ様の一族の人たちがここで暮らしていたのは確かだと思うわ。一千年前の大津波の前は、もっとウタキがあったはずなんだけど、今はここしかわからないの。琉球のように、浜川ウタキ、ミントゥングスク、垣花森(かきぬはなむい)、そして、玉グスクと垣花グスクが残っていれば、アマミキヨ様の一族の人たちがどのように移動したのかわかるんだけど、ここだけしかわからないので、ここからどこに行ったのかわからないのよ」
「赤崎姫様は琉球に行った事があるのですか」
「母と一緒に行ってきたわ。ここに来る前にね」
「そうだったのですか。セーファウタキにも行ったのですね?」
「勿論よ。豊玉姫(とよたまひめ)様にもアマン姫様にもお会いしたわ」
「そうでしたか」
「でも、琉球に行ったのは一度だけ。また、行ってみたいわ。さっきの話の続きだけど、漲水ウタキのコイツヌ様とコイタマ様は、ここから移動して行ったアマミキヨ様の一族の人たちじゃないかしらと思うんだけど、はっきりとそうだとは言い切れないのよ。漲水のウタキも大津波でやられてしまったの。赤崎と漲水の間に古いウタキが残っていればいいんだけど、残念ながら見つけられなかったわ」
 ササたちは赤崎姫様にお礼を言って別れた。赤崎の岩場から南の海を眺めながら、ササはさらに南の方に行ってみたいと思った。でも、ここより南の島ではきっと言葉も通じないのに違いない。琉球の言葉を知っている人はいないだろう。
「ササ、アマンの国を探しに行くつもりなの?」とシンシンが心配そうな顔をして聞いた。
 ササは笑って首を振った。
「これより先は何があるかわからないわ。それより、旧港(ジゥガン)とジャワに行きましょうよ。シーハイイェンたちとスヒターたちがいるから、何とか言葉も通じるでしょう。もしかしたら、アマンの国もあるかもしれないわ」
「あたしも行ってみたいと思っていたのよ」とナナが楽しそうに言った。
「旧港とジャワなら、明国の言葉が通じるわ」とシンシンも嬉しそうに言った。
 赤崎のウプンマの屋敷で昼食を御馳走になって、上比屋(ういぴやー)グスクに向かった。漲水のウプンマに誘われて、赤崎のウプンマも一緒に付いて来た。
 赤崎から上比屋までは思っていたよりも遠く、上比屋に着いたのは申(さる)の刻(午後四時頃)になっていた。
 グスクは樹木(きぎ)が生い茂った丘の上にあって、高い石垣で囲まれていた。
「ミャークで一番初めにグスクができたのがここじゃよ」とクマラパが言った。
「平家の落ち武者がミャークまで逃げて来て、ここにグスクを築いたのですね」と安須森ヌルが聞いた。
「そうじゃ。ここも女按司(みどぅんあず)でな、わしがミャークに来たばかりの頃、色々とお世話になったんじゃよ。美人(ちゅらー)だが、気の強い女じゃ。今は娘に按司の座は譲ったが、相変わらず威勢のいいお婆(ばあ)じゃよ」
 クマラパの顔を見ると門番は笑って、グスク内に入れてくれた。クマラパはなかなか顔が広いようだ。
 グスク内は思っていたよりも広く、石垣でいくつかに仕切られてあった。門番に馬を預けて、広い庭の正面に見える御門(うじょう)に向かった。御門を抜けると立派な屋敷が建っていた。クマラパは勝手知っている我が家のように、さっさと歩いて女按司がいる部屋へと行った。
「あら、お久し振りですわね、お父様」と女按司はクマラパに言った。
 通訳してくれたタマミガの言葉を聞いてササたちは驚き、クマラパと女按司を見比べた。親子と言われれば、そう見えない事もなかった。
「お久し振りです。お姉様」とタマミガが挨拶をした。
「母さんは元気かね」とクマラパは女按司に聞いた。
「相変わらず、元気ですよ。御願山(うがんやま)のお屋敷にいます。いえ、今頃は多分、ウタキでお祈りをしていると思いますよ」
 クマラパはササたちに説明して、行ってみるかねと聞いた。
 ササたちはうなづいた。
 女按司と別れて、ウタキに向かった。
「先代のお婆はあの娘がわしの子だと、ずっと内緒にしていたんじゃよ」とクマラパが言った。
「佐田大人を倒したあと、やっと、わしの娘だと打ち明けたんじゃ」
「どうして、内緒にしていたのですか」とササは聞いた。
「さあな」と言ってクマラパは首を振った。
 森の中にあるウタキで、お婆がお祈りをしていた。いつもならウタキに入って来ないクマラパも、今回は何も言わずに付いて来た。
琉球からいらしたお客様を連れて来たのね」と白髪頭のお婆は背中を向けたまま言った。琉球の言葉だった。
「ここの古い神様と話がしたいそうじゃ」とクマラパは言って、「平家の事も色々と詳しいぞ」と付け足した。
「わかりました。ミャークにいらした初代の按司様をお呼びいたします」
 ササたちはお婆にお礼を言って、一緒にお祈りを始めた。
「ヤマトゥからミャークにやって来たハツネと申します」と神様の声が聞こえた。勿論、ヤマトゥ言葉だった。
 安須森ヌルが自己紹介をしてから、「平家はミャークと交易をしていたのですか」とハツネと名乗った神様に聞いた。
「いいえ、していません。ミャークの事は熊野別当湛増(たんぞう)から聞きました。熊野の者たちが琉球の南にあるミャークという島に行って、法螺貝(ほらがい)をたくさん持って来たと言っていました。わたしたちは初めからミャークを目指していたわけではないのです。琉球を目指したのですが、トカラの宝島から奄美大島に向かう途中で嵐に遭ってしまいました。方向を見失って、何日も海上をさまよった末、ようやくミャークにたどり着いたのです」
「もしかして、安徳天皇様をお連れしたのですか」
「いいえ、違います。わたしは中納言(ちゅうなごん)様(平知盛)にお仕えしていましたが、安徳天皇様は中納言様ご自身がお守りになって、どこかにお連れいたしました。わたしは中納言様のお姫様をお連れしたのです。でも、辛い船旅が祟って、お姫様はミャークに着いてからお亡くなりになってしまわれました」
厳島神社(いつくしまじんじゃ)の内侍(ないし)(巫女)だったハツネ様なのね?」とアキシノの声が聞こえた。
「えっ、あなたは誰なの?」
「あなたと一緒に厳島神社の内侍を務めていたアキシノよ」
「えっ、アキシノ‥‥‥あなたがどうしてミャークにいるの?」
「わたしは今、琉球にいるのよ。ササたちと一緒にミャークに来たのよ」
「アキシノが琉球に? あなたは小松の中将(ちゅうじょう)様(平維盛)と一緒に熊野に行って、そこで亡くなったんじゃなかったの?」
「熊野から中将様と一緒に琉球に行って、中将様は今帰仁按司(なきじんあじ)になったのよ」
「中将様が生きていたなんて‥‥‥そうだったの。まさか、あなたに会えるなんて夢のようだわ」
「あなたは理有法師(りゆうほうし)の弟子になると言って厳島神社から出て行ったけど、本当に理有法師の弟子になったの?」
「なったわ。でも、理有法師が福原殿(平清盛)を呪い殺すのを見て、恐ろしくなって逃げ出したのよ」
「よく理有法師に殺されなかったわね」
「弱みを握っていたし、理有法師の術を封じる術も身に付けたから大丈夫だったのよ」
「理有法師は壇ノ浦の合戦のあと、琉球に来て、ひどい事をしたのよ。理有法師を追って来た朝盛法師(とももりほうし)によって退治されたけどね」
「理有法師と朝盛法師が琉球で戦ったなんて‥‥‥見ものだったでしょうね」
「あなたが琉球に行っていたら理有法師と会っていたに違いないわ」
「そうね。神様のお陰で、会わずに済んだのね」
 ハツネとアキシノは懐かしそうに昔の事を語り合っていた。
「神様のお邪魔はしない方がいいわね」とお婆は言って、お祈りを終えた。
 振り返ってササたちを見たお婆の顔を見て、ササたちは驚いた。髪は真っ白なのに顔付きは若々しく、とてもお婆とは呼べなかった。今でも美人だが、若い頃はすごく綺麗だったに違いない。クマラパが惚れるのもうなづけた。
 ムマニャーズと名乗った先代の按司に従って、森の中の細い道を通って海岸に出た。海岸に突き出た丘の上に屋敷があった。そこからの眺めは最高だった。
 岩場と砂浜に囲まれた池のような入り江に船が何艘も浮かんでいた。小舟が多いが、明国風の船もあった。反対側を見ると透明度の高いイノー(礁池)の先に、島など一つもない大きな海が広がっていた。
 ムマニャーズが御馳走とお酒を用意してくれたので、ササたちは素晴らしい景色を眺めながら酒盛りを楽しんだ。ターカウ(台湾の高雄)で手に入れた明国の酒だという。ササたちがいつも飲んでいるヤマトゥの酒よりも強いが、香りのいい酒だった。
「クマラパ様に娘さんの事をどうして内緒にしていたのですか」と安須森ヌルはヤマトゥ言葉でムマニャーズに聞いた。
「跡継ぎは欲しかったけど、クマラパがそばにいると、うっとうしいと思ったからよ」とムマニャーズは笑った。
「わしがうっとうしいじゃと」とクマラパがムマニャーズを睨んだ。
 ムマニャーズは笑って、「あなたをここに縛り付けては置けないと思ったのよ」と言った。
「よくわからないけど、あなたは何かをやるためにこの島に来たから、それを邪魔してはいけないと神様に言われたのよ」
「神様って、初代の按司様の事ですか」
「そうよ。あとになってわかったけど、クマラパの役目はバラバラだった按司たちを結び付ける事だったのよ。佐田大人を倒したあと、目黒盛を中心にミャークは一つにまとまったわ。二度とあんな悲惨な目に遭う事はないでしょう」
「昔はヤマトゥと交易をしていたのですか」とササがムマニャーズに聞いた。
「ヤマトゥにも行ったし、琉球にも行っていたらしいわ。でも、わたしが生まれた頃はヤマトゥへも琉球にも行かなくなっていたわ。ヤマトゥも琉球も戦世(いくさゆ)になってしまって、交易ができなくなってしまったらしいの。それに、琉球に行っていた頃の船乗りたちも亡くなってしまって、琉球に行く事もできなくなってしまったのよ。ここだけの話じゃないのよ。琉球やヤマトゥと交易していた保良もそうなのよ。わたしが十歳頃の時、保良按司琉球に船を出したんだけど、その船は帰って来なかったわ。佐田大人を倒したあと、与那覇勢頭が琉球に行く事が決まったんだけど大変だったわ。どうやったら琉球へ行けるのか誰も知らなかったの。久米島(くみじま)から来た若者が伊良部島(いらうじま)にいたけど、サシバを追って来ただけなので、琉球への行き方はわからないって言ったわ。久米島からミャークに向かう潮の流れがあって、その潮の流れに乗ればミャークに来られるけど、その逆の流れがあるかどうかわからないって言ったのよ。でも、このグスクに古い記録が残っていて、星の位置とかが詳しく書いてあったの。それを頼りに行って来たのよ。わたしも一緒に行ったわ。何とか無事に琉球に着いたんだけど、言葉が通じなくて参ったわ。クマラパを連れて来ればよかったって後悔したわよ。でも、そのお陰で、琉球の言葉が覚えられて、今こうして、あなたたちとお話ができるわ」
「どうして一緒に行かなかったのですか」とササはクマラパに聞いた。
「わしはその時、野崎(ぬざき)(久松)で船を造っていたんじゃよ。野崎の船もかなり古くなっていたからのう。琉球との交易が始まれば、南蛮の商品が必要となるからのう。トンド(マニラ)の国に行く船を新しくしなければならなかったんじゃよ」
「その後も琉球に行ったのですか」と安須森ヌルがムマニャーズに聞いた。
「その時だけよ。一度行けば、与那覇勢頭は星の位置をちゃんと覚えたわ。ねえ、平家の事を教えてくれないかしら。神様から平家の事はよく聞くんだけど、わからない事が多いのよ」
「いいですよ。わたしが知っている事でしたら喜んでお話しします」
 安須森ヌルはムマニャーズに平家の事を話した。ムマニャーズもクマラパも真剣な顔をして聞いていた。

 

目次 第二部

尚巴志伝 第二部

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このイラストはは和々様よりお借りしました。



  1. 山田のウニウシ(第二稿)   護佐丸、尚巴志を頼って首里に行く。
  2. 胸のときめき(第二稿)   護佐丸、島添大里で恋をする。
  3. 恋の季節(第二稿)   サグルーとササ、山田で魂を抜かれる。
  4. キラマの休日(第二稿)   尚巴志夫婦、毎年恒例の旅で慶良間の島に行く。
  5. ナーサの遊女屋(第二稿)   中山王の家臣たちの懇親の宴。
  6. 宇座の古酒(第二稿)   尚巴志、宇座の御隠居の倅と古酒を飲む。
  7. 首里の初春(第三稿)  中山王となった思紹の初めての正月。
  8. 遙かなる船路(第二稿)  尚巴志、ウニタキ、懐機、明国に行く。
  9. 泉州の来遠駅(第二稿)   明国に着いた尚巴志たちは来遠駅に落ち着く。
  10. 麗しき三姉妹(第二稿)   尚巴志たち、福州に行きメイファンと再会する。
  11. 裏切り者の末路(第二稿)   尚巴志たち、メイファンの敵討ちを助ける。
  12. 島影に隠れた海賊船(第二稿)   尚巴志たち、明の海賊船に乗る。
  13. 首里のお祭り(第二稿)   護佐丸、ササたちと祭りの警備をする。
  14. 富楽院の桃の花(第二稿)   尚巴志たち、明国の都、応天府に着く。
  15. 応天府の夢に酔う(第二稿)   尚巴志たち、最高級の妓楼で夢を見る。
  16. 真武神の奇跡(第二稿)   討伐軍を破って皇帝になった永楽帝
  17. 武当山の仙人(第二稿)   尚巴志たち、武当山で張三豊と出会う。
  18. 霞と拳とシンシンと(第二稿)   尚巴志とウニタキ、張三豊に武術を習う。
  19. 刺客の背景(第二稿)   馬天ノロ、刺客の正体を探る。
  20. 龍虎山の天師(第二稿)   尚巴志たち、道教の本山、龍虎山に行く。
  21. 西湖のほとりの幽霊屋敷(第二稿)   尚巴志たち、三姉妹と再会する。
  22. 清ら海、清ら島(第二稿)  三姉妹と張三豊が琉球に来る。
  23. 今帰仁の天使館(第二稿)   旅に出た張三豊たちが帰って来る。
  24. 山北王の祝宴(第二稿)   攀安知、志慶真の長老から今帰仁の歴史を聴く。
  25. 三つの御婚礼(第二稿)   サグルー、尚忠、護佐丸、妻を迎える。
  26. マチルギの御褒美(第二稿)   尚巴志、妻のマチルギにしぼられる。
  27. 廃墟と化した二百年の都(第二稿)   尚巴志、ウニタキと浦添に行く。
  28. 久高島参詣(第二稿)  思紹王、女たちを連れて久高島へ行く。
  29. 丸太引きとハーリー(第二稿)   尚巴志、豊見グスクでハーリーを見る。
  30. 浜辺の酒盛り(第二稿)   尚巴志、ヤマトゥに行くマチルギたちを見送る。
  31. 女たちの船出(第二稿)   マチルギたち、長い船旅を楽しみ博多に着く。
  32. 落雷(第二稿)   尚巴志、雷鳴を聞きながらマジムン退治を思い出す。
  33. 女の闘い(第二稿)   三姉妹の船が来て、メイユーとナツが会う。
  34. 対馬の海(第二稿)   マチルギ、対馬島でイトとユキに会う。
  35. 龍の爪(第二稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、朝鮮旅の計画を練る。
  36. 笛の調べ(第二稿)   久し振りに佐敷グスクから笛の音が流れる。
  37. 初孫誕生(第二稿)   尚忠の長男、尚志達、生まれる。
  38. マチルギの帰還(第二稿)   女たちがヤマトゥから無事に帰国する。
  39. 娘からの贈り物(第二稿)   尚巴志、マチルギから旅の話を聞く。
  40. ササの強敵(第二稿)   馬天ノロ、日代(ティーダシル)の石を探し始める。
  41. 眠りから覚めたガーラダマ(第二稿)   ササ、読谷山で古い勾玉を見つける。
  42. 兄弟弟子(第二稿)   尚巴志、兼グスク按司武当拳の試合をする。
  43. 表舞台に出たサグルー(第二稿)   サグルー、尚巴志の代理を見事に務める。
  44. 中山王の龍舟(第二稿)   ウニタキの新しい隠れ家が完成する。
  45. 佐敷のお祭り(第二稿)   尚巴志の一節切と佐敷ヌルの横笛に大喝采。
  46. 博多の呑碧楼(第二稿)   朝鮮旅に出た尚巴志たち、博多に着く。
  47. 瀬戸内の水軍(第二稿)   尚巴志村上水軍と塩飽水軍の頭領と会う。
  48. 七重の塔と祇園祭り(第二稿)   尚巴志たち、京都に着く。
  49. 幽玄なる天女の舞(第二稿)   尚巴志が一節切を吹くと美女が舞う。
  50. 天空の邂逅(第二稿)   尚巴志たち、七重の塔に登って感激する。
  51. 鞍馬山(第二稿)   尚巴志たち、鞍馬山で武術修行。
  52. 唐人行列(第二稿)   尚巴志、増阿弥の芸に感動する。
  53. 対馬の娘(第二稿)   尚巴志、イトと再会、ユキとミナミに会う。
  54. 無人島とアワビ(第二稿)   尚巴志、昔の顔なじみと再会する。
  55. 富山浦の遊女屋(第二稿)   尚巴志たち、富山浦(釜山)に渡る。
  56. 渋川道鎮と宗讃岐守(第二稿)   尚巴志九州探題対馬守護に会う。
  57. 漢城府(第二稿)   尚巴志たち、朝鮮の都に到着する。
  58. サダンのヘグム(第二稿)   尚巴志たち、ナナの案内で都見物。
  59. 開京の将軍(第二稿)   尚巴志たち、高麗の都に行く。
  60. 李芸とアガシ(第二稿)   尚巴志、李芸と会う。
  61. 英祖の宝刀(第二稿)   佐敷ノロ、神様の声を聞いて宝刀を探す。
  62. 具志頭按司(第二稿)   佐敷ノロ、お祭りでお芝居を上演する。
  63. 対馬慕情(第二稿)   尚巴志、家族を連れて舟旅に出る。
  64. 旧港から来た娘(第二稿)   尚巴志、旧港の施二姐と会う。
  65. 龍天閣(第二稿)  尚巴志、旧港の船を連れて琉球に帰る。
  66. 雲に隠れた初日の出(第二稿)   尚巴志、上間グスクの警固を強化する。
  67. 勝連の呪い(第二稿)   尚巴志の義兄サムが勝連按司になる。
  68. 思紹の旅立ち(第二稿)   思紹、張三豊と一緒に明国に行く。
  69. 座ったままの王様(第二稿)   佐敷大親とジクー禅師、ヤマトゥに行く。
  70. 二人の官生(第二稿)   尚巴志、明国に送る留学生を決める。
  71. ンマムイが行く(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れて今帰仁に行く。
  72. ヤンバルの夏(第二稿)   兼グスク按司、家族を連れてヤンバルを巡る。
  73. 奥間の出会い(第二稿)   兼グスク按司、奥間で隠し事を聞いて驚く。
  74. 刺客の襲撃(第二稿)   兼グスク按司、ヤンバルの山中で襲われる。
  75. 三か月の側室(第二稿)   メイユー、尚巴志の側室になる。
  76. 百浦添御殿の唐破風(第二稿)   首里グスク正殿の改築が完成する。
  77. 武当山の奇跡(第二稿)   思紹、武当山で張三豊の凄さを知る。
  78. イハチの縁談(第二稿)   米須按司と玻名グスク按司が東方に寝返る。
  79. 山南王と山北王の同盟(第二稿)   山北王の娘が山南王の三男に嫁いで来る。
  80. ササと御台所様(第二稿)   ササ、伊勢神宮で神様の声を聞く。
  81. 玉依姫(第二稿)   ササ、豊玉姫のお墓で玉依姫の声を聞く。
  82. 伊平屋島と伊是名島(第二稿)   伊平屋島の親戚たちが逃げてくる。
  83. 伊平屋島のグスク(第二稿)   サグルーと尚忠と護佐丸、伊平屋島に行く。
  84. 豊玉姫(第二稿)   ヒューガの師匠、慈恩禅師が琉球に来る。
  85. 五年目の春(第二稿)   尚巴志、龍天閣で今年の計画を練る。
  86. 久高島の大里ヌル(第二稿)   ササ、神様から願い事を頼まれる。
  87. サグルーの長男誕生(第二稿)   兼グスク按司の新しいグスクが完成する。
  88. 与論島(第二稿)   ウニタキ、与論島に行き、与論ヌルと再会する。
  89. ユンヌのお祭り(第二稿)   尚巴志、ササたちと与論島に行く。
  90. 伊是名島攻防戦(第二稿)   伊是名島で中山王と山北王の戦が始まる。
  91. 三王同盟(第二稿)   中山王と山北王の同盟が決まり、山南王も加わる。
  92. ハルが来た(第二稿)   山南王から尚巴志に側室が贈られる。
  93. 鉄炮(第二稿)   三姉妹がアラビアの商品と鉄炮を持って来る。
  94. 熊野へ(第二稿)   ササ、将軍様の奥方と一緒に熊野詣でに出掛ける。
  95. 新宮の十郎(第二稿)   サスカサ、神倉山で十郎の話を聞く。
  96. 奄美大島のクユー一族(第二稿)   本部のテーラー奄美大島を攻める。
  97. 大聖寺(第二稿)   首里に最初のお寺が完成する。
  98. ジャワの船(第二稿)   ヤマトゥに行った交易船がジャワの船を連れて来る。
  99. ミナミの海(第二稿)   早田左衛門太郎が、イトとユキとミナミを連れて来る。
  100. 華麗なる御婚礼(第二稿)   チューマチ、山北王の娘マナビーを妻に迎える。
  101. 悲しみの連鎖(第二稿)   玉グスク按司から始まって、続けて五人が亡くなる。
  102. 安須森(第二稿)   佐敷ノロ、ササたちを連れて安須森に行く。
  103. 送別の宴(第二稿)   尚巴志、早田左衛門太郎たちを連れて慶良間の島に行く。
  104. アキシノ(第二稿)   ヤマトゥ旅に出た佐敷ノロとササたち、厳島神社に行く。
  105. 小松の中将(第二稿)   大原寂光院で高橋殿が平維盛と華麗に舞う。
  106. ヤンバルのウタキ巡り(第二稿)   馬天ノロたち、今帰仁に行く。
  107. 屋嘉比のお婆(第二稿)   馬天ノロ、安須森で神様にお礼を言われる。
  108. 舜天(第二稿)   馬天ノロ、浦添ノロを連れて喜舎場森に行く。
  109. ヌルたちのお祈り(第二稿)   馬天ノロたち、南部のウタキを巡る。
  110. 鳥居禅尼(第二稿)   佐敷ノロ、熊野で平維盛の足跡をたどる。
  111. 寝返った海賊(第二稿)   三姉妹が来て、大きな台風も来る。
  112. 十五夜(第二稿)   サスカサ、島添大里グスクで中秋の名月を祝う。
  113. 親父の悪夢(第二稿)   山南王、悪夢にうなされて、出陣を決意する。
  114. 報恩寺(第二稿)   ヤマトゥの交易船が旧港の船を連れて帰国する。
  115. マツとトラ(第二稿)   尚巴志対馬の旧友を連れて首里に行く。
  116. 念仏踊り(第二稿)   辰阿弥が首里のお祭りで念仏踊りを踊る。
  117. スサノオ(第二稿)   懐機の娘が佐敷大親の長男に嫁ぐ。
  118. マグルーの恋(第二稿)   ヤマトゥ旅に出たマグルーを待っている娘。
  119. 桜井宮(第二稿)   馬天ノロ、各地のノロたちを連れて安須森に行く。
  120. 鬼界島(第二稿)   山北王の弟、湧川大主、喜界島を攻める。
  121. 盂蘭盆会(第二稿)   三姉妹、パレンバン、ジャワの船が琉球にやって来る。
  122. チヌムイ(第二稿)   山南王、汪応祖、死す。
  123. タブチの決意(第二稿)   弟の死を知ったタブチは隠居する。
  124. 察度の御神刀(第二稿)   タブチ、山南王になる。
  125. 五人の御隠居(第二稿)   汪応祖の死を知った思紹、戦評定を開く。
  126. タブチとタルムイ(第二稿)   八重瀬グスクで戦が始まる。
  127. 王妃の思惑(第二稿)   汪応祖の葬儀のあと、戦が再開する。
  128. 照屋大親(第二稿)   山南王の進貢船が帰って来る。
  129. タブチの反撃(第二稿)   タブチ、豊見グスクを攻める。
  130. 喜屋武グスク(第二稿)   尚巴志、チヌムイとミカに会う。
  131. エータルーの決断(第二稿)   タブチの長男、けじめをつける。
  132. 二人の山南王(第二稿)   島尻大里グスク、他魯毎軍に包囲される。
  133. 裏の裏(第二稿)   尚巴志、具志頭グスクを開城させる。
  134. 玻名グスク(第二稿)   尚巴志、玻名グスクを攻める。
  135. 忘れ去られた聖地(第二稿)   尚巴志とササ、古いウタキを巡る。
  136. 小渡ヌル(第二稿)   尚巴志、小渡ヌルと出会う。
  137. 山南志(第二稿)   宅間之子、山南の歴史書「山南志」を完成させる。
  138. ササと若ヌル(第二稿)   ササ、4人の若ヌルの師匠になる。
  139. 山北王の出陣(第二稿)   中山王と山北王が山南王の戦に介入する。
  140. 愛洲のジルー(第二稿)   ササのマレビト神が馬天浜にやって来る。
  141. 落城(第二稿)   護佐丸、玻名グスク攻めで活躍する。
  142. 米須の若按司(第二稿)   島添大里のお祭りの後、尚巴志は米須に行く。
  143. 山グスク(第二稿)   米須グスクを落とした尚巴志、山グスクに行く。
  144. 無残、島尻大里(第二稿)   他魯毎、島尻大里グスクに総攻撃を掛ける。
  145. 他魯毎(第二稿)   他魯毎、山南王に就任する。
  146. 若按司の死(第二稿)   ササ、宮古島の事を調べる。
  147. 久高ヌル(第二稿)   一月遅れの久高島参詣。
  148. 山北王が惚れたヌル(第二稿)   攀安知、古宇利島に行く。
  149. シヌクシヌル(第一稿)   ササ、斎場御嶽で運玉森ヌルに就任する。
  150. 慈恩寺(第一稿)   武術道場の慈恩寺が完成する。
  151. 久米島(第一稿)   尚巴志、ウニタキ、懐機、久米島に行く。
  152. クイシヌ(第一稿)   尚巴志、ニシタキ山頂で一節切を吹く。
  153. 神懸り(第一稿)   玻名グスクヌル、安須森で神懸りする。
  154. 武装船(第一稿)   ウニタキ、山北王の軍師と酒を飲む。
  155. 大里ヌルの十五夜(第一稿)   久高島大里ヌル、島添大里グスクに来る。
  156. 南の島を探しに(第一稿)   ササと安須森ヌル、愛洲次郎の船で宮古島に行く。
  157. ミャーク(第一稿)   ササたち、与那覇勢頭と目黒盛豊見親と会う。
  158. 漲水のウプンマ(第一稿)   ササたち、漲水のウプンマと一緒に狩俣に戻る。
  159. 池間島のウパルズ様(第一稿)   クマラパ、ウバルズ様に怒られる。
  160. 上比屋のムマニャーズ(第一稿)   ササたち、平家の子孫と会う。



主要登場人物

 

第一部 目次

目次 第一部

尚巴志伝 第一部 月代の石

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このイラストはは和々様よりお借りしました。

 

  1. 誕生(最終決定稿)   尚巴志、佐敷苗代に生まれる。
  2. 馬天浜(最終決定稿)   サミガー大主とヤマトゥの山伏、クマヌ。
  3. 察度と泰期(最終決定稿)   浦添按司察度、過去を振り返る。
  4. 島添大里グスク(最終決定稿)   島添大里グスク、汪英紫に奪われる。
  5. 佐敷グスク(最終決定稿)   尚巴志の父、佐敷按司になる。
  6. 大グスク炎上(最終決定稿)   大グスク、汪英紫(島添大里按司)に奪われる。
  7. ヤマトゥ酒(最終決定稿)   早田三郎左衛門、馬天浜に来る。
  8. 浮島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎と旅に出る。
  9. 出会い(最終決定稿)   尚巴志、伊波按司の娘と剣術の試合をする。
  10. 今帰仁グスク(最終決定稿)   尚巴志、今帰仁に行く。
  11. 奥間(最終決定稿)   尚巴志、奥間村に滞在する。
  12. 恋の病(最終決定稿)   旅から帰った尚巴志、マチルギを想う。
  13. 伊平屋島(最終決定稿)   尚巴志、祖父の故郷に行く。
  14. ヤマトゥ旅(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥへ旅立つ。
  15. 壱岐島(最終決定稿)   尚巴志、壱岐島で察度の噂を聞く。
  16. 博多(最終決定稿)   尚巴志、ヤマトゥの都を見て驚く。
  17. 対馬島(最終決定稿)   尚巴志、早田左衛門太郎の故郷に滞在する。
  18. 富山浦(最終決定稿)   尚巴志、高麗に行く。
  19. マチルギ(最終決定稿)   尚巴志の恋敵、ウニタキ現れる。
  20. 兵法(最終決定稿)   尚巴志、対馬で修行に励む。
  21. 再会(最終決定稿)   帰って来た尚巴志、マチルギと再会。
  22. ウニタキ(最終決定稿)   尚巴志、ウニタキと一緒に勝連グスクに行く。
  23. 名護の夜(最終決定稿)   尚巴志、マチルギと今帰仁に行く。
  24. 山田按司(最終決定稿)   尚巴志、マチルギの叔父、山田按司と会う。
  25. お輿入れ(最終決定稿)   マチルギ、尚巴志に嫁ぐ。
  26. 高麗の対馬奇襲(最終決定稿)   早田左衛門太郎の本拠地、高麗に攻められる。
  27. 豊見グスク(最終決定稿)   シタルー(汪応祖)、豊見グスクを築く。
  28. サスカサ(最終決定稿)   尚巴志とマチルギ、馬天ノロと旅に出る。
  29. 長男誕生(最終決定稿)   マチルギと馬天ノロ、神様になる。
  30. 出陣命令(最終決定稿)   察度、各按司に今帰仁征伐を命じる。
  31. 今帰仁合戦(最終決定稿)   中山王、山北王の今帰仁グスクを攻める。
  32. 次男誕生(最終決定稿)  尚巴志の次男(尚忠)と山田按司の次男(護佐丸)生まれる。
  33. 十年の計(最終決定稿)   尚巴志、佐敷按司(父)、鮫皮大主(祖父)と密談する。
  34. 東行法師(最終決定稿)   父が隠居して、尚巴志、佐敷按司となる。
  35. 首里天閣(最終決定稿)   察度、浦添按司を武寧に譲って隠居する。
  36. 浜川大親(最終決定稿)   ウニタキは妻子を殺され、シタルーは明に行く。
  37. 旅の収穫(最終決定稿)   奥間のサタルーと対馬のユキ。
  38. 久高島(最終決定稿) 尚巴志はマチルギに怒られ、ウニタキはチルーといい感じ。
  39. 運玉森(最終決定稿)   三好日向、尚巴志のために山賊になる。
  40. 山南王(最終決定稿)   承察度が亡くなり、若按司が山南王になる。
  41. 傾城(最終決定稿)   山南王、中山王の怒りを買って、汪英紫に攻められる。
  42. 予想外の使者(最終決定稿)   尚巴志夫婦、弟のマサンルー夫婦と旅をする。
  43. 玉グスクのお姫様(最終決定稿)   尚巴志、玉グスクと同盟を結ぶ。
  44. 察度の死(最終決定稿)   山北王のミンと奥間の長老も亡くなる。
  45. 馬天ヌル(最終決定稿)   馬天ノロ、御嶽巡りの旅に出る。
  46. 夢の島(最終決定稿)   早田左衛門太郎、慶良間の夢の島に行く。
  47. 佐敷ヌル(最終決定稿)  尚巴志の妹、マシューの気持ちとマカマドゥの決心。
  48. ハーリー(最終決定稿)   尚巴志夫婦と佐敷ノロ、ハーリーを見物。
  49. 宇座の御隠居(最終決定稿)   宇座の泰期が亡くなり、尚巴志夫婦は悲しむ。
  50. マジムン屋敷の美女(最終決定稿)  尚巴志、島添大里グスクに側室を入れる。
  51. シンゴとの再会(最終決定稿)   早田左衛門太郎、朝鮮に投降する。
  52. 不思議な唐人(最終決定稿)   尚巴志、懐機と出会う。
  53. 汪英紫、死す(最終決定稿)   懐機、旅から帰り、武術を披露する。
  54. 家督争い(最終決定稿)   達勃期と汪応祖が山南王の家督を争う。
  55. 大グスク攻め(最終決定稿)   尚巴志、大グスクを攻め落とす。
  56. 作戦開始(最終決定稿)   尚巴志、大グスクノロと再会する。
  57. シタルーの非情(最終決定稿)   達勃期、弟の汪応祖に敗れる。
  58. 奇襲攻撃(最終決定稿)   尚巴志、島添大里グスクを攻め落とす。
  59. 島添大里按司(最終決定稿)   尚巴志、島添大里按司になる。
  60. お祭り騒ぎ(最終決定稿)   尚巴志、城下の者たちと戦勝祝い。
  61. 同盟(最終決定稿)   尚巴志、山南王と同盟する。
  62. マレビト神(最終決定稿)   外間ノロと佐敷ノロにマレビト神が現れる。
  63. サミガー大主の死(最終決定稿)   神の声を聞いたウニタキ。
  64. シタルーの娘(最終決定稿)   山南王のお姫様の悩みと青い海
  65. 上間按司(最終決定稿)   明国の使者が二十年振りにやって来る。
  66. 奥間のサタルー(最終決定稿)   尚巴志、奥間ノロに魅了される。
  67. 望月ヌル(最終決定稿)   謎の爺さん、望月党を語る。
  68. 冊封使(最終決定稿)   首里の宮殿の儀式で、武寧と汪応祖、正式に王になる。
  69. ウニョンの母(最終決定稿)   ウニタキ、亡くなった妻の秘密を知る。 
  70. 久米村(最終決定稿)   尚巴志とウニタキ、懐機に呼ばれて久米村に行く。
  71. 勝連無残(最終決定稿)   勝連按司が奇病に倒れる。 
  72. 伊波按司(最終決定稿)   大きな台風が来て各地で被害が出る。
  73. ナーサの望み(最終決定稿)   ウニタキ、ナーサを味方に引き入れる。
  74. タブチの野望とシタルーの誤算(最終決定稿)  八重瀬按司、中山王と同盟する。
  75. 首里グスク完成(最終決定稿)   中山王と山南王の決戦が迫る。
  76. 首里のマジムン(最終決定稿)   尚巴志、首里グスクを奪い取る。 
  77. 浦添グスク炎上(最終決定稿)   浦添グスクは焼け落ち、亜蘭匏は消える。
  78. 南風原決戦(最終決定稿)   尚巴志、中山軍を壊滅させる。
  79. 包囲陣崩壊(最終決定稿)   達勃期は出直し、汪応祖は首里を攻める。
  80. 快進撃(最終決定稿)   尚巴志、中グスク、越来グスクを攻め落とす。
  81. 勝連グスクに雪が降る(最終決定稿)   尚巴志、勝連グスクを落とす。

 

尚巴志伝 第二部 目次

 

・尚巴志伝の年表

・第一部の主要登場人物

・尚巴志の略歴

・尚巴志の祖父、サミガー大主の略歴

・尚巴志の父、思紹の略歴

・馬天ヌル(馬天ノロ)の略歴

・中山王、察度の略歴

・中山王、武寧の略歴

・汪英紫の略歴

・山南王、汪応祖の略歴

・泰期の略歴

・クマヌの略歴

・三好日向の略歴

・早田左衛門太郎の略歴

・ウニタキの略歴

・懐機の略歴

・倭寇年表

第二部 主要登場人物

サハチ       1372-1439  尚巴志。島添大里按司
マチルギ      1373-    尚巴志の妻。伊波按司の娘。
サグルー      1390-    尚巴志の長男。妻は護佐丸の妹、マカトゥダル。
ジルムイ      1391-    尚巴志の次男。後の尚忠。妻はサムの娘、ユミ。
ミチ        1393-    尚巴志の長女。島添大里ヌル、サスカサ。
イハチ       1394-    尚巴志の三男。妻は具志頭按司の娘、チミー。
チューマチ     1396-    尚巴志の四男。妻は山北王の娘、マナビー。
マグルー      1398-1453  尚巴志の五男。妻は兼グスク按司の娘、マウミ。
思紹        1354-1421 中山王。尚巴志の父。
佐敷ヌル      1374-    尚巴志の妹、マシュー。シンゴと結ばれ娘を産む。
佐敷大親      1376-    尚巴志の弟、マサンルー。妻は奥間大親の娘、キク。
平田大親      1378-    尚巴志の弟、ヤグルー。妻は玉グスク按司の娘。
与那原大親     1383-    尚巴志の弟、マタルー。妻はタブチの娘、マカミー。
クルー       1388-    尚巴志の弟、妻は山南王シタルーの娘、ウミトゥク。
馬天ヌル      1357-    思紹の妹、尚巴志の叔母。
ササ        1391-    馬天若ヌル。父はヒューガ。母は馬天ヌル。
ヒューガ      1355-1470 三好日向。中山の水軍大将。
苗代大親      1360-    思紹の弟。サムレー総隊長。武術師範。
マカマドゥ     1392-    苗代大親の三女。マウシ(護佐丸)の妻。
クグルー      1386-    泰期の三男。苗代大親の娘婿。
サミガー大主    1356-    思紹の弟、ウミンター。
シビー       1395-    尚巴志の従妹。メイユーの弟子になる。
ウニタキ      1372-1433 三星大親。「三星党」の頭。
チルー       1368-    ウニタキの妻。尚巴志の母の妹。
イーカチ      1373-    「三星党」の副頭。絵画き。
ナツ        1381-    ウニタキの配下から尚巴志の側室になる。
シズ        1389-    ウニタキの配下。ササと一緒にヤマトゥに行く。
ヤールー      1385-    ウニタキの配下。サグルーを守っている。
ファイチ      1375-1453 懐機。明国の道士。尚巴志の客将。
サスカサ      1354-    ミチにサスカサを譲り、運玉森ヌルになる。
マウシ       1391-1458 真牛。山田按司の次男。尚巴志の甥。護佐丸。
マカトゥダル    1392-    護佐丸の妹。サグルーの妻。
マサルー      1364-    山田按司の家臣。
シラー       1391-    マサルーの次男。
クマヌ       1346- 1412 中グスク按司。中山の重臣。
美里之子      1362-    越来按司。中山の重臣。思紹の義弟。
當山之子      1365-    美里之子の弟。浦添按司になる。
クサンルー     1387-    當山之子の長男。浦添按司
カナ        1391-    當山之子の長女。浦添ヌル。
サム        1372-    後見役から勝連按司になる。伊波按司の四男。
ユミ        1392-    サムの長女。ジルムイ(尚忠)の妻。
ナーサ       1352-    首里の遊女屋「宇久真」の女将。
マユミ       1389-    「宇久真」の遊女。
宇座按司      1355-    泰期の次男。父の跡を継いで明国への使者となる。
シタルー      1362-1413  山南王。汪応祖
トゥイ       1363-    シタルーの正妻。山南王妃。察度の娘。
タルムイ(他魯毎) 1385-1429  豊見グスク按司。シタルーの長男。妻は尚巴志の妹。
豊見グスクヌル   1382-    シタルーの長女。タルムイの姉。
兼グスク按司    1389-    ジャナムイ。シタルーの次男。
保栄茂按司     1393-    グルムイ。シタルーの三男。妻は山北王の娘。
長嶺按司      1389-    シタルーの娘婿。
マアサ       1896-    シタルーの五女。
座波ヌル      1382-    山南王シタルーの側室。
島尻大里ヌル    1368-    ウミカナ。シタルーの妹。
タブチ       1360-    八重瀬按司。山南王シタルーの兄。
エータルー     1381-1413  タブチの長男。
エーグルー     1388-    タブチの三男。新グスク按司
チヌムイ      1395-    タブチの四男。
ミカ        1392-    八重瀬若ヌル。タブチの六女。チヌムイの姉。
八重瀬ヌル     1361-    タブチの妹。シタルーの姉。
サイムンタルー   1361-1429  早田左衛門太郎。対馬島倭寇の頭領。
早田六郎次郎    1387-    左衛門太郎の跡継ぎ。妻はユキ。
ユキ        1388-    六郎次郎の妻。尚巴志の娘。母はイト。
イト        1372-    対馬島の女船長。ユキの母。
シンゴ       1372-    早田新五郎。左衛門太郎の弟。
マツ        1372-    中島松太郎。早田左衛門太郎の家臣。
トラ        1372-    大石寅次郎。早田左衛門太郎の家臣。
早田五郎左衛門   1349-    左衛門太郎の叔父。朝鮮国の富山浦に住む商人。
早田丈太郎     1371-    五郎左衛門の長男。漢城府の津島屋の主人。
浦瀬小次郎     1375-    五郎左衛門の娘婿。
早田ナナ      1388-    早田次郎左衛門の娘。
早田左衛門次郎   1387-    六郎次郎の従兄弟。
早田小三郎     1391-    六郎次郎の義弟。
サングルミー    1371-    与座大親。中山の進貢船の正使。
メイファン     1379-    張美帆。明国の海賊の娘。
メイリン      1374-    張美玲。メイファンの姉。
スーヨン      1387-    張思永。メイリンの娘。
メイユー      1376-    張美玉。メイファンの姉。尚巴志の側室になる。
ラオファン     1338-    黄敬。三姉妹の武術の師匠。
リェンリー     1376-    黄怜麗。ラオファンの娘。
ジォンダオウェン  1364-    鄭道文。三姉妹の配下の海賊。
ユンロン      1387-    鄭芸蓉。ジォンダオウェンの娘。 
リュウジャジン   1362-    劉嘉景。三姉妹の配下の海賊。
リィェンファ    1377-    楊蓮華。富楽院の妓楼『桃香滝』の女将。
ヂュヤンジン    1375-    朱洋敬。懐機の友。宮廷に仕える役人。
永楽帝       1360-1424  明国の皇帝。
リュウイェンウェイ 1389-    劉媛維。富楽院の最高級妓楼『酔夢楼』の妓女。
ファイホン     1379-    懐虹。懐機の妹。
ヂャンサンフォン  1247-    張三豊。武当山の道士で、武当拳創始者
シンシン      1390-    范杏杏。張三豊の弟子。
フカマヌル     1372-    外間ノロ。久高島のノロ。尚巴志の腹違いの妹。
大里ヌル      1387-    久高島のノロ。月の神様を祀る。
奥間大親      1357-    ヤキチ。奥間から来た尚巴志の護衛役。中山の重臣。
平安名大親     1348-    勝連の重臣。ウニタキの叔父。
勝連ヌル      1369-    ウニタキの姉。
伊波按司      1363-    マチルギの兄。
山田按司      1365-    マチルギの兄。
攀安知       1376-1416  山北王。
マナビー      1397-    攀安知の次女。チューマチの妻。
涌川大主      1377-    攀安知の弟。
勢理客ヌル     1356-    アオリヤエ。攀安知の叔母。
アタグ       1355-    山北王に仕えるヤマトゥの山伏。
本部のテーラー   1376-1416  攀安知の幼馴染み。サムレー大将。
リュウイン     1359-    劉瑛。山北王の軍師。
油屋、ウクヌドー  1350-    奥堂。山北王に仕える博多筥崎八幡宮の油屋。
兼グスク按司    1378-    ンマムイ。武寧の次男。妻は攀安知の妹。
マハニ       1379-    兼グスク按司の妻。山北王、攀安知の妹。
マウミ       1399-    ンマムイの長女。
ヤタルー師匠    1359-    阿蘇弥太郎。ンマムイの武術の師匠。
慈恩禅師      1350-1448  禅僧であり武芸者。ヒューガの師匠。
飯篠修理亮     1387-1488 武芸者。長威斎。
二階堂右馬助    1390-    慈恩の弟子。
一文字屋孫三郎   1361-    次郎左衛門の弟。坊津の一文字屋主人。
みお        1394-    一文字屋孫三郎の三女。
村上又太郎     1386-    村上水軍の頭領の長男。上関を守っている。
村上あや      1392-    村上又太郎の妹。
塩飽三郎入道    1358-    塩飽水軍の頭領。
一文字屋次郎左衛門 1355-    京都の一文字屋の主人。
まり        1394-    一文字屋次郎左衛門の三女。
高橋殿       1376-    足利義満の側室。道阿弥の娘。
対御方       1379-    足利義満の側室。高橋殿に仕えている。
平方蓉       1383-    陳外郎の娘。高橋殿に仕えている。
足利義持      1386-1428  室町幕府第四代将軍。
日野栄子      1390-1431  足利義持の奥方。
勘解由小路殿    1350-1410  斯波道将。将軍様の補佐役。
斯波左兵衛督    1371-1418  勘解由小路殿の嫡男。将軍様の補佐役。
中条兵庫助     1359-    将軍様の武術指南役。慈恩禅師の弟子。
中条奈美      1380-    中条兵庫助の娘。夫が戦死し、高橋殿に仕える。
外郎       1360-    陳宗奇。薬師。外交使節の接待役。
魏天        1350-    将軍様に仕える明国の通事。
栄泉坊       1389-    東福寺を追い出された画僧。
増阿弥       1368-    奈良の田楽新座の太夫
一徹平郎      1355-    北野天満宮の宮大工。
源五郎       1359-    腕はいいが変わり者の瓦職人。
新助        1379-    龍ばかり彫っている等持寺の大工。
渋川道鎮      1372-1446  九州探題。勘解由小路殿の娘婿。
宗讃岐守貞茂    1364-1418  対馬守護。
平道全       1376-    宗貞茂の家臣。
宗金        1380-    博多妙楽寺の僧。
李芸        1373-1445  倭寇にさらわれた母親を探している朝鮮の役人。
シーハイイェン   1390-    施海燕。旧港宣慰司、施進卿の次女。施二姐。
ツァイシーヤオ   1390-    蔡希瑶。シーハイイェンの親友。
シュミンジュン   1342-    徐鳴軍。シーハイイェンの師匠。張三豊の弟子。
ワカサ       1364-    旧港の通事。若狭出身の倭寇
奥間の長老     1348-    ヤザイム。奥間大主。
サタルー      1387-    奥間の長老の跡継ぎ。尚巴志の息子。
奥間ヌル      1374-    奥間村のノロ。尚巴志の娘ミワを産む。
奥間のサンルー   1382-    「赤丸党」の頭。クマヌの息子。
クジルー      1393-    サンルーの配下。マサンルーの息子。
米須按司      1357-1414  摩文仁大主。武寧の弟。若按司の妻はタブチの娘。
摩文仁按司     1383-1414  米須按司の次男。
玻名グスク按司   1358-1414  中座大主。タブチの義兄。
真壁按司      1353-1414  山グスク大主。玻名グスク按司の義兄。
伊敷按司      1363-    ナーグスク大主。真壁按司の義弟。
イサマ       1375-    伊平屋島の田名大主の長男。田名親方の兄。
我喜屋大主     1359-    田名大主の弟。イサマの叔父。
サミガー親方    1361-    与論島で鮫皮を作っている親方。
麦屋ヌル      1373-    先代の与論按司の娘。ウニタキの従妹。
ハル        1395-    山南王のシタルーから尚巴志に贈られた側室。
クムン       1373-    島尻大里から来た石屋。
スヒター      1391-   マジャパイト王国の女王クスマワルダニの娘。
辺戸ヌル      1360-   安須森の麓の辺戸村のヌル。
カミー       1402-    アフリヌルの孫娘。
屋嘉比のお婆    1320-    先々代の屋嘉比ヌル。
福寿坊       1387-    備前児島の山伏。
辰阿弥       1384-    時衆の武芸者。
ブラゲー大主    1353-    チヌムイの祖父。貝殻を扱うウミンチュの親方。
小渡ヌル      1380-    父は越来按司。母は山北王珉の妹。久高ヌルになる。
照屋大親      1351-    山南王の重臣。交易担当。
糸満大親      1367-    山南王の重臣。
新垣大親      1360-1414  山南王の重臣。タブチの幼馴染み。
真栄里大親     1362-1414  山南王の重臣。
波平大親      1366-    山南王の重臣。
波平大主      1373-    波平大親の弟。サムレー大将。タルムイ側に付く。
国吉大親      1375-    山南王の重臣。妻は照屋大親の娘。
賀数大親      1368-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
兼グスク大親    1363-    山南王の重臣。タルムイ側に付く。
石屋のテハ     1375-    シタルーのために情報を集めていた。
大村渠ヌル     1366-    初代山南王の娘。前島尻大里ヌル。
慶留ヌル      1371-    シタルーの従妹。前島尻大里ヌル。
愛洲次郎      1390-    愛洲水軍の大将の次男。
寺田源三郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
河合孫次郎     1390-    愛洲次郎の家臣。
堂之比屋      1362-    久米島堂村の長老。
堂ヌル       1384-    堂之比屋の娘。
新垣ヌル      1380-    久米島北目村のヌル。
大岳ヌル      1386-    久米島大岳のヌル。
具志川若ヌル    1397-    具志川ヌルの娘。
クイシヌ      1373-    久米島ニシタキのヌル。
クマラパ      1339-    狩俣按司マズマラーの夫。元の国の道士。
マズマラー     1357-    狩俣の女按司
タマミガ      1389-    クマラパとマズマラーの娘。
那覇勢頭     1360-    目黒盛の重臣。船長として琉球に行く。
目黒盛豊見親    1357-    ミャークの首長。
漲水のウブンマ   1379-    漲水ウタキのヌル。目黒盛の従妹。
アコーダティ勢頭  1356-    野崎按司の重臣。船長としてトンド国に行く。

 

スサノオ            ヤマト国の大王。牛頭天王
豊玉姫             スサノオの妻。
玉依姫             スサノオ豊玉姫の娘。ヒミコ。アマテラス。
アマン姫            玉依姫の妹。アマミキヨ
ユンヌ姫            アマン姫の娘。
アキシノ            厳島神社の内侍。初代今帰仁ヌル。

 

2-159.池間島のウパルズ様(第一稿)

 狩俣(かずまた)から小舟(さぶに)に乗ってササたちは池間島(いきゃまじま)に向かった。クマラパは池間島の神様は苦手じゃと言って、行くのを渋っていたが、娘のタマミガに説得されて一緒に来てくれた。
 神様のお陰か、季節外れの南風を帆に受けて小舟は気持ちよく走った。蛇のように細長く続く世渡崎(しどぅざき)を過ぎると池間島がよく見えた。
池間島は二つの島でできているんじゃ」とクマラパが櫂(うえーく)で舵取りをしながら言った。
「東(あがり)の島は神様の島で人は住んでおらん。島人(しまんちゅ)たちは西(いり)の島に住んでいて、池間按司(いきゃまーず)のグスクも西の島にあるんじゃ」
「中央にある入り江は向こう側に抜けられるのですか」と安須森(あしむい)ヌルが聞いた。
「北(にし)の方はかなり狭くなっているんじゃが抜けられる。島の北方(にしかた)は岩場ばかりなんじゃが、入り江の中に入ると砂浜があるんじゃ。ヤピシ(八重干瀬)で採った貝を入り江の中の砂浜まで運んで作業をするんじゃよ」
「ウパルズ様のウタキは東の島にあるのですか」とササが聞いた。
「いや、西の島じゃ。ナナムイウタキといって、遙か昔にネノハ姫様が暮らしていた屋敷跡にできたようじゃ」
「ネノハ姫(ウムトゥ姫)様の娘さんのウパルズ様に会うのが楽しみだわ」とササが言うと、
「歓迎してくれるじゃろう」とクマラパは言った。
 二つの島の間にある入り江に入って、西の島の砂浜から上陸した。白い砂浜が長く続いていて、海辺にある小屋の中で、ウミンチュのおかみさんたちが貝の身を抜く作業をしていた。
 ササたちの姿を見ると皆、驚いた顔をしてササたちを見ていた。袴(はかま)をはいて腰に刀を差した女を見るのは初めてなのだろう。
 一人の女が近づいて来て、クマラパに声を掛けた。タマミガも漲水(ぴゃるみず)のウプンマも知っているようだった。三人から話を聞いて、その女はササたちを見て笑うと、「池間島にようこそ」と琉球の言葉でしゃべった。
琉球に行った事があるのですか」とササが聞くと、
琉球の言葉は神様から教わったのよ」と言った。
「池間のウプンマじゃよ」とクマラパが言った。
 池間のウプンマの案内で、小高い丘の上にあるグスクに行って、ウプンマの父親の池間按司に会った。それほど高くない石垣に囲まれた小さなグスクだった。屋敷は少し高い所に建っていて、屋敷からの眺めは最高だった。北の方を見るとヤピシが広がっていて、南を見るとミャーク(宮古島)と伊良部島(いらうじま)が見えた。
 池間按司は言葉が通じないが、クマラパの通訳で、遠い所からよく来てくれたと歓迎してくれた。イシャナギ島(石垣島)に行った娘の事を聞くと、困ったような顔をして首を振った。
 マッサビは先代の娘で、今の按司の妹だという。十七歳の時、神様のお告げがあって、イシャナギ島に行かなければならないと言い出した。マッサビの姉の先代のウプンマが止めても駄目だった。久米島(くみじま)から来たグラーという若者と一緒にイシャナギ島に行ってしまった。
 その頃、イシャナギ島ではヤキー(マラリア)という熱病が流行っていて、多くの人が亡くなっていた。蚊に刺されるとヤキーになるので、マッサビはグラーと一緒に蚊の退治を始めた。あれから三十年が経つが、ヤキーがなくなる事はなく、未だに蚊の退治をしているという。それでも、マッサビはイシャナギ島から舟の造るための丸太を送ってくれるので、島人たちは大いに助かっているという。池間島もミャークと同じように平らな島で、太い木が生えている山はなかった。
「三十年間も蚊の退治をしているのですか」とササたちは驚いた。
「一時は叔母さん(マッサビ)もヤキーに罹って、死ぬところだったらしいわ」と池間のウプンマが言った。
「でも、イシャナギ島の神様が助けてくれたのよ。イシャナギ島の神様は池間島の神様のお母さんですからね、叔母さんを守ってくれたのよ」
 池間按司は目黒盛豊見親(みぐらむいとぅゆみおや)のために、ヤピシでタカラガイを採っていると言ったので、目黒盛豊見親と相談して、琉球と交易して下さいとササは頼んだ。
 グスクから西側の海岸に下りて、池間のウプンマの案内でナナムイウタキに向かった。クマラパはグスクで待っていると言って付いて来なかった。
 岩場の海辺で禊(みそ)ぎをして、樹木(きぎ)が生い茂った森の中に入って行った。セーファウタキのように霊気がみなぎっているのをササたちは感じていた。
 細い道をしばらく行くと広場に出た。広場の中央に奇妙な形の岩があって、その周りを石で囲んであった。ササたちは池間のウプンマの後ろに並んでお祈りを捧げた。
琉球からいらしたお客様を連れて参りました」と池間のウプンマは言った。
「狩俣のタマミガも一緒なのね」と神様は言った。
「タマミガ、お父さんをここに連れて来なさい」
「えっ?」とタマミガは驚いた。
「一緒に来たんでしょ。話があるのよ。早く、連れていらっしゃい」
 タマミガは池間のウプンマを見た。
 ウプンマはうなづいた。
 タマミガはウタキから出て行った。
「ユンヌ姫様からあなたたちの事は聞いたわ。よく来ててくれたわね。歓迎するわよ」と神様は言った。
「ユンヌ姫様がここにいらしたのですか」とササは聞いた。
 ミャークに着いてからユンヌ姫もアキシノもどこに行ったのか行方知らずになっていた。
「あなたたちが来たら、イシャナギ島に行ったって伝えてくれって頼まれたのよ」
「そうだったのですか」
「あなたたちも母に会いに行くのね?」
「はい。ミャークに来る前に久米島に行って、ウムトゥ姫様の妹のクミ姫様に会ってまいりました」
「叔母の事は母から聞いています。母と叔母はユンヌ姫様と一緒に久米島に行って、母はタカラガイが採れる御願干瀬(うがんびし)の近くのアーラタキを拠点にしました。叔母は久米島で一番高いニシタキを拠点にしました。母はタカラガイをたくさん採って琉球に送りましたが、アーラタキよりニシタキの方が高いので、叔母に見下されているようで面白くなかったようです。そんな時、母はアーラタキの古い神様からミャークという南の島に、ここよりもっとタカラガイが採れる場所があると聞いて、久米島の事は叔母に任せて、池間島に来たのです」
「最初からイシャナギ島に行くつもりではなかったのですか」
「母は琉球タカラガイを送るために池間島に来たのです。この島は古くからタカラガイの交易で栄えていました。母がこの島に来る一千年も前から、この島で採れたタカラガイは唐の大陸に運ばれて行ったようです。やがて、タカラガイに変わって銅の銭が使われるようになると唐人(とーんちゅ)たちもやって来なくなって、タカラガイを採る事も忘れてしまいます。母が来る五十年前には大津波がやって来て、池間島の人たちも大勢、流されてしまいました。母は池間島に来て、島人たちにタカラガイを採る事を教えて、琉球まで運ばせました。琉球との交易で、貴重な品々を手に入れて、池間島は昔のような活気を取り戻したのです。イシャナギ島に行ったのは、舟を造るための丸太を手に入れるためです。イシャナギ島には久米島のニシタキよりも高いウムトゥダギ(於茂登岳)があったので、晩年はそこで過ごして、母はイシャナギ島の神様になったのです」
「そうだったのですか。ここのタカラガイがヤマトゥに行って、朝鮮(チョソン)まで渡って行ったのですね」
「そうです。ここのタカラガイのお陰で、玉依姫(たまよりひめ)様の跡を継いだ豊姫(とよひめ)様は、カヤの国(朝鮮半島にあった国)から鉄を手に入れてヤマトゥの国を守って来たのです」
「豊姫様という人は玉依姫様の娘さんなのですか」とササは聞いた。
 豊姫様というのは初めて聞く名前だった。
「いいえ、違います。玉依姫様は長生きなさいましたので、二人の娘さんの方が先に亡くなってしまいました。豊姫様は弟のミケヒコ様の曽孫(ひまご)です。幼い頃からシジ(霊力)の高い娘さんだったのでしょう。日巫女(ひみこ)と呼ばれたヤマトゥの女王様を務めるには高いシジがなくてはなりません。わたしもお会いしましたが、凄い人だと思いました」
「ウパルズ様はヤマトゥに行ったのですか」
「行きましたよ。母も行っています。母からヤマトゥのお話を聞いて、わたしも行ってみたくなったのです」
「そうだったのですか。今と違って、大変な舟旅だったでしょう」
「そうですわね。何度も死ぬ思いをしましたよ。でも、神様が守ってくださいました。行って来て本当によかったと思っています」
 タマミガがクマラパを連れて来た。
「クマラパ、久し振りだわね。ずっと、わたしから逃げていたのね?」
 ウパルズ様の口調が急に険しくなったので、ササたちは驚いた。そして、クマラパはヂャンサンフォンと同じように、神様の声を聞く事ができるようだった。
「別に逃げていたわけではない」とクマラパは小声で言った。
「あなたのお陰で何人の人が亡くなったと思っているの?」
「わしも後悔しておるんじゃ。あの時はいっぱしの軍師気取りだったんじゃよ。亡くなった者たちにはすまなかったと思っている」
「何の事ですか」と漲水のウプンマが聞いた。
「三十年前の悲惨な戦(いくさ)の事ですよ」とウパルズ様は言った。
「えっ?」と漲水のウプンマは驚いて、「あの時の戦はクマラパーズ様の活躍があって、目黒盛豊見親様は勝利したと聞いておりますが」
「戦には勝ったけど、クマラパは助けられた人たちを見殺しにしたのよ」
「どういう事ですか」
「クマラパ、自分でちゃんと説明しなさい」
 クマラパは溜め息をつくと、
「まだ十七歳だった目黒盛に会ったのが、そもそもの始まりなんじゃ」と言った。
「今、与那覇(ゆなぱ)グスクがあるイナピギムイで、目黒盛はイーヌツツ(上の頂)の七兄弟(ななちょーでー)を倒したんじゃ。七兄弟は保里按司(ふさてぃあず)にそそのかされて、目黒盛の両親を殺して、イナピギムイを奪い取ったんじゃよ。目黒盛は両親の敵(かたき)を討って、土地を奪い返すために七兄弟と戦ったんじゃ。わしはたまたまその場に居合わせて決闘を見た。目黒盛は弓矢の腕も剣術の腕も大したものじゃった。わしはただ者ではないと思った。将来、大きな事をしでかすじゃろうと思ったんじゃ。わしは陰ながら目黒盛を見守った。七兄弟を倒したあと、目黒盛は白川殿(すさかどぅぬ)の娘を嫁に迎えた。白川殿は何人もの鍛冶屋(かんじゃー)を抱えていて、武器や農具を作らせて長者になった男じゃ。白川殿を味方に付けた目黒盛は勢力を広げた。広げたと言っても、根間(にーま)から白浜(すすぅばま)までの細長い一帯で、周りには糸数按司(いとぅかずあず)、北嶺按司(にしんみあず)、大嶽按司(うぷたきあず)といった大きな勢力を持つ按司がいたんじゃよ。目黒盛がどうやって、そいつらを倒すのか楽しみだったんじゃ。その頃、わしはアコーダティ勢頭(しず)と一緒に船造りに励んで、船が完成したらトンドの国に行ったりしていた。そんな時、北嶺按司が弓矢の決闘をして殺された。殺したのは目黒盛の妻の弟のウキミズゥリじゃった。ウキミズゥリは石原按司(いさらーず)に雇われて北嶺按司を倒したという。北嶺按司は飛鳥主(とぅびとぅりゃー)と呼ばれた武芸の達人で、ウキミズゥリも弓矢の名手じゃった。ウキミズゥリが目黒盛のために北嶺按司を殺したのか、弓矢の対決がしたかっただけなのかはわからん。だが、北嶺按司はいなくなり、石原按司は北嶺按司の領地を手に入れた。それから三年後、石原按司は糸数按司に殺されて、糸数按司は石原按司と北嶺按司の領地を手に入れて大按司(うぷあず)となったんじゃ。糸数按司というのは保里按司の息子で、北嶺按司の従兄なんじゃよ。従弟の北嶺按司の敵を討ったというわけじゃ。糸数大按司はウキミズゥリもだまし討ちにしたようじゃ。義弟を殺されて目黒盛も怒っただろうが何もしなかった。わしは石原按司に嫁いでいた妹から敵(かたき)を討ってくれと頼まれた。わしは妹の頼みを聞いて敵を討ってやったんじゃ。糸数大按司が亡くなると、目黒盛は糸数グスクを攻め取った。目黒盛は糸数按司の領地をすべて自分のものとしたわけじゃ。そして、佐田大人(さーたうふんど)がやって来たんじゃよ」
「どうやって、糸数大按司を倒したのですか」と安須森ヌルが聞いた。
「わしの弟子に美しい娘がいてな、その娘を糸数大按司の側室として送り込んだんじゃ。その娘が糸数大按司とお楽しみ中に、毒の付いた針を首に刺したんじゃよ。お楽しみ中に亡くなったとは言えず、簪(かんざし)で耳掻きをしていたら、アブベエ(虻蝿)が肘に止まって、それを叩こうとして簪で耳を刺して亡くなったという事にしたんじゃろう」
「恐ろしい事をするわね」と言ったのはウパルズ様だった。
「糸数大按司は石原按司を殺した時も、ウキミズゥリを殺した時もだまし討ちにしたんじゃ。あんな卑怯な事をする奴は按司の資格はない。バチが当たったんじゃよ」
「その事は大目に見るわ。話を続けて」
「佐田大人は下地(すむずぃ)の与那覇(ゆなぱ)に上陸して、与那覇に住んでいたウミンチュたちを皆殺しにして、そこを拠点にしたんじゃ。奴らは最初からミャークの者たちと仲よくしようという気持ちはなかった。ミャークの者たちを見下して、島人たちを皆殺しにして、この島を奪い取ろうとたくらんでいたんじゃ。ヤマトゥでの戦に敗れて、ミャークに新しい南朝(なんちょう)の国を造ろうとしていたんじゃよ。奴らは総勢一千人近くいて、サムレーは半分の五百人、残りは連れて来た家族たちじゃった。その家族の中に南朝の皇子(おうじ)もいたらしい」
「佐田大人が来た時、ミャークにとって危険な者たちだから早く倒しなさいとわたしは警告したはずよ」
「わしはウパルズ様の警告に従って様子を見に行ったんじゃ。しかし、言葉が通じなくて、何をしに来たのかわからなかったんじゃ。倒せと言われても奴らの兵力は五百人、しかもミャークの者たちよりも立派な武器を持っている。奴らを倒すにはミャークの按司たちが協力しなければ無理じゃった。しかし、現実は按司たちは互いに争っていて、一つにまとまりそうもなかったんじゃ。台風が来て、奴らの船が全滅すると奴らは凶暴になった」
「佐田大人が来てから台風が来るまで一月近くあったわ。あなたの妖術を使えば、追い返す事はできたはずだわ」
「そんなのは無理じゃよ」
「そうかしら? あなたはターカウ(台湾)まで行っているから知っているはずよ。ヤマトゥンチュが人食い族を恐れている事を。ミャークにも人食い族がいるように見せかければ、佐田大人たちも恐れて逃げて行ったでしょう」
「そんな事をしたら、ミャークが人食いの島だと噂になって誰も来なくなってしまう」
「大勢が殺されるよりもましでしょ」
「あの時点では、奴らの出方を見るしかなかったんじゃ」
「台風で船がやられて、佐田大人たちはもう島から出て行く事はできなくなったわ。わたしはミャークの人たちを守るように、守りを固めなさいとあなたに言ったわ」
「言われた通りに狩俣の村(しま)を石垣で囲んだ。島尻(しまずー)の村にも伝え、ウプラタス按司にも、野崎按司(ぬざきあず)にも、目黒盛にも伝えて、皆、守りを固めたんじゃ」
「でも、南部の按司たちには伝えていないわ」
「上比屋(ういぴやー)には伝えた」
「あなたは目黒盛の味方になりそうな按司だけに伝えたのよ。あなたは目黒盛のために佐田大人を利用しようと考えたのよ」
「確かにそうじゃ。あの頃、最も勢力のあった大嶽按司を佐田大人が倒してくれればいいと思っていたんじゃ」
「美野按司(みぬあず)には伝えたの?」
「伝えた。だが、奴はわしの言う事を笑って、従わなかったんじゃ」
「美野村(みぬしま)が皆殺しにされて、皆が佐田大人を恐れたはずよ。その時、按司たちが一致団結して倒す事もできたはずだわ。でも、あなたは様子を見ているだけで何もしなかった。美野村が全滅してから一月後、大嶽按司が亡くなったわ。跡を継いだ若按司はまだ若かった。佐田大人に攻められて、大嶽グスクは落城して、城下の住民たちは皆殺しにされた。あなたの願った通りになったのよ。大嶽按司が滅ぼされて、あなたはようやく腰を上げて、目黒盛と会って佐田大人退治の作戦を練った」
「大嶽城下の者たちには悪かったが、ミャークを一つにまとめるためには大嶽按司は邪魔だったんじゃ。大嶽按司がいなくなって、あとは目黒盛が佐田大人を退治すれば、ミャークは目黒盛を中心にして一つにまとまるじゃろうと思ったんじゃよ。わしはアコーダティ勢頭に頼んで、ターカウから武器を調達してもらい、伊良部島(いらうじま)で兵たちを鍛えた。ウプラタス按司が攻められたのは全くの誤算じゃった。根間から白浜までは目黒盛が守りを固めていたので、奴らが北に出て来る事はあるまいと思っていた。ところが、奴らは高腰按司(たかうすあず)を倒して馬を奪い取り、奇襲を掛けて来たんじゃ。突然の攻撃に耐えきれず、ウプラタスは全滅してしまった。しかし、その頃になると敵も分裂し始めたようじゃった。佐田大人の残虐さに付いて行けなくなった者たちが現れたようじゃ。ウプラタス按司の船を奪い取った奴らは、下地の与那覇には帰らずにミャークから去って行ったんじゃ。あとになってターカウの倭寇(わこう)から聞いたんじゃが、ウプラタス按司の船を奪った奴らはヤマトゥに帰って行ったらしい。その後、佐田大人は北部に出て来る事はなく、南部の按司たちを攻めていた。奴らが上比屋を攻めた時、わしらは助けるために出撃した。激戦になったが敵を追い返す事ができた。その時、敵もかなりの損害が出て、目黒盛を倒そうと考えたようじゃ。わしは敵の動きを探って、あちこちに罠を作って待ち構えた。敵はうまい具合に罠にはまって、目黒盛、野崎按司、北宗根按司(にすずにあず)、狩俣按司(かずまたーず)、上比屋按司(ういぴやーず)の連合軍によって、佐田大人の軍は全滅したんじゃよ」
「うまく行ってよかったわね」とウパルズ様は皮肉っぽく言った。
「あなたの思い通りにするために何人の犠牲が出たと思っているの? 一千人以上の人が亡くなっているのよ。しかも、女や子供までが無残に殺されているわ。按司たちが戦をしても、女や子供たちまでは殺さないでしょう」
「わかっている。戦のあと、わしも反省したんじゃ。ウパルズ様に合わす顔がなかったんじゃよ」
「あれから三十年間、あなたはわたしから逃げていたわ。でも、わたしは知っているのよ。あなたが亡くなった人たちを一人づつ弔ってやっていたのをね。そして、野城按司(ぬすくあず)と高腰按司を再興したわ。亡くなった人たちのためにも、ミャークを平和で住みよい島にしなさいよ」
 クマラパは何も言わず、両手を合わせて感謝していた。
「クマラパの件はこれで終わりよ」とウパルズ様は言った。以前の優しい声に戻っていた。
「さっきの話の続きだけどね、ヤマトゥに行った時、出雲(いづも)の熊野山に行って、スサノオの神様に会って来たのですよ。スサノオの神様は喜んでくださったわ。琉球のさらに南にそんな島があるとは知らなかった。是非、行ってみたいものじゃとおっしゃいました。わたしは一緒に行きましょうって誘ったんだけど、その頃のヤマトゥは国が大きくなってしまったお陰で、内部争いがあちこちで起こっていて、スサノオの神様も留守にする事はできなかったの。争いが治まったら来て下さいって言ったんだけど、ミャークには来ていないわ」
「ミャークに熊野権現様はありませんか」とササは聞いた。
「大嶽山頂と高腰グスクにあるわよ」
「えっ、二つもあるのですか」
熊野水軍は保良(ぶら)に住んでいる人たちを連れて来ましたから、あちこち歩いて高い所に熊野権現を祀ったのでしょう」
熊野権現様があれば、スサノオの神様を呼ぶ事ができるかもしれません」
「まさか。ヤマトゥからミャークまで、いくら、スサノオの神様が万能でも無理だと思うわ」
「無理かもしれませんが試してみます」
「わたしも会いたいから、スサノオの神様がやって来たら教えてね」
「勿論です。一緒にお酒を飲みましょう」
 ウパルズ様は楽しそうに笑った。
 ササたちはウパルズ様と別れ、池間のウプンマに従って、広場の周りにある六つのウタキにお祈りを捧げた。一番奥の崖下にあるウタキは母親のウムトゥ姫様のウタキだった。勿論、ウムトゥ姫様は留守だった。あとの四つはウパルズ様の娘のウタキで、残る一つは三百年前の大津波のあとにウタキを再興したウプンマのウタキだった。四人の娘は、長女の池間姫がウパルズ様の跡を継いで、次女は赤崎に行って赤崎姫になり、三女は百名(ぴゃんな)に行って百名姫になり、四女は漲水に行って漲水姫になって、ミャークを守っていると池間のウプンマは言った。
 ナナムイウタキを出ると、
「ようやく許してもらえたようじゃ」とクマラパは力なく笑った。
「お父様がウパルズ様とお話ができるなんて知らなかったわ」とタマミガが目を丸くして言った。
「あれ以来、怒られてばかりいたからのう、耳を塞いでいたんじゃよ」
「あたし、お父様を見直したわ」とタマミガが言うと、クマラパは嬉しそうな顔をして娘を見ていた。
「さっき、クマラパ様の事をクマラパーズって言ったけど、どういう事?」と安須森ヌルが漲水のウプンマに聞いた。
「クマラパ様は按司じゃないんだけど、三十年前の戦の活躍で、クマラパ按司(あず)と呼ぶ人が多いのです」
「成程、クマラパ按司か」と安須森ヌルは納得した。
 池間のウプンマに見送られて、ササたちは狩俣へと帰った。